日本を捨てた男たち フィリピンに生きる「困窮邦人」

著者 :
  • 集英社
3.61
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本棚登録 : 475
レビュー : 87
  • Amazon.co.jp ・本 (296ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087814859

作品紹介・あらすじ

居場所を失った日本を捨て、彼らはフィリピンへ飛んだ。待っていたのは究極の困窮生活。しかし、フィリピンは彼らを見捨てなかった。2011年第9回開高健ノンフィクション賞受賞。

感想・レビュー・書評

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  • いろいろ考えさせられる。良い本でした。

  • 凄い、圧倒された。日本を離れ、フィリピンでホームレスのような生活を送っている数名を追ったルポ。
    誰も彼もどこか狂っている、単純に言ってしまえば知能に障害が多少あるのだろう。しかしそれを理由に彼らを責める事は出来ない。恐らく日本でいたならば生活保護なり、国家の福祉のセーフティネットに引っかかり最低限の生活は出来たのだろう。
    彼らは異国の、途上国の、フィリピンにいるのだ。その為に公的な支援を受けられずにいる。その彼らを支えているのはフィリピンの人々である。本書の中で触れられていた人々は決して経済的に豊かではないにも関わらず、同じ最底辺にいる彼らを支援している。中には言葉も通じず、感謝もしない彼らを。これが仮にフィリピンに根付いたキリスト教に基づく「隣人愛」ならばなんとも美しい。私にはキリスト教の「愛」とフィリピン人の生来の温かさによるものだとは思うが素晴らしい。
    しかし一方で日本大使館は税金で彼らを救う事は「自己責任」で海外に来て放蕩した結果であるから救えないという。日本で生活保護を受けているフィリピン人世帯が4万人との記事を見たが、日本人としてやっている事があべこべでは?今後日本政府による困窮邦人の救済をして頂きたい。

    本書はテーマが重く、救いのない話でばかりで読後感はあまり良くない。しかし著者の力量と熱意を強く感じるルポであった。

  • フィリピンでの「困窮邦人」に関するドキュメンタリー。
    開高健ノンフィクション賞を受賞しているだけあって、一気に読ませる、
    素晴らしい本でした。

    様々な理由から日本を捨てて、フィリピンに移り住み、そこでホームレスや拘留者や寝たきりになってしまった日本人たち。
    それぞれのバックグランドから経緯、現在までを丹念に追っていて、非常に迫力とリアリズムが溢れるドキュメンタリーになっています。

    日本を捨てて、フィリピンに渡った理由は、それぞれ異なっており、ある人はフィリピンパブの女性を追っかけていった場合もあれば、偽装結婚にだまされた人、日本での借金から逃げ出した人、大金を持って渡りながら結局、文無しになってしまった人、きっかけは様々です。

    キリスト教が広まっており、困っている人は助ける、というフィリピンの国民性もあるようですが、それに甘えながら困窮していく日本人、人との繋がりが無くなっている日本に捨てられた日本人、一度そうなった人を二度と受け入れない在日の日本人、様々な姿が丁寧な取材で丹念に浮かび上がってきます。

    様々な想いから、つい、一気に読み上げてしまいました。この作品は、表現は悪いですが、面白いです。

    一方で、この作品にのめり込むj、私自身の気持ちにも考えさせられるところがありました(作者も最後に書いていますが・・・)。

    困窮しどうしようもない状況になった彼らに対する憐憫の情なのか、だからこういう奴等はダメなんだという批判の気持ちなのか、こんな風にはなりたくないなという醒めた気持ちなのか、困窮した彼らを知って現在の自分に優越感を感じているのか、繋がりが無くなった日本という国への批判の気持ちなのか・・・
    読み進める中で、正直、様々な自分の気持ちがありました。

    自分の中での結論はありませんが、この様に色々と考えさせられる作品こそ、おそらく優れたドキュメンタリーなのだと言えるのだと思います。

    是非、ご一読を。

  • フィリピンでホームレスになっている日本人を多数追ったノンフィクション。

    フィリピンパブで好きになった女を追いかけて一文無しになったとか、借金から逃れるために逃げたとか、サンプルが全ていわゆるダメ人間。
    「会社からドロップアウトして何か行動を起こす」みたいな話は大概成功例ばかりが目に付く一方で、この本はどうしようもなく失敗しているケースを見られる点で興味深い一冊です。

  • 本書は第9回開高健ノンフィクション賞受賞作だそうです。フィリピンクラブに行ったことをきっかけに「無一文」にまで転落し、それでも現地で生き続けている「困窮法人」たちの実態を追ったものです。重いです。

    僕もかつて1度だけ東京は錦糸町にある某フィリピンクラブにて酒を飲むなどのことをしたことはありますが。幸か不幸かはわかりませんけれど。ここで取り上げられている5人のような運命の歯車を狂わせることはなかったようです。ここで取り上げるのはフィリピンにおいて文字通り「一文無し」と成り果て、それでもフィリピンの社会から見捨てられることなく、何とか命をつないでいる5人の人間の物語です。

    そのどれもが壮絶といえば壮絶で、僕はいったことがないからそんなに詳しくはわかりませんけれど、フィリピーナを追って、文字通り「何もかも捨てて」フィリピンに渡航し、結婚して子供を持ったはいいものの、金銭がらみで不和となり、やがて女性とも別れ、住まいをを転々とした挙句に教会に寝泊りするようになったものや、日本で借金を作った挙句にフィリピンに「飛んで」きて、にっちもさっちも行かなくなったもの。さらにはフィリピンの地で病に倒れ、現地のボランティアに介助を受け、体の半身が麻痺しながらも、なお死ぬことができずに「生きて」いる人間や、長年にわたって家と会社を往復するだけの人生を送ってきた男がフィリピンパブに行ったことをきっかけに、文字通り妻子から何から捨てて、退職金を抱えてフィリピンに渡航し、現地で「少年に戻った」として青春をやり直すものなど。そのどれもが強烈過ぎて、読んだ後に頭が少しだけ朦朧となってしまいました。

    ここに出てくる人間の大半は日本にいても周りの人間、特に親や親戚に不義理や迷惑をかけ倒して国内にも自分の居場所が無く、帰るに帰れない姿が延々とつづられている場面を読んでいると、自分の「恥じ多き生涯」の中にも少なからず心当たりがあって、彼らの存在が自分にとっての「鏡」であったのかもしれません。

    筆者は取材を重ねるうちに彼らの境遇に同情しつつも
    「だからあなたたちは困窮するんだ」
    という二つの相反する思いに苦悩したそうです。ここに書かれてあることはおそらく大半の方は縁が無いことなのかも知れませんが、彼らの人生を見ることで、日本の抱えている矛盾や、日本とフィリピンの持つ関係。さらには南国特有の「やさしさ」と世界有数の経済大国ながら日本の持つ「冷たさ」や「息苦しさ」が浮き彫りになってくるようで、読みながらいろいろなことを考えさせられました。

  • 日本の無縁社会と困窮邦人との関連性を考える視点が面白かった。

  • こう書くのは気が引けるが、本当にどうしようもないクズしか出てこない。だが、そんな人たちと自分は何が違うのだろうかと考えると実は紙一重なのではないかと思えてくる。「困窮法人」に成り下がってしまう理由は人それぞれだが、話をよくよく読んでいくと共感できてしまう部分が多い。ものすごく「人間」を感じるのだ。自分が同じような状況だったら、もしかしたらおなじ選択をするかもしれない…。そう考えると、まったく違う次元の人たちの問題とはたとえ思えない。「こんな人たちの為に税金を使うには、説明責任が果たせない」という人がいるかもしれないが、そんなことを言う人が、いったいどれだけ彼らと違うのだろうか?

  •  フィリピンではほとんどの殺人事件は即迷宮入り。裁判所、弁護士、警察官すら金で動く。日本に生まれて良かった・・はずなのに日本を捨てた男たちのお話。

     よく似た話が5回繰り返される。誰かの話が誰かと混同してくる。印象に残った男は高卒、工場と往復生活30年。退職金4800万円。許しを請う手紙を書いてくれる健気な妻。休日にはパチンコとゴルフ三昧。羨ましい人生なのだが、彼は婿養子だった。

     もう一人、学歴詐称の見栄話をする寝たきりになった男。大学は卒ていなくても、詐称しても信じるくらい博識な人物は珍しいし、逆差別かもしれないが好感を持ってしまう。

     大学卒業後、連絡を取れなくなった友が2人いる。いずれも流転の人生を歩んだと推定される。タクシー運転手でもやっているのか?ハガキにメールアドレスを書いて同窓会をよびかけたが、いずれも返事は未だにない。

     友人らはフィリピンにいるのではないか。友人と男たちの物語を重ねて読んでしまった。

  • ★裏付け取材がある深み★日本の事件報道は基本的に警察発表の垂れ流しになる。捕まった容疑者から話が聞けないから、というのが理由だ。だがフィリピンでは捕まった人からも話を聞けるので、裏付け取材が基本になっているという。それがこのルポを重層的にしている。

    フィリピン人ホステスもしくは偽装結婚の斡旋業者に騙され移住して置いてきぼりにされる人、日本での借金から逃亡してきた人。日本での非正規や単調な労働の閉塞感からみると、フィリピンは底抜けな解放感にあふれている。移住したのちに金を失い、困窮する日本人の実態や語りだけでも十分に興味深い。

    だが、彼らは嘘をつく。嘘を暴くためではないが、日本で家族や周辺の人を訪ね、真実を確認する。大学の卒業名簿にまであたったのがすごい。困窮邦人の話には、フィリピンにいる日本人として見栄が常について回る。自業自得といえばそれまでだが、そうせざるを得なかった日本の息苦しさの合わせ鏡なのかもしれない。貧しい日本人を助けてくれる現地の人の優しさは、東南アジアの中でも独特なのだろうか。

  • フィリピンパブにはまらない事!

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