エンジェルフライト 国際霊柩送還士

著者 :
  • 集英社
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レビュー : 267
  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087815139

作品紹介・あらすじ

運ぶのは遺体だけじゃない。国境を越え、"魂"を家族のもとへ送り届けるプロフェッショナルたち。2012年第10回開高健ノンフィクション賞受賞。

感想・レビュー・書評

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  • ママが遺体にキスできるように。それが彼らの仕事。
    国境を越えて遺体を家族のもとへ送り届けるのが国際霊柩送還士の仕事。日本初の専門会社で働く人々と遺族の取材を通して、筆者は人が人を弔うことの意味、日本人としての「死」の捉え方を知る。
    Amazon より

    何度も海外には行っているし長期滞在したこともあるが、海外で死を迎えたらどうやって日本に帰ってくるのか、今まで考えたことがなかった.こんなに本人や遺族のことを考えて、迎える人々がいるということを知らなかった.頭のどこかで自分は死なない、と思っていたのだ.
    生きていてさえ、海外から日本に帰国するには時間がかかる.まして、命がなかったら、、、その間に腐敗が進むのは自然の理.国によってはエンバーミング(防腐処理)されていない場合もあるという.そんな状態で日本に到着した遺体は、目も当てられないだろう.
    日本人に特有なのかは分からないが、我々は体や骨が帰ってくることを望むことが多い.この本を読んで納得することは、遺体と対面してきちんとお別れをして、「死」を受け入れることができる、ということ.笑って送り出した人が、そのままの姿で帰ってきて、でも魂がそこにはないことを確認して初めてその人の「死」を受け入れることができる、ということ.
    あらためて、異国で死ぬということについて考えた.自分が海外で死んだら、エアハース・インターナショナルのように、人の死と真摯に向き合っているところにお願いしたいと思った.

    引用のところにも書いた、人骨がタッパーに入って帰ってきた話.この部分に、海外で死ぬということをもっともリアルに感じた.

  • 図書館より。
    ずっしりと重たい内容。
    こういった職業の方がいること事態、知らなかった。

    死は決して遠いものではない。
    いつかは自分も死ぬんだし、身近な人もいつか死ぬ。
    いつから死を隠すようになったのか。
    弔いは生きていく上で必要なことだと改めて感じた。

    国際霊柩送還士。
    亡くなった方、遺族に対する心遣いに頭が下がる。
    忘れ去られるべき人だとしても、覚えておきたい。

  • こういう仕事があるのか。。というか、考えたらあるよな。海外で亡くなる人もいるのだから。
    遺体に最大限の敬意を払ってくれる会社。当事者でなくても感謝の気持ちがわいて来ます。

    • だいさん
      ラジオで聞いたことがありますが、手続きとか大変そうですね。
      ラジオで聞いたことがありますが、手続きとか大変そうですね。
      2014/08/20
    • reader93さん
      だいさんコメントありがとうございます。確かに手続きも大変そうですね!
      だいさんコメントありがとうございます。確かに手続きも大変そうですね!
      2014/08/21
  • 国際霊柩送還とは、言葉では馴染みがないが読んで字のごとく、海外で亡くなった日本人の遺体や遺骨を日本に搬送する、また日本で亡くなった外国人の遺体や遺骨を祖国に送り届ける仕事だそうだ。

    最近、テロや事件、事故に巻き込まれて海外で亡くなる人のニュースをよく見聞きする。一昨年の東日本大震災やその他の事件、事故などでも、同様に日本で亡くなった外国人もいるはずだ。
    考えてみれば、形はどうあれ、そういった人々は最後は祖国へと帰っていくのだ。その国際霊柩送還を行う日本初めての専門会社として設立されたエアハース・インターナショナルを取材し、まとめたのが本書。

    遺族の言葉、遺族と遺体の対面など、実際の場面は涙なくしては読めず、またエアハースのスタッフたちのプロフェッショナルさ、亡くなられた方々やご遺族への真摯な態度、思いにはただただ敬服するばかり。
    「忘れ去られるべき人」の果たす役割、日本人の死生観、弔うということについてなど、人の死というものについて改めて考えさせられた深い作品である。

    ただ、どうにも全体として散漫で、ルポルタージュとして物足りなさが否めない。
    たとえば外国との比較がもっと具体的にされていてもいいような気がするし、著者の個人的な思いが強すぎて、エアハースの取材なのか自分自身のカタルシスのためなのか後半混乱している感じ。
    非常に尊厳深い題材が取り上げられているだけにそこが残念。

  • 「外国で死んでしまった場合、遺体を運ぶには数千万円の実費がかかるんですよ」
    向こう見ずで無計画で、取り敢えず飛び出しちゃえ!という気持ちで世界中カバン一つで出かけてしまう私が、保険だけはきちんとかけているのは、最初の渡航前に知ったこのショッキングな事実のためです。

    私の勝手を許して、貧困地域でも紛争地帯でも送り出してくれる親に、万に一つのとき、悲しみだけでなくそんなもの背負わせられない。そう思い、今でも短期の、比較的安全な国への渡航でも、保険だけはかけていきます。

    けど、こんな膨大な費用のかかる、つまり膨大な手間のかかる悲しい仕事は、どんな形で誰に担われているのだろう。
    そんな長年の疑問に答えてくれる書籍の登場を知り、やっと読むことができました。

    作品の前半、この仕事に携わる方々の思いや姿勢に触れ、心ない処置を受けたご遺体の状況をそのまま描き出した描写を見たときは、深い息が漏れました。
    探し続けていた人に、やっと会えた、そんな気持ちです。

    海外から遺族の元へご遺体を運ぶ仕事にスポットを当てたノンフィクション。
    その言葉からイメージされる、遺族の悲しみを乗り越えた末の感謝や、明るい未来を彷彿とさせる逸話はありません。
    ただ、ひとりひとりの横顔をじっと見つめているような、謙虚な視点が嫌味でなく、綺麗に飾らないそのままが伝わってくるようでした。


    ただ、個人的には後半はやや冗長に感じました。
    彼らとの時間を通し筆者が感じた死や死生観が長く続き、彼女の想像のフィルターを通した他者の思いが多弁されるようになってくると、筆者の泣き言を聞かされているようで、何がなんだか…

    正直、死について語るのは本当に難しい。作中でも言及されていますが、ひとつひとつの死は全部違うし、受け取る人によっても違う。
    だからこそ、前半の死に向き合う人の姿をそのまま描き出すという手法が、より個々の読者の思いをえぐりだし、良かったんじゃないかと思います。

    書きたい思いや伝えたいことはあるのでしょうか、それがはたしてこの作品を半分読んできた読者の内、何割くらいに響くのか。
    私は少数派かもしれませんが、個人的には残念でした。
    また、昨年の山本さんの悲しい事件に触れる流れが少しだけ唐突で、同じ物書きとして避けられなかったのはわかる気がしますが、けれど、本編の最後のページを、他者の言葉で締めてしまうのは、すごく残念でした。
    どんなに彼女の言葉が大切なことだとしても、自分の作品は、自分の言葉で閉じて欲しかったと思います。

    最後に、私がどうしても彼女の思いと共鳴できなくなってしまったのは、おそらくこの言葉です。
    (以前部下をエアハースに送還してもらい、その後個人的にも付き合いを持っていた人が亡くなり、送還されてきた場面)
    「だが、こんなふうに自分が運ばれて戻ってくるとは、彼も思っていなかっただろう」
    あるいは、50代を迎えた母について、その母の葬儀をいつかあげるという意識を、若者の多くは持ったこともないだろうというような記述もありました。

    個人的にすごく違和感があります。
    2007年、初めて単身で海外に渡ってから、私の中では、死の恐怖はずっと背後にあります。
    いつどこで死んでも、そこに行ったことを後悔しない選択を。行かなかったことを後悔しない人生を。
    そして、できれば、私の死は悲しんでも、「あそこへ行かせなければ良かった」とは思わないでいてほしい。
    そんな風に考えて、いつも飛んでいます。
    自分の部下が亡くなり、日本へ送られていくのを見ながら、彼が自身の死を意識しなかったかなんて、誰にもわかりません。
    わかりませんが、同じく日本を離れ見知らぬ土地に身をおく人間として、何度も意識しているのではないかと、私は想像しています。それは、慣れ親しんだ土地を離れて生きていく人間の、覚悟です。
    本当のところは彼にしかわかりません。
    だけど、だからこそ、感傷的な気持ちで「思っていなかっただろう」とは簡単に書かないでほしい。
    耳馴染みのある、舌に載せやすい表現だからこそ、違和感を感じました。

    人の死に向き合って生きている人は、実は日常の会話にのぼる頻度からは考えられないほど、かなりの割合存在していると、私は思っています。
    だからこそ、向き合い始めた心が「自分だけ」と潰れてしまわぬよう、こんな風に、向き合っている人達の存在や、思いを感じられる作品が手を伸ばしやすいところにあるといいな、と思います。

    他の人に勧めるかと言われたらそこまで満足度は高くないですが、読んで損したという気持ちもないので、中間点で。

    ここからは、もう少し、自分で意識してこういうお仕事や事柄へのアンテナを張っておきたいですね。

    私が安心して(?)海外へ飛べるのは保険会社と、エアハースさんのような役割のみなさんのおかげです。脱帽。
    そして、無念の中で帰国された皆さん、あるいはそれも叶わなかった皆さんに合掌。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      素晴しいレヴューです!拍手。。。
      素晴しいレヴューです!拍手。。。
      2013/05/11
  • この本を読まなければ全く知りえなかった遺体搬送の実態。
    遺体を遺族に届けると言う特殊な職業とは一体どう言うものなのか、きっとこの本が出版されたことによって読んだ読者は、色々な思いを胸に抱いたと思う。

    無知と言う物は本当に怖い。
    ビジネスの道具として遺体がずさんに扱われている今の日本の現状。
    でも実際この本を読むことによって、死んだ人との距離のとり方や、どういった業者がずさんであるかどうかを知った。

    広く大題的に広報活動をして沢山の人に知ってもらった方が良いと言う気持ちにはならなかったけど、ひとりでも多くの人がそっとこの本をとって静かに胸のうちに溶け込ませてほしいと思った1冊だった。

  • 図書館で。紙つなげが面白かったので他の著作も読んでみようかな、と借りてみました。

    国際霊柩便、とでも言うんでしょうか。こういう表には中々表には出てこない仕事に携わっている人達も居るんだなぁと初めて知りました。読んでいてどのように亡くなられた方に対しても人としての礼節をもって手続きされる態度に頭が下がる思いです。死体を物として扱うのではなく、死者として、人として扱う。中々出来る事ではないのだろうなぁ。

    結婚式場で働いていた親戚が葬儀場に配置換えになった際、ご不幸を扱うのはイヤだとその会社を辞めてしまったことを思いだしました。やはりまだ死を日常的に取り扱う仕事に就くのは抵抗があるのかなぁ。あるんだろうなぁ。
    でもそういう仕事だからこそきちんと死者や遺族にきちんと向き合える方にお任せしたいなぁと切実に思いました。

  • 国際霊柩送還士の仕事から見えてくる生と死、弔うことの意味などが書かれたノンフィクション。読みやすかったが、生と死について考えさせられる深い内容だと感じる。日本で亡くなった外国人、外国で亡くなった日本人がその後家族の元へ引き取る方法、など為になる。「死はすぐ隣にあるもの」、「忘れ去られるべき存在」との思いから、誇りを持って仕事をするエアハース社の社員方々に頭が下がる思いだ。国際霊柩送還士の仕事を知れて良かった。山本美香さんの「この瞬間にもまたひとつ、大切な命が奪われているかもしれない」が強く印象に残る。

  • 忘れ去られるべき人たちのことを多くの人の心に残す本

    たまたま表紙を見て、読んでみたいなと手に取った本。

    開高健ノンフィクション賞受賞作でした。受賞作一覧を調べようと思っていたのでちょうど良かったです。

    海外で亡くなった方がどうやって取り扱われるのか。どんなビジネスが介在してくるのか。その逆もしかり。葬儀に関しては、「おくりびと」の映画を見たくらいの知識しかありませんでしたので、ためになりました。

    知識的にも有益なものがありましたが、内容的には心情を深く揺さぶるもの。「エアハース・インターナショナル」で働く人の仕事を丹念に描きながら関わる死者とその遺族の話を伝えてくる。海外で亡くなるということは、それから時間が経っても遺族にとってはナーバスな話で取材が難航する。その部分も、作者佐々さんの死の体験を交えながら書かれていきます。

    この職業についた人たちは、遺族と一時、物凄く濃密な時間を過ごします。家族の遺体を送還してくれるだけではなく、出来得る限りすべての事を遺族にして差し上げ、支えになります。それだけに、この人たちを見ると、思うと、死がどうしても思い出されてしまう。なので、ある一定の期間を過ぎると、忘れられるそうです。それを社長の利惠さんは、

    私の顔を見ると悲しかった時のことを思い出しちゃうじゃん。だから忘れてもらったほうがいいんだよ
    と話します。

    そんな忘れ去られるべき人たちの事を、本に書いて下さったおかげで、私も、他にも多くの人が、こんな人たちがいるんだと心のどこかに留め置くことが出来ると思います。

    ノンフィクション作品の価値を改めて認識し、佐々さんの著作を調べると石巻の製紙工場の東日本大震災後の本が新しく出版されておりました。
    (紙つなげ! 彼らが本の紙を造っている)

    是非、そこで生きる人たちの生きざまを見させてもらいたいと思いました。

    海外旅行の際は保険をきちんと確認しよう。

  • こうして知らないところで知らない仕事をしている人たちがこの社会を支えているのだなぁ。
    どんな遺体を手がけてもおれない心を持つ人もいるというのが驚きだった。
    心の防衛反応が働いているのだろう、と書いてあったけど…。
    心を単純に強い、弱い、とは言えないと思うけど、折れにくい心には鈍感力が必要なのかな。
    ただこのエアハースという会社の人たちは人の気持ちを慮ることができるのに、潰れない心を持っているというのがすごいと感じた。

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