榛野なな恵さんの貴重な初期作品。絶版。
榛野さんは35年前からこんなに優しい漫画を描いていたのに、それから日本は、少しでもこの母子にとって自由な世の中になったのだろうか。
本当は一人一人がマイノリティーで、彼らのように自分たちの王国を作っていってこそ、自分にも他人にも優しく慣れるのに、未だにマジョリティーが人の城に住みながらマイノリティーにズカズカ踏み込んで来るわけだ。
「少数派だろうがいることはいるのよ。少数派を無視するのはよくない」
まさにその通り。
そして彼らの作る王国はガラス細工のように繊細で、ダイヤモンドのように強固で、玉虫色に変色していく。
自分たちの王国に誇りを持ちつつも「大きく欠けたものがある」と思ってしまうことで、やはりマイノリティはマジョリティより傷つきやすくなる。
自分がマイノリティになり、どうしても自信が持てないとき、気持ちの行き場を失った時に、この物語を読むと、すうっと心が慰められていく。
榛野なな恵の作品はどれも、そう。