無戸籍の日本人

著者 :
  • 集英社
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感想 : 32
  • Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087815955

作品紹介・あらすじ

全国に1万人以上いると推計される「成年無戸籍者」たち。過去13年にわたり1000人以上の無戸籍者を支援してきた著者だから描けるリアルな実態と、彼らが生まれ続ける背景を深く掘り下げた問題作。

感想・レビュー・書評

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    内容(「BOOK」データベースより)
    『「虐待」「いじめ」「所在不明児」「少年犯罪」…子どもをめぐるさまざまな事件とも深く関わる無戸籍問題。自らの子も無戸籍となった経験を持ち、過去13年間に1000人以上の無戸籍者とその家族を支援し続けてきた著者だからこそ書くことができたノンフィクション!』

    『【現代の日本に、戸籍を持たない人が1万人以上いることを知っていますか?】
    何らかの理由で出生届が出されず、存在が行政に登録されないまま、もしくは把握されないまま「無戸籍」で生きている人たち。それが「無戸籍者」です。
    なぜ、無戸籍になってしまうのか?
    なぜ、無戸籍者は生まれ続けるのか?
    なぜ、この状況が解消されないのか?
    自らの子供も法の規定により無戸籍となった経験を持ち、それ以来13年にわたって無戸籍者とその家族たちを支援しつづけてきた著者だからこそ書くことができた
    無戸籍者たちが生きてきた厳しい状況と無戸籍者が生まれ続けてしまう原因と問題の背景を深く掘り下げたノンフィクション作品、それが本書です。
    著者もスタッフとして加わり、無戸籍者たちのリアルな姿が広く世に知られるきっかけとして大きな反響を呼んだNHK『クローズアップ現代』《戸籍のない子どもたち》は、2015年「貧困ジャーナリズム大賞」を受賞しました。
    本書では、番組では紹介できなかった無戸籍者たちの思いや番組放送後に無戸籍者それぞれにおきた状況変化についてもくわしく書いています。
    無戸籍問題が起きる要因とも関連があり100年以上改正されないままになっている民法の離婚後再婚期間については、
    先日、最高裁判所が違憲判決を出しましたが、無戸籍問題の根本的な解決には、まだまだ超えなくてはいけない多くのハードルがあります。
    「貧困」「虐待」「いじめ」「所在不明児」「少年犯罪」…
    子どもをめぐるさまざまな問題にもかかわる無戸籍問題。
    解決への道は、何よりもまず、現実を知ることからはじまるのです。』
    (「集英社」サイトより▽)
    https://www.shueisha.co.jp/books/items/contents.html?isbn=978-4-08-781595-5


    冒頭
    『 はじめに
    東京・巣鴨駅を通るたびに、この風景を「彼ら」も見たのだろうか、と思う。
    「彼ら」とは1988年に「巣鴨子ども置き去り事件」としてその存在が明らかになるまで、西巣鴨のマンションの一室で身を潜めて生きてきた、4人の子どもたちのことである。
    「彼ら」は出生届が出されないままの無戸籍児だった。母親が子どもの数を偽って部屋を借りていたため、外出することも禁止されていた。
    母親の失踪後、子どもたちだけで暮らしていることを知った大家が警察に通報。その調査の中で2歳の三女が14歳の長男の友だちに折檻されて死亡、遺体が雑木林に捨てられていたことが発覚する。
    2004年、この事件をもとに是枝裕和監督は『誰も知らない』という映画を製作した。』



    目次
    はじめに
    第1章 戸籍上「存在しない」人たち
     消えた”母たち”――雅樹の場合Ⅰ
     自分の子どもが「無戸籍児」に…?――私の場合
    第2章 「無戸籍者」が生まれる背景
     裏切り――冬美の場合Ⅰ
     日本人の証明――雅樹の場合Ⅱ
     幻の出生証明書――百合の場合Ⅰ
    第3章 「無戸籍」に翻弄される家族
     影に帰った無戸籍者――明の場合Ⅰ
    「無戸籍」と傷だらけの家族――ヒロミの場合
     きょうだいの運命――冬美の場合Ⅱ
     手がかりを探して――雅樹の場合Ⅲ
    第4章 動きだした無戸籍者たち
     個人の問題から社会問題へ
     姿を現す無戸籍者たち
    「善意の」加害者
     日の当たる場所へ
    第5章 政治の場で起きたこと
     国会の動きとつぶされた改正案
     私が政治家になった理由
     我妻榮の宿題――託された民法改正
    第6章 「その後」を生きる無戸籍者たち
     つながる無戸籍者たち
     立ちはだかる「さらなる壁」――春香の場合
     スーツに袖を通して――冬美の場合Ⅲ
     交差する生と死――百合の場合Ⅱ
     突然のショートメール――明の場合Ⅱ
     灯り続けるロウソクの火――ヒロミの姉・京子の場合
    「僕」が消える前に――雅樹の場合Ⅳ
    終章「さらには……」のその先に
     星のない空を見上げて
    おわりに
    無戸籍問題に強い専門家連絡先一覧


    『無戸籍の日本人』
    著者:井戸 まさえ
    出版社 ‏: ‎集英社
    単行本 ‏: ‎384ページ
    ISBN‏ : ‎9784087815955

    メモ
    ー抜粋ー
    民法第772条(嫡出の推定)
    1.妻が婚姻中に懐胎した子は、夫の子と推定する。
    2.婚姻の成立の日から二百日を経過した後又は婚姻の解消若しくは取消しの日から三百日以内に生まれた子は、婚姻中に懐胎したものと推定する。

    民法第733条(再婚禁止期間)
    1.女は、前婚の解消又は取消しの日から六箇月を経過した後でなければ、再婚をすることができない。
    2.女が前婚の解消又は取消の前から懐胎していた場合には、その出産の日から、前項の規定を適用しない。

  • ●成年無戸籍者と言う存在。出生時に親が届を出さず、そのまま20歳を過ぎた人。義務教育すら満足に受けてない場合が少なくない。身分証明がないため働く場所も限られ、給与も低く、常に貧困や暴力と隣り合わせで生きざるを得ない。

  • 知らなかった世界。自分が誰から生まれたのかはみんな知りたいよねぇ

  • ノンフィクション

  • 2018年7月19日読了

  •  
    ── 井戸 まさえ《無戸籍の日本人 20160104 集英社》
    http://booklog.jp/users/awalibrary/archives/1/4087815951
     
    ♀Ido, Masae 衆院議員(1)19651213 仙台 /民主党兵庫県議会議員(2)
    /籍=井戸 正枝/旧姓=小形、勝又/筆名=井戸 まさえ
     
    https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20180311-00054765-gendaibiz-bus_all&p=1
     東日本大震災で流された大量の「戸籍」が鳴らす警鐘 20180311 現代ビジネス
    https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20180311-00054765-gendaibiz-bus_all&p=5
     
    ── 井戸 まさえ《日本の無戸籍者 20171021 岩波新書》
    http://booklog.jp/users/awalibrary/archives/1/4004316804
     
    (20180312)
     

  • 本屋に並んでいたタイトルに引き込まれた。国籍がない日本人なんているのか??国籍が無いことの想像すらしたことが無かったので、この本を読んで驚愕した。国籍取得のために申請をしようとする人だけで年間3000人。届け出ない人を含めると数万人という単位で日本人(そうなってくると日本人と言っていいのかわからないが)で国籍が無い人がいるらしい。離婚してから300日以内に生まれた子どもは前夫が父となるらしいのだが、DVなどが理由で逃げ出していたりして、法的には結婚したままにいるため、出生届を出せずにいるらしい。戸籍が無いということは、当然小学校にも行ったことがなく、字がかけない人もいるらしい。免許もないし保険証もない。国として存在が認められていない人々。日本の暗部を見せてくれる良著。

  • 法は常に正義の味方とは限らないし、行政サービスは人道支援ではない。戸籍制度で守られてきた“家”を、金にも票にもならない声なき民のために自ら取り壊そうとする政治家は多くない。



    筆者は、民法772条〔嫡出推定〕の問題で、再婚の折に予期せず「無国籍児の母」になり、NPO設立によって数千人の“当事者”たちと問題解決に係りながら、それまで黙殺されてきた「なかった問題」を「ある問題」へと変えていく社会化のプロセスを学び、その後代議士として政策決定の場へと進出したソーシャルワーカーである。

    当事者の叫び、現場で相談を受ける側の立場、実際に政治を動かそうと奮闘してきたこれまでの経験を凝縮している。それゆえ一般の読者が知らなかった(知りたかった)無戸籍者のルポルタージュ要素と、筆者の活動記の側面が同時進行に行き来するため、幾許かの読みづらさや情調な部分を感じることはある。



    “「義務を果たさない・果たせない親に懲罰を」と言っている限り、子どもの問題はなくならない。子どもたちは救われない。”〔p253〕



    ワーキングプア、DV、児童虐待、心身障害、シングルマザーなど社会の歪みとされる問題には、多くのマターが輻輳的に横たわっている。

    ほとんどの人が空気のように当たり前に享受している権利がある一方で、その空気を奪われたままの人がいる。
    周囲の想像力不足が招く無意識の偏見、偏狭な<常識>からの逸脱を許さない風潮は、当事者が救いを求めることさえ許さない。この本にも2000年代以降の今日的な社会の閉塞感が漂っている。



    “法律が実現しようとしている「正義」と、今この法律を運用する中で退けられている人々がいるという「現実」との差を「努力」して埋めていかなければ、真の意味での「平等」は実現しない。そのためには、支配者が変わらなければ、被支配者は変わらない、いや、変われないと語りかけているのだ。”〔p298〕



    この「努力」について、私には憲法12条「この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によって、これを保持しなければならない。」の文言が思い出された。判例も社会情勢を加味して覆ることもある。他人事としてではなく、自分や大切な人が当事者になりうるかもしれない問題としてコミットを続けていかなければならないと感じた。

  • 日本に戸籍の無い人がいることと、その問題点、戸籍がない人々の苦労が分かる。

    これまで知らなかった問題について知る事が出来た。

    問題解決のため自分に出来ることは少ないが、問題が解決されることを祈り、また興味を持って行きたいと思った。

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著者プロフィール

井戸 まさえ(イド マサエ)
政治家、元民主党議員
1965年、仙台市生まれ。東京女子大学文理学部史学科卒業。松下政経塾9期生。5児の母。
東洋経済新報社勤務を経て、経済ジャーナリストとして独立。2005年より兵庫県議会議員を2期務め、2009年、衆議院議員に初当選。無戸籍問題をはじめ「法の狭間」で苦しむ人々の支援を行う。民主党東京第4区総支部総支部長。
「戸籍のない日本人」で第13回開高健ノンフィクション賞最終候補作品に残る(『無戸籍の日本人』と改題して2016年1月刊行予定)。「『クローズアップ現代』“戸籍のない子どもたち”など無戸籍者に関する一連の報道」で2015年貧困ジャーナリズム賞受賞。
佐藤優氏との共著に『子どもの教養の育て方』がある。

「2015年 『小学校社会科の教科書で、政治の基礎知識をいっきに身につける』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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