ゴールデンカムイ 13 (ヤングジャンプコミックス)

著者 :
  • 集英社
4.22
  • (113)
  • (149)
  • (43)
  • (1)
  • (0)
本棚登録 : 2032
感想 : 70
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・マンガ (202ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784088908885

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 途中まで揃っているコミックスを積んだままネットでの全話無料公開を一気読みし、その熱狂のまま迎えた最終話公開から凡そ1ヵ月経ちました。

    人に紹介するときに、「冒険サバイバル」みたいに一言で分類したり要約したりするのは難しく、よくわからない表現ながらもやっぱり「和風闇鍋ウェスタン」としか言えないこの「ゴールデンカムイ」は、通読してみれば結局とても面白いマンガでした。いわゆる小並感(小学生並みの感想)ですが、笑えるところ、面白いところ、泣けるところ、刺さるところ、記憶に残るところ、感動するところなど、面白さのベクトルが色々な方向を向いていて、しかもそのどれもがとても大きいので、最終的に「とても面白かったです」と総括するのが全巻を通読した後の感想としては一番しっくりくるように思えます。

    杉元「佐一」に合わせて31巻で終了というのも好きなエピソードです。
    もしかして後付けかなとちょっと思いつつも、でも当初から31巻で終わる構想で、そして当初の構想どおりきっちり31巻で終えてみせたのなら作者の構成力は大したものだと思います。

    と、全話の感想ばかりになりそうなので、これ以上は最終31巻のレビューに取っておくことにして、この13巻について。
    ストーリーは一つの山場に差し掛かりました。いよいよ網走監獄に杉元とアシㇼパさんが潜入します。
    潜入のスリルがコミカルさを交えつつサスペンスフルに描かれる一方で、いよいよウイルクに会って金塊の行方や事件の真相がわかることに対する各人各様のデリケートな心持ちが暗示されるとても繊細な巻なので、お馴染みの各巻ごとの煽りが普段より落ち着いています。
    こんな感じ。
    「金塊の原点。のっぺら坊のいる網走監獄まであと少し…屈斜路湖に辿り着いた杉元一行を襲うは、刺青の囚人・超聴覚の盲目盗賊団! 真っ暗闇の山中を丸腰の男たちが翔る殴る猛る!! この死闘の行き着く先は? そして、鶴見率いる第七師団進撃、土方歳三勢力も暗躍。アシリパの父との記憶、杉元の相棒への想いが交差する…。決戦前夜、開戦絶後の第13巻!!!!!!!」

    さて、物語は前巻のラッコ鍋→露天風呂襲撃の肌色感満載(ただしすべて漢)の続きから。
    都丹庵士との(全裸での)死闘は、彼を知る土方の仲裁で幕切れとなります。一連の騒動は、杉元勢を網走監獄の典獄犬童四郎助と結託した硫黄鉱山関係者と勘違いした都丹庵士の勇み足だったわけですが、主要な登場人物は誰一人欠けることなく、あまつさえ谷垣がインカラマッから真情を打ち明けられる展開も。
    何と言うか作者が全裸活劇を描きたかったがための筋書きではないかと疑っています。

    一方の鶴見勢は根室で集結中。何か準備をしている様子。網走監獄に看守として潜入し、土方勢の門倉看守部長との暗闘から逃れて帰還した、両頬に黒子の宇佐美上等兵から、鶴見中尉が警備体制等を聞き取っています。
    宇佐美は鶴見中尉に心酔しているようで、正体がばれた罰として黒子に付け足された手足を刺青にしてしまいます。鶴見中尉を巡る鯉登少尉との恋の(?!)さや当てがなかなか気持ち悪くて面白い。
    それにしても鶴見勢は間抜け面してるのに戦いでは精強この上ない兵が多く、しかも大抵鶴見中尉に心酔しているのだから油断できません。すぐに死んで退場するだろうと思ってたら結構キーパーソンだったなんてことばかりです。

    土方勢と合流した杉元勢は、網走に向かう途中、北見の写真館で写真撮影。キロランケとインカラマッの写真を撮って彼らの目的について聞き込みをするなんて理屈をつけていますが、実際は谷垣源次郎の半裸の写真を撮りたかった(作者が)からという気がしてなりません。作品中での描かれ方を見ても、各種インタビューで語られた内容を見ても、作者は谷垣が一番可愛いと思って書いているのは間違いなさそうですw。

    その杉元勢は網走監獄の塀のすぐ外側にアイヌの鮭漁用の仮小屋(クチャ)に偽装した小屋を建て、そこから塀の下を抜けるトンネルを掘るようです。
    珍しいことに指揮する白石が頼もしいw。
    門倉の協力を得てトンネルは完成。

    突入前、網走近郊のフチの13番目の妹のコタンにて。杉元勢と土方勢で囲炉裏を囲むという一幕がありました。
    「チタタㇷ゚と言えば本来これを指す」という鮭のチタタㇷ゚を交代で作ります。
    刻み工程に参加するのの、その最中に唱えるべき「チタタㇷ゚」をこれまで頑なに口にしなかった尾形が、「みんなと気持ちをひとつにしておこうと思ったんだが」というアシㇼパさんに応えて小声とはいえ初めて「チタタㇷ゚」と唱えたのはどういう心情の変化でしょうか。愛憎半ばする(いや、半ばしてはいないですね…。憎しみの対象です)鶴見中尉麾下の第七師団を離れ、土方勢・杉元勢と行動を共にしたことで多少なりとも心が動いたのであれば、彼にとっては幸せなことだったでしょう。
    一方でその席上、チカパシは谷垣とインカラマッのアイヌ式の婚姻の仲立ちをしようとします。のっぺら坊はウイルクではないと信じつつ、でも一目ウイルクに会いたいがために網走までやってきたと打ち明けるインカラマッ。道東で自分は死ぬとの占いを谷垣によって覆された彼女は「運命は変えられる」、ウイルクに再会できると思い直し、また、「私は谷垣ニシパと未来へ進みたい」と言い放つのでした。

    ギャグをはじめいろいろな要素でカバーされているものの、根っこのところでは凄惨な要素が多いこの作品にあって、「可愛い」谷垣と紅一点インカラマッのエピソードは貴重な癒しです。
    そう言えば31巻で…、と、ラストを知っているのも善し悪しですね。


    いよいよ突入当夜。

    綿密な計画、暗闇でも行動できる都丹庵士の先導に関わらず、いきなり見張りと鉢合わせする杉元勢。門倉の協力もあり、なんとかのっぺら坊の舎房までたどり着いた杉元とアシㇼパ白石の3人でしたが…。
    ということで、ここからはどんでん返しに次ぐどんでん返しの連続となります。

    昼行燈を装って暗躍する門倉の思い、鶴見勢に通じていたインカラマッとそれを聞いた谷垣の思い、侵入を察知した犬童の思い、犬童の策略に直面したアシㇼパさんの思いと手を貸そうとする都丹庵士の思い、犬童を罠に嵌めてほくそ笑む鶴見の思い…。急展開する事態の中で、キャラクターたちの思いが繊細に描かれるこの巻末の3話は、これまでで最高の盛り上がりを見せて次巻へ続きます。杉元の手を離れ、大混戦の中都丹庵士と二人網走監獄に引き返すアシㇼパさんの運命やいかに。


    あと、この巻では鮭料理が本当においしそうです。
    「氷頭を使い、白子を加え、最後に砕いた焼き昆布を混ぜ塩で整える」鮭のチタタㇷ゚をはじめ、鮭の身の串焼き、「米とヒエを炊いたおかゆにイクラを入れた」チポㇿサヨ、「塩煮したジャガイモを潰したものにイクラを混ぜたチポㇿラタㇱケㇷ゚、チタタㇷ゚以外は何となく味の想像がつきます。

    突入前の夕食を懐かしく思い出しつつ、14巻へ。


    第121話 暗中
    第122話 インカラマッ 見る女
    第123話 形勢逆転
    第124話 思い出の写真
    第125話 実りの季節
    第126話 門倉看守部長
    第127話 本当のチタタㇷ゚
    第128話 新月の夜に
    第129話 五翼放射状平屋舎房
    第130話 誘導灯

  • 夜の露天風呂~
    杉元、キロちゃん、谷垣、尾形、白石、チカバシ襲わるる~
    きのこが~~!!笑った~

    そしてついに網走監獄ののっぺら坊に対面!?

    14巻へ続く~

  • 暗闇の中で始まる、丸裸での戦い!緊張感のあるバトルの中にも笑えるポイントがいくつも用意されてあって好き。真っ暗な廃旅館に入り込んだアシリパが「杉元?」とお尻をグイッとするところで笑ってしまう。都丹庵士に対してアシリパが「こんな暗いところで隠れて暮らして 悪さをするため外に出るのは夜になってから…これではいつまでたってもお前の人生は闇から抜け出せない」と慈悲深く伝えた言葉がよかった。まさにこの言葉の通り、アシリパは闇の中でもがく男たちに光を与える存在になるのかもしれない。

    写真館での谷垣が最高だった。写真師の田本も「いいよいいよぉ 他の人たちはみんな脱いだよ?もうちょっと足を開いてみようか」とかノリノリで爆笑した。写真というキーワードを紹介するたけじゃなく、しっかり笑わせてくれるのがいいよね。

    そして、ついに始まった網走監獄侵入!月の光のない漆黒の夜は、杉元たちの姿だけではなく、彼らの本心も隠して欺いていく。のっぺらぼうがいる独房での見開きページは戦慄した。何が嘘で何が真実なのか。杉元をおとりにした土方の思惑とは。第七師団も突入してきて、のっぺらぼう争奪戦は大混戦へ突入していく。

  • 冒頭から、丸腰での暗闇対決がセクシーさと敵を認識出来ない恐怖で痺れる展開が繰り広げられる。
    更に谷垣ニシパとインカラマッの絆が深まるエピソードは久しぶりに愛するというを感情を呼び覚まされる。
    都丹庵士の実力拝見というところです。
    他にも『神の魚』カムイチェプ、鮭の話は必見です。
    北海道出身の者には常に冷凍庫にストックされている鮭については、小学生が鮭科学館で得るような知識はアイヌの人々にはちゃんと口伝されているんだなと感心しました。
    そして、巻末に向けて網走刑務所への潜入計画が説明されるのです。
    さあ、どうなる?

  • 都丹一味との死闘を素っ裸で戦った杉元一行。どうも薔薇族的な展開になってきた。逃走の途中に、谷垣に救われるインカマッラ。二人の間には愛情らしきものが芽生える。

    いよいよ網走刑務所についた一行。キロランケと谷垣が網走川と刑務所の壁の間に鮭漁の小屋を建て、そこからひそかに刑務所内部へとつながるトンネルを掘る。夜間にアシリパは杉元たちとともに、収監されているのっぺらぼうに会いに行く。しかしこの人物は監守・犬童が仕込んだ替え玉で、アシリパの顔を見るなり大声で叫ぶ。侵入者に騒然となる獄舎。

    しかしインカマッラから情報を得た鶴見は、駆逐艦隊を率い川を上って網走監獄へと迫っていた。目的はアシリパとのっぺらぼうの身柄確保だった。

    ギャグチックな展開(それはそれで面白いのだが)で間延びした物語が、再び緊迫してきた。

  • 物語は北海道にとどまらず、樺太やロシアに広がった。日本という閉じた枠組みで世界を見ることはできない。国民国家は国家権力が押し付けたフィクションである。
    狩りをするアシリパはアイヌ社会のジェンダーではあり得ない存在である。都合よくアイヌを設定に用いているように思えたが、アシリパが特殊な存在になった事情があった。この点は物語の現実味を高める。
    一方で親が子どもに影響を及ぼすという点は個性や自我を重視する近代的人間観からはつまらなさを覚える。「新しい時代のアイヌの女」は自我ではなく、親の理想に従ったことに過ぎなくなる。
    『ONE PIECE』のモンキー・D・ルフィも『NARUTO -ナルト-』のうずまきナルトも『スターウォーズ』のルーク・スカイウォーカーも親が何者かが影響している。親を背負わなければ物語が成り立たないのだろうか。明治的な立身出世主義は下らないが、親に縛られることも不健全である。

  • 全裸の中戦闘し、遂に網走監獄へ。
    そしてそして、第七師団も来て、裏切りもあり、はちゃめちゃな感じに。

  • 公式で推しの全裸が拝めるのは金カムだけ…!
    しかも全裸+軍帽とかフェチにはたまらんな佐一!

    とにかく杉元の近接戦闘能力の強さが際立つ13巻。遠距離無敵の尾形とのコンビは最強なんだけどな。…なんだけどな…。
    いよいよ中盤のクライマックス。

  • この巻が出た時点で全巻購入。
    文句なしに面白い。今最高にハマってるマンガ。

  • ようやくここまで来たよ。
    NINJAから、フラグ立てつつの最終決戦前夜が来て、ついにっ!
    ほんと面白いねぇ

全70件中 1 - 10件を表示

野田サトルの作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×