だから、居場所が欲しかった。 バンコク、コールセンターで働く日本人

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  • 集英社
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レビュー : 43
  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087816334

作品紹介・あらすじ

タイ、バンコクのコールセンターには、日本に息苦しさを感じ「居場所」を求める男女が集まっていた。非正規労働者やLGBT、風俗にハマる女……。開高健ノンフィクション賞作家が現代日本の姿を抉り出す。

感想・レビュー・書評

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  • バックパッカーとして東南アジア諸国を旅した。
    そのたび、現地でいわゆる「沈没」した日本人と遭遇した。
    ドラッグや女にハマって、有り金を失い、勤労意欲も失い、日本に帰ることの出来ない人のことをそう言って揶揄した。

    この作品で描かれるタイで過ごす日本人は決して恵まれた環境で生活しているわけではない。日本で暮らすには息苦しく、逃げ出すように訪れたタイでの彼らは決して「沈没」しているわけではない。しかし、生きることにもがき苦しむ彼らを、作品を通して見ると、読者たる私も苦しくなってしまうのはなぜなのか。

    とても幸せに生きているように見えない。
    LGBTや借金苦や恵まれない家庭で育った人々たちは、彼らを色眼鏡でみる日本から遠く離れた異国の地でも、幸せそうに見えない。
    結局、彼らの苦しみの根源は心の中にあって、他の国に逃げたとしても逃げ切れるものではないのかもしれないと感じた。

    そして、そんな彼らの受け皿になっているバンコクのコールセンターを知った。
    私と同業者だ。
    同じ仕事をしているのに、日本国内採用と現地採用での待遇の大いなる差が悲しい。

  • 「幸せ」につながらない「仕事」は
    とても 悲しい
    とても むなしい

    ずいぶん前に読んだので
    おぼろげな記憶ですが

    ブータン国での
    取材をされた著者の言葉の中に

    たくさんの(ブータン国の)人が
    家族がいて 幸せ
    家族と一緒に食べられることが 幸せ
    仕事があることが 幸せ

    というようなフレーズが
    あったことを なぜか 思い出していた

    このルポルタージュに登場する
    人たちの「居場所」は
    その「幸せ」とどれほど距離が
    離れているのだろう
    などと 考えてしまった

  • 自分も、この登場人物の方達のように、
    「はじかれる」可能性なんて、当たり前にある

    60点を切った人間は、社会から必要とされない。
    日本社会は、ある角度から見ると、減点主義が徹底している社会です。

    多くの日本人は、満点の100点から始まりますが、
    コミュニケーション能力、性格、
    容姿、そして「場の空気を読む能力」等を基準にして、
    日本社会の独特の価値感で、その人の価値・能力を判断されます。

    周囲が「これはないな」と判断したら、容赦なく減点されます。
    幼稚園、小学校、中学校、高校に進むにつれ、判断基準もシビアになります。

    60点は一種の比喩ですが、そういう「基準」があることは事実だと思います。
    基準以下と判断された人は、日本社会では、本当に生きにくいと思います。

    この著作の登場人物は、どの方も日本社会の「基準以下」の人です。
    そして、登場する多くのマイノリティーの方にとってみれば、
    地獄のような社会だったのでしょう。

    日本を抜け出すしか方法がないよなと思います。

    著者のフィールドワークは時にはフィリピンであったり、
    そしてタイだったりします。
    取材対象は主に日本社会から、「はじかれた人」です。
    おそらく著者も、執筆という日本社会とのつながりがなければ、
    きっと「はじかれた人」に属する人なのでしょう。

    そうでなければ、取材対象者へのルポタージュにかける異常な情熱は説明できません。
    この著作を通して、日本社会がもう少し、様々な人間、価値観を受けいれてくれる
    社会になることを願ってのことなのでしょう。

    ただ、日本社会は、ますます生きにくい社会となっています。
    それは、うつ病を始めとする精神疾患の増加、ひきこもり、ニート、SNEPの増加数など
    を見れば一目瞭然です。以前は、日本は豊かでしたが、
    今、日本はどんどん貧しくなっています。
    社会の分断は、これからますます勢いをましていきます。
    弱者を保護するための人的資源も、そしてお金も圧倒的に不足していきます。

    読後感は、なんともいえないものです。
    自分も、この登場人物の方達のように、「はじかれる」可能性なんて、当たり前にあるからです。
    そうなりたくないなら、いかに減点されないように努めなくてはいけません。
    それが、果たしてできるのか、、、本当に難しい。

  • このバンコクのコールセンターの仕事、「海外で働く」というと聞こえは良いけれど、実は学歴・職歴も語学力も必要ない、日本語が喋れれば誰にでもできる仕事。
    そのため日本の社会に馴染めなかった人や事情があって日本を出なければいけなかった人が流れついてきている。
    非正規で時給もタイで生活するのに精いっぱいなくらいで(当然日本円に換算するともっと安い)日本語しか使わないので、貯金ができるわけでもなく何のスキルも身につかないまま、日本よりも居心地の良いタイでだらだらと生活し続ける人たち。日本に帰るお金も、もしものことがあったときに使えるお金もない。
    その中にも働きながら語学や起業などの勉強をしたり、ちゃんと将来のことを考えている人もいる。
    そんな人たちにインタビューをしたという内容。

    まず、こんな世界があったんだ…と衝撃を受けた。
    どの企業がこういったやり方をしているのだろうというのも気になったけど、さすがに実名は出せないよな~

    もし海外で生活したいという気持ちがあるなら、こういった会社ではなく語学なり勉強してもっと収入も社会的地位もある会社で働いた方が良いと思う。

    いつもこういったジャンルの本を読んでいて、他人事とは思えない。
    私は運良く自分に合った会社で、自分のことを理解してくれる仕事仲間と一緒に働くことができているけど、運が悪ければこうはいかなかったかもしれないし、この先そうなる可能性だってある。
    海外に行こうという発想にはならないだろうけど。

  • インタビューを受けた人たちが一様に言う「日本の生きづらさ」には共感する。日本だと就職で「一般的な」レールを外れると立ち直れなかったり、人と比べることで劣等感を感じ得ないところ。とはいえ、バンコクであっても日本人が多い分、結局は人の目を気にする状況があるのでしょうが。

    途中に出てきた子のように、若い時に経験として働くならいいかもだけど、ある程度の年齢になってから、そして背負うものがない場合には、先が見えない分何かを見据えて生きないとつらい。
    正直自分も某国で何とは無しに滞在していた経験があるので人ごとではないということと、その滞在中に出会った日本人たちのことを思い出してしまった。

    あとは、どなたかのコメントにも書いてあったけど、著者がどういう経緯でこの仕事に就き、どういう気持ちで取り組んでいるのかすごく知りたいと思う。

  • バンコクに行く往復で読破。すごく不思議な感想を抱いた。面白かったか、と言われると、はてな。出てくる人物のいる世界を20年ぐらい前に垣間見ただけに、想像はつく。共感するかと言われると、全く出来ない。かといって切り捨てることも出来ない気もする。作者ほどこの人達のそばに立つことは出来ないだろうけれど、指摘したいことは判らないでも無い。日本社会が抱えたいびつな姿の発露が、バンコクに1つ出ていると言うことだけどね。
    出てくる人物に共通しているのは、どこかで判断・決断をする能力がおかしくなっている。この本で抱いた一番の感想は、この本が誰の人生を支えるのか、自分には判らなかった、と言うことかな…。意味分かんないね。

  • 驚いた。バンコクに日本向けのコールセンターのオペレーション会社があり、そこで日本で居場所を失ったような若者から中年の日本人が流れ着いているという。
    それぞれ故あってのこととは言え、どうにも救いようのない男女と、このような人々を生み出した今の日本に暗澹たる思いになる。
    これだけの取材をこなし、決して語りたくはないであろう負の部分を聞きだし、我々の知られざる現実を著した著者の腕はお見事。

  • 日本を飛び出し、バンコクのコールセンターで働く日本人たちのリアルに迫ったノンフィクション。

    タイ語もわからない、仕事は日本語を使った電話業務…ではなぜ彼ら、彼女たちはわざわざ日本を飛び出してタイへ飛んだのか…?
    インタビューを通して知る、コールセンターで働く人々の思いや事情
    そして、そこから見える日本の社会とは…。

    コンプレックスからタイにはまった人、
    タイ人にはまった人
    家庭的な事情のある人、
    性別の悩みからタイに渡った人、
    などなど…日本での生きづらさを抱える人々。

    そんな彼らが捜したもの…
    それは、「自分が自分でいることができる居場所」

    日本にはもはやそれがないという。

    将来に対する不安、
    未来への希望と期待、
    現状の自分自身の生き方、
    彼らが感じるもやもやした不安と思いは
    多くの人の中にあると思う。

    読み終わってあらためて思う
    私自身もそんな思いが心の底にあることを。

  • ぐっときた
    タイトルでもきたけど、読むともっときた
    共感するところが多々あった
    自己肯定感が低い
    日本にいると劣等感や疎外感を感じる
    海外でなら、それが和らぐことを、私も自分の旅を通して知っている
    登場する人たちと私が違ったのは、ゴーゴーバーに嫌悪感があったこと、寄り添ってくれる友達がいること
    たまたま、私の居場所は日本にあった

  • 東京から4,614km遠く離れたタイのバンコク。
    その高層ビルで、
    「お電話ありがとうございます。
    ○○社の△△です!
    ご注文ありがとうございます!」
    と語りかける日本人オペレーターがいる。
    いうまでもなく、非正規労働者。
    借金苦・LGBTの男女など、
    様々な理由からタイに渡る。
    総じて「日本で周りとうまくやれなかった」
    という人たちが多い。
    タイでは、捲土重来を期して、
    きちんと働き、タイ語の習得とか、
    向上心を持って勉学に励むという
    タイプの人は極めて少ない。
    オペレーターの仕事を選んだ理由からして、
    電話は日本人との受け答えなので
    言葉の障害はなく、服装は自由、
    勤務時間は融通が利き、残業もない。
    給料は高くはないが、物価が安く、
    贅沢をしなければ十分暮らしていける…。

    それでは海外勤務経験ありとは
    胸を張って言えるはずもなく、
    再度日本でやり直そうと帰国しても、
    そこには受け入れ場所はなく、
    熱気溢れるタイに舞い戻る人も少なくない。

    今日の日本の閉塞感、生きづらさは
    社会がもたらしたものである。
    ただいずれの先進国にも「光と陰」は存在する。
    タイのコールセンターで働く人たちを
    著者は「陰」の側にカテゴライズするが
    はたしてそうなのか。
    彼らは行動を起こした。
    生きていくためにタイでの就労を選んだ。
    高飛びなのか、跳躍なのか、勇躍なのかは
    そんなの何だっていい。

    寧ろ、不正に生活保護費を受給している
    4万人超の厚顔で遊民を宿す温床こそ、
    高度成長を終えた日本のもう一つの現実が
    あるんではないかと思うな。

    • sstrip028さん
      無知と偏見に基いて生活保護をディスるのは止したほうがいいですよ。
      無知と偏見に基いて生活保護をディスるのは止したほうがいいですよ。
      2018/05/04
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