- Amazon.co.jp ・マンガ (189ページ)
- / ISBN・EAN: 9784088492353
感想・レビュー・書評
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80年代の非行少年・少女たちの世界を、これ以上望めないほど抒情的に、文学的に描いた作品。
あの頃、和希のような子たちは本当にいた。髪を脱色し、スカートを引きずって、凶暴でキレやすく、そしてどこか寂しい目をした子たち。いま思えば、それはたぶん、人一倍傷つきやすい魂を庇うために作りあげた鎧だったのだろう。学校という逃げ場のない檻の中では、誰もが自分なりの方法で、自分を守るすべを身につけなくてはならなかった。私のような地味な生徒は、ルールを守って大人しくしていることが自己防衛の手段だったが、与えられたルールなど鼻で笑い飛ばすような子たちに、99%の反感と1%の憧憬を抱いていたのも事実だった。
そんな思春期の子どもたちの心のゆらぎや危うさを、この漫画は美しく繊細に、そしてシビアに描き出してゆく。大人になったから分かるのだが、作者は非行に走る子たちの心を理解し、寄りそいながらも、決して同調はしていない。周囲の忠告を無視して無茶ばかりしてきたハルヤマと、嫌なことから目をそらしつづけてきた和希は、物語の終盤で手酷い罰を受けることになる。無謀と勇気とは違う、いのちを粗末にする者には相応の報いがあると、物語を通して作者は語りかけているようだ。
それでも、そんな愚かさもひっくるめて、作者は若者たちを優しく見つめているようにみえる。物語の序盤、
「(美穂子のためなら)いつでも死ねる」
と言っていたハルヤマは、物語の終盤、
「(和希を残して)死にたくねぇ」
と言うのだ。世の中には大人になるために、人より多くの犠牲が必要な子がいる。痛みも傷もその子にとっては、成長のために必要な通過儀礼なのだ。大人が彼らに代わって壁を乗り越えてやることはできない。大人は彼らが自力で壁を乗り越えるのを、信じて見守ってやることしかできない。
若者たちの未来に幸あれと、エールを送りたくなる作品である。現実は、そんなに甘くはないからこそ。 -
「見ててくやしーのはさー、きっとみんなおんなしー。
昔っからあいつ人のやれないよーなこと平気でやるしー、自分がメタクソ危なくなってもやっちゃうし。オレそーゆーのすっげーくやしくってさー。
けど、マジでときどき、ホントに、一回でいいから、あんなふうになってみたい…って思う…。」
そんな感じ。
初めて読んだときはそういうハルヤマの危うい格好良さに引き込まれたなあ。
3、4周読み返して、いろんな大人たちの視点でも読めるようになった。あらためて、名作。
「ボクは、和希ちゃんや他の…たとえば暴走族じゃない子たちにも、そんな時は一度はきてしまうもんじゃないかって思ってる。
それは大人にとってはすごくこわいことだし、一歩まちがえば大変なことだけれど、
もしかしたら一生のうちで、なにも見えないで走ってしまう時はほんの一瞬かもしれない…。」
青春。 -
ほわほわしてるけどズシンとくる描き方が面白い。
お母さんの方に共感してしまったけど、思春期に読んだらまた違ったんだろうな。 -
きものの先生より。
『どうすれば愛しあえるの』より。くらもちふさこに影響受けた。2018.5 -
80年代10代青春(?)少女マンガ。
懐かしい…。
マンガマンガしてないデッサン的な繊細な絵柄が
好きでしたね。
当時、本屋さんで他誌よりうず高く積まれた別マが数日後には、そこだけ空いてました。
わざわざリアガラスにカッティングシートで切り絵を貼ってる車も走ってました。器用な方もいたもんだ(^^;)ウマカッタンダコレガ
Wikiより----------
作者の代表作。『別冊マーガレット』(集英社)に1986年1月号から1987年5月号まで連載された。
単行本全4巻(絶版)、文庫版全2巻、完全版全3巻が刊行されている。 -
まさしく、旧型中二病。うちらの地元にはこじらせたままのやつが今も生息している。やつらには今だバイブルであろう。1986年初版。
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幼すぎる10代の春山と和希の恋が始まった。
純愛にキュンとする。湘南っていうのも、また良し。 -
全4巻・全巻購入済
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中学生の頃、読み終わった日の夜は怖くて眠れなくなった。
母に「そんなになるような本なんか読むな」って怒られたっけ。
たぶん、こんな世界に行きたくない、
でも、いつこの世界にいくか分からない怖さがあったのかな。
登場人物の誰にも共感できなかった、むしろ嫌いだったくせに、
意図せず、娘に主人公と同じ名前をつけてしまったあたり、
心に残っていた作品なのかもしれない。
いつかもう一度読んでみようと思う。
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そしておかえりなさいませ♪
レビュー再び楽しく読ませてもらっています(*´∇`*)
nejido...
そしておかえりなさいませ♪
レビュー再び楽しく読ませてもらっています(*´∇`*)
nejidonさんもこれ、リアルタイムで読んでた世代ですか(お仲間だ♡)。私も友達から借りて読んでました。私の場合は逆にこの作品だけが心に残っているんですね。恋愛至上主義な物語が多い別マの中で、唯一、毛色の違う作品でしたので。
なんでヤンキーでもない私がこの漫画は好きだったのか。今回読み直して気づいたのですけれど、これ、ヤンキー漫画の体裁をとった教養小説なんです。構造が児童文学そのものなんですよ。
しかし今読むと、暴走族どうしの抗争とか、本当に時代を感じますね。仰る通り、月日の経つのは早いですねえ(^_^;)
懐かしいタイトルに思わずコメントしてしまいました。実は私も中学生の頃に読んでいました。そして、nejidonさ...
懐かしいタイトルに思わずコメントしてしまいました。実は私も中学生の頃に読んでいました。そして、nejidonさんのコメントを拝見してびっくりしたのですが、私も吹奏楽部でした。(あんまり関係ないですが……笑)
私の場合は高校に入学してすぐの頃に一目惚れした男の子が春山に外見がそっくりで(紡木たくさんの描く人物ってその頃までの少女マンガとは雰囲気違いましたよね)その子を重ねながら、何度も読み返してはドキドキしてたので、とても印象深いマンガでした。
そんな調子だったので、春山と和希が今までの行動に対しての代償?のようなものを背負うことになっても、ただ単に格好いいふたりだなぁと思ってただけだったと、あの頃の自分を思いだしてます。
佐藤史緒さんのレビューを拝見して、これはもう一度読み返さなくてはという思いに駆られました。今なら、ふたりのそして周囲の大人たちの呟く言葉の一つ一つの意味が深く突き刺さってくるのではないかと……
うわっ、気づくのに何十年かかってるんだろう。私はそんなボケ〰️とした思春期を過ごしてきてしまったけれど、あの頃、このふたりに自分を重ね、心に何かが芽生えた子どもたちもいたことでしょうね。
懐かしの漫画が語れるお仲間がまたひとり♡
地球っこさんもnejidonさんと同じく吹奏楽部だったんです...
懐かしの漫画が語れるお仲間がまたひとり♡
地球っこさんもnejidonさんと同じく吹奏楽部だったんですね。楽器を奏でられるって良いなあ、憧れます。
そして憧れの先輩がハルヤマ似!
それは惚れるわ〜\(//∇//)\
一目惚れから進展?があったのかは敢えておききしませんが、とても大切な思い出なんですね!
あんまり恋愛と縁がない高校時代を送った私から見ると、ちょっぴり羨ましく感じます(笑)
ともあれ、私は電子書籍で読み返したのですが(便利な時代です)、大人になってから読むとまた異なる面白さがありました。和希のママの方に感情移入して、思春期の子どもって難しいわよね〜、とか思ったりして。あんなに若者の気持ちを代弁してるようでいて、実は大人の視点もしっかりとある作品だったのだな、と改めて感銘を受けたのでした。