ジャパン・ホラーの現在地

  • 集英社 (2024年7月5日発売)
3.48
  • (5)
  • (15)
  • (19)
  • (1)
  • (2)
本棚登録 : 388
感想 : 19
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • 本 ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087881042

作品紹介・あらすじ

今、なにが怖い? 人気作家、TVプロデューサー、映画監督、配信者など、日本のホラー文化最前線のクリエイターたちとともに考える論考集。

目次
1章 今、テレビだからこそ出せる「怖さ」 ――大森時生
2章 『近畿地方のある場所について』が明らかにしたヒットの要件 ――背筋
3章 文字の怪談、声の怪談 ――黒史郎
4章 インターネットで語られる怪談 ――かぁなっき 煙鳥
5章 回帰と拡散のホラーゲーム 2015-2024 ――向江駿佑
6章 汲めども尽きぬ「民俗ホラー」という土壌 ――澤村伊智 飯倉義之
7章 ほんとにあった! 心霊ドキュメンタリーの世界 ――寺内康太郎 心霊ビデオ研究会
8章 透明な私 ファウンド・フッテージの作り方 ――梨
9章 ブームからリバイバルへ ホラー漫画の40年 ――緑の五寸釘

【電子版特典】
テレビ東京60周年記念式典で開催されたイベント『祓除』についての座談会「『祓除』とはなんだったのか」(大森時生氏、寺内康太郎氏、梨氏、背筋氏)を収録。
※電子版のみの特典となります

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • ホラーや怪談についてこれまでどのような手法が使われてきたのか、物語の舞台、ジャンルとしての立ち位置、過去を経て現代ではどのようなものが求められているのかなど、すごく真面目な対談と考察の本でした。今では当たり前に目にするモキュメンタリーも、最初は本当に不気味だった。最近怪談系のYouTubeとか小説や映像も似たり寄ったりで飽きてきたので、王道のホラーが欲しい。

  • こういう類の本を読みたくなるということは、やはり私はホラーが好きなのかもしれない。
    いろんなホラー作家さんが対話している。
    正直ホラーおたくにはたまらないのだろうが、私はそこまでおたくではないので読んでてもふーんって感じだったり、なんの話だ?って感じにはなった。

    昔見てたホラー番組や動画って結構信じてた方だったけどこれを読んであれ、フィクションなの?やっぱってなった。でも本当かもって信じ込むくらいリアリティがある作品が作られているんだなぁっと思う。ゾゾゾとか好きです。

  • 確固たる日常、正気や常識がおびやかされる不安や恐怖を楽しむのがホラーというエンタメなのだとしたら、現在の日本では、その日常の正気や常識を何がどういう方法でおびやかしているのかが一覧できる。怖い話は(後悔することになっても)「聞きたくなる」ものであり、「話したくなる」ものなのは、危機意識などによる本能的なものなのだろうが、それゆえに聞き手が次の話者になって拡散していく、つまり参加型であり共同制作されるジャンルという一面を持っている。そして日常をおびやかすものである以上、その怖い話の中で日常のリアルをどう保証するのかが、話者の腕の見せ所であり、それによってより聞く人をどれだけ怖がらせるかにかかってくる。ネットにより多くの人の参加が可能になり多くのホラーが発信され、より怖がらせる技術が磨きに磨かれているのが現在なのだろう。もともと特定の宗教観に支配されない無神論者なのが日本人なので、安直に黒魔術とかサタンとかに着地しない発想の自由さがある上に、基本的にどんなジャンルにおいても精巧な技術を極めるのがどうも得意な民族なので、「より本物らしく(したがって)怖い」を今はここまでひねって創っているのだなぁと感心する一方で、特に本書で言及されているわけではないのだが、たとえば怨念や情念のストレートな禍々しさなどは韓国もののほうがエグく感じる。他国のホラーの現在地で比較文化論なども読んでみたいと思った。                    

  • ホラーというより、現代人がどういう時に不気味さとか違和感を感じるかクリエイター目線で語られてていて、今年読んだ本の中で1番面白かった。
    発想の元となったコンテンツとか、どんな狙いがあったかを知れてワクワクした。

    大森さん同い年か〜。。同じコンテンツ見ても全然違う視点もってそうで一回話してみたい!なぜテレビでやる意味があったのか語ってるところもめっちゃ解像度高くて納得感あったし、何より業界愛を感じられて良かった。
    今朝聴いてたコテンラジオの最新話で、最も楽しいのは自分と違う視点で捉えてる仲間の感想聴いてアハ体験する時って語られてたの思い出した。読書会また参加してみようかな。

    こういうニッチ市場の業界人が語る本は何となく避けてたけどこれからは食わず嫌いして読んでみる。

  • とても興味深かった。
    吉田氏を始め、映像、書籍、ホラーというジャンルの第一線で活躍する豪華面々による徹底議論。
    恐怖の中のどこに焦点を置くか。そしてどうアプローチしていくかの三者三様さに驚いた。

    例えば、奥様ッソの大森氏は、不気味さや恐怖、そう言った嫌な気持ちを感じる時には余白が必要、つまり恐怖の正体が何であるかを明言してしまうと興醒め、という趣旨の発言をしている一方で、近畿地方~の背筋氏は、きっちりと答えを用意してある。怪異の由縁が分かりません、では話が成立しない。と、自論を述べている。

    こういう造り手の意識の相違みたいな部分が作品に滲み出て、それがまた更に面白さのスパイスとして作用していくのだなぁ。と。

    とは言え、彼等が作品を手がける上で共通する部分にリアリティがあり、それを生み出す上でこんなにも試行錯誤を繰り返しておられるのか…と、もうここは感謝の気持ちしか生まれなかった。その惜しみない努力のお陰で、私はあらゆるホラー作品を大いに楽しむ事ができているのだ。

    フェイクドキュメンタリーであれば、最も効果的に恐怖へ説得力を持たせられる媒体はテレビであるとか。確かに、何気なく流し見をしていたテレビからどこか様子のおかしげなバラエティ番組が流れてきたら、それはとんでもなく不気味な出来事だ。思わず「これ…何?」とSNS等で拡散したくなるに違いない、そして興味を持った誰かが配信サイトで、見逃し配信を視聴する。…いや、正に私が同じような順でフェイクドキュメンタリーにハマったのだけど。こういう視聴者の心理を本当によく掴んでおられるのだなぁ…。(私がホラー好きでなければ文中で大森氏が危惧されていたように、フェイクだとは思わずこれらの番組を信じてしまうような事態が起きそうだが)

    実話怪談に至っては、声で語る怪談、そして文章で語る怪談。ここにも様々な工夫が成されている事に感動。ある程度アドリブを効かせることで説得力を生み出す話す怪談、そして事実と異なる事を記すのは許されない文章の怪談。どちらにも難しさはあるのだと思うが、毎度しっかりヒヤリとさせられるから脱帽だ。

    因習村に関する記述の中に、現虚の境目が分からなくなる読者や視聴者が出て来ている、とあった。私も少なからず(言い方が悪いが)寂れた集落や村、反対にその土地一帯に代表する大地主の家なんだろうなぁ…という大きな日本家屋を見つけたりするとつい、もしかして…?と邪推してしまう時がある。

    フィクションはフィクション。何かと世知辛い現実社会を生きながら、その息抜きとして虚構の楽しさを存分に味わっていこうと、改めて。

    長々とした感想になってしまったが、各クリエイターの皆様、本当に楽しいコンテンツを沢山世に送り出してくださって、そしてその作品を…

    見つけさせていただいて、ありがとうございます───。

  • テレビ・ネット・小説・ゲームにおけるホラーを語る対談集。今もっとも勢いのある作者たちが語るホラーの軌跡は非常に興味深い。過去から現在までどのような下地、またその発展がなされてきたのかを知る事ができる貴重な資料とも言えます。ジャパン・ホラー好きは必見。

  • Audibleにて視聴。
    現在ホラー界隈を牽引する映像作家、小説家、漫画家などのクリエイターと吉田氏による対談。
    かなりマニアックというか、今どきのホラーコンテンツが知りたい人、あるいはクリエイター側になりたい人くらいしか、需要はないと思う。
    対談形式のためかAudibleだと、誰が語っているかわからないからなのだが、発話の頭にいちいち名前を言うのが聴いててウザかった(笑)。

  • 動画や漫画や小説の一大ジャンルであるホラーにて、今何が怖いものとされているのか、それぞれのカテゴリでその怖いものがどういう変遷をだどってきたのかを作家やオカルト研究家として活躍している吉田悠軌氏がTVプロデューサー、映画監督、配信者などのクリエイター側の人たちと考えていく論考集
    いずれの章もおもしろく読んだけれど、おもしろかったのは民俗ホラーの箇所だった。私は地方出身ということもあり、恐怖の対象=田舎と短絡的につなげられることを遺憾に思っていたのだけれど、なぜそういうつながりができるのかの理由の一端が示されていた
    今は都会にいる人はすでに数代に渡って都会で暮らしている人が多く、田舎全体を怖いもの、やばいものとしがちで、その内実なんかはあまり想像されない。だから容易にその地域ごと恐怖の対象となってしまう、というのがなるほどなあと納得したんであった
    ほかにもホラーはネットと相性がよく、だからこそ2ちゃんねる発祥のネット怪談などが隆盛を極めたみたいなこととかも書いてる。映画でも配信でもホラーものが好きな人は読んでみるといいかも

  • 2年前くらいから好んでホラー小説も読み始め、この本は澤村伊智さん、背筋さん、梨さん目当てで手に取りました。

    各媒介でホラーに全力投球している方の話が読めて興味深かったです。
    特に製作者側視点の内容は、「怖い」って単純だからこそ深い感情で、それへの到達を様々なアプローチで目指していくの、さすがプロ…と感じました。
    最後のホラー漫画の章は、オタクの熱量を感じて楽しかったです。絶対「裏バイト」出てくると期待していたら言及されたので嬉しい。

    高校生の時、夢中で洒落怖やホラー寄りネット小説をガラケーのちっちゃい画面で読んでいた記憶がある。けれどテレビの心霊番組は見なかったし興味も薄かったな、と思い出しました。今でもそうで、やはり小説や漫画のようにガッツリ虚構、というか物語性のある作品が好きなんだと思う。もっと言えば自分で考察するより朧げにでも答えが見える方が好みで、「ホラー」を楽しむのに向いてない性格だと気付く。笑
    ホラーという大枠ではなく、小説の1つのジャンルとしてホラーが好きなのかも。でも実話怪談や映像作品など、今まで触れてこなかった分野にも興味が湧いたなあ。

  • 各クリエイターの創作に関する話がどれも興味深い。
    漠然と感じていたことが言語化される気持ちよさもある。

全19件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

怪談研究家。1980年、東京都生まれ。早稲田大学卒業後、ライター・
編集活動を開始。怪談サークル「とうもろこしの会」の会長をつとめ、
オカルトや怪談の研究をライフワークに。テレビ番組「クレイジージ
ャーニー」では日本の禁足地を案内するほか各メディアで活動中。
著書に『一生忘れない怖い話の語り方』(KADOKAWA)、『オカルト探
偵ヨシダの実話怪談』シリーズ1~4巻(岩崎書店)、『怖いうわさ 
ぼくらの都市伝説』シリーズ1~5巻(教育画劇)、『恐怖実話
怪の残香』(竹書房)、『日めくり怪談』(集英社)、『禁足地巡礼』
(扶桑社)、『一行怪談(一)(二)』(PHP研究所)など多数。

「2022年 『現代怪談考』 で使われていた紹介文から引用しています。」

吉田悠軌の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×