ゴールデンカムイ 9 (ヤングジャンプコミックス)

著者 :
  • 集英社
4.07
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感想 : 79
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  • Amazon.co.jp ・マンガ (194ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784088905549

作品紹介・あらすじ

不死身の杉元。新撰組、鬼の副長・土方。ついに出遭ってしまった…二人。手を組むのか? 殺し合うのか? 『金塊』を巡る闘争は新たな局面へ…!!? そして、ついに…ついに表紙を飾った脱獄王・白石の過去の「恋」と「脱獄」の駆け引き、脱獄浪漫編も収録。枠にも檻にも収まらぬ! 面白さ常識外れな第9巻!!!!!!!!

感想・レビュー・書評

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  • 狩る!食べる!戦う!生きて輝け!!
    北の大地で繰り広げる五感震えまくりエンターテインメント」ゴールデンカムイ9巻目。20冊ほど積読になっていたものを一気読み。内容の面白さと積読崩しの爽快感が両方そなわり最強に見えます。
    カバーイラストは白石由竹。1巻目からのレギュラーで、まさに「愛され脱獄王」とか「脱糞王」とかのキャッチフレーズで親しまれていましたが、この巻にしていよいよ彼が「脱獄王」となった経緯とその手口が明かされます。

    と、まあ白石のお話の前に。
    間一髪で牛山に坑道から救い出された杉元と白石は、その流れで土方一味と顔合わせ。

    ここでまた伏線が。のっぺら坊とともに獄中生活を送っていた土方は、どうやらのっぺら坊から何かを聞いていたのではないか。前巻でもそんな暗示(パルチザン)がありました。
    この巻明らかになったのは、アシㇼパさんとのっぺら坊が親子であることに気付いていて、しかもそれを他人には知られたくない様子です。

    「手を組むかこの場で殺し合うか選べ」と敢えて演出した緊張は情報を隠したいがため、でしょうか。アシㇼパさんのお腹が鳴ったことで曖昧になり、何となく杉元達と土方達で協力して偽の刺青人皮の見分け方を探ることになりました。

    笑いとアクション、変態と生きる輝きが同居しているこの作品にあって、ストーリーラインが骨太であることに改めて驚かされます。
    同じお宝を狙って争う3チームですが、時と場合に応じ、それぞれが手を組んだり殺し合ったりと一筋縄ではいきません。
    さらに、3勢力それぞれに属するキャラクターたちはそれぞれのチーム内にあっても同床異夢です。遠大な目標のための軍資金が欲しい鶴見中尉と土方歳三はともかく、杉元に復讐したい二階堂、目的が見えない尾形百之助、何も考えてなさそうな白石と牛山、父の死の真実を知りたいアシㇼパさん。
    そして杉元は、もはや大金を手にすることより、アシㇼパさんの願いが成就する手助けをすることに心が移っている様子。
    こんなストーリーの柱を、暴力と笑いと変態とグルメの裏にしっかり立てていて、ところどころでその影がちらつくのです。
    逆に言えば、面白さに油断して先へ先へと読み進んでしまうと、果て、どうして今杉元は尾形と共闘してるんだっけ?と考え込んでしまう羽目になります。一読、二読、三読しても新たな発見があります(読み飛ばしがちな自分の読み方が悪いのかもしれませんが)。
    そんな濃厚な作品です。

    江渡貝のアトリエでニセの刺青人皮の見分け方を捜索中、これを隠滅しに来た第7師団と戦闘になり、結局見分け方を入手できなかった杉元+土方チームが次に目を付けたのは贋作師である熊岸長庵。「偽物づくり」という共通点から、何か手掛かりを得られるのではないかとして、彼が収容されている樺戸集治監に向かうことになります。

    この熊岸長庵も実在の人物熊坂長庵をモデルにしている様子。脱線しますが、白鳥由栄、熊坂長庵、樺戸集治監とWikipediaサーフィンを続けてぶち当たったのがかつてのNHKの大河ドラマ「獅子の時代」。そっか、北海道が扱われてるのか、菅原文太主演かあ…あれ、DVD出てるの?19,800円×2かあ…なんて、危ない方向に走りそうな自分が怖い。松本清張の小説くらいで止めておかないと…。
    関連作品を追いかけるとお金はともかく、時間はあっという間に溶けちゃいますよね。まあ、次はあの本を読んでみたい、こっちも面白そう、って想像するのはとっても楽しいんですけれど。

    で、その熊岸長庵と同時に収監されていた白石の思い出話として「脱獄王」と呼ばれるほど脱獄を繰り返した過去が語られます。
    動機はともかく、その手口には執念が感じられます。なかでも、看守の目を盗んで作った合鍵の隠し場所は、漫画ならではの表現方法もあって凄みがありました。普段の「愛され」ている白石との落差に震えます。ああ、これがギャップ萌え…。
    あまりのことに、白石のモデルとされる実在人物白鳥由栄を描いた小説「破獄」を買ってきてしまいました。

    熊岸長庵と話すべく樺戸集治監へ向かう途中、一行が立ち寄ったコタン。しかし、そこは脱獄囚がコタンの男を殺してアイヌに成りすましている集落でした。
    アシㇼパさんを人質に取られて我を忘れた杉元の切れっぷりは凄まじく、ほとんど杉元一人で偽アイヌの脱獄囚たちを皆殺し、その怒りは尾形をして「おっかねえ男だぜ」と言わしめ、また ヘペレセッから逃げ出した羆と一対一で対決して背負い投げでこれを撃退した牛山も霞むほどです。

    杉元がアシㇼパさんに向ける感情は、おそらく尊敬から発して、ここしばらくは庇護欲が増してきたように思えます。逆にアシㇼパさんが杉元に寄せる思いには、父性に対する思慕を含みつつ、インカラマッと張り合いたくなる気持ちも少し混じっている様子。色気とは全く縁のないこの漫画の中で二人の関係性がどうなっていくのか、なかなか想像しづらいものがあります。


    その他のコンテンツですが、恒例の「オソマおいしい」ネタは無し。
    グルメ関係は家永製のナンコ鍋とヤマシギ(トゥレㇷ゚タチㇼ)のチタタㇷ゚。料理そのものよりも無理矢理チタタㇷ゚づくりに参観させられ、素直でかわいい牛山とやっていられない風の尾形の対比が見ものです。


    どんどん人間離れしていく二階堂の行く末に固唾を呑みつつ10巻へ。


    第81話 隠滅
    第82話 二階堂
    第83話 恋占い
    第84話 獄中
    第85話 恋路いくとせ
    第86話 昔の話をしよう
    第87話 お行儀
    第88話 耳長おばけがやって来る!
    第89話 沈黙のコタン
    第90話 芸術家

  • 江渡貝の家で、杉元の一行、尾形、土方、長倉、牛山、家永が一同に会しているところを、二階堂たちが襲う。屋敷には火が放たれる。樺戸監獄に収監されている熊倉という贋作画家を訪ねに現地で落ち合う約束をして土方と家永は別れる。熊倉なら偽の入れ墨を見抜く方法を知っていると考えたからである。

    白石が脱獄王となった経緯が明らかにされる。熊倉の描いた修道女の絵に一目ぼれしてしまい、彼女を探して北海道各地の監獄を巡っては収監され、脱獄の繰り返しだったのだ。白石のキャラがどんどん立っていく。

    杉元の一行は、樺戸の近くのアイヌの村を訪れるが様子が変だ。この村は、脱獄囚たちが乗っ取り、変装して偽札づくりに励んでいたのである。熊倉もここに暮らしていたが、正体を見抜いた杉元達と囚人たちに戦いが始まり、熊倉もその巻き添えになって死んでしまう。

  • ついに出会ってしまった土方歳三と杉元佐一。
    「最後の晩餐」的「なんこ鍋」でもって今回は手を組んで第七師団に挑む~。一行は刺青人皮の見分け方を知るために偽造にたけた熊岸長庵を探しに行くのだが…
    いや~今回はアイヌのコタンを訪れたところからがめちゃくちゃおもしろかった~ドキドキしたよ。牛山センセ…ヒグマ投げ!?

    10巻へ続く~

  • 2016年マンガ大賞に選ばれたので、いつか紐解かなくてはならないと思っていた。今回9巻をまとめて読む。ホントは買ってから読むかかなり迷って、ここまで読書記録が遅れた。結局ネットカフェでまとめて読んだのだが、未だに買うべきか迷っている。かつてない本格時代劇であり、キチンとアイヌ文化を取材していたからである。

    時代は日露戦争直後だから1900年前後と思われる。北海道という、いわば辺境の地である。アイヌの砂金から作った莫大な埋蔵金をめぐって、土方歳三率いる囚人組、鶴見中尉率いる陸軍第七師団、そして不死身の杉元とヒロインでアイヌのアシリパと幾人かの仲間。三つ巴の冒険を描く。物欲や陰謀、野望にまみれ、終始血なまぐさい描写が続くのに、読み通してしまったのは、人を殺したヒグマはウエンカムイ(悪い神様)になるので食べないと決めているアシリパの存在と、様々なアイヌの知恵がいっぱいだからだ。

    埋蔵金を見つけるカギは、アシリパの父親が24人の脱獄囚に施した刺青を解読することだ、という世の冒険物語の王道の設定が先ず描かれる。現在その半分近くが進んでいる。物語の構造はまるで「宝島」である。ジム少年の役割は杉元とアシリパに別れ、シルバーの役割は杉元と土方歳三と鶴見中尉に別れて、先が見えない展開である。それに、毎巻著者も試したというアイヌ料理が出て来て、「ヒンナ、ヒンナ(美味い、美味い)」と食べる描写がつく。一口ぐらいは食べてみたくなる。

    自然との共存を目指すアイヌ文化と、近代文明が本格的に侵食して来た20世紀初頭の北海道との摩擦、殺人を禁じていたはずのアイヌ文化と、戦争で人を殺すことに慣れてしまった男たちとの摩擦、相反する二つの文化の衝突も、この作品の魅力であることには間違いないのだが、どう見ても物語はまだまだ佳境には程遠い。

    おそらくあと5-8巻は続くだろう。終わった時に、もう一度論じたい。

    2017年2月7日読了

  • この9巻、勢いが爆発してる。

    江渡貝の館での「最後の晩餐」風なコマ。
    ユダの位置にいるのはキロランケ!?
    それともタダイの位置の永倉新八か!?
    壮大な伏線にワクワクしかない。

    アホに見えて意外と周到な役立たずの白石が、脱獄王と呼ばれるに至ったエピソード。
    下らなすぎるっ!!

    アシリパさんの機転に 皆が救われる場面が数々あり。
    そしてやっぱりなんといっても杉元がそんなアシリパさんに一目置いて、アイヌに敬意を表してるとこ♡

    「アシリパさんが『刺繍に夢中』だぁ!?」のくだり。
    ああ分かってる!杉元、お前は分かっている!

    キャラが立ってますます面白い。
    ああ、10巻が待ち遠しい!

  • 白石の脱獄エピソードから、アシリパさんも知らないコタンの謎と盛り沢山。
    私にとってはどうしても憎めないキャラ白石が深掘りされるお気に入り巻となった。
    牛山氏の侠気だったりも見られて、やはり次巻が気になる。
    ショーシャンクの空に、意識しますね。

  • 改めて味わって読むと
    わかりやすくそこかしこにパロディ・オマージュが散りばめられてるの、
    眠っていたオタクの血が騒ぐな。

    座頭市、サイコ、悪魔のいけにえ、羊たちの沈黙、ショーシャンクの空に、最後の晩餐etc。

    オリジナリティ溢れるからこそ堂々と出来る遊び心だ。

  • 脱獄王の脱獄王たる所以のエピソードはギャグテイストをもった作品では出てきがちではあるものの、脱獄王となったその道程とともに描かれており、よくよく考えるとなかなかなものである。パーティのキャラが確固たるバランスをつくっている9巻はいくつかの過去が明らかになり、話に深みが増してきます。

  • 登場人物が多くなってきたので、結構理解力が必要です。

  • なんこ鍋の「最後の晩餐」
    白石の「ショーシャンクの空に」
    パロディがいっぱい。
    アリシパちゃんのためにブチ切れる杉元がカッコいい。

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