キュイジニエ no.1 (ヤングジャンプコミックス)

著者 :
  • 集英社
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本棚登録 : 13
レビュー : 1
  • Amazon.co.jp ・マンガ (216ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784088760889

感想・レビュー・書評

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  • タイトルを見て、なんとなく前に読んだ、フランスを舞台にした料理コミックと一緒かと思いましたが、別ものでした。
    (ちなみにその作品は『マリー・アントワネットの料理人』)

    舞台は日本。KMKと呼ばれる謎の料理人が、有名シェフと料理対決をするTV番組が放映されています。
    相手を負かし、「Kiss my knife!」という決め台詞と一緒に、料理人の命ともいわれる包丁を相手からもらい、キスをするという決めポーズに、高視聴率を保つ人気番組。

    謎に包まれたKMKですが、舞台は一変して、彼の普段の素顔へと変わります。
    種明かしが早い、と思いますが、彼が主人公だったわけですね。
    華やかな表舞台の陰に、彼の思惑がひそんでいました。
    番組に出るのは単に目立ちたがりのデモンストレーションではなく、23年前に殺された父親の敵を討つため、手掛かりとなる包丁を探していたことが明かされます。

    仇討とは、かなり時代錯誤的ですが、現代の情報社会においてもなお、簡単にはつかめない犯人の行方。
    頼みとなるのは、世界に二つとない父の包丁だけ。
    読んでいるこちらも、力が入ります。

    フランスに修行した料理人を片っ端から対決相手に指名し、包丁を巻きあげていく彼。
    なんといっても、料理対決には華があります。
    口が悪く、相手を挑発あるいは牽制して、対決に臨むKMK。大口をたたくだけの実力で、確実に相手を負かしていくのが小気味よく、かっこいいです。
    覆面で活躍するなんて、怪傑ゾロみたいですね。
    フランス料理界に権威をかざし、旧態依然とのさばっているシェフたちの鼻をへし折り、空気のよどんだ料理界に風穴を開けるということで、爽快感を味わえます。

    フランス語の食材用語が紹介されており、ためになります。
    「フォン・ド・ボー(fond de veau)」という言葉をなんとなく漠然ととらえていましたが、fondはだし汁という意味で、つまりは「牛肉のだし汁」だとわかりました。
    なんだか日本語に直すと、別もののような気がしてしまいますが、ブイヨンの牛肉版ということでしょう。

    ただ、厨房のシーンでは、誰も帽子をかぶっていないので、コック帽があった方がいいのではないかと思います。
    KMKが普段働いているのは一流ホテルの厨房という設定なので。女性は髪が長めなわけなので、気になりました。

    とにかく、主人公が生き生きと輝いています。
    真摯に料理と向き合っているからでしょう。

    対決でピンチに陥っても、持ち前の応用力で切り抜けていく手腕が鮮やか。
    茹でキャベツで腸詰の絞り袋の代用をしたのには舌を巻きました。
    原作者は元調理人とのこと。でないととても思いつかないでしょう。

    この本を書き上げるにあたり、麻布のクイーンアリス迎賓館に取材にいったレポートが載っていました。
    元は黒柳徹子の母君のお宅だとのこと。知りませんでした。チョッちゃんハウスはなんてゴージャスなんでしょう。

    原作者による、作中に登場したレシピが巻末に紹介されています。
    TV番組用の、現実感のなさそうな料理でしたが、それが実際に作れるとはビックリしました。
    また、「インドにビーフカレーなんてものは存在しませんよ」というセリフにはハッとしました。
    インドでは牛を食べないんですから、確かにそうですよね。
    ビーフカレーって、現地のものではなかったんですね。
    そういう、さりげなく気付かされるネタがそこここに出てきて、楽しく読めました。

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著者プロフィール

1962年、東京都国立市出身。ホテル勤務を経て、在ブルネイ日本大使公邸(1990~93年)、在ベトナム日本大使公邸(1994~98年)で公邸料理人を務める。98年『大使閣下の料理人』で原作者デビュー。主な作品に『信長のシェフ』(芳文社)、『グ・ラ・メ! ~大宰相の料理人~』(新潮社) 、『星に願いを』『キュイジニエ』(集英社)など。

「2014年 『ヘルズキッチン(13)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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