ガルシア=マルケスに葬られた女

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  • 集英社
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感想 : 5
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  • Amazon.co.jp ・本 (248ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087813586

感想・レビュー・書評

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  • 新潮社の全集版『予告された殺人の記録』の訳者解説に紹介されていたので読んでみた。三重に胸糞悪い本です。

    1. 直接に知っていても知らなくても、意識的な他意があってもなくても、当事者以外の人間はみんな自分に都合のいい勝手なことをいうものだとつくづく思い知らされる

    2. ガルシア=マルケスが非常に利己的で思いやりのない振る舞いをしたことがわかる

    3. 作者の未整理な執筆動機、処女性を重んじる価値観の変遷に対する考察の浅さ(調べて書いている様子が見られない)、過度に情緒的なスタイル、自分語りがとにかく読む気を削ぐ

    あんなにひどい目に逢ったのに、アンヘラのモデルになった女性が自分を失わず、身近な人たちに敬われ愛されていたと知れたことだけが救い。一番高齢なときの写真が一番美しい人だった。


  • 予告された殺人の記録 を読んでからこれを読んだ。

    ガルシアマルケスの印象が変わった。

    著者の個人的な経験とガルシアマルケスが描いた幻想的な殺人の話、現実の小さな街の様子が入り混じる。

    やや著者の自分語りが多いが、それだけマルガリータやガルシアマルケスの作品が著者に与えた影響、思い出させた過去が大きかったということだろう。作者が自分について話す部分を挟むことで、マルガリータを半端な気持ちで追っているわけではないということが伝わってくる。


    これを読んですぐは、ガルシアマルケスが嫌いになった。
    でもそれは、憶測で噂を広めた街の人や又聞きの話をガルシアマルケスに話して本を書くきっかけを与えた親戚たちと同じでかもしれない。他の著作を読んで、(今の所はどうしようもない悪人)ガルシアマルケスについてもっと知ってみたいと思った


    たとえガルシアマルケスが人としてモラルのないことをしていても、それはその人の一面であって全てではない、、かもしれない。

    親戚たちの振り返るマルガリータはそれぞれ細部が違う。
    近しい人だと間違いなくその人を見ることができると思っていたが、その人の印象が固まってしまうと
    "あの人はいい人だから" なんでもいいことをしているように見えて
    "あの人は悪い人だから"何をしても嘘をついて何隠しているように見える

    ことがあるなと感じた。
    真実は一つでも、それを見る人の数だけ解釈がある
    そのうち真実に近くないものがガルシアマルケスに伝わって小説になってしまったなら悲劇だ



    本人が沈黙を守って死んでしまったため、疑問の答えは出ない。
    結局初めての相手は誰だったのか?
    なぜ婚前に非処女であると言わなかったのか?
    なぜカエタノが相手だと言い切ったのか?
    なぜ沈黙を貫くのか?


    メキシコの男尊女卑に触れるところもある

    処女を重んじる→目の前にいる恋人が生きてきた過去に適応できない

    という言葉が心に残った。

    2007年に発行された作品で、フェミニズムとはいかないまでも女性の立場、男性の立場を深く考える文章なのは珍しいのかな?と思った

  • 車谷長吉は近親の恥を予断と悪意をこめて書きまくって恬然と恥じるところなく、結果優れた私小説をあまた生み出したが、大体作家という人物と親しくなれば自分の私生活を暴かれるのは避けられぬことと思っといた方がいい。本書はガブリエル・ガルシア=マルケスが『予告された殺人の記録』のモデルとした従姉妹マルガリータ・チーカの人物像を関係者の証言から再現しようとするもので、そのプロセスはそれなりにサンスペンスフルだが、著者・藤原章生の「自分語り」が頻々と挿入されるのが興醒めでしようがない。ドキュメンタリーには見出した事実を淡々と綴っていけば自ずと説得的なものとなるという優れた文法があるのに、この著者はその辺りがよく分かっていない。よほど目立ちたがりなのか。とりあえず自分はそうした余計な部分は全部飛ばして読んだが、別にそれで悉皆痛痒がなかった。同じ著者による『絵はがきにされた少年』や『資本主義の「終わりのはじまり」』にも関心あったがすっかり読む気を失くした。因みに本書は絶版でオンライン古書店から購入したのだが売値は1円だった。読んで不愉快になったのはどうやら自分ひとりではないらしい。

  • 毎日新聞の記者であり南米に特派員経験を持つ著者が、『予告された殺人の記録』のモデルにされた実際の関係者に迫ったルポルタージュ。

    著者が、ターゲットに絞ったのは、処女ではないという理由で出戻った元新婦のアンヘラ・ビカリオのモデルになったマルガリータ・チーカ。

    身辺で重大な事件が起こったこと、引越しをして静かに暮らしていたところに親戚筋のノーベル賞作家ガルシア=マルケスが、事件を題材にした本を出版された。

    著者は、マルガリータには生涯二度の悲劇が襲い掛かったという。

    著者は事件の関係者に取材をしてゆくが、当のマルガリータは取材を拒否したまま逝去し、ガルシア=マルケスにも拒否されている。

  • 毎日新聞記者の藤原氏の視点は面白く、記事も興味深い。絶賛され続けているガルシア・マルケスの別の一面を本書で知る事となった。
    ただ、藤原氏の女性に対する視線が時折鼻につく。

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著者プロフィール

藤原章生(ふじわら・あきお)1961年、福島県いわき市生まれ、東京育ち。北海道大工学部卒後、エンジニアを経て89年より毎日新聞記者として長野、南アフリカ、メキシコ、イタリア、福島、東京に駐在。地誌、戦場、人物ルポルタージュ、世相、時代論を得意とする。本書で2005年、開高健ノンフィクション賞受賞。主著に「ガルシア=マルケスに葬られた女」「ギリシャ危機の真実」「資本主義の『終わりの始まり』」「湯川博士、原爆投下を知っていたのですか」。

「2020年 『新版 絵はがきにされた少年』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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