沸騰大陸

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  • 集英社 (2024年10月25日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (224ページ) / ISBN・EAN: 9784087817607

作品紹介・あらすじ

「生け贄」として埋められる子ども。
78歳の老人に嫁がされた9歳の少女。
銃撃を逃れて毒ナタを振るう少年。
新聞社の特派員としてアフリカの最深部に迫った著者の手元には、生々しさゆえにお蔵入りとなった膨大な取材メモが残された。驚くべき事実の数々から厳選した34編を収録。
ノンフィクション賞を次々と受賞した気鋭のルポライターが、閉塞感に包まれた現代日本に問う、むき出しの「生」と「死」の物語。心を揺さぶるルポ・エッセイの新境地!

目次

はじめに 沸騰大陸を旅する前に

第一章 若者たちのリアル
傍観者になった日――エジプト
タマネギと換気扇――エジプト
リードダンスの夜――スワジランド
元少年兵たちのクリスマス――中央アフリカ
九歳の花嫁――ケニア
牛跳びの少年――エチオピア
自爆ベルトの少女――ナイジェリア
生け贄――ウガンダ
美しき人々――ナミビア
電気のない村――レソト

第二章 ウソと真実
ノーベル賞なんていらない――コンゴ
隣人を殺した理由――ルワンダ
ガリッサ大学襲撃事件――ケニア
宝島――ケニア・ウガンダ
マンデラの「誤算」――南アフリカ
結合性双生児――ウガンダ
白人だけの町――南アフリカ
エボラ――リベリア
「ヒーロー」が駆け抜けた風景――南アフリカ

第三章 神々の大地
悲しみの森――マダガスカル
養殖ライオンの夢――南アフリカ
呼吸する大地――南アフリカ・ケニア
「アフリカの天井」で起きていること――エチオピア
強制移住の「楽園」――セーシェル・モーリシャス
魅惑のインジェラ――エチオピア
モスクを造る――マリ
裸足の歌姫――カーボベルデ
アフリカ最後の「植民地」――西サハラ

第四章 日本とアフリカ
日本人ジャーナリストが殺害された日――ヨルダン
ウガンダの父――ウガンダ
自衛隊は撃てるのか――南スーダン
世界で一番美しい星空――ナミビア
戦場に残った日本人――南スーダン
星の王子さまを訪ねて――モロッコ

三浦英之(みうら・ひでゆき)
1974年、神奈川県生まれ。朝日新聞記者、ルポライター。『五色の虹 満州建国大学卒業生たちの戦後』で第13回開高健ノンフィクション賞、『日報隠蔽 南スーダンで自衛隊は何を見たのか』(布施祐仁氏との共著)で第18回石橋湛山記念早稲田ジャーナリズム大賞、『牙 アフリカゾウの「密猟組織」を追って』で第25回小学館ノンフィクション大賞、『帰れない村 福島県浪江町「DASH村」の10年』で2021年LINEジャーナリズム賞、『太陽の子 日本がアフリカに置き去りにした秘密』で第22回新潮ドキュメント賞・第10回山本美香記念国際ジャーナリスト賞を受賞。

感想・レビュー・書評

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  • 表紙と題名からアフリカのオモシロ情報が載ってるかと、軽い気持ちで手にした本書。

    違った、重い社会問題が羅列されていて目の玉が飛び出しそうな、ゾッとする内容だった。

    島国、日本にいると分からない事が沢山あらるんだと、今まで知ってた情報はほんの表面的なものなんだと痛感した。

    自分が日本人で、幸せな生活を送れているのは偶然で、世界の裏側には、何のために産まれてきたのか分からない、理不尽で残酷な状況におかれた人達が大勢いるんだと、いろいろ考えさせられた。

  •  本書は、三浦英之さんが、アフリカ特派員時代の取材を基に、「imidas」のweb上に連載したコラム「アフリカの長い夜」をまとめ書籍化したものです。

     疲弊し冷め切ったような日本と、良くも悪くも欲望が渦巻き熱量のあるアフリカを対比することで、余りの隔たりの大きさを実感し驚愕します。まさしく、人口爆発、種々の不条理が入り乱れ「沸騰する大陸」アフリカのリアルが描かれていました。
     小国それぞれの、悲しく辛い事実の数々に言葉を失います。この現実を広く知らしめるという点で、間違いなく価値ある一冊でしょう。

    ※本文中の、ノーベル平和賞受賞の現地医師の言葉
     「私が欲しいのは、誰もが安心して暮らせる平和な地域だ。ノーベル平和賞なんていらなくなる世界が、いつかやってきてほしいと願っている。」・・・重い言葉です。

     折しも、全世界の核兵器根絶のための努力、目撃証言を通じた実証が評価され、ノーベル平和賞を受賞(2024.12.11)した被団協(日本原水爆被害者団体協議会)。地道な草の根活動に頭が下がります。
     原爆被爆者の全国組織だけに喜ばしいのですが、唯一の戦争被爆国である日本は、未だに「核兵器禁止条約」に不参加です。アメリカの"核の傘"の下、という建前と本音が見え隠れします。
     今回の受賞も、どれだけ世界へ訴えが通じるのか、効果も限定的かなと悲観的な気もします。

     綺麗事、理想論しか語れませんが、地球で暮らす我々一人一人が、今問われているのでしょうね。紛争を回避する人間の知恵を信じ、願うことだけはできるのですが…

    • かなさん
      本とコさん、ありがとうございます!
      そうだったんですね!!
      文庫になったんですねぇ…
      でも、文庫本の解説は気になるし、読んでみたいです...
      本とコさん、ありがとうございます!
      そうだったんですね!!
      文庫になったんですねぇ…
      でも、文庫本の解説は気になるし、読んでみたいです。
      また、泣けることは間違いないですね(涙)。
      2024/12/12
    • ひまわりめろんさん
      本とコさん
      こんばんは!

      被団協のノーベル平和賞ほんとすんばらしいですよね
      岩波ブックレットから『被爆者からあなたに: いま伝えたいこと』...
      本とコさん
      こんばんは!

      被団協のノーベル平和賞ほんとすんばらしいですよね
      岩波ブックレットから『被爆者からあなたに: いま伝えたいこと』というブックレットを被団協が出しています
      核兵器の悲惨さが心に刻まれる良書です
      機会があれば是非
      2024/12/12
    • NO Book & Coffee  NO LIFEさん
      ひまわりめろんさん、こんばんは♪
      ひまめろさんの8月のレビューと皆さんのコメントを
      読み直してみました。
      よい機会と捉え、読んでみたいと思い...
      ひまわりめろんさん、こんばんは♪
      ひまめろさんの8月のレビューと皆さんのコメントを
      読み直してみました。
      よい機会と捉え、読んでみたいと思いました。
      貴重な情報提供、ありがとうございますm(_ _)m
      2024/12/12
  • 著者がアフリカ大陸に駐在したときの取材記録をもとにまとめたものである。

    目にすることで現実なんだと思うのが驚きであり、信じられない気持ちである。

    民族の違いとはいえ「児童婚」や「生け贄」があることに何故⁇としか言いようがない。
    人とは何故こんなにも残酷になれるのか?
    何よりも怖いものだと痛感する。
    日常のなかにある悲劇の一部かもしれないが、変わることはないのだろうか。



  • 図書館に早くから予約しておいたので、早目に借りられた。ありがたい。

    私が読む三浦英之氏の著書8冊目。

    これまでに『世界遺産検定公式テキスト』(世界遺産検定事務局)、『地図でスッと頭に入るアフリカ55の国と地域』(昭文社)、『読むだけで世界地図が頭に入る本』(ダイヤモンド社)などを読んでいたお陰で、本書で取り上げられている国々の位置や世界遺産(ほとんどが危機遺産や負の遺産に相当する)や、かつての宗主国がどこかや、民族紛争など、脳内に思い浮かべることはできた。

    しかし「本当のアフリカ」は、本書で初めて教えてもらったように思う。
    もちろん本書だって、三浦氏が書かなかったこと・書けなかったことが山程あるだろうから、一部なのかもしれない。
    それでも、ルワンダの虐殺ひとつをとってみても、「フツ族がツチ族を大量虐殺した」という簡単な1行では終わらない事実と現状を本書で読み、ショックだった。
    本書の特に前半は、ほとんど読んでいる間中、私の眉間に皺が寄っていたと思う。

    「チャゴス」という地域のことも初めて知ったし、他にも「生け贄」「ハンティング」(これらが過去ではなく現代のことである)など、知らないことだらけだった。
    ヨルダンの章で書かれていた、日本政府と日本のメディアによる「フェイク・ニュース」という事実も、無知な私には衝撃だった。
    「ミギンゴ島」も知らなかったが、Googleマップでその姿を確認した。

    もし私が「アフリカ」について読む本が、逆に本書が初めてであったとしたら、それはそれでよく理解できなかったと思うので、上記の3冊を今までに読んでいたのは役に立ったし、良かったと思う。

    (別件だが、ガザの書籍も1冊でやめず2冊目を読んで良かったと思っている。)

  • ひとつひとつの話は短くて読みやすい。
    しかしとても悲しく残酷だ。
    どの話も考えさせられる問題ばかりだ。
    知らなかったアフリカがそこにあった。

  • エッセイ集。一話がとても短く、さくっと読める。
    とは言え、著者が新聞社の特派員としてアフリカ大陸に駐在し、取材した記録をもとに書かれた内容は軽くない。
    どうかフィクションであって欲しいと思うような暴力や病気、暴君と化した権力者のおこないなど、心が痛くなる。

  • 2025.03.05
    日本で生活保護の業務にあたっている身としては、アフリカの「庶民」「貧民」の生活レベルを思うと日本人に生まれただけで「ガチャ」で当たっているということだと痛感。

  • アフリカに3年駐在した特派員のルポエッセイ。

    過剰表現がある訳でもなく、現実を写真のように写し出しているような文章なんだけど、それだけに「これが現実なんだ」という迫ってくるものがあり、読み進めるのがところどころ厳しかった。特に子どもが被害に遭うシーンはつらい。

    ボコハラムについての章がなかでも印象的で、あるジャーナリストの見解が書いてあった。
    ボコハラムにさらわれた少女が脅され爆弾ベルトをつけられ、自爆テロをさせられる...
    そんな凶悪組織に対抗するための軍には莫大な資金が落ちており、「悪」を必要としているのはむしろ軍や有力者。警察や軍では汚職が蔓延り市民は賄賂を強要されたり暴力を受けたりする。不満を抱えた市民の中にはボコハラムに身を投じるものもいる。
    ...かなり端折って書いたけど、この負の悪循環...嫌悪感や、やるせないという一言ではあらわせない。

    あまりに悲惨でどうしようもない現実に、打ちのめされてしまい...全部読みきれないまま、図書館返却。無念。積読登録しておきます。

    悲惨なだけでなく、たくましく生きる人々のことが書いてあったり、「あんたたち(私たちの民族のことを)ビューティフルとかよく言ってるけどそれ何?私たちと同じ格好しないじゃん、珍しいだけでしょ?」みたいなことを言われてハッとさせられたみたいな記述もあり、気づきがかなり多い本です。

  • 三浦英之氏は、1974年神奈川県生まれの新聞記者・ルポライター。京大大学院を卒業後、朝日新聞社に入社し、国内外の社会問題や紛争地・災害現場などを精力的に取材してきた。『五色の虹~満州建国大学卒業生たちの戦後』で開高健ノンフィクション賞(2015年)、『牙~アフリカゾウの密猟問題を追って』で小学館ノンフィクション大賞(2018年)、『帰れない村~福島県浪江町「DASH村」の10年』でLINEジャーナリズム賞(2021年)、『太陽の子~日本がアフリカに置き去りにした秘密』で新潮ドキュメント賞と山本美香記念国際ジャーナリスト賞(いずれも2023年)等、受賞歴多数。
    本書は、著者が2014~17年に、特派員としてアフリカに駐在した際の取材記録をもとに、2023~24年に、集英社のウェブサイト「イミダス」に連載した「アフリカの長い夜」を加筆してまとめた、いわゆるエッセイ集で、2024年に出版された。
    著者は冒頭で「取り憑かれたように大陸中を飛び回り、這いつくばるようにして写真機を構え、そこで暮らす人々と牛の血を飲みながら移動し、サバンナの雨にうたれて深く眠った・・・」と書いているが、34編のエッセイには、21世紀のアフリカの実に多様な面が取り上げられている。
    登場する国は、マグレブからサブサハラ、及びインド洋や大西洋の島国まで、23ヶ国。
    登場する人々は、アラブの春の後の軍事クーデターに反対する民衆(エジプト)、クリスマスに踊る元少年兵たち(中央アフリカ)78歳の老人と結婚させられた9歳の少女(ケニア)、イスラム過激派に誘拐され、体に爆弾を巻き付けられて自爆テロを強要される少女たち(ナイジェリア)、社会的成功を渇望する者に誘拐され、生贄にされる子供たち(ウガンダ)、全身に赤土と牛脂などを混ぜ合わせた「オカ」を塗り、伝統的な装具を身につけて、大型スーパーで買い物をするヒンバ民族の女王(ナミビア)、電気のない村で暮らす、しかし、明るく楽しそうな人々(レソト)、紛争地でレイプ被害に遭った女性たちの治療を続けている、ノーベル平和賞を受賞した医師デニ・ムクウェゲ(コンゴ)、人類史上最悪の大虐殺後、お互いに隣人として生きる加害者と被害者たち(ルワンダ)、アパルトヘイトを克服したはずの国で、今排斥の対象とされる移民たち(南アフリカ)、白人だけが暮らす街の白人たちと、その白人たちとも協力して国を成長させたいと語る、支局の黒人助手(南アフリカ)、エボラ出血熱の治療にあたる医師(リベリア)、スポーツハンティングの獲物として使用するライオンを「養殖」するハンティング業者(南アフリカ)、米軍基地建設のために、インド洋チャゴス諸島から強制移住させられた人々(セーシェル/モーリシャス)、泥のモスクを造る男たち(マリ)、アフリカ最後の植民地・西サハラから逃れた難民たち(アルジェリア)、ウガンダで50年間シャツを作り続け、「ウガンダの父」と呼ばれる日本人(ウガンダ)、戦闘の激化で自衛隊が撤収した後も、現地に残り避難民のために働く日本人シスター(南スーダン)等、である。(自然や文化を取り上げたものも一部にはあるが、大半は人に焦点が当てられたものだ)
    改めて列挙してみると、著者の基本的な取材スタンスから当然とはいえ、暗くネガティブな印象を持つものが多く(中には、少々気分が悪くなるような描写すらある)、日本人からは、前時代的にすら見えるもの(文化・因習的なものに限らない)も少なくないのだが、著者はそうした一面的な捉え方をしていない。
    著者はこう書いている。「人口が爆発し、人間の生と性、暴力と欲望が激しく入り乱れているアフリカは、まさしく「沸騰大陸」そのものです。・・・かの地のむき出しの日常の中にこそ、閉塞感に覆われた日本を生き抜くヒントのようなものが隠されているのではないか。人間の本質を真摯に見つめ直すことにより、我々はより正直に――そしてより強靭に――与えられた日々を主体的に過ごすことができるのではないか。人は人を殺し、人は人を愛する――。その大いなる矛盾の鏡に映っているのは、きっと「彼ら」ではなく、私たち「人間」の姿だと思うのです。」
    私は、群れることを好まず、大好きな旅(国内外)をするときも多くの場合は一人だ。しかし、どこへ何をしに行くかというと、大自然の絶景を見に行くよりも、人の暮らしている様を感じに行くことが、はるかに多い(トランプが米国大使館をテルアビブからエルサレムに移すと宣言した頃に、一人でエルサレムとヨルダン川西岸を訪れたのもその一つだ)。たとえ、その旅が多少快適さを欠くことが分かっていても。。。(少々僭越だが)私はおそらく、著者に近い感性と認知パターンを持っているように思う。
    一般の旅人では到底することができない数々の体験を共有してもらえる、貴重な一冊といえるだろう。
    (2025年10月了)

  • 著者は新聞社の海外特派員として アフリカ大陸に約三年間駐在した。文字どおりあの広大な大陸を東奔西走。いつも命の危険を感じながら、身体を張って。

    日本に居ては想像すらし得ない事柄を見聞きし、体験した。三作品は本になり賞を貰っている。

    そこからこぼれ落ちたアフリカの大自然や市井の人々暮らしに焦点を当てたものが 今作品。

    とは言え それすらアフリカ大陸の人々が置かれている状況は 過酷。特に子供と女性。やはり弱い人たちの立場は 暴力と欲望が渦巻く世界においては ここまで人間はするか、してしまうのかと。読むのも辛く、何度も涙してしまった。

    日本に生まれ育って 何と幸せなことかと思ったが、それで良いのか。アフリカ大陸の人々に悲惨な状況をもたらした一因、大本は西洋諸国、先進国。日本もその責任は逃れられない。 

    まさしく“沸騰大陸”
    まったく知らなかった世界。

    三浦英之氏の作品はほとんど読んでいるが
    今作品も 私にアフリカという未知の世界に目を向けさせてくれる。






  • 読みやすくて一気読みした。きつい情景描写があるので、友達に薦めにくいが、それでも知っておかなければいけないし、考えなければいけないことだと思った。

  • 沸騰大陸、、アフリカ大陸のこと。
    これを朝日新聞記者、ルポライターが描く、というのだから、
    政治的な内容、と身構えてページを開く。
    が、はじめに を読んで、政治的なエッセイではなく、
    生活を取り上げる内容なのか、とちょっと安心して中に入る、、

    が、結局、凄まじい内容が、、、
    虐殺、レイプ、、
    ひとはなぜここまで残酷になれるのか。
    これは、持って生まれた「性(さが)」なのか?
    それとも、教育、洗脳によってついた悪知恵なのか。。
    虐殺は古今東西至るところで生じているのを見ると、さが、なのかもしれない。
    酷すぎる、、、
    所詮命あるものは必ず死ぬわけで、日本ではむしろ医療が進みすぎて死ねないことが
    問題になったりしているわけだが、まだ幼い子が生贄として殺されるとは、、
    それも昔からの風習というのではない、資本が入ってきて、大きなビルを建てるには
    大きな犠牲が必要ということで、当初は家畜でよかった生贄が、子供の躰の一部に
    なり、さらに子供そのものになるとは、、
    ある意味虐殺より残酷かもしれない。
    海外資本の経済が生んだ殺人。

    後半はショートエッセイになり、ここまでの酷い話は減っていく。
    最後の世界一の星空の話には、私もあこがれを持たせてくれる。
    ナミビアのナミブ砂漠一帯。
    一生行けるかどうかわからないところだが、覚えておこう。

    はじめに 沸騰大陸を旅する前に

    第一章 若者たちのリアル
    傍観者になった日――エジプト
    タマネギと換気扇――エジプト
    リードダンスの夜――スワジランド
    元少年兵たちのクリスマス――中央アフリカ
    九歳の花嫁――ケニア
    牛跳びの少年――エチオピア
    自爆ベルトの少女――ナイジェリア
    生け贄――ウガンダ
    美しき人々――ナミビア
    電気のない村――レソト

    第二章 ウソと真実
    ノーベル賞なんていらない――コンゴ
    隣人を殺した理由――ルワンダ
    ガリッサ大学襲撃事件――ケニア
    宝島――ケニア・ウガンダ
    マンデラの「誤算」――南アフリカ
    結合性双生児――ウガンダ
    白人だけの町――南アフリカ
    エボラ――リベリア
    「ヒーロー」が駆け抜けた風景――南アフリカ

    第三章 神々の大地
    悲しみの森――マダガスカル
    養殖ライオンの夢――南アフリカ
    呼吸する大地――南アフリカ・ケニア
    「アフリカの天井」で起きていること――エチオピア
    強制移住の「楽園」――セーシェル・モーリシャス
    魅惑のインジェラ――エチオピア
    モスクを造る――マリ
    裸足の歌姫――カーボベルデ
    アフリカ最後の「植民地」――アルジェリア・西サハラ

    第四章 日本とアフリカ
    日本人ジャーナリストが殺害された日――ヨルダン
    ウガンダの父――ウガンダ
    自衛隊は撃てるのか――南スーダン
    世界で一番美しい星空――ナミビア
    戦場に残った日本人――南スーダン
    星の王子さまを訪ねて――モロッコ

  • 2025/4/30
    日本も色々と問題を抱えているけれど、今のアメリカやロシア、中国、イスラエルなどに比べればまだまだましかなって思えてしまう。
    でもそんな国々でさえもまともに思えてしまうようなアフリカの桁違いの実態がこの中にぎっしりと詰まっている。
    様々な尋常ではないようなことが短い文に盛り込まれていて、読み続けるとクラクラする感覚を覚える。
    でもそれはアフリカの人々のせいだろうか…もともとは様々な民族が交じり合いながらも調和しながら暮らしていた場所が、西洋人による植民地化を経て、再び独立する際に西洋人の視点による差別、区別が経済と結びついたがゆえに、人々を分断させ様々な紛争が今でも延々と続いている世界という感じが随所に読み取れる。
    あるいは鉱物資源をめぐって、周囲からの干渉や意図的な分断が行われ同胞同士の争いの結果、その利益を外部に吸い上げられているような構図でもある。
    問題は貧困ではなく格差である…その通りなのだが、それが個人レベルではなく、特定の集団や民族に結びつくから収拾がつかなくなってしまう。
    でもそれは当事者のせいではなく、意図的に作り上げられた形でもあることも意識しないと…世界のあちこちで為政者が人々を区別し意図的に分断を煽っているのも同じ仕掛けであると。
    直前に読んだ「暗殺」では緻密に計算された暗殺計画が描かれていた。
    でも本書では金儲けの道具として安易に簡単に人の命が奪われていく。金だってただの道具に過ぎないはずなのに…とても考えさせられる内容だった。

    2025/5/30
    経緯や程度や内容は異なるものの、イスラエルでの構図も根っこは似たようなものかもしれないとふと思ったので記録。

  • もう何から書いていいか分からないくらい、濃い内容の本だった。
    私はこのアフリカの問題に何が出来るだろうか。多分何も出来ない。知ることしか出来ない。

    アフリカのいろいろな問題が提示されているが、共通するのは、人が不幸を感じるのは「貧しさ」ではなく「格差」、ということ。
    アフリカにある豊かな資源を奪い合う。スマートフォンやゲーム機を使う私たち日本人も決して全くの無関係ではない。

    ボコ・ハラム、イスラム過激派、ということは知っていても、ナイジェリアにいることを知らなかった。

    ウガンダでは生け贄が求められ、子どもが犠牲になる。「ウガンダの人々から見れば、一部の富裕層は牛を増やしたわけでもなければ、農地を広げたわけでもない。にもかかわらず、都市部に億万長者が次々と現れるため、人々は「きっと呪術によるものだ」と信じ込んだ」そこでより強い魔力を持つとされる、性経験のない10歳未満の子どもを生け贄に求める。

    こんな深刻な話なのに私の頭の中に出てきたのは吉幾三の「俺ら東京さ行ぐだ」が思い出された。そして次に出てきたのは事件名は忘れてしまったが昭和の冤罪事件で冤罪となった人が無罪になったときに「故郷で牛を飼いたい」というような発言をしたが、長い間拘束されている間に故郷がもう都市になっていて、牛を飼える状況ではないことを知らされて、発言を変えた、という話だった。
    「俺ら東京さ行ぐだ」がヒットしたのは都会の人が田舎の人の無知を笑っているところにあると思う(意地悪な見方かもしれない)。
    理解が出来ないことが目の前で起こっているときに自分でも分かる説明を信じてしまうのは、誰でも思い当たることがあるのではないだろうか。ウガンダの人々を糾弾するだけでは問題解決にはならない。


    コンゴでは2018年ノーベル平和賞を受賞したデニ・ムクウェゲのインタビュー。
    「ここで起きている紛争は、欧米で言われているような民族同士の殺し合いなんかじゃない。国と国とが領土を奪い合う戦争でも、宗教的な対立でもない。豊富な地下資源をめぐって引き起こされている、純粋な経済戦争なんだ」
    「私も「祖国を誇りに思う」とここで言いたい。でも、いまはそれができない。十六年間、五十万人の少女たちがレイプされ、六百万人の少年少女が殺害されているというのに、、明確なビジョンも掲げず、敵と戦うこともしない国家に所属することを、誰が誇りに思えるでしょうか」

    このノンフィクションの中では女性がレイプされる、という話がたくさん出てくる。なぜこんなにレイプをするのだろう、と疑問に思うほどに。レイプなんて簡単にできるものなのだろうか。動物でも昆虫でも交尾の間は無防備になるので、捕食者に狙われる率が格段に上がる。こういった兵士による集団レイプは捕まる危険性がないとわかっているから簡単にできるのだろうか。

    男尊女卑の考え方が根強くあるのだろう。「兵士が女性を汚す」とムクウェゲさんも言っていたが、レイプにあった女性を汚れている、というのは間違っている。汚れているのはレイプを行った兵士だ。性器に木の枝を入れられ、喉まで貫通し亡くなっていた、という女性の描写がこの本には出てくる。狂っている、としか思えない。

    それでも知らなくていいこと、とは思えない。何も出来ないなら、知っておくべきことだ。ぜひ多くの人に読んでもらいたい本だ。

  • 「太陽の子」がとっても良かったので、こちらもさっそく読んでみた。
    表紙が印象的。この美しい赤毛がどのようにして作られるのか、読んでびっくり。ほんとに色んな習慣があるのね〜。

    アフリカ各国でのリアルな経験が書き綴られていて、どのエピソードにも感情を動かされるのだが、特に印象的だったのは南アフリカの養殖ライオンの話。
    ライオンも生まれる場所は選べない。生まれた国や家で貧富の差が決定付けられる人間の様だと思った。

  • カーボベルデという国もセザリオ・エヴォラという歌手も知らなかったが、私の大好きな感じの曲で、これからしばらく聴き続けるに違いない。教えてもらってありがたい。

    そうなのだ。全然知らなかったアフリカのことをたくさん教えてもらった。
    まず、カバーの写真から「なんじゃこりゃ」となる。「どうなってんだ、この頭?」見たこともない。三浦さんのことを知らなくても手に取りそうなインパクトがある。
    想像を超える悲惨で残酷なエピソードが多く、なんという甘っちょろい世界で生きているのかと考えさせられた。
    一つ一つの章の内容が濃く、もっと知りたくなる。一つ一つが短いからと言って、物足りないわけではないのだが、もっと詳しく読みたい気がする。

  • 【著者の取材力にはどの書籍を読んでも感服させられてしまう】
    高校生以上、性別を問わず手にとって読んでほしい一冊。
    著者の言葉、カメラを通して見たアフリカのリアルが、アフリカの声として伝わってくる。読みはじめは、「最後まで読み切れるだろうか」と読了した自分の姿が想像できなかった。著者の他の作品を通してアフリカの様子は知っていたつもりだったが、全くと言っていいほどそれらの知識は役に立たなかった。全く知らないアフリカがあった。
    そもそも一定の作者の著作物を読んだくらいで何がわかるのだろうか。何もわかるはずがなかったのは当然。著者のように現地で取材を重ねた者ですら『何も知らない』と述べているのだから。
    人類史の縮図と表現することができるであろうアフリカ。そんなアフリカの声を聴くことで僕は何を感じることができたのだろうか。答えはすぐには出ないだろう。
    終末「星の王子さまを訪ねて」に著者の人柄を垣間見ることができ、共感し、力強く生きることを想う。

  • アフリカ・・・
    ホントに何も知らない国です。
    この本自体も2010年代のことを中心に書かれているけど、今はもっと露骨に中国の影響があるのではないかな?

  • 三浦英之さんの文章は、スッと入ってくる感じがして好き。少しずつ読み進めた。
    アフリカにいたのがたった3年間とは思えないほど充実した内容。記者としての仕事もしながらいろいろな取材をしていてすごい。

  • 目の前で人が殺されること。文化を見世物のようにされても誇り高くあること。
    著者がアフリカ駐在時のメモを短く仕立てたスケッチのようなエッセイ集。過酷で痛烈で、でもみずみずしくて、新聞記者への尊敬が増す。

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