凍りついた瞳 (コミックス)

著者 :
  • 集英社
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  • Amazon.co.jp ・本 (400ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087850222

感想・レビュー・書評

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  •  児童虐待を漫画で描いています。漫画で描かれているので、視覚的に虐待がどのようなものなのかがわかります。
     また、登場人物に医療ケースワーカーや福祉事務所のケースワーカー、児童相談所や児童福祉の施設、保健婦、小児科医、小児精神科医等がでてきます。それらの人々がどのように関わっているのかや、虐待を受ける児童の問題や、家族の問題などについても描かれています。

  • 第一話  誰も助けられなかった
    助けを求めた母子とそこに介入した保健婦(今は保健師という名称になっている)の話。

    虐待を知りながら、上手く介入は出来ないという事例。
    助けを求めてきた母親が、『父親が暴力を振るうのはお金が無いせい』と理由を反転させる。
    保護した子供が、暴力的になり、『病院では預かる事が出来ない』と看護師たちから苦情が来るようになった。
    暴力を受ける子供は暴力を学習する子供でもある。
    虐待された子供が、暴力的になるのはある意味当然な事……と言う認識は今なら広がっているのかな?
    最後は子供を連れて家族が姿を消してしまう……。タイトル通り『助けられない』



    第二話  あの子はいらない

    養護施設から戻って来た子供を上手く受け止められなかった家族の話。
    物心がつく前に預けられて、親との記憶が無い子供が懐かない。
    愛着障がい……と、今なら言うんだろうか?と思ってしまった。
    こちらも一話に続いて、子供が暴力的になるという話だけれども、こっちは『構ってほしくて暴力を振るう』
    ただ、一話と違って家族側が「もう、この子はいらない」と突き放すので、子供はずっと施設で育つ話になっている。
    家族との決裂の決定打に何があったのかは描かれてないので、ちょっともやんとする。けど、たぶんそれがリアル。



    第三話  逃避行

    子どもが虐待されている家族の話。
    いや。この本の全部がそーいう話なのだけれども……この話は、このケースでは『何が原因で虐待が起きているか』が判る。
    全てのケースがこんな簡単ではないだろうけれども、物事は一方向から見てはいけないという話になっている。
    父親が暴力を振るうという母親がわからだけの話を鵜呑みにして、父親から逃げる作戦(逃避行)を立てるが、
    結局元に戻ってしまう。その後の母親の話から、暴力の根源は『父親の嫉妬』だと判る。
    子どもの世話より、俺の世話をしろというやつである。
    色々と思うことはあるケド……。まぁ。この時代なら、そうだなと思う。



    第四話   父と娘
    性的虐待の話。トラウマ(PTSD)の話……になるんだろうか?
    母親は最初は子供の言葉を信じなかったが、現場を目撃して離婚した。
    ……これ、目撃しなかったらずっと続いてたって事だよね。と思うと、ゾッとするけど、たぶん、そーいう話もあるだろうな。


    第五話  祖父と父と私と
    こちらも、性的虐待の話。四話と違って、代々続いてきて『それが普通の事』と思っている母親。
    最後には、被害者の子供が、親戚の子供に加害行為を行って困る……という話になっている。正しい知識がないために、被害者が加害者になる。
    救いがない……。



    第六話   浮気の代償
    ネグレクトの話。こちらは明るい未来で終わっている。救いある話になっている。
    けど、父親の姿が薄いのが気になる。浮気が原因になってるけど、経済DVもある。



    第七話・第八話  婚約指輪
    不倫の末の子供を殺そうとする話。これも明るい未来の可能性で終わってる。
    子どもを結婚のだしに使うのは虐待にはならない……モヤンとする。



    第九話・第十話  それぞれにできること
    複数の機関の連携で家族を支える話。
    揺り戻しを起こしながらも、いろんな人の手を使って一人の子供の為に連携する……って難しい。
    プライバシーに踏み込みすぎず、適度な距離で見守るってどの程度がいいんだろう。

    そんな感じのまとめのお話だった。



    ざっと読み直してみて……母親の話は結構あるケド、父親は影が薄いか、仕事の話で終わりだったりする。
    もしくは、浮気だとか嫉妬だとかのサクッとした理由だけを残して出てこない。
    最後に子供と笑うのは母親の姿……モヤンとする。

  • この漫画家さんも、24年組に含まれるんですね。

    児童虐待について掘り下げた深いマンガです。

    独身のときに繰り返し読みましたが、子ども産んだらもう読めません。

    児童虐待のニュースさえも、耳をふさいでいるのに‥。

    たぶん、心のどこかで他人事じゃないと思っているんだと思います。

    子育て中はあまりにリアルな現実より、ジャニーズとか宝塚に走ったほうが精神的に健康になれるのかもしれない。

  •  椎名篤子のノンフィクション『親になるほど難しいことはない』を原作にしたドキュメンタリー・コミック。1994~95年の作品で、児童虐待を題材にしたマンガの先駆である。

     作中、現場の若手医師が「ネグレクトって…?」と言う場面が出てくる。いまや知らない人はごく少ないであろう「ネグレクト」という言葉が、医師の間ですら一般的でなかった時期の作品なのだ。
     だからこそ、児童虐待の実態について随所でていねいな説明がなされており、コミックの形をとった児童虐待問題入門としても読める。

     タイトルの『凍りついた瞳』とは、被虐待児特有の、子どもらしい表情を失った冷たい目を指す医学用語「凍りついた凝視」(Frozen watchfulness)のこと。

     一話完結(一部は前・後編に分かれている)で、保健婦・児童相談所所長・医師・ケースワーカーなど、児童虐待問題にかかわる者たちの目から見た一つの事件が描かれる。
     ベテラン・マンガ家であるささやななえ(現在は「ささやななえこ」に改名)は、過度に刺激的な描写を避け、巧みな構成と落ちついた絵柄で、ていねいにマンガ化している。

     特徴的なのは、虐待する親を「人の心を持たない鬼」として描くのではなく、一人の弱い人間として描き、虐待に至った心の軌跡にまで分け入っている点(むろん、どんな背景があろうと虐待が許されるはずもないが)。
     たとえば、私が最も強烈な印象を受けた第2話「あの子はいらない」では、虐待が「すれちがってしまった親子愛」の悲劇として描かれる。

    《佐藤量子のケースは、鬼のような母親とかわいそうで弱い子ども――という虐待につきまとうありがちな設定を、根底から突き崩すものだった。こんな子どもはいらないと言いながらも施設に足を運んでなつかない娘に会い続けた母親と、母親を慕いながらも怒りを買う行動しかとれなかった子どもが迎えた破局。河西はこの母親と量子のすれちがってしまった親子愛のことを思いだす度にやるせなくなる。
    (中略)
     虐待をうけた子どもたちは、成人しても、老人になっても、家族を思うたびに心から血が吹きだすだろう。(句読点は引用者補足)》

     全10話のうち、前半5話では解決の糸口すら見つからなかった虐待ケースが描かれる。逆に後半5話では、関係各所の尽力で親たちが変わり、壊れた親子関係の再構築が始まったケースが描かれる。
     したがって、後半のほうが希望を感じさせて、読後感はよい。が、読者に問いを突きつけるような前半5話にも、強いインパクトがある。いずれにせよ、全編、児童虐待問題についての理解を深める内容だ。

     児童虐待防止法制定(2000年)以前の作品だから、本作で描かれる関係機関の対応などは、現状とは異なる面もあるだろう。それでも、虐待が深刻化の一途をたどるいまこそ、広く読まれるべき秀作である。

     なお、児童虐待防止法制定には、本作も少なからず影響を与えたという。

  • 漫画であるが故の伝わりやすさを活かした作品。映像の方が求心力は強いかもだけど、瞬間を逃したらもうそれまでだし、かといって活字だとハードル高く受け取られる可能性が高い。知っている人にとっちゃ、目新しいことはひとつもないけど、知らない人に対する訴えかけって意味では成功していると思える。そんな作品。

  • 仕事関係。
    出版が約20年も前のものなので、
    施設や法整備など今はもっと配慮されているとは思うのだけれど、
    それにしたって虐待の現実はなにも変わっていないんだろうな。

  • 児童虐待のコミック本

    読者からの手紙をベースに作者の取材などによる経験値で再現されていた

    児童虐待や老人虐待等の心理を知りたくて
    色々と読んでみたりしているが
    文字で見るよりも壮絶な雰囲気が伝わってきた(´•ω•̥`)

    施設名称や職種など
    どういった施設なのか職業なのか分からない部分か多いが、その部分も理解しやすかった

  • 絵やストーリーに遊びはなく、ずっとシリアス。虐待している親の視点への感情移入度は低い作品。難しい世界だ。

  • 信じられないし、信じたくはないけれども、おそらくはこういうことはある。外からは見えないところで起きていることゆえに、周りはどうキャッチしていったら良いのか。そういう意味でこの1冊は警鐘として受け止めたい。

  • 自分の子供を虐待する親の姿はいろんなものの中に書かれている(描かれている)。いつも思うのは、大人ではない子供の肉体が長期間虐待に耐える肉体を持っている事の凄さだ。大人に比べ、あんなに弱弱しく、頼りないのに、大人の容赦ない暴力に耐える期間があると言う恐怖。どこまでやれば人間の体は壊れないか、など、机上の空論としか思えないほど、子供の肉体は虐待に対抗して生きている。
    子供を持とうなんて生まれてこの方考えた事ないし、この先もない、恐らく心のどこかが壊れているんだと思っている。母性で読んでいるのでもない。だけど、子供の寂しい気持ちだけは痛いほど解る。私もきっと子供のままなんだろう。子供の不遇に同情するのは簡単だが、この悲しみの前に何もできなくなってしまう人間の方が多いだろう。手を差し伸べて悲しみを受け止められるだろうか、寄り添えるだろうか、この子供のたった一つのよりどころになる勇気が出るだろうか、って考えてしまう。子供が欲しい、育てたいなど思った事のない私の様な人間の為に、こう言う書物があり、読まねばならないのだ、と言う気がする。

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著者プロフィール

作家・ジャーナリスト。
主な著書に、『凍りついた瞳2020』(編著、集英社、2019)、『がれきの中の天使たち』(集英社、2012)、『愛されたいを拒絶される子どもたち』(集英社、2007)、『新凍りついた瞳』(集英社、2003)、『親になるほど難しいことはない』(集英社文庫、2000;講談社、1993)、『虐待で傷ついたこころのための本』(大和書房、1998)、『ちいさなわたしをだきしめて』(集英社、1998)、『家族「外」家族』(集英社、1997)、また、著書を原作とした漫画化作品に『愛ときずな』(絵:ごとう和、秋田書店、2010)、『凍りついた瞳』(絵:ささやななえ、集英社、1995)など多数。

「2019年 『イギリスの子ども虐待防止とセーフガーディング』 で使われていた紹介文から引用しています。」

椎名篤子の作品

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