iPS細胞ができた! ひろがる人類の夢

  • 集英社 (2008年5月26日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (172ページ) / ISBN・EAN: 9784087813951

作品紹介・あらすじ

世界が注目、世紀の偉業。iPS細胞作製成功!
京大の山中教授らが、ヒトの皮膚から「iPS細胞」を作り出すことに成功した。自分自身の細胞を使って、病気になった組織や臓器を治すことも可能になる。夢のiPS細胞の秘密に畑中京大名誉教授が迫る。

感想・レビュー・書評

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  • 人類史上に残る大発見と言われた京大の山中伸弥教授研究室によるiPS細胞発見について、元・京大ウイルス研究所所長でシオノギ製薬副社長も務めた畑中氏との対談インタビュー形式で紹介した本です。
    まったくの門外漢で、iPS細胞といわれても何のことやらさっぱりわからなかった自分にも、どんな発見で将来的にどのように役立つ可能性があるのか理解することができました。
    ただ、初歩的なことがわかると、次はもう少し詳しい話が知りたくなるのが人情ってもので、例えば「レトロウイルス」だとか「転写因子」だとか、この本だと簡単な注釈で済まされてしまっている内容について、より踏み込んだ解説があればよかったのになどと思ってしまいます。
    というのは、この本、やたらと活字が大きくて、しかも代り映えのしない二人の対談風景を写した写真が多用されてたりして、ページ数の割に内容が薄いんですね。
    それならもうちょっと内容充実させてくれてもいいのに、とついつい思ってしまいます。

    対談の中で印象に残ったのは、山中氏のアメリカでの体験談。
    学会で渡米したときに、たまたま乗ったタクシーで、運転手に「何の研究をしているのか?」と訊かれて、「幹細胞だ」と答えたらその話題で盛り上がったというエピソード。
    日本じゃあり得ない話で、米国の一般人レベルでの医科学に対する関心は日本とは比べ物にならず、それが科学に関する彼我の層の厚さの違いにつながっているのでは、という話です。
    何となく、数理系については一般には日本のほうが上をいってるようなイメージを持っていたけど、そのへん認識を改めなきゃならないようです。
    そんなこともあって、iPS細胞についても、応用研究については日本はかなり劣勢に立たされるのでは、というような悲観的な見方も述べられています。

  • ヒトの皮膚細胞から、様々な細胞になれるように、遺伝子をウイルスで運ばせて作った「iPS細胞」。作製に成功した京都大学研究チームの山中教授と、ウイルス学の権威である畑中名誉教授が、夢の万能細胞について語る。

  • ☆信州大学附属図書館の所蔵はこちらです☆http://www-lib.shinshu-u.ac.jp/opc/recordID/catalog.bib/BA86007980

  • 対談集なので文字は大きく内容は薄いのだが、山中伸弥教授の研究に対する真摯な取り組みや謙虚な人柄がすごく伝わってくる本。

  • 勉強になりました。

  • よう分からん
    テレビがええわ

  • 倫理観を持って研究に臨んでいる姿に共鳴

  • This book is very easy to understand

  • iPS細胞作製に成功した山中京大教授。対談形式でウィルス学権威の畑中京大名誉教授が経緯や背景を追う。iPS細胞の発表から1年、ノーベル医学生理学賞受賞から遡ること4年、興奮冷めやらぬ、しかしノーベル賞の過熱感もなく、教授自身が冷静に研究を推敲する十分な時間を経た、とても良い時期に出版された本。

    両名が読者を意識して極力平坦な言葉で専門用語を語る姿、だが時々読者を忘れて専門分野を熱っぽく語る姿が素晴らしい。まさに研究者。

    兎角、基礎研究の政府補助の在り方に批判が集まりがちだが、山中教授の「アメリカは政府の支援だけではなく科学に対する一般の人々の意識も高い。だから民間からも支援が集まる。いまの日本では善戦はできても競争に勝つのは無理」(難しいではなく)と発言されていたのは、非常に耳が痛い。科学の発展に貢献するにはまず我々が科学に関心を向けることが大切であろう。

    内容はもとよりお二人の素晴らしい人柄が偲ばれる良著。

  •  
    http://booklog.jp/users/awalibrary/archives/1/4087813959
    ── 山中 伸弥&畑中 正一《IPS細胞ができた! ひろがる人類の夢 20080526 集英社》
    http://booklog.jp/entry?keyword=%E5%B1%B1%E4%B8%AD%E4%BC%B8%E5%BC%A5&seavice_id=1&index=All
     
    http://q.hatena.ne.jp/1349759068
     山中家の人々 ~ ドクター・ジャマナカのマラソン人生 ~
    http://q.hatena.ne.jp/1349693355
     

  • 山中教授がノーベル賞を受賞したと聞いて、永らく積ん読してあった本を読んでみた。
    初めてiPS細胞を創りだしたことがニュースに流れた日に企画された対談本なので、今ならばここから数年は進歩があったはずだが、基本を知るには十分であろう。
    実に簡易に書いてあるので、一日で十分に読破できる内容だ。

    分化した細胞を分化前の形に巻き戻すために使う遺伝子を選び出すのに、まずは4年間かけて24個に絞り、そこから4個(最終的には3個)に絞込んだあたりが本研究の最もドラマティックなところだろうか。
    一度分化した細胞を分化前に戻すことが出来る技術であることから、一種のタイムマシンとも呼ばれているのだそうだ。
    研究成果を発表するにも、権威ある科学雑誌「ネイチャー」ではなくて、内容を冷静に判断してくれる「セル」を選んだというのも面白い。

    それにしても対談相手となっている京大名誉教授の畑中氏の興奮ぶりが面白い。
    後半で、これにも使える、あれにも使えると怒涛のように応用可能性を列挙するのだが、話を広げると責任が伴ってしまうと慎重な山中教授と比較して責任の無い畑中氏の興奮ブリが伝わってくる。
    しかしそれだけ、未来の可能性を予感させる根本的で圧倒的な研究成果ということだったのだろうな、と改めて納得した。
    私と同じ年で、これだけの可能性を切り開き、しかもノーベル賞まで受賞してしまった山中氏の業績はほんとうに素晴らしい。
    少しでも早く、そして広く、実際の再生医療に適用されていくことを強く願う次第である。

  • iPS細胞って何?という感じで読みやすい本。対談形式で進められている。専門的な話が全く無いところをヨシとするなら、対談者を著名な先生ではなく、過去にあった南辛坊さんのような方への語りかけ方式の方が良かったと感じる。やはり研究者はやりたいことをやっている人が大成するんだと考えさせられる本でした。

  • iPS細胞を発見した山中京大教授と、京大名誉教授である畑中正一先生の対談の本。

    研究までの歴史、現状などについても述べており、技術論などだけの本ではない。さくっと読めるような文字の大きさも含めて、概観を眺めるにはよいが、技術的なものを読みたい人は他書の方がよいかも?

  • iPS細胞発見のちょっとした裏話的なことが書かれていたのが面白かった。山中先生がどういう経緯でこの発見に到ったのかが、対談形式で表わされているので分かりやすくて、山中先生の成功した時の感動がリアルに伝わってくる。
    そして、研究ってこういう感じなんだ~という空気がすこしつかめたかな。私としては、ここもけっこう貴重なポイントだった。

  • 昨年の11月に全世界を驚かせたiPS細胞(人工多能性幹細胞)

    ES細胞に代わる新しい再生医療の材料として非常に注目を浴びている。

    受精卵を使用しないため、倫理的な問題がなく、すでに過当競争の兆しすら見えはじめている。

    本書はiPS細胞を発明した山中先生と畑中先生との対談を本にまとめたもの。
    初めての人にもとっつきやすい内容ではないだろうか。専門的に知りたい人には不満かもしれない。

    本書とは関係ないが、今後、日本と海外(特に欧米)との研究環境の大きな違いが本研究によって浮き彫りになるのではないだろうか。

    この問題を日本発の技術をリードできなくなって、初めて知るのでは日本の科学の未来は暗いように思える。

    資金、サポート体制の差によって欧米に負けることとなれば、日本の科学技術政策のあり方を根本的に見直す必要がある。
    その契機となる研究分野になる可能性があると自分は思う。

  • (2010.10.05読了)(2010.09.29借入)
    *2012年度、ノーベル医学・生理学賞受賞*
    NHKテレビでiPS細胞の話をしていた。だいぶ前から新聞などで目にしていたけど、じっくり読んだことがなかったので、この機会に読んでみることにしました。
    「ヒトの皮膚細胞から作られたiPS細胞は、体中のあらゆる細胞に変化できるという、まさに「夢の細胞」だ。自分自身の細胞を使って、悪くなった部分を治したり、取り替えたりすることができるようになる。」(3頁)
    ●関連する研究
    1996年、クローン羊「ドリー」誕生
    1998年11月、ヒトのES細胞を取り出すことに成功(受精卵を利用)
    2006年8月、マウスの皮膚細胞からiPS細胞を作り出すことに成功したと発表
    2007年11月20日、ヒトの皮膚からのiPS細胞作製に成功と発表

    ES細胞の場合は、受精卵を使用するため、倫理面から研究が進めにくかった。
    ヒトの皮膚細胞に4つの遺伝子をウイルスを使って組み込み、iPS細胞を作ることに成功
    皮膚細胞とはいっても、表皮細胞や真皮細胞ではなく、皮膚細胞と皮膚細胞の間をくっつける役目の繊維芽細胞が利用された。
    動物の場合は、受精卵から細胞分裂を繰り返して、特定の動物になるので、未分化の細胞から臓器や皮膚や骨などの分化した細胞へと一方通行で進んでゆくのですが、iPS細胞は、もう一度未分化の状態に戻った細胞と言うことです。
    研究成果を発表した後、皮膚や筋肉などに分化した細胞を、元の未分化な状態に戻す、しかもたった4つの遺伝子でできる、ということを信じてもらえなかった。
    ところが、アメリカの大学で、追試に成功し、嘘でないことを信じてもらえた。

    マウスでの実験に入る前に、4年かけて、2万数千の遺伝子から24の遺伝子に絞った。
    その際、遺伝子のデータベースを利用した。
    残した24個の遺伝子があれば、できる(何ができるのか不明)ことがわかったので、そこから先は、1個ずつ取り除いて見たらどうかというアイデア、本当に大事な因子だったら、残った23個全部あってもだめになるだろう、ということで、実験を進めた。
    その結果、4つの遺伝子が残った。4つの遺伝子は、全部、転写因子(遺伝子の読み手)だった。転写因子は、細胞の設計図である遺伝子を解読する役割があります。
    4つの遺伝子とは、Oct3/4(オクトスリーフォー)、Sox2(ソックスツー)、Klf4(ケーエルエフフォー)、c-Myc(シーミック)の4つです。シーミックは、ガン遺伝子として有名ですが、ガンを作るための遺伝子ではなく、細胞の増殖のときに大事な遺伝子です。さらに、傷の再生、肝臓の再生、細胞の再生のときに欠かせない遺伝子です。
    シーミックは、必須ではないことがわかったので、3つの遺伝子で、間に合うことになります。シーミックの役割は効率を上げることだった。

    再生医療のシート(95頁)
    本人の脚の筋肉から細胞を採って増殖させ、5㎝ほどの薄い膜のシートを作り、弱っている心筋の上に貼って狭心症の治療に使用している。(大阪大学、澤芳樹教授)
    iPS細胞を使って、同じようなことをできる日がいつか来るのでしょうか?

    トカゲとイモリ(97頁)
    トカゲは尻尾を切ったら尻尾が生えますが、骨は生えません。イモリは手を切ったら骨まで生えるので、再生能力がすごいんです。

    iPS細胞は緊急時には間に合わない(122頁)
    iPS細胞は、皮膚細胞から作れるので、本人であれば、拒絶反応は起こらないわけですが、ウイルスにiPS細胞を入れるのに一カ月、iPS細胞から目的の細胞を分化させるのに一カ月かかるので、緊急時には間に合いません。拒絶反応のタイプごとのiPS細胞のバンクを作っておいて、利用する方法が、考えられる。200種類用意すると、相当カバーできる。

    薬の臨床試験用に(130頁)
    動物実験で有効性が確認できた薬でも、人間には合わない場合があるので、iPS細胞を利用して、実験ができれば、人間への有効性、毒性を確認できるのではないでしょうか。

    対談であり、活字が大きいので、すぐ読めます。
    (2010年10月7日・記)

  • まちがいなく次代の再生医療を担っていくであろうiPS細胞(人工多能性細胞)の開発という、世界的な仕事を成した山中伸弥氏と、その無限の可能性を広く一般に広めたいと考える畑中正一氏の対談本。

    分化した体細胞に遺伝子導入を行って、未分化の細胞に戻すことができるという発見は、まさに生物学の常識をひっくりかえした非常にすばらしい功績である。理論的には、iPS細胞によって再生医療にまつわる倫理的問題はほぼ完全に払拭されるとも言える上、今後の研究によってベクターの影響を取り払うことができるようになれば、拒絶反応その他の技術的リスクも考えずに済むようになる。まだ道は遠いと思うが、早期の臨床応用が実現されることを強く望む。

    それにしても、昨年の11月に発表されたこの研究について、即座に書籍を作ろうと考え、超多忙でおそらく執筆の余裕のない山中氏を対談の形で表に出した編集者のフットワークには頭が下がる。この迅速性は、本書の価値を大いに高めている。

    ただ、途中から一般の方が読むのには難しいと思われる記述も散見された。贅沢を言えば、終始一貫して誰にでもわかる内容に編集してほしかったとも思う。

  • 研究を主導した山中教授に直接インタビューし、どんな読者にもわかりやすく簡潔にまとめた優良書。最先端テクノロジーに関する一般人に啓蒙したいという出版社の強い思いも感じられた。

  • 鎌状赤血球症 マラリアに強い 

  • 少し期待はずれ、畑中先生がしゃべりすぎ、世紀の発見について山中先生のお話をもっと深く知りたい。

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著者プロフィール

1933年生まれ。京都大学医学部卒業。京都大学ウイルス研究所長、塩野義製薬医科学研究所長、
副社長などを歴任。現在、医療法人尚生会西出病院顧問。京都大学名誉教授。
著書に『ips細胞ができた—ひろがる人類の夢』(共著、集英社)、『ウイルスとガン』
『現代ウイルス事情』(岩波新書)、『がんはどこまでわかったか』(講談社)、
『がんの遺伝子治療』(日経サイエンス社)ほか。

「2008年 『がんと闘う温熱療法と免疫』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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