ダッカへ帰る日 故郷を見失ったベンガル人

著者 :
  • 集英社
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感想 : 6
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  • Amazon.co.jp ・本 (248ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087813005

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  • 出稼ぎ労働者として日本で10年以上暮らす2人のベンガル人兄弟、ハニフとベラルの話。

    この兄弟はブローカーから就学ビザを買って日本に入国したので就労ビザを持っていない、つまり不法滞在者。

    著者は実際にこのベンガル人兄弟と親しかった人で、全て実話。

    兄弟は8人兄弟の次男・三男で、毎月の給料からわずかな生活費を差し引いた残額を本国に送金をして家族を支えているのであって、犯罪目的の滞在ではない。

    著者の取材によると2人の勤務態度は真面目で、新人教育や生産管理などの責任ある仕事も任されている。

    「キツイから」と日本人ならすぐ辞めてしまう工場の仕事でも彼らはお金を稼ぐために一生懸命働くし、週に数日しか勤務できない学生アルバイトがたくさんいるカラオケやバー、クラブの厨房では、毎日働いてくれる彼らのような外国人労働者は中小工場や外食業界では歓迎されている。
    雇用側も不法滞在者と知っていながらも、彼らの働きぶりを知っているから解雇しない。

    そんな、全国どこにでもいるオーバーステイの外国人が、この本では、長期の出稼ぎ労働者が持つ日本への不満や愛情、孤独感、そして将来への不安、政治腐敗がなくならい母国への怒り、貧困から脱却できない母国へのやるせなさ、愛郷心の喪失等々、様々な心情が描かれている。

    著者が兄弟の家で一緒にトルカリを食べたり、送還された弟に会いにバングラまで行ったり、と著者が2人と親しかったことから、単なる“不法滞在者”の話で終わってしまってないので楽しく読める一冊だった。

    ちょっと面白い話があった。
    日本に13年暮らした弟ベラルはバングラに送還されてすぐ、家族や親戚に縁談をセッティングされてしまう。
    「私はもう半分、日本人なんです」と自称するベラルは「会ったこともない、しかも一回りも年下の女性と結婚するなんて考えられないよ!」と散々嫌がって、3度も結婚式を延期してしまう。
    でも結局、父親や親戚からのプレッシャーに耐え切れずに弟は結婚するが、著者が結婚式の翌々日に会ったらもう新妻のことで頭がいっぱいで顔がデレデレだったという話。
    翌年には男の子が生まれ、すっかり子煩悩だったとか。

    ベンガル人ってホントおもしろい!!

  • バングラデシュ人が出稼ぎのために来日し長年に渡り不法滞在をする。そんなストーリーを読んで考えたことは3つある。
    1つ目は外国人労働者について。少子化が進み労働力不足の日本では移民や出稼ぎとして来日する彼らが必要だと感じた。しかし彼らは自国内であればこの主人公のように学歴のあるエリート層であることが多いのを思うと、海外で単純な労働をするよりも祖国のために活動した方がよいのかもしれない。
    2つ目はバングラデシュの政治について。国民がそれを目指していないのであれば、それで幸せなのであれば、十分な暮らしなのかもしれない。
    3つ目は家族がベースとなって動くことについて。自分の意志より家族の意志を優先されるため自分の夢や願望は達成しにくい状況にあるように感じた。日本でも田舎ではこの傾向がまだ強い。
    他にも宗教、政治政策

  • 少し昔の発刊であるが、労働力として海外を行き来するバングラデシュの人々の暮らしを垣間見る事ができた。いまはここに登場したバングラデシュの人々の暮らしがもう少しよくなっていればと願う。

  • 現在の日本ではちょっと考えにくい環境での話の部分はもしも、自分がそうだったならばと考えちゃいました。
    ある意味いい刺激になったように思います♪

  • 出稼ぎバングラ人兄弟の物語

  • ドキュメンタリとして秀逸 05年3月

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著者プロフィール

駒村吉重(こまむら・きちえ)
一九六八年、長野県生まれ。
二〇〇三年『ダッカへ帰る日――故郷を見失ったベンガル人』で、第一回開高健ノンフィクション賞優秀賞。二〇〇七年『煙る鯨影』で第一四回小学館ノンフィクション大賞を受賞。ほかに『君は隅田川に消えたのか 藤牧義夫と版画の虚実』(講談社)、『山靴の画文ヤ 辻まことのこと』(山川出版社)、『お父さん、フランス外人部隊に入隊します。』 (廣済堂文庫)、詩集『おぎにり』(未知谷)などの著書がある。

「2021年 『このごろのこと』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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