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Amazon.co.jp ・本 (372ページ) / ISBN・EAN: 9784087816716
作品紹介・あらすじ
第16回開高健ノンフィクション賞受賞作!
現代美術のスーパースター蔡國強と、いわきの“すごいおっちゃん"志賀忠重がアートで起こした奇跡!
ふたりの30年に及ぶ類い稀なる友情と作品づくりを辿り、芸術が生み出した希望を描く感動作。
●著者プロフィール
川内有緒(かわうち・ありお)
1972年、東京都生まれ。日本大学芸術学部卒業後、米国ジョージタウン大学で修士号を取得。
米国企業、日本のシンクタンク、仏の国連機関などに勤務後、フリーのライターとして評伝、旅行記、エッセイなどを執筆。その傍ら小さなギャラリーも運営。
『バウルを探して 地球の片隅に伝わる秘密の歌』(幻冬舎)で、第33回新田次郎文学賞を受賞。著書に『パリでメシを食う。』(幻冬舎)、『晴れたら空に骨まいて』(ポプラ社)など。
感想・レビュー・書評
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【メモ】
葵は「インスタレーション」と呼ばれる現代美術のジャンルで活動を行っていた。室内や屋外に作品を設置(インストール)し、鑑賞者はその空間全体を五感で体感する。葵が打ち込んでいたのは、《外星人のためのプロジェクト》、または《プロジェクト・フォー・ET》と訳される作品シリーズだ。
その構想の一例が、万里の長城の終点となる嘉峪関から、長さ一〇キロの導火線を砂漠に敷設し、爆発の光で長城を延長させるというものだった。
葵のシリーズの一つである「原初火球」。原初火球とは、中国語で宇宙の始まりの「ビッグバン」を意味する。展覧会の副題に「The Project for Projects(プロジェクトのためのブロジェクト)」とあるのは、ここで展示したドローイングが、葵が将来実現したいと考えるプロジェクトの計画図だからだ。それは葵のイマジネーションの爆発そのものだった。そんな構想の一例が、蛇腹のスケッチブックにもあった、「ビッグフット(巨人の足跡)」正式名は《大脚印ービッグフット:外星人のためのプロジェクトNo.6》である。宇宙の足元である大空で火薬を爆発させ、その光で空を駆け抜けていく巨人の足(ビッグフット)を表現するものだ。巨人は、人間が戦争や諍いの結果としてつくった国境という壁を自由に越えていくシンボリックな存在として登場する。これは後の北京オリンピック開会式で実現することとなる。
葵が「外星人シリーズ」を開始した1989年というのは、世界の秩序や社会構造がハンマーで叩き壊されたような年だった。11月にはベルリンの壁が崩壊、12月にはソ連とアメリカが冷戦の終結を宣言し、東欧諸国が民主化を遂げた。葵一家は天安門事件の勃発により、帰るべき故郷を失った。しかも、中国のパスポートでは他国に渡航したり、移住したりすることも容易ではなかった。
何でこの世に国境なんてあるんだろう?葵はその理不尽さを思い知った。
「それで 『自分が異星人だったら、国境なんて無視して越えていくだろう』というアイデアが浮かんだのです」
きっと祭にとって芸術とは、人為的につくられた国境という壁をやすやすと越えていく巨人そのものなのだ。自由な世界に旅をしたい、空を飛びたい、宇宙を見たい、そう切望し続けてさた青年にとって、作品をつくるとは、広い世界へ飛びだしていける唯一の手段だった。その狂おしいまでの希求を作品に昇華させ、《ビッグフット》を生み出した。
「葵さんの作品は、その背景を詳しく説明されなくても、共感できるところが大きい。アメリカは、色々な国や文化の人がいて、もともとバラバラです。例えばアメリカ映画で派手なアクションを多用するのは、文化の違いを超えた理解を得やすいからです。色々な背景や文化を持つ人がいて、みんなバラバラで違っていても、葵さんの爆発作品は人間の根源的なところに響いてくるのです」
葵の作品を受け入れたのはアメリカだけではなかった。同じころ、南アフリカ、イタリア、オーストラリア、日本など、異なる地域や大陸で展示を実現。アイデアが尽きることはなかったし、体力も気力も十分だった。葵はかつて夢見た通り、ビッグフット(大きな足)で国境を跨ぐように世界を旅するようになった。
日本でも、海の上に火薬を並べて火を点け、地球の輪郭を描くというビッグプロジェクトに着手するのだが、資金面で行きづまる。そのために何をしたかというと、とにかく足を使って色んなものを貰いまくる作戦だ。「あれくれませんか?」「ボランティアでお願いします」という言葉のもと、いわきの人にアプローチをかける。葵と一緒にプロジェクトを進めていた志賀の人望もあって、多くの人たちの協力のもと、作品は見事に完成した。作品作りを通じていわきの人々の輪ができたのだ。
「作業員ではありません。彼らは作品の一部なのです」詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
最初は懐疑的にページをめくり、最後には胸熱で少し涙が滲んで本を閉じた。
自分がいかに強欲に生きているか身に染みた。
今日は今日の分だけ慈しむように生きている人々の話。
「明日のことを思い悩むな野の百合のように生きよ」という聖書の一句を思い出した。 -
福島県いわき市に暮らす一人のオトコと中国人アーティストの生き様とふたりを筆者の目から描いたルポルタージュ。
川内さんのすごいと思うのは、取材した内容を読んでるこちらが実際にその場にいるような生き生きした文章にしてしまうところ。
今回も行ったことのない海外の美術館やいわき市にまるで自分がいるような錯覚を起こしてくれる。
そして尚且、合間合間に的確な筆者の視点やコメントがあるのだが
それもわざとらしくないし、考えが偏ることもない。
あくまで冷静な視点なのだ。
ふたりの生き様もだが、一冊を通して夢や希望、そして土臭さや人間くささが詰まっている。
また川内ワールドで知らない世界を見せてもらった、そんな感覚。 -
川内有緒さんのこれまでの著作はどれも面白くて、大好きな書き手の一人。ただ今回は、読み通すのにちょっと苦労した。丁寧に取材してあるし、いつも通り読みやすい文章なんだけど…。題材にあまり興味をひかれなかったのと、著者自身のことがほとんど出てこなかったせいだと思う。
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蔡國強が、失敗も反対者も全て大切に思う前向きさに感銘を受けた。国際的に活躍している現代アートのアーティストってこういう強さをもっているものなのでしょうね。
いわきの志賀さんすごい!こんな人がいたことがわかっただけでもこの本を読んだかいがありました。
川内有緒さんの文章は読みやすくていい! -
面白いアーティストだなと思うし
面白いスポンサー?サポーター?だなと思う
みんなアグレッシブで、なにか自分もやらなきゃと思う
とはいえ「目の見えない白鳥さん」から入ったので、
目からウロコみたいな読後感にはならなかった
でもコンセプチュアルアートがわかった気がする -
「なんと気持ちのいい連中だろう」
読み終えたとき頭に浮かんだのが、「ルパン三世 カリオストロの城」のラストで庭師のおじいさんが呟いたこの言葉。
こんなに気持ちのいい人間関係って、すごい。うらやましい。お願いです、心を入れ替えますから、そこに加えてください、ってくらい憧れる。
何年か前に横浜美術館で開催された蔡國強展、その迫力に圧倒された。
今では現代美術の超売れっ子作家となった蔡 國強氏と、福島県いわき市で会社経営しているおっちゃんの志賀さんとその仲間たちとの心温まる友情の物語。
全く売れなかった若き蔡氏を、なんかこいつ面白くて、熱のある青年だな、とアートになんて興味もないのに活動を支えはじめた志賀さん。人に惚れ込むタイプだ。全くのボランティアで彼の作品づくりに参加し、地元いわきの人たちを巻き込んで、海上で何キロにも渡る導火線を爆発させるというアート作品を作家と一緒に完成させた。
記録映像を見たことがないので、なんとも言えないけど、文章で読む限り、そんなにインパクトのある作品じゃない。遠く水平線上をパチパチと花火が明滅してるかな~くらいのものだと思う。
苦労を共にしてないと、なんかショボい、で終わってると思う。でも志賀さんといわきの人たちは蔡氏と共に成功を喜びあった。そのときの体験が原点となって、何十億円単位でアート市場で取引される人気作家となった今でも、蔡氏は、毎年のように福島県いわき市を訪れている。
海外の至る所で開催される蔡國強展。会場には半纏をまとう志賀さんをはじめとする「チームいわき」の姿がたびたびあった。
福島の漁村で朽ちるままに放置されていた一昔前の木造船を、蔡氏は作品として再構築していたのだが、それはあまりに巨大で、どこの会場に設置するにしても、一度解体し、再び組み立てるという作業が必要だ。
その作業にチームいわきが欠かせない。いや、本当のことを言うと、巨大な作品を組み立てることができる業者は探せばいるのかもしれないが、蔡氏は必ずチームいわきにお願いしている。
著者は蔡氏の心情を、なんやかんやと理由をつけて美術館側を説得しているが、つまりはチームいわきのメンバーに会いたいから、と推測している。
2011年に福島を悲劇が襲う。
原発事故よって避難を余儀なくされ、荒廃した故郷。避難指示が解除された後も人は戻らず、田畑は荒れた。
故郷が無くなってしまう。
志賀さんは、山々に桜の苗木を植えることを思いつく。いわき万本桜プロジェクト。
人が生きる力を取り戻すために、何より必要なのは「希望」だ。人が去り、見捨てられようとしている故郷に再び人を呼び戻すために、この山野を桜が乱れ咲く桃源郷のような美しい土地にしよう。そう決意し、仲間とともに活動をはじめた。
志賀さんたちの活動を知った蔡氏も、再び手を取り合い活動に参加し、更なるアイデアを提示する。
ここに美術館を作りましょう!山にある木を切り出して、回廊をつくり、そこに子どもたちの作品を展示するのです。里山の斜面を駆け上る龍のような回廊美術館を!
金はない。人もいない。頼るは人々の善意だけ。しかし、プロジェクトは大きなうねりとなって動き出す。
苗木一本、一本に人びとは願いを込めた短冊をつける。
「早く平和になりますように」
「たくさんの人に笑顔が戻りますように」
震災前には当たり前にあった日常を取り戻すために、苗木を植え、桜の成長を願う。
山肌を埋め尽くす満開の桜の中を縫うように駆け上がる昇り龍。想像を超える美しい光景を目の当たりにできる日は遠くない未来に必ず訪れる。
現在進行形で増殖し続けている「いわて回廊美術館」いつか行ってみたい。 -
志賀さん。こういう人の飛び抜けた強さ優しさのおかげで、かろうじて世界の帳尻が合ってる気がする。
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福島県いわき市の志賀忠重さんと、ひょんなことから出会った中国人アーティスト蔡國強さん、そして、いわきの仲間たち。
2人とも、行動力と仲間を巻き込む魅力とパワーに溢れた人なんだろう。まさに本のタイトルどおり、空をゆく巨人のように、世の中を俯瞰して生きている人たちだな、と思った。
夢と希望を持つって、簡単なようで難しい。
福島の港に打ち上げられた古い木造船が海を超えて世界を巡ったように、人間が引いた境界や壁をなくして、平和な日が訪れますように。 -
国境を越えた友情と人生を力強く生きる人達の話。なんとなく生きているのが勿体無い、精一杯生きようとパワーを登場人物にもらえる。ニュースの中でしか見なかった原発問題についても、深く考えさせられた。
川内有緒さんの作品は、人生って面白いんだな。素敵だなぁ。といつも再認識させてくれるので大好きです。 -
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「こういうノンフィクションもあるのか」
というのが読後の率直な感想です。
一方は著名な芸術家であるものの、主題は
その芸術家が作り出す作品に関わる市井の
一人の人間が織り成す生き様です。
自分以外の「他者」のために常に生きていると、
こういう素敵な人間関係を築くことができるのか、
と今さらながら学ぶことができる一冊です。 -
中国人の現代芸術家・蔡国強と福島県いわき市の志賀忠重を始めとした市民との
深い繋がりを綴ったレポ。
世界的に有名な蔡国強が登場人物のメインでありながら、
実はこの物語の主人公は一市民である志賀忠重。
蔡との出会いから、何度も蔡にお願いされて
友達としてチームを作り
世界各地の美術館での展示を手伝ったり、
北極圏を徒歩で制覇した大場満郎の
カナダでの補給サポートなど、
躊躇のないフットワークと決断力に驚かされる。
いわきは東日本大震災で原子力発電所の事故の
被災地になるのだが、
その体験から今度は自治体や政府の支援を受けない
自分なりの復興のための活動を今も続けている。
それが、「いわき万本桜プロジェクト」
どのエピソードでも一貫しているのは
「楽しくやる事」
「やりたいと思ったらとりあえずやる事」
「やり続けるための方法を模索する事」
であると思う。
別のこの著者の記事だが、
いわきの美術館を訪れたとある女性が
この活動が続いて欲しい、と言ったことに対する彼の言葉で
「続いて欲しい、じゃダメなんだよ。
そう思うなら自分もそこに参加しないと。」
という言葉がジーンと来た。
志賀の活動ばかりが心を掴まれるかというとそうではなく。
蔡の作品の作成の描写や作成する過程などを読んでも
まるでその場で見ているかのような感動を呼ぶ。
いつか、このコロナの問題が治ったら
見に行きたいなぁ。 -
二人の人物をおいながら、自然と二人がつながっていく流れがお見事です。知り合いの紹介で読んだのですが、読みやすく引き込まれました。
知らなかった人の生きてきた過程を知ることができてよかったです。 -
現代美術界のスーパースター・蔡國強さんと
いわきの会社経営者・志賀忠重さんの三十年の交流を追った、ノンフィクション。
蔡さんといえば、北京オリンピックの開会式では
芸術監督として壮大なスケールの花火パフォーマンスを行なった方。
あー、あの花火、素敵だったな。
冒険家の大場満郎さん、いわき市民など
この本に登場した人たちは、みなさん、すごいパワーを持っている。
肩ひじ張らずに自然体だ。
2011年、東日本大震災による
福島第一原発の原子力事故。
p276
「福島はフクシマになった」
山に桜を植える「いわき万本桜プロジェクト」
p337
志賀さんの言葉。
「お客さんに来てもらうためではないんだ。
”怒り”を鎮めていくものなんだ」
スケールが違う。
一年、二年先なんて
本当にあっという間だな・・・と
思わせてくれる。 -
中国人の現代美術家蔡國強氏と福島いわき市との繋がり、特に志賀氏との個人的な繋がりを描いたノンフィクション作品。
東北大震災、原発問題もテーマの柱としてストーリーが進んでいく。
中国と日本との繋がり、911と震災との繋がりと、ドットが結びつく過程をモチーフとしてうまく取り上げている。
個人的には蔡氏も志賀氏も、いわき回廊美術館のことも知らなかったので、この本を通じて自らが知らない領域に導かれる心地よさを感じながら読み進めることができた。
そして人生を大きく、太く生きている人の人生観は興味深い。
ノンフィクションの場合、テーマ選びがとても重要だと思うのだが、著者が海外で生活し、勤務した経験があるからこそ、今回のモチーフがレイダーに入ってきたのだと思う。
いつか、いわき回廊美術館を訪れてみたい。 -
現代美術のスーパースターである蔡國強は駆け出しの頃に福島のいわきに住んでいたので、現在もいわきと交流がある…という一般的な説明では全く不十分で、両者の関係は想像以上に密接だった。世界的アーティストになってさえ蔡はいわきの人々のサポートを求め、やがていわきの人々もまた、震災を乗り越えるために蔡の想像を超えた万本桜プロジェクトというアート活動を始めた。単純な地域交流ではなく、互いに切磋琢磨する盟友同士と呼ぶべきかもしれない。
大人物の器に素朴な人柄を込めた蔡國強と、現実世界の困難を器用に解決する才に恵まれた志賀忠重。人を感動させる行為そのものがアートならば、これほどアートの神様に愛された人はなかなかいない。文句無しの傑作ノンフィクションだ。 -
本作を読み終えてまず感じたのは、回廊美術館を訪れたい、ということ。
昔先輩に「贈り物をする際は、必ずその物の背景、ストーリーも説明すること」と言われたことを思い出した。
どんなことにも通じるが、単語だけで魅力を余すことなく感じ取るのは難しい。背後のストーリーを知ってこそ、意味を理解し、魅力を感じるのだと思う。
志賀さんと蔡さん、そしてたくさんの仲間たちが共に作り上げた等身大の美術館。ここに至るまでの道のりを知ったからこそ、是非訪れたい。
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