- 集英社 (2013年4月5日発売)
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感想 : 78件
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Amazon.co.jp ・本 (288ページ) / ISBN・EAN: 9784087815238
作品紹介・あらすじ
君に私の息子の最後の言葉を贈りたいのです。
親友を失った青年と、ある秘密を抱えた先生の間で交わされたメールを軸に織り成す、喪失と再生の物語。あの『悩む力』の著者が、苦難の時代を生きる若者たちに真剣に向き合った、注目の長編小説。
感想・レビュー・書評
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姜先生と大学生の男の子とのメールのやりとりでストーリーが進んでいく。
始めは頼りなげな青年が、姜先生に励まされつつ、また様々な経験を通じて成長していく。
死とは何か。改めて考えさせられる。
死者、とくに事故や苦しんで亡くなった方ほど、直視できずに目をそむけてしまう。
そして、できるだけ遠ざけてほしいと思ってしまう。
しかし、残された者として、死者に対してそのような向き合い方でよいのか。
そう問われているように思った。
残された者としてできることは何か。
それを考えることがすなわち弔いではないかと思った。 -
ガールフレンドの話になってから読むのをやめてしまった。
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久しぶりに時間をじっくりとり、ゆっくり読みたい本に出会った。小説-ではないと思う。
言葉ひとつひとつが今の自分の現状や思考に化学反応をおこし、自分自身に色々な事を問いかけ、自分の心と対話する。哲学書のような小説。親和力、過去・現在・未来、生と死、震災、愛すること、友情、人と人との出会い等...読む人それぞれが違う風景を心に描き、考えさせられると思う。そこに正しいとか、正しくないとかはないと思う。好きな作品です。 -
姜先生が息子さんを亡くしていることが最後に綴られる。姜先生の青年に対する真摯な文章に人柄を感じる。「メメント モリ」=「死を忘れるな」。死の中に生が含まれている。ゲーテの「親和力」や「隣り同士の不可思議な子供たち」を読んでみたくなった。”「心」と記されたフォルダの中にファイルをそっとしまった。””砂時計の上半分にはこれからやってくる未来があり、下半分にはすでに終わった過去の砂がたまっている。未来の砂は上半分と下半分をつなぐ細いくびれの部分を通って下に落ち、過去となる…”
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悩み多き若者たちが生と死について考えるのを読みながら、一緒に考えた。
身近な人の死を経験するとどうしても死について考えがちだが、生きているから死があるので、どう生きるかを考えていかなければいけないと実感した。 -
フィクションか?ノンフィクションか?
いずれにしても、大学生くらいの年代の人に読んで欲しい -
最初は姜さんノンフィクションだと思って読み始めたから、姜さんのナルシストな感じが引っかかったけど、
「先生」と「僕」のフィクション小説だと気づくと
世界に入り込めた。夏目漱石「こころ」に似てるけど、もっともっと噛み砕いて離乳食みたいにしてくれた、甘く優しい哲学 -
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良かった。架空の話にしては、水死した人の描写がリアル過ぎるぐらいで、死と生が隣り合わせというより一体だという事が実感できた気がする。
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大変によかったです。構造も美しい。
息子さんの死、震災、漱石の『こころ』、西山君のカタルシス、著者本人のカタルシス、ゲーテ『親和力』、「自然」と「人間」の対比、生と死、いや死と生……。萌子さんみたいな人って誰もが見ているんでしょうか。
2016.4. -
西山くんは、姜さん自身と亡くなった息子さんを投影した人なんだな。大学生である西山くんのピュアさと真面目さに少し驚きながら読み進める。恋の悩み、親友の死、震災、死とはなんだ?自分のしていることって何の意味がある?
そんな悩みに姜先生は答え続ける。
私だったら何て回答したかな。
親友の死に対して西山くんの周りの人間は、それはそれ、今は今、と言う。近しい人の死を乗り越えることの、部分的な答えがそこにあるとおもう。前に進むことを後押しするのは、何気ない他人の言葉だったりする。
姜さんは、こうして書かずには自分も前に進めかった。子供が先に死ぬことほどこの世で辛いことはないだろう。子供の死ぬ程の苦しみを何故親は分からなかったのかと、責めることは簡単だ。しかし自分を一番責めているのは自分であり、たとえ何かしらの答えを手にしたとしても、出口のない場所を自分の心は彷徨い続けていることに、ふと気付く時、とても切ないだろう。 -
ノンフィクションのようなフィクション。
文中に「カタルシスになる」とありが、著者自身のカタルシスになった本かもしれないです。
答えのないものに真摯に向き合って考えている姿勢は好きです。 -
青春に憧れを持つ(?)初老の男性が大学生の青年にアドヴァイスを送る話。
作品の根底には人間の死生感が見てとれるが、個人的にはありきたりな印象を受けてしまう。結局、言っていることは死は無駄ではないと言うことに尽きると思う。
ゲーテやトマスマンなどの古典を読もうかと言う気にはなる。 -
生きるとは何か、死とは何か。
筆者は息子さんを亡くしたことを、学生が友達を亡くしたことで気持ちの整理がつかず先生に相談するということで自分も頭を整理しているような気がする。
ゲーテの「親和力」は読んだことがないので、演技のくだりは感想は書けないが、
震災があったことで学生が遺体収集ボランティアをすることでいろいろな「死」の意味を体験して考えかたも変わってきている -
夏目漱石の「三四郎」を思い出した。主人公の立ち位置は若干違うみたいな気はするけど。
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TVで偶然見て、興味を持って購入したまま積まれていた。
一日一冊本を読むと決め、本棚を漁っていて出てき、読んだ。
考えさせられる。
その一言に尽きた。
生とは。死とは。
自分自身、死に関していろいろ考えることがあったので、かなり心に響いた。
自分の考えの浅はかさ。
生きるって難しい。
著者プロフィール
姜尚中の作品
