アハメドくんの いのちのリレー

  • 集英社 (2011年8月26日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (132ページ) / ISBN・EAN: 9784087814712

作品紹介・あらすじ

砂漠に散った12歳の少年が残した、平和の鍵
イスラエル兵に誤射され殺された12歳のパレスチナの少年アハメド。父イスマイルは、その悲しみを横に置いて、なんとイスラエルの病気の子供を救うため、臓器移植を承諾した。平和への願いを込めて…。

感想・レビュー・書評

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  • ○芽吹く種もある 刈られても、踏みつけられても、諦めてはいけないんだろうな

    ギターが好きなパレスチナの少年が、理由なくイスラエル兵の2発の銃弾に倒れた
    医師に提案された臓器提供に、父はうなずいた
    少年の臓器は6人のユダヤ人の命をつないだ

    「臓器提供は、平和の実現を望む私たちパレスチナ人のシグナルだと思ってほしい」

    鎌田さんは新聞でニュースを読み、少年の父に会いたいと願い、縁があってパレスチナへと向かう

    平和な明日を勝ち取るための、武器に頼らない戦い

    感謝はしてもパレスチナ人とは友だちになれなきという家族がいれば、国境さえ行き来出来たら親戚になりたいという家族もいる

    自爆テロでたくさんの親戚や友だちを失ったユダヤ人もいる

  • イスラエル兵に撃たれたパレスチナ難民キャンプ(ジェニン)に住むアハメドくん、12歳。ハイファの病院で脳死を宣告され、臓器提供を提案された。臓器の提供先は選べない。イスラエル人になるかもしれない。しかし、アハメドの父イスマイルは同意した。
    アハメドの臓器は六人のイスラエル人に提供された。一人は遊牧民ベドウィン、もう一人はイスラム教徒だったがあとの四人はユダヤ人(つまりユダヤ教徒)だった。
    著者の鎌田さんがアハメドくんの父と心臓を移植された少女に会いに行く。
    しかし、この少女はドゥールズ派(イスラム教)。イスマイルが交流しているもう一人のレシピエントもベドウィンであり、ユダヤ人四人とは交流を持てていない。一名は亡くなったそうで、その人がベドウィンなのかユダヤ人なのかは明らかにされていないが、少なくとも三人のユダヤ人がアハメドの臓器を受け取ったわけである。
    この三人とイスマイルが交流できていたら、と考える。この三人はパレスチナ難民の、イスラエル人に殺された少年の臓器をもらったことを知っているのだろうか。
    本は、こういった点には触れず、あくまでイスマイルの決断の立派さとこれからの平和を願うという内容。
    かなり情緒的な印象を受けるが、パレスチナの政治的な問題を描くより人の心に訴えるだろうし、子どもにも読みやすいだろうから、これはこれで良いのかもしれない。また、鎌田さんがこういったことに関わり続けるのは、彼自身が血の繋がらない両親に愛されて育ったからだということも語られており、納得できる。
    しかし、アハメドの臓器提供が2005年、それから18年経ち、臓器を提供された人たちは今、何を考えているだろう。アハメドが死ななかったら、今どうしているだろうと思う。今回のガザの攻撃について。
    こういった本が平和を呼べば良いが、みんな大切な人間、仲良くしよう、というだけでは難しいということを痛感する。この本をバイデンやブリンケン、ネタニヤフにプレゼントしたら、立派な父だ、平和は大切だ、と言うだろう。しかしガザ攻撃を止めるか?と聞かれれば、止めないと言うだろうとも思う。
    むしろ世界的に起こっているデモの方が力があるかもしれない。
    これ以上人が、子どもたちが殺されないために、何をしたらよいか考えねば。

  • 2011年に出版されていたのに、今年まで知らなかったなんて!「雪とパイナップル」は知っていましたが、こちらも子どもも読めて平和を考えるのにとても良いと思います。4年生くらいから紹介したいと思います。

    自分のことしか考えられない人達がいる一方で、世界の事、自分の息子を殺した敵国にまで思いを馳せることが出来る人達がいる。
    あなたはどちらになりたいですか?
    私も世界の為に何かしたい気持ちになります。
    『にもかかわらず』な行為は、自身が愛を受けていないと難しい。アハメドくんがオモチャであっても銃を嫌い、ギターを好んだのは、愛情深いお父さんや家族があったからでしょう。そして、この素晴らしい戦いを続けるお父さんもそうだったのでしょう。
    次の愛の連鎖には、まず、今自分が持っている愛を分けることか。などと思いました。

  •  鎌田さんには『雪とパイナップル』という“ノンフィクション絵本”(実体験に基づく絵本)の著作があるが、本書は“ノンフィクション絵本”の第2弾ともいうべきもの。

     『雪とパイナップル』は、チェルノブイリの原発事故で「黒い雨」を浴び、白血病で亡くなったベラルーシ共和国の少年・アンドレイをめぐる物語だった。鎌田氏は国際医療ボランティア活動でアンドレイに出会い、治療にも携わった。その体験に基づいた本だったのである。

     本書の主人公は、パレスチナの難民キャンプに暮らしていた少年・アハメド。彼は12歳のとき、イスラエルの兵士に狙撃されて亡くなった。
     狙撃されたとき、運び込まれたのはイスラエルの病院。彼が脳死状態になったとき、父親はイスラエルの医師から臓器提供の提案を受ける。

    《「提供する側が移植相手を選ぶことはできません。
     国籍も、民族も、宗教も選べない。
     パレスチナ人かもしれないが、イスラエル人かもしれない」》

     父は懊悩のすえ、息子の全臓器を提供する決意を告げる。摘出された臓器は6人の患者に移植されたが、レシピエントは全員がイスラエル国籍だった。
     この出来事は、「父は平和願い 敵に臓器提供」と、美談として世界に報じられた。アハメド少年は「殉教者」として英雄視され、パレスチナの町中にポスターが貼られた。

     鎌田さんはアハメド少年の家族を訪ね、彼の臓器を提供された人々や医師たちも訪ねる。その旅を終えて書かれたのが本書なのである。

     文章は詩的で美しく、安藤俊彦の絵も素晴らしい。世界中の人々に読んでほしいとの思いから、ピーター・バラカンによる英訳も付されている(ただし、英文は要点のみの抄訳)。

     深い悲しみのなか、「憎しみの連鎖」を断ち切る決意をし、崇高な行為に踏み切った父親・イスマイルさんの言葉が感動的だ。

    《「臓器提供は、平和を望むわれわれのシグナルだと思ってほしい」

    「大切な人やものを奪われたとき、その相手に報復すれば憎しみの連鎖に巻き込まれてしまう。
    武器を手に戦うことばかりが、戦いではありません。
    戦い方は、いろいろあるんです」

    「海でおぼれている人に
    『国籍は?』『民族は?』『宗教は?』
    なんて聞かないでしょう?
    私はただ、人間として正しいことをしただけです」》

     もちろん、長年の間に降り積もった憎しみが、一朝一夕に消えるはずもない。臓器提供を受けた側の家族の中には、「感謝はしても、パレスチナ人とは友達になれない」と言う者もあったという。
     また、アハメド少年の心臓をもらった少女の母親は、次のように言う。

    《「娘が心臓移植を受けて元気になったとき、
    イスマイルさんの家にお礼を言いに行きたかった。
    でも、検問所を通れなかった」》

     そのような悲しい現実はあれど、イスマイル氏が投じた一石は、世界に大きな波紋を広げつつある。本書も、その波紋をさらに広げていくことだろう。
     『雪とパイナップル』と並んで、後世に残り得る一冊。

  • イスラエル兵に殺された息子の臓器を敵国の病気の子どもを救うために差し出したお父さん。どこかで息子の臓器が動いていると思うと嬉しいと考えれた素晴らしい人。

  • 「1948年イスラエルという国がパレスチナの地に建国された時、そこに住んでいたパレスチナ人は家を失い、難民となった。家を追われた人は七十万人を超える。その多くが、鍵をかけて家を出た。」
    パレスチナの難民キャンプで生まれ育ったアハメドは12歳、家からたった20キロちょっとの地中海を見たことがない。検問所を通る必要があるから。

    ラマダン明けを祝うお祭りで友達の家のパーティによばれていた。一張羅のスーツを着て、それに似合うネクタイを買いに出た時、イスラエル兵の二発の銃弾が腹と頭を貫いた。
    脳死となったアハメドの父イスマルは、臓器移植の決断をする。提供される相手はイスラエル人かもしれない。

    イスマル父さんは言う。「大切なものを奪われたとき、その相手に報復すれば憎しみの連鎖に巻き込まれてしまう。武器を手に戦うことばかりが、戦いではありません。戦い方は、いろいろいるんです」


    引用か多い感想となってしまった。
    2度読んでとてもよく理解できた。ふりがなもあるし、子供でもわかると思う。
    ただ、鎌田先生の体験とご自分の生い立ちを重ねた文章と、年月が行きつ戻りつするので混乱した。


  • 「敵でも人間としては平等だから、敵ともシェアするというのが人間にとっては当たり前。」という言葉が印象に残りました。

  • 殺された息子の臓器を敵国の子どもに提供した事実を日本人医師が絵本化

    現地の悲惨な状況も子どもでもわかるほど簡潔にまとまっていて、そして、平和に対する強い想いが絵と英文と共に表現されている。

    より多くの人に読んでほしい。
    図書館で読んでいたら、周りに人が居るのに涙を流してしまった。

  • 図書館でたまたま借りていたこのタイミング。
    パレスチナ問題について、浅い知識しか持ち合わせていないけど、この本はひとりのパレスチナ人、ひとりのイスラエル人、そして一人の人間がその地に生きているということを改めて思い出させてくれる。
    どちらの主張も考えもあり、土地は二重にある訳ではなく、じゃあどういう解決方法があるんだ?というのはとても難しい問題だけど、武力で相手を圧する勝利以外の共存する方法を、人間はそろそろ見つけていかねばならない。パレスチナだけでなく、全世界の課題として。

    絵も良い。難しい問題、とっつきにくい、と思われそうなテーマではあるが、著者自身が絵本を作りたいと言っていたように、絵の存在が身近で読みやすい本にしてくれている。

  • 英語や数学や情報が必要ない、とは言わないが、英単語覚えるよりも、数学の問題が解けるよりも、プログラミングができるよりも、それよりも知っておいた方がいいことってのは確実にたくさんあると思う。

    イスラエルの狙撃兵に撃たれて脳死状態になったパレスチナの少年アハメドくん。
    そのアハメドくんのお父さんイスマイルさんは、敵国であるパレスチナの少年少女たちにアハメドくんの臓器を提供することを決意した。

    2005年にそうした事実があったことをいったい何人の日本人が知っているのだろう。
    イスラエルとパレスチナという未だに争いを続ける二国の間に、憎しみを超えた心の交流があったという事実をどれだけの日本人が知っているだろう。

    良い本に出会えたと思う瞬間、その一つには普通に生活していたらなかなか知り得なかったことを感じることができたときがあるだろう。
    今日もまた間違いなく良い本に出会うことができた。

  • 「にもかかわらず」そんな人になれるだろうかと自問自答。

  •  自分の息子を殺した敵国の人たちに、息子の臓器を提供した―

     私はできません。でも、アハメドくんのお父さんは憎しみにも怒りにさえ呑み込まれない強さを持った人でした。考えられない強さで、常に紛争が起きている土地で、暴力という形じゃない戦い方をしています。

     臓器提供を決断した瞬間を読んだとき、私の心は病院にいるアハメドくんのお父さんのそばに飛んでいきました。
     戦後70年以上経つこの国で、戦争というものの僅かすら私は分かりません。
    けど、こんな風なことは決して起こっちゃいけないんだということは分かります。アハメドくんの臓器を受け取った子たちが、もしくはその子たちの子供、その孫たちが大人になる頃、アハメドくんのお父さんが戦った戦が終わっていることを願っています。

  • 憎しみ、悲しみの連鎖を絶ちきるには…。
    なんのために闘うの?その問いに答えはあるのか。

  • みんなで繋ぐ「平和のバトン」

    所蔵情報
    https://keiai-media.opac.jp/opac/Holding_list/search?rgtn=077963

  • 何世代も続く憎しみの連鎖を断つことは、簡単では無いけれど、
    アハメドくんの家族の決断は本当に尊い。
    現実は厳しいけれど、未来に希望のタネを残したと思う。

  • パレスチナで本当にあった話。

    難民キャンプに住んでいたアハメド。イスラエル人(ユダヤ人)とパレスチナ人が憎みあいながら暮らすこの地で、12歳のアハメドはイスラエルの狙撃兵に頭を撃たれた。はじめにパレスチナの地区病院に運ばれたが、もう手の施しようがないと言われてしまう。救急車で向かったイスラエル北部のハイファの大病院でも、助かる見込みはなかった。
    そして、アハメドの父は、病院から思わぬ提案を受ける。

  • 【読了メモ】(140831 16:10) 著・鎌田實、画・安藤俊彦、訳・ピーター・バラカン『アハメドくんのいのちのリレー』

  • 本当にあったお話。
    イスラエルに占領されているパレスチナ
    そこで12歳の少年が明らかに故意と見られる間違いで銃撃された。
    見間違えようもない至近距離で、持ってもいないおもちゃ拳銃を
    持っていた、、、とされて。イスラエル兵は2度も撃った。
    その子は脳死状態に陥った。そこでは脳死の状態ではすぐさま、
    臓器移植の手続きを受諾するか、親が聞かれるんだそうだ。
    そこで医師は、『アハメドの臓器はイスラエル人の子どもに移植される可能性もあるが?どうしますか?」と聞くと、父親は
    「かまいません、たとえイスラエルの子どもに移植されたとしても、臓器移植は平和を望む我々のシグナルだと思って欲しい」と。
    この話しを新聞で知った鎌田實(医師)はどうしてもこの父親に会いたいと願った。出来る事なら移植を受けたイスラエルの子どもとも。鎌田氏がこの話しを憎しみの大地にあたたかな渦を巻き起こす事ができなくても、ちっぽけでも良いからそこに波紋を起こす一石となるような本を書きたいと、絵本のような叙事詩のような生きるヒントのような童話のようなへんてこな本、現代の神話を書きたくなったそうだ。出来上がったのがこの命のリレー。ピーターバラカン氏の英訳と、安藤俊彦氏の絵とともに、素晴らしい一冊になった。

  • 鎌田實さんがテレビに出た際に紹介されていて、気になったので読んでみました。
    誰よりも平和を愛し、広大に広がる外の世界を夢見ていた少年アハメド君が敵国の兵士の銃弾で死んでしまう。
    2発目がなければ死ななかったかもしれない。その2発目は故意だったのではないか。読んでいて辛かったです。
    脳死と判定されたアハメドくんの父に臓器移植を提案する医者、その提案をうけ臓器移植することを決断した父、臓器の提供を受けた女の子。
    それぞれの思いが子供向けの言葉で書かれていて、簡単な言葉だからこそ深く刺さってくるような気がします。
    様々な人種、宗教がありそれぞれが争う社会に生まれ、平和を願う子供が沢山いる。もっと外国のことに目を向けなければと考えさせられました。
    とても明るく鮮やかなイラストなので子供にもぜひ読んでもらいたい1冊です。

  • ★★★★☆
    パレスチナとイスラエルの紛争の中で、一人のパレスチナの少年がイスラエル軍からの銃弾に倒れた。
    父親は医師に臓器提供の提案をされる。しかし、提供する側は相手を選べない、イスラエルの子どもに移植される可能性もあると。
    武器を手に取るのではなく、迷いながらも命を助けることで、平和を手にするための戦いをはじめた。
    (まっきー)

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著者プロフィール

1948年、東京都生まれ。1974年、東京医科歯科大学医学部卒業。1988年、諏訪中央病院院長に就任。2005年より同病院名誉院長。チェルノブイリ原発事故後の1991年より、放射能汚染地帯へ医師団を派遣し、医薬品を支援。ウクライナ避難民支援にもいちはやく着手。2004年からイラクの4つの小児病院へ医療支援を実施、難民キャンプに5つのプライマリ・ヘルス・ケア診療所をつくった。国内でも講演会、支援活動を行う。

「2025年 『人の名前が出てこなくなったら鎌田實の逆さま言葉』 で使われていた紹介文から引用しています。」

鎌田實の作品

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