母 ―オモニ―

  • 集英社 (2010年6月4日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (304ページ) / ISBN・EAN: 9784087814446

作品紹介・あらすじ

著者初の自伝的小説
遺品の中から見つかったテープは、文字の書けなかった母から息子への遺言だった…。社会全体が貧しく、家族間の体温が熱かった時代の感触が濃密に甦る。「在日」の運命を生き抜いた親子二代の物語。

感想・レビュー・書評

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  • より多くの人に読まれるべき本だと思う。

    在日一世の日常の記憶(歴史)は、
    それを取り囲む環境から、容易に語られなかったことが多い。

    だから、彼らの辿ってきた足跡は、
    過酷だったにもかかわらず、
    脆く消えてしまいかねないのではないか。

    母を中心とした著者の家族の営みが細やかに書き込まれ、
    そのひとつひとつ、些細な出来事の中にこそ、渦巻く葛藤が浮き上がる。

  • 姜尚中本人と言うよりは、タイトル通りその母の人生が綴られ、その中に姜尚中のルーツや在日の苦悩が垣間見える。作者の著書である心とは異なるアプローチによって自らを模索するような、姜尚中あるいは在日特有の感受性が浮き出ているように感じる。

    読んでいてどうしても、孫正義の育ちと混乱してしまうシーンがある。それほど、戦後の在日のおかれた環境が似通ったものだったという事だろう。

    国を持たない人たちのある種の強さは、自らの立場が常に揺らぐ中において、同族の人間関係や、お金や教養といったものを普通以上に大切にするからかも知れない。

  •  帯には「自伝的小説」とあったが,おそらくほとんどのことは事実なんだと思う。自らのオモニをめぐる人々の生き方を中心に書かれた自伝的小説。
     文字を書けず,読めもしなかったオモニの言葉には,生きて体験してきたからこその内容が含まれていて,一言一言が重く感じる。

    母。それは、いつの時代にも子供たちの心を虜にせずにはおかない。幼少の頃,子供以外の何者でもなかったすべての者にとって,母は絶対的な存在だったはずだ。たとえそれが,激しい愛憎をともなっていたとしても。

    と「プロローグ」の冒頭にある。まさに,だからこそ,姜尚中は「母(オモニ)」を公にする価値があると判断したのだろう。「母」というのは,だれにも通じる話題。そして,共に考えることのできる話題なのだ。
     戦争中の日本に生きて,朝鮮戦争でふるさとが分断され,日本では差別的な待遇を受けながらも生きてきた在日の人たち。そのまっただ中を生きてきた「オモニ」の姿は,とても強くて,優しくて…。

     姜尚中氏の文章は,とてもきれいな日本語だ。わたしなど,使ったこともない言葉で表現している。もっともっと言葉の勉強もしたいなと思わせてくれる本でもあった。

     最後のオモニからのテープは,よかった。

  • 4

  • 言葉にできない感情が沸々とわいてくるような話だった。考えさせられる事多し。

  • 大正生まれで、激動の歴史に翻弄されながらも、立派に生きた我が母と重なった。ありがとう。

  • 実体験の重さ
    その上にある優しさ・・・
    母ってねえ

  • 韓国のお母さんってこんなにいい人なの?と感動しました。
    母をお願いを読んだ後だから、なおさら思うのかも。

  • 戦前に釜山の近くののどかな町を離れ、異国日本へ、そして熊本に渡った女性の一代記であるとともに、終戦直後の貧しい日本、そして朝鮮人差別などを生々しく描いています。著者が母からは「テツオ」と呼ばれ、友人からも永野と呼ばれ、在日としての出自を思い出すことさえ、厭うていたが、韓国を訪問し、叔父に会ったのち、「姜尚中」と名乗る変化は感動的な部分です。今から僅か60年ほど前の在日の悲惨な生活に心が痛みます。

  • 母の貧しくても、辛くても、助け合って生きていく強さ、強い愛情を感じる。

  • ちょっとイメージと違った感があるんだけど、読んでみるとやっぱりーな感じでした。母への追悼もこめて思いを書き上げたんでしょうね

  • はじめて読んだ姜尚中さんの著書。
    以前に読み書きの出来ないお母様のことを話されて
    いたことを思いだし、読んでみた。
    文章が尚中さんのあの、穏やかな語り口調そのまま
    だった。内容は壮絶なものであるにもかかわらず。
    尚中さんの著書をもっと読んでみたくなった。

  • 戦中、戦後すごい時代を生きてきたんだから強い。

  • 母から「悩む力」をもらって、それ以来この方の文章力に引き込まれてしまっている。感動・・やっぱりリスペクトできる人物、文章、そしてオモニ・・でした!

  • こういうご時世だからこそ読みたかった。
    思っていたよりも読みやすい。逆にさらっとし過ぎかも。もう少しオモニの熱さを表してもよかったのでは。

  • オモニの優しいことばが、まるで子守唄のように温かな世界を紡ぎ出す。
    政治学者姜尚中氏初の自伝的小説。
    姜氏の、母に対する愛情の深さが言葉の端々に顕れている。

    「母。それは、いつの時代も子供たちの心を虜にせずにはおかない。幼少の頃、子供以外の何者でもなかったすべてのものにとって、母は絶対的な存在だったはずだ。たとえそれが、激しい愛憎をともなっていたとしても。」
    冒頭のこの言葉がずっと心の中に残る。

  • いろいろな本を知り、世界がまた広くなりました。今後も参加したいです。皆さんのお話もたのしかったです。

  • お母さんは大変苦労したけれども、亡くなるときには、幸せな人生だったと思っていたと思う。国は形でしかなく、韓国でも日本でもない、自分のルーツや先祖を大事にしたい。先祖が一所懸命生きてきた結果、自分が今この世にいるのだから。

  • NHKのプレミアムドラマで見て興味を持ち、
    借りてみた。

    それまでの私といえば、「カンサンジュン」=「姜尚中」とやっとつながったばかり。
    いい声の人、頭いい学者さん、くらいのレベルの認知度しかなかった。

    戦時中に在日韓国人の両親から生まれた、テツオ。
    その彼から見た、母(オモニ)の姿。

    母は優しく強く、愛すべき存在であるが、
    在日であることを隠していたかった時期もあったため、
    その強烈な個性を疎んじていた部分もある。

    その愛憎は、私たちにだってあるのだから、
    まして出自で差別を受けていた人にとって、
    複雑な心情であろう。

    戦後、日本人として誇りを保つためには、隣人をおとしめるしかなかったのだろうか。
    豊かになった今現在でも、それを続ける意味はあるのだろうか。

    身近な九州弁で綴られる、想像以上の貧困と差別は、
    とても今のあのスタイリッシュな姜尚中さんとつながらない。

    家族みんな和名で暮らしていたところで、あえて韓国名に変えた心情を、
    もう少し知りたい。

  • 筆者曰く、息子たちにとって、母は「女」ではなく、あくまでも母でなければならない・・・。
    自分に置き換えて考えてみると、娘にとっても、母は母であってほしいものです。

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著者プロフィール

1950年熊本県生まれ。東京大学名誉教授。専攻は政治学、政治思想史。主な著書に『マックス・ウェーバーと近代』『オリエンタリズムの彼方へ―近代文化批判』(以上岩波現代文庫)『ナショナリズム』(岩波書店)『東北アジア共同の家をめざして』(平凡社)『増補版 日朝関係の克服』『姜尚中の政治学入門』『漱石のことば』(以上集英社新書)『在日』(集英社文庫)『愛国の作法』(朝日新書)など。

「2017年 『Doing History』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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