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Amazon.co.jp ・本 (376ページ) / ISBN・EAN: 9784087817218
作品紹介・あらすじ
1970〜80年代、資源を求めた日本がアフリカ大陸に残したものは、
巨大な開発計画の失敗とさび付いた採掘工場群。
そして、コンゴ人女性との間に生まれた子どもたちだった──。
経済成長期の闇に迫る、衝撃のルポルタージュ。
【目次】
序章 不可解なルポルタージュ
第一章 真実への距離
第二章 ジャパニーズ・ネームの秘密
第三章 日本人が遺したもの
第四章 BBCの「誤報」
第五章 修道院の光
第六章 空と銃声
第七章 祖国への旅
第八章 富と紛争
第九章 未来への賭け
第一〇章 医師たちの証言
第一一章 闇の奥へ
第一二章 伴走者への手紙
第一三章 正しく生きるということ
あとがき 悲しき宿命の残影
【著者プロフィール】
三浦英之(みうら・ひでゆき)
一九七四年、神奈川県生まれ。朝日新聞記者、ルポライター。『五色の虹 満州建国大学卒業生たちの戦後』で第一三回開高健ノンフィクション賞、『日報隠蔽 南スーダンで自衛隊は何を見たのか』(布施祐仁氏との共著)で第一八回石橋湛山記念早稲田ジャーナリズム大賞、『牙 アフリカゾウの「密猟組織」を追って』で第二五回小学館ノンフィクション大賞、『南三陸日記』で第二五回平和・協同ジャーナリスト基金賞奨励賞、『帰れない村 福島県浪江町「DASH村」の10年』で2021LINEジャーナリズム賞を受賞。その他、第八回城山三郎賞候補作に『白い土地 ルポ 福島「帰還困難区域」とその周辺』、第五三回大宅壮一ノンフィクション賞候補作に『災害特派員』がある。現在、岩手県盛岡市在住。
みんなの感想まとめ
この作品は、1970年代から80年代にかけて日本の企業がアフリカで行った鉱山開発の裏に隠された衝撃の真実を追求しています。著者は、現地で生まれた日本人残留児たちの存在や彼らの切実な願いを掘り下げ、経済...
感想・レビュー・書評
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2023年新潮ドキュメント賞受賞作
新潮ドキュメント賞とは、ジャーナリスティックな視点から現代社会を深く切り結び、その構成・表現において文学的にも良質と認められる作品に授与されるノンフィクションの賞です。
2022年に受賞した「嫌われた監督」が大変面白かったので、この賞を取る作品は読んで間違いあるまいと信じて読みました。ちなみに「嫌われた監督」はプロ野球で唯一、三冠王を3回取った落合博満氏を対象とした作品です。監督業においても圧倒的な成績を収めた落合氏は、「名選手は名監督にあらず」というスポーツ全般に言われている定説をぶっ壊したものすごい人です。
余談が過ぎましたが、余談ついでに言っておくとこの新潮ドキュメント賞の選考委員が大物ぞろいです。保坂正康氏、櫻井よしこ氏、池上彰氏など錚々たるメンバーです。
本題です。
良質なノンフィクションはやっぱいいですね。よく錬られた展開にぐんぐん引きこまれました。著者の三浦氏は朝日新聞記者でルポライターです。本書の舞台はザイール国(現コンゴ民主共和国)で1960年代後半から鉱山開発に派遣された日本人たちと現地妻とその子どもたちのなんとも言えない悲しいストーリーです。
2010年以降にフランスやイギリスのメディアが報道映像で、日本人を糾弾しました。日本人鉱山労働者が現地女性と多数の子をもうけたばかりか、一部の赤ちゃんが日本人医師の手で殺されたという疑いが伝えらました。
ツイッター(現X)でこのことを知った著者は赴任地である南アフリカのヨハネスブルクから旧ザイール南部の街ルブンバシへ通います。現地で知り合いになった日本人協力者と共に日本人とザイール人から生まれた32人の子どもとその家族を訪ね歩き話しを聞きます。そして、日本人による乳児殺害は、現地記者が金欲しさに流したデマだったとの結論づけます。
著者たちの調査結果をイギリスメディアにぶつけると謝罪こそしなかったものの記事が削除されました。
なぜ、デマが報じられたのか。アフリカの場合、少数の特派員が広大なテリトリーをカバーします。このため紛争、事件の第一報はAPやロイターなど世界的な通信社に頼らざるをえないそうです。そのAP、ロイターも各国に特派員はおらず、通信員や地元記者を使います。彼らの中には、ニュースを買ってもらうため、誇張やウソを流す者もおり、乳児殺しのデマはまさにその産物だったのです。
デマはデマとしても日本人の父をもつたくさんの子どもたちが置き去りにされたというのは紛れもない事実でした。
中国残留孤児については昭和の頃に盛んにテレビ報道されていましたので一定以上の年齢の方は知っているのでしょうが似たようなことがアフリカにもあったとは衝撃でした。
1970年代〜1980年代にザイールに数年間暮らした20代〜40代の日本人鉱山労働者は10代の地元女性と親しくなり、中には結婚までして、新居から鉱山に通う人もいました。任期を終えて日本に戻る際にはザイール人妻や子を日本に連れていく日本人はいませんでした。長年仕送りする人や、別れ際に号泣し、去っていった人もいました。
現地に暮らし、残された子どもたちに寄り添ってきたシスター佐野さんは著者に「父親に会って、お金がほしいという人はほんの一部にすぎない」と話す。多くは、ただ父親に会いたいという「人の子であれば誰もが持っている普遍的な愛」だと言っています。
著者は日本に戻り、父親捜しを始めるのですが難航します。父親を知っている人にまで行きつくが今の家庭を壊しかねないという理由で協力を断られたりします。
またある父親はすでに亡くなっていたとの情報を得ました。その父親のコンゴの息子に再会したとき、著者は会うなりすぐ聞かれます。「僕のお父さん、見つかった?」。迷いながらも亡くなっていたことを告げると、40代の息子はみるみる涙をため、泣き続けました。
妻や子どもを置き去りにした日本人鉱山労働者たちはどのような思いでいたのでしょうか。おそらく一人一人に葛藤があったはずです。
<人は正直に生きられない、組織や常識といった目に見えないものに絶えず縛られ、生きたいように生きるという、そんな簡単なことが思うようにできない。あるいは「彼ら」も同じ気持ちだったのか>(「太陽の子」)
いろいろと考えさせられる作品でした。それにしても著者の執念とも言える取材にはただただ頭が下がるばかりです。普段小説しか読まないブク友の皆さんにも自信をもっておすすめできる一冊です。
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「1960年代後半から80年代前半にかけて、日本を代表するある鉱山企業がアフリカ中部の資源国に進出し、巨大な銅鉱山を開設した。鉱山はその後、内戦と経済の悪化によって閉鎖に追い込まれたが、その際、現地に駐在していた日本人労働者とコンゴ人女性との間に生まれた50〜200人の子供たちが置き去りにされたとみられている。さらに、その中の一部の赤ちゃんは出生後間もなく日本人医師の手で殺害された…という疑いもある。」
果たしてそれは真実なのか…三浦英之さんは日本人残留児の支援に以前から関わる、フランシスコ修道会の佐野浩子さん、日本カタンガ協会の田邊好美さんの協力を得て、取材から真実を明らかにしていく…。嬰児殺害については誤報であることが判明したが、残された日本人残留児は今も貧困と紛争の中で父親からの連絡を待ち続けている。大半がすでに40歳を超え、家族との対面は父親の年齢的にもタイムリミットに達しようとしている…。
普通に考えれば、日本人残留児たちは、置き去りにされたことをひどく恨んでいるのではないか、置き去りにされたせいで貧しい生活を強いられ差別的な扱いを受けてきたのだから…。でも彼らは恨むどころか、父に会いたいという思いを支えに、むしろ自分たちは日本人だとみな胸を張って答えるんです。なのに…日本人は、その事実をひたすらに隠しているし、認めようともしない…。日本人在留児の彼らは、ただ父親に会いたいだけなのに…。
なんとか、その願いが叶えられないものかな…。だからといって何が私にできるわけではないけれど、この作品を読まなければ、こんなことがあったことを知ることもなかったことを考えると、知ることができてよかったと思いました。三浦英之さんの東日本大震災以外のテーマを扱った作品は初めて手にしましたが、この作品からも熱い思いを感じ取ることができました。 -
『1970年代コンゴで日本企業の鉱山開発に1000人以上の日本人男性が現地に赴任し、そこで生まれた日本人の子供を日本人医師と看護師が毒殺した?』
このショッキングなツイッターの投稿から本文は始まる。
この真実を追う為、当時、南アフリカに駐在していた著者の取材記となっている。
『近代都市は人間に安心を与え、代わりに表現を奪った』という言葉の様に戦後の経済復興の影が強く感じられた。
取材に協力した現地日本人の田邊さん、佐野さんにはコンゴの為に献身的に働く姿は逆に同じ日本人として、とても誇らしくなった。
遠い異国の地で日本人が行なった事実を知るという事はとても大切な事であり、一人でもこの本を読んで欲しいと思う。
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ムルンダさんの願い。
最後のページのP360「日本に帰っても〜日本で暮らす多くの人々に伝えて欲しい。〜もっとしっかりと、もっと目に見える形で。〜」
この本を読むことでアフリカ日本人残留児の存在を知ることができ、今も父親を思いいつか会えることを願い生活している。
三浦さんや田邊さん色々な方々の行動が少しずつ良い方向へ動きだすと思います。
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読書記録74.
太陽の子
戦後の経済成長期
資源を求めコンゴでの鉱山開発の後に残された太陽の子に纏わるルポ
コンゴ女性の置かれる状況
児童婚、宗教観
『正しい行為』がもたらす事
正しさとは…
著者様の満州や福島に関わる作品や本書から関心を持ったムクウェゲ医師の取組みについても深めたい -
経済力の差、男尊女卑、支配と被支配のような圧倒的な上下関係が生み出した、よくある話なのだろう。娯楽もない劣悪な環境の中で、素直に自分の好意を受け止めてくれる年端もいかない娘たちが、どれほど生活に潤いをもたらしてくれたかは、想像に難くない。そういう男性の生理に理解を示してなお、著者はアフリカの日本人残留児の立場に立って、丁寧に聞き取りをし、自分にできることを模索し、これだけの書を著した、その功績は大きい。「これを書くために生まれてきた」と思えるほどの思い入れの強さが随所に見られる。
アフリカの紛争地域の吐き気を催すような残虐行為の記述もあり、現地の人々の苦難に我らが一体何ができるのか分からないが、目を背けないでまず知ることからスタートしていきたい。年々縮小するオールドメディアが、今後も彼のような世界の不正を告発する記者を抱えることが可能なのかは、先行きが見通せない。世界は益々格差が拡大し、冷酷で無慈悲な場所になっていくんだろうな。 -
コンゴに派遣された日本人男性が現地の女性との間に子供をもうけた末に置き去りにした、それだけではない一冊。コンゴという国の歴史についても簡易にまとめられていて勉強になる。
読み始める前は、日本人男性なんて「俺は家庭のために働いてる」を盾に育児も家事もしないんだから、赤子に愛情も湧かぬまま帰国して得意の事なかれ主義で忘れたふりして過ごしてるんだろう、などと思っていたけれど。実際は赤子の誕生を大変喜び、数年にわたって送金をしていたり、中には約10年後に再びコンゴを訪れて息子と再会し、『日本には別の妻や子どもがいるが、俺はお前を愛している。』と伝えて泣いた父親もいた…。なのになんで会いに行かない!?名乗り出ない!?現地の風習を知っていたはずなのに、その後我が子が泥水をすする暮らしを強いられている苦しみを知らぬ存ぜぬで通して来たの!?なぜ!?
この本が広く世に知られることで、再会できる親子が増えたらいいのにと願うばかり。
嬰児殺しは真実でなかった(フランス24はもとよりBBCもあてにならないんだな…)とはいえ、組織ぐるみで子ども達に辛酸を舐めさせたのは事実。
それと、伊藤正孝氏の「記者が現場に行くことの意味」については、広く知らしめられる方が良いのではと思った。「記者たちの目があれば、虐殺はかなり防げると信じるからである。中東アフリカに関するかぎり、大量虐殺は記者の目の届かない密室状態で起きている。」と、凄惨な内戦現場で克明な記録を残し続けた記者自身が体感している。
日本とコンゴの経済格差による歪みもさることながら、現地で子供を作った働き手の男性たちと、幹部たちとの経済格差の歪みにも問題の一端はあったのでは、という気持ちにも。コンゴで働いていた医師が下請け企業の単身赴任者住宅に足を運んで、その粗末な造りに苦言を呈するも総務課の人間から『これでも良い方なんですよ。先生は彼らが日本でどのような暮らしをしているか、ご存知ないでしょ?』と一蹴されたエピソードも胸にずしんとくる。現地の子供達のことはもちろん把握していても、どうせ下働きの男たちの子、と見下した判断をした可能性もあったのでは…と勘繰らずにいられない。
帰国したものの金銭に本当に余裕がなく、送金も渡航も不可能だったという現実もあったのかなぁ。 -
これは知らなかった。戦後、日本企業がアフリカ・コンゴに資源を求めて進出し、派遣された日本人がそこで子をなしたが、うち捨てるように去って行ったなんて。
著者は既にツイッターで発信し、600万人もの閲覧があったそうだが、自分自身はSNSで広く情報収集する習慣がないため、この本に出会わなければ、無知のままだった。
最近読んだ著者の南三陸の報道では、体当たりのような取材姿勢と取材先に入れ込み過ぎで大丈夫か、とハラハラさせられたことが印象に残るが、本書も同じ。それ故、著者の心の揺らぎが読みながらストレートに伝わってくる。
こんな事実があった。人知れず、なんとか手助けをしようとする方々がおられる。そのことだけでも多くの人に知って欲しいと思う。 -
高度経済成長期、資源を持たない日本の企業が豊かな資源を求めてコンゴで鉱山開発を始めた。事業は衰退し企業が撤退後、現地に残されたのは日本人とコンゴ人女性の間に生まれた「日本人残留児」たちだった…
この話は初めて目にした。ショックもあるけど、規模こそ違えどこの手の話は様々な場所(国)にあるんだろうなとも思う。
レビューでは帰国時に妻子を置き去りにした男性への批判ばかりだけど、このような境遇を想像すると一概に非難できない自分もいる。
日本から遠く離れ、家族さえそばにおらず、何年も帰国でないまま劣悪な住環境で働かされていたら、愛情とか温もりに癒しを求めてしまうのも理解できる。
もちろん、残された子に罪はなく、泥水を啜るような生活を強いられたことには胸が痛むが。
不可解なのは朝日新聞社が筆者の取材をよしとせじ、事実上の更迭をしたこと。日本政府の責任を問う内容なら喜んで追及させるけど、民間マターだから腰が引けたのか?
それにしても、フランス24やBBCの取材報道姿勢はお粗末というか、おおらかというか。呆れる。 -
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三宅香帆さんの動画で知った本。
読み応えがすごい。最初の投げかけがミステリー的な推進力となってどんどん読み進めてしまう。著者の取材に向き合う姿勢は誠実そのもの。粘り強い。
同じ歴史を繰り返す日本、そして人類。でも田辺さん佐野さんのような人たちもいる。それが希望。
ルポの内容もすごいけど、著者の文章も素敵。「数百の車輪によって巻き上げられた大量の砂塵はやがて清純なアフリカの空気を汚し、すぐに一陣の風に運ばれてバックミラーの中へのとすいこまれていった。」アフリカの景色が思い浮かべられる。
「コンゴでは賄賂はこの国の文化とも呼ばれ、政治家だけでなく、警官も、役場職員も、裁判官でさえも、権力を持つすべての者がそれらを持たない者に当然のごとく『冷たい水』を要求する」「死の確率はここでは数パーセントの割合で存在しているに違いなかった。最大の要因は紛争でも疫病でもなく交通事故である」知らなかった。コンゴの今がよくわかる点だと思う。
ノンフィクション本は今まであまり読むことがなかったけど、ノンフィクションこそお金を出して買うべきものなのかもしれない。 -
色々取材すごいなあ。日本の私大の教授って人には腹立つなあ。日本人のお父さん、1人ぐらい名乗り出ても良いのになあ。
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ほんとうの
ジャーナリストだなぁ
と 三浦さんの著作を読むたびに
思わせてもらう
江成常夫さんが満州棄民の人たちを
ルポルタージュされた「シャオハイの満州」を
思い起こしてしまった
時の権力者が自分の都合を最優先する
歴史的な経緯の中で
いちばん弱い立場のものが置き去りにされていく
その事実に光を当てて
きちんと 世に提言していくことは
とても大事なことである
三浦英之さんの著作を
読ませてもらうたびに
ジャーナリストの存在意義の尊さを
思わせてもらっている -
いやー、すごい本を読んだな。
本題ではないけど、HIVの誤った治し方を読んだ時に、ぞっとした。
複合的な要素が絡んでいる話だったけど、読みやすかった。 -
感情が揺さぶられる一冊です。著者の書籍ではいつも人間の本質的な側面に数多く触れられるので、いつも読み終えた後は自分に熱量が宿るような気がします。
本作はアフリカの日本残留孤児に焦点を当てた内容ですが、アフリカ社会の葛藤、孤児の過酷な境遇や父親への愛、父、企業側の身勝手な対応など、孤児の半生が取材を通して深く触れられています。
日本人である事にアイデンティティや誇りを持っている彼らは、やはり日本人なのだと強く感じました。そして彼らが父親に再開出来る事を強く望みます。
出会えて良かった本でした。 -
日本人全員が読むべき本。
今まで読んだ本の中で1番考えさせられた。
途中に想像を絶する描写があり、言葉の凄さ、人の残酷さを感じ、身体が震えた。
三浦英之の作品
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