メモワール 写真家・古屋誠一との二〇年

  • 集英社 (2012年12月14日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (296ページ) / ISBN・EAN: 9784087815177

作品紹介・あらすじ

写真家の“呪われた眼"を描くノンフィクション
なぜ、写真家は、自殺した妻・クリスティーネの最後の姿をカメラに収め、発表し続けるのか? 写真家・古屋誠一の壮絶な人生を写真家・小林紀晴が描く渾身のノンフィクション。

感想・レビュー・書評

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  • 9年ぶりに読んだ。
    また後日感想を書こうと思う。

  • 数章読んで、古屋さんの前では人は孤独になるのではないか、と思った。
    そして、読み進めるにつれ、その感覚は間違いではなかった、と感じた。

    妻のノートを怖くて読めない。
    その気持ちもわかる気はする。
    それでも、なんだかその臆病さ・繊細さを、身勝手さのようにも感じてしまう。
    ずるい。
    妻を受けとめるだけの器がない、背負えない。
    自分のことだけで、余裕がない。
    そういった風にも見える。

    究極的には、人はそれぞれの世界を持っているのだから、古屋さんは正しいのだろう。
    妻の世界は、妻の世界として完結させ、人目にさらさずに静かに昇華させてあげればいいのだろう、と思う。
    しかし、彼は世に公表した。
    自分の作品として、妻の世界を取り込んだ。
    そこに、どうしてもずるさやエゴも感じてしまう。
    芸術家というのは、本当に様々なものを犠牲にして、自分の世界や真実(と思われるもの)を築こうとする。

    しかし、その世界は、結局は製作者の世界でしかありえないのだ。

    私の夫は芸術家でなくてよかった。と思える一冊だった。

  • 生や死を自分の表現にしてしまうことについて写真家が考えたこと

  • アジアン・ジャパニーズで知られる写真家・小林紀晴さんが、20年かけて写真家・古屋誠一さんについて書いた一冊。

    写真家・古屋誠一はオーストリアのグラーツに住み、写真家として活動をしていた。
    そこでクリスティーネと出会い、結婚し、長男をもうける。だが、幸せな日常は長く続かず、クリスティーネの精神が不安定になり、入退院を繰り返すようになる。
    そして、その数年後、クリスティーネは自宅のアパートから身を投げ出してしまう。古屋はクリスティーネの投身直後に地面に倒れている彼女の姿をアパートの階上から撮影した。
    そして、その写真を含むクリスティーネとの日々の写真を発表した。

    写真群には、健康で幸せそうなクリスティーネが、どんどん精神的に追い詰められていき、最期には亡くなってしまうのだが、その変遷が写し出されている。

    狂気を感じさせるオススメの一冊。

  • 古屋誠一は自殺した妻(オーストラリア人)の写真集を何冊も出しているらしい。
    このことに対する他の写真家とのやりとりもあったりする。
    悲惨な現場を撮影するのは、写真家の性らしい。

    p.51 藤原新也の書評集『末法眼蔵』 8Fアート740.4フ 市立
    p.282 スーザン・ソンタグ『他者の苦痛へのまなざし』 県立 8F一般070.1ソ 大学070.17So48

  • 複雑な思いに引き裂かれそうになる。
    一筋縄にはいかない。
    単純な「物語」にして理解した気になっているようでは、この人物に近づくことはできない。

  • 古屋さんの外国に一人何年も暮らしている根無し草の感じがとても伝わってくる。そして家族に障害者がいると周りの冷淡な目がいやで、家族だけひっそり塀に囲まれて暮らしたいという感覚、分かる気がする。また、この本でやっぱりアラーキーはすごいと思ってしまった。小林さんの本は面白いが、エンジンかかるまでちょっとページ数かかるね。

  • 古屋誠一氏の写真を初めて知った頃からずっと、どうにも気になる写真家で、謎めいていて、氏の写真を観ると気持ちがざわざわして、結局あまり後味の良い写真では無いのに観てしまう。
    その写真家を写真家の小林紀晴氏がどのような文章で表現するのだろうかと、タイトルをみてすぐにこの本の手に取った。
    じわじわと謎が解き明かされていく感じ。
    そういう想いでの作品の発表というのもあるんだなと思わされた。
    この本の最後に「エピローグ」としてまとめられた一章は、写真家全般における心理の矛盾や葛藤といったことで締めくくられており、その感覚はとても共感できた。

    やはり写真というのは、思想だとの確信が強まった。

    とても読み応えのある一冊で、一気に読み進めてしまったくらい惹きこまれる内容であったが、評価を行うことは控えたいと思う。

  • 感想はうまく言えない。
    ずっと忘れない一冊になると思う。

  •  最初は、興味本位で読んでいました。自分の妻の自殺体を写真に撮る、ってどんな人なんだ、という気持ちです。しかし、途中から見方が変わってきました。あれ、この人、この事を商売にしるんじゃないか、という事です。
     もちろん、小林さんはそんな事には、一言も触れていません。しかし、全体の流れとして、そう印象付けようとしている、と私は感じました。
     事件以降、新しい写真は、ほとんど撮っていないのに、どうやって生活しているのかな、とは誰でも思うことです。これまで撮り貯めた奥さんの写真を、年代の区切りや、順番を変えて写真集にして出版する。どの位、売れるのかはまったく分かりませんが、ある程度は売れているのでしょう。出版記念の個展は、頻繁に開いているようです。
     奥さんの手記も、亡くなってからも長い間読まなかった、とあるのも、ホントかな、と思ってました。モヤモヤしながら、読んでいたら最後の方で、写真評論家の飯沢耕太郎さんへのインタビューで自分の思いがすべて語られていました。
     「人に見せると救われるの?そう思っているの?」
     「自分でアルバムにまとめておいて、その日記を読み返して一生過ごせばいいわけであって。それを公にすることの意味が本当によくわからない。」
     私は、ここを読んで膝を打ちました。そうそう、そう思っていたのよ、と。まぁ、人が何でごはんを食べようと勝手なのですが、とても心に残る本でした。長年追いかけて、掘り起こした小林紀晴さんは、すごい人です。

  • 古屋誠一が精神の正常⇔異常の境にとても興味を持つようになった背景にあるのが、知的障害のある弟との存在も大きいようだ。
    白い目でみられていた弟をみつめながら”塀のなかで誰にもなにも言われずに暮らしたい”みたいな事を言っていたのが印象的だった。
    それは、知的障害、精神障害の家族が持つ思いとして共通したものだと思うから。

  • 久しぶりの小林紀晴。古屋誠一の写真集を買わねば、と思った。

  • 精神を病んで自殺した妻を写真に収め、記憶を写真として発表し続ける写真家古屋誠一。筆者との20年に渡る対話の中で浮かび上がる夫婦、家族の関係性。エピローグではパーソナルな事例から911、311における写真家の姿勢をリンクさせ、"写真を撮る"ことの本質に迫ったノンフィクション。深いです。

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著者プロフィール

1968年長野県生まれ。東京工芸大学短期大学部写真技術科卒業。新聞社カメラマンを経て1991年独立。アジアを多く旅して作品を制作する。また近年は日本国内の祭祀、自らの故郷である諏訪地域などを撮影している。紀行、ノンフィクション、小説なども執筆。近著に『まばゆい残像』『孵化する夜の啼き声』『深い沈黙』など。1997年『DAYS ASIA』で日本写真協会新人賞、2013年『遠くから来た舟』で第22回林忠彦賞を受賞。2021年に初監督映画作品『トオイと正人』で国際ニューヨーク映画祭、南京国際映画祭入賞。東京工芸大学芸術学部写真学科教授。

「2021年 『深い沈黙』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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