ゴールデンカムイ 14 (ヤングジャンプコミックス)

著者 :
  • 集英社
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本棚登録 : 1998
感想 : 69
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  • Amazon.co.jp ・マンガ (202ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784088910482

感想・レビュー・書評

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  • 場面転換の疾走感で、巨大なヒグマの迫力で、料理のシズル感で、ギャグの脱力感で、バトルシーンの緊迫感で、谷垣の可愛さで、アシㇼパさんの変顔で、大自然の美しさの描写で、そしてそのジェットコースターのようなストーリーでどの巻も見せ場の連続である「ゴールデンカムイ」ですが、その中でもこの巻は山場中の山場、全巻中の白眉です。

    二転三転しどんでん返しが連続するストーリー展開、次々と回収される伏線、先頭に立って突撃する鶴見中尉と北鎮部隊の容赦ない殺戮ぶり、土方の最高の見せ場、そして不死身の杉元もいよいよ年貢の納め時?
    全話読み切った後でもまた読みたくなる巻です。

    なお、煽り文は今回、前半がちょっと説明的ですが、後半は見事に煽ってます。
    「鶴見、土方、犬童、杉元! 役者が揃い踏み!! 今宵、戦争が始まるッ!!! 瞬き禁止! 刮目必至の第14巻!!!!!!
    瞬き禁止ですって。

    上にも書いたとおり、網走監獄関係は前巻の段階ですでにストーリーが二転三転しています。今回さらに激動するので、頭を整理してみます。

    鶴見勢
    60名強が鯉登少尉の父鯉登少将率いる駆逐艦に搭乗し、網走川を遡上、艦砲射撃で獄舎の外壁を打ち壊して突入。犬童典獄は事態を予期し、マキシム機関銃などで重武装していたものの、歴戦の北鎮部隊はこれを鎧袖一触、さらに門倉が解き放った700人の凶悪犯をもものともせず、「監獄側の証言者?(など残さないから誰も証言などするはずがない)」と嘯く鶴見を先頭に網走監獄を制圧します。
    しかし、潜入していた杉元・白石・偽ののっぺら坊を追い詰めはしたものの捉え切れず、その後杉元と遭遇した二階堂は杉元に返り討ちにされます。
    制圧した網走監獄を離脱しようとしたところ、杉元と本物ののっぺら坊(ウイルク)を担いで現れた谷垣、キロランケに刺されて倒れていた杉元を確保。コタンに潜んでいた永倉新八と家永、土方勢の刺青人皮も確保された様子。

    土方勢
    アシㇼパを杉元から引き離そうと、都丹庵士に案内させて教誨堂前まで誘導し、その場にいた土方が説得を試みるもアシㇼパは隙を見て離脱。
    止む無く教誨堂に入り、待ち伏せしていた犬童典獄と対決、都丹庵士は倒されるも土方は鎖デスマッチで犬童を斃します。
    突入してきた第七師団をやり過ごすため、土方、牛山、都丹庵士、夏太郎と門倉はもともとウイルクが匿われていた教誨堂地下に潜みます。

    杉元勢
    杉元・白石・アシㇼパさんと3人でのっぺら坊の独房に潜入するもこれは犬童の準備した偽物で、大声で騒ぎ立て、侵入が露見します。
    アシㇼパさんを逃すも杉元と白石は独房に雪隠詰めに。

    アシㇼパさんは独り天窓から脱出し助けを呼びに行く途中、都丹庵士と遭遇、本物ののっぺら坊に会わせるという教誨堂前まで同行、土方と邂逅し、ウイルクとの会談を求められるも隙を見て再び逃亡。
    杉元を探す途中キロランケと遭遇、自らのマキリを杉元に渡すように託して正門へ。
    待機中、偵察のため屋根に上っていたインカラマッに呼ばれ自らも屋根へ上り、双眼鏡越しながらのっぺら坊の姿を確認、父であることを認識する。直後にウイルクと杉元が頭を撃たれるのを目撃するも、白石、合流してきたキロランケ、尾形とともに網走監獄を離脱。キロランケ主導で樺太へ向かう。

    白石は特異体質を活かし狭い通気口から脱出、杉元を残し正門へ。仲間の合流を待ち、アシㇼパさん、キロランケ、尾形とともに離脱、樺太へ。

    杉元は通りかかったキロランケの手を借り脱出。アシㇼパさんのマキリを受け取ります。
    アシㇼパさんを探す途中で二階堂と遭遇、死闘を制します。
    さらに監獄内を捜索中ウイルクと出会います。
    アシㇼパはアイヌを導く存在、山で潜伏し戦えるように育て未来を託したと語る彼にあの子をアイヌのジャンヌ・ダルクにでもしようってのか?あの子を俺たちみたいな人殺しにしようってのか!!と詰め寄る杉元。
    しかしその直後、ウイルクが頭を撃たれ、杉元は本能的に致命傷を避けたもののやはり頭を撃たれてしまいます。
    谷垣に物陰に引きずり込まれ難を逃れるも、谷垣、インカラマッ、家永らとともに鶴見の手に落ちます。

    回収された伏線は、
    のっぺら坊の正体とウイルクの目的、
    キロランケの正体と目的、
    インカラマッの思惑、
    土方の企み、
    鶴見の作戦、といったところでしょうか。

    先頭に立つ鶴見中尉に率いられ、獅子奮迅の働きを見せる兵下士官が垣間見せる戦闘の様子はやはり精兵揃いだと刮目させるものです。一方で杉元と二階堂の因縁の対決、土方と犬童の死闘と、壮絶なバトルをあちらでもこちらでも描きながら、伏線をきっちり回収し、それぞれの理念と目的に沿ってキャラクターを動かして骨太なストーリーを紡ぎだす構成力には脱帽するほかありません。
    そして、ウイルクに向かって放たれた杉元の台詞がとにかく切ない。
    「あの子を俺たちみたいな人殺しにしようってのか!!」
    「あんたらの大義はご立派だよ 誰かが戦わなきゃならないかもしれん」
    「でもそれは…あの子じゃなくたっていいだろう?」
    「アシㇼパさんには…山で鹿を撮って脳みそを食べて」
    「チタタㇷ゚してヒンナヒンナしていて欲しいんだよ俺はッ!!」
    戦場で自らの手が血塗れになってしまったことを自覚し、懊悩する杉元の深層は常に見え隠れしています。金塊の争奪戦を戦いつつもアシㇼパさんをそこに巻き込みたくないという二律背反する思いを「チタタㇷ゚してヒンナヒンナしていて欲しい」と表現した根本は、「恋愛要素を慎重に取り除いた」作者が杉元に与えた唯一最大の行動原理です。
    さらに、自らの手が血塗れであることを杉元が気に病んでいることを知っているアシㇼパさんは、杉元と一緒に干し柿を食べることができるのか。恋愛要素を排除したまま作者が描き切れるのか、お手並み拝見です。


    一方で、バトルが最高の盛り上がりです。
    杉元vs.二階堂は後ろから迫る二階堂に陰で気付き、必殺の銃剣を歯で受け止め、さらに義足の仕込み銃にわずかな違和感を手掛かりに間一髪で気付き、さらに力づくで仕込み銃を二階堂のほうに向けるなど、戦いに臨んでアドレナリンが充溢した杉元らしさが満載です。
    「洋平ッ 杉元がそっちに行くぜぇ!!」との決め台詞の直後に切り札を逆手に取られた二階堂のやられキャラっぷりにも磨きがかかってきました。

    もう一戦の土方vs.犬童。
    こちらはのっぺら坊を巡っての争いではあるものの、その実、明治政府vs.旧幕府軍人の矜持をかけた、どちらも一歩も引けない戦いです。
    滴る自らの血ですら武器に使った土方は、「やれ 最後の侍」の台詞を待って犬童に止めを刺しました。互いの存在をかけた甘っちょろさの欠片もないバトルを勝ち抜いたジジイは流石の生き残りでした。


    ここまでを描き切り、大きな目標だった「のっぺら坊に会って金塊の在り処を聞き出す」ことが不可能になった状態で、組み合わせを変えて舞台は樺太に移ります。
    トラブルの予感しかしない杉元・鯉登・月島・谷垣(+チカパシ・リュウ)一行と、何かを企んでいるキロランケ・尾形に引率されたアシㇼパさんと白石一行が樺太で見る景色はどんなものになるのでしょう。


    敵味方の組み合わせが入れ替わり、物語は新展開へ、そして北海道では収まりきらなかった物語の部隊は樺太へ。
    ヒグマすら恐れるクズリの登場がこの先の前途多難さを物語ります。
    はやく続きが読みたいです。



    第131話 破壊欲
    第132話 蹂躙
    第133話 700人の凶悪犯
    第134話 教誨堂
    第135話 鎖デスマッチ
    第136話 最後の侍
    第137話 呼応
    第138話 喪失
    第139話 樺太へ
    第140話 アイヌの女の子

  • 敵味方入り乱れ誰が敵で味方かわからなくなる14巻。
    裏切りと陰謀がめまぐるしく交錯する激動の展開ですが、個人的には第七師団の無茶苦茶な活躍ぶりが熱い!
    さすが無敵の北鎮部隊と恐れられるだけありますね。

    見開きのVS凶悪犯700人が痺れる。
    キチガイとカリスマは紙一重な鶴見はいわずもがな、鯉登も月島もちゃんとすれば強いしかっこいいしシリアスできるじゃないか……!と別方向でも感動しました。

    二階堂VS杉元のリベンジマッチ、土方VS犬童の鎖デスマッチな因縁対決(汚いさすが最後の侍汚い)など、見せ場はもりだくさんだったんですが、杉元の熱い叫びが……

    「アシリパさんにはチタタプしてヒンナヒンナしててほしいんだよ!」

    は全読者の想いを代弁したといっても過言じゃない。完全に杉元と一体化しました。

    他にも予想通りすぎるあの人の裏切りなど、これからの展開が気になる。
    それにしても杉元は不死身すぎる……
    何をしたら死ぬんだコイツ。

  • 話としてひとつの区切りといったところか。人物の関係性もまた大きく変わり、新たにこれからどうなるのか期待が持てます。
    ストーリー展開重視のため、この巻はヒンナ不足。

  • 表紙の土方さん、痺れます。ぜひ、読んで動きを楽しんでください。
    ついにストーリーが大きく展開しました。
    それぞれの思惑がある程度見えてきたように思えます。
    複雑な気持ちになる行動を取る人が1人います。
    今まで読んできた中で一番続きが気になる巻です。
    余談ですが、地味な活躍するタイプの脇キャラが大好物の私にとって、月島軍曹や夏太郎あたりのムーブはたまらない。
    とは言え、ショックが大きい一巻でした。

  • 第七師団が網走刑務所に突っ込み、門倉は囚人を解放、激しい銃撃戦になる。のっぺらぼうを巡って犬童と土方の一騎打ち。すんでのところで犬童を倒す。杉元は二階堂と対決。義足銃をうまくかわし、二階堂は右腕を失う。

    杉元はのっぺらぼうを捕獲。連れて行こうとするところで二人は尾形に頭部を撃ち抜かれる。インカマラもキロランケのナイフで刺され重傷。谷垣は杉元とインカマラを助けたが、3人ともに鶴見に捕まってしまう。

    のっぺらぼうなき今、尾形、キロランケは白石とアシリパを連れて、金塊の謎を解きに樺太に向かう。杉元、谷垣、月島軍曹、鯉登の4人もそのあとを追う。

    刑務所で行われる殺戮戦。壮絶な戦いに次ぐ戦い。テンションの高い巻だった。

  • 「チタタプしてヒンナヒンナしてて欲しい」はそっくりそのまま杉元に言ってあげたい台詞です…杉元とアシリパさんには2人でずっと一緒にヒンナしてて欲しいよ…

    つーかやりやがったな尾形ぁ…!と思いつつも憎めないキャラ作りすばらしいと思う今日この頃。杉元ガチ勢の私ですがやはり尾形は憎めない、というか杉元撃ったあとの尾形格好良すぎてなんなの

  • クライマックス感が高まりつつある。
    黒幕はキロランケか。のっぺらぼうが死んだら話終わりかと思いきや…
    ストーリーの展開も、脚本、演出もギャグのセンスも半端ない!

  • ほぼ全員の騙し騙されが露見してどことどこが仲間⁉︎って混乱するけどそれ含めて面白いアチャと杉本を撃った後に出る尾形が最高にカッコいい。

  • 見えてき、た……?(読解力無いので)誰がどういう思惑で誰と手を結んでるのか見えてもよく解らないけど、杉元がそっちに行くとはけっこう驚きだった。
    消沈するアシリパさんが痛々しい、ヒンナヒンナしててほしい。大方の登場人物が自らの意思で血と泥まみれの道を歩いているのに彼女だけは他人の思惑に巻き込まれしなくても良い戦いをしてる(それでも強いアシリパさんは自分の意思って言うんだろうな)。
    鯉登父に敬語で話す杉元とか白衣の家永とか牛山さんめっちゃ強えーかっけーーーとか、密度が濃い!白石頑張れ超頑張れ。

  • もう、尾形は狙撃が出来ればなんでもいいんだな(笑)

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