さよならソルシエ (2) (フラワーコミックスアルファ)

著者 :
  • 小学館
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本棚登録 : 1792
レビュー : 210
  • Amazon.co.jp ・マンガ (183ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784091355799

作品紹介・あらすじ

ふたりのゴッホの愛と確執と絆の物語、完結

19世紀末のパリに現れたふたりのゴッホ。のちの天才画家の兄フィンセントと画商の弟テオドロス。
子どもの頃から兄の才能を評価し、その絵を世界中に広める野望をもった弟は、マイペースを崩さない兄にやがて嫉妬と怒りを覚えはじめる。だが、兄の身に起こった衝撃の事態を前に、弟はある作戦を仕掛ける決断をした・・・。
兄と弟の切ないまでに純粋な伝記ロマン、堂々の完結。

【編集担当からのおすすめ情報】
デビューコミックス「式の前日」が大絶賛された穂積の初長編作品です。「式の前日」さながらのどんでん返しやあたたかい感動が、本作でも読者を包みます。

感想・レビュー・書評

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  • 19世紀末のパリ。
    画壇界を席巻するパリ一の画商
    グーピル商会のテオドルス・ファン・ゴッホ。

    街に生きる普通の人々や
    労働者たちのありのままの姿を描きたいと願うテオドルスの兄で、
    のちの天才画家フィンセント・ファン・ゴッホ。

    この漫画はそんな二人のゴッホの絆や確執を描いた
    伝記ロマンです。


    高い志を持った
    日の目をみない芸術家たち(ボヘミアン)から
    権威の犬や保守側の人間だと思われていたテオドルス・ファン・ゴッホが、
    「体制は内側から壊すほうが面白い」と言った
    まさかのセリフから
    一気に引き込まれました。
    (巨悪や権威に立ち向かう男たちほどカッコいいものはないもんね~笑)


    貴族の肖像画や神話を元にした従来の権威主義の芸術とは違い
    生活の中にある「ありのままの素晴らしさ」を描いた
    テオドルスが企画したアンデパンダン展によって
    美術革命を起こそうとする若き志士たち。

    そしてその行動は
    金持ちの美術蒐集家ではなく
    一般の街の人たちから圧倒的な支持を受けるのです。

    上流階級のためにあった「芸術」というものを
    市井の人々のものにし、
    貧しさに喘ぐ多くの人の人生を 
    美術によって救おうとする若き志士たちの行動は
    素直に胸を打つし、

    美術は労働者たちにも解るものだと唱え、
    人間のありのままの姿を包み隠さず描く革命は

    危険であったハズのロックという音楽が1970年代に入り
    テクニックを重視しどんどん高尚なものに鳴り果てていく中で現れた
    「パンク」というロック界の「揺り戻し」現象とカブってきて
    個人的にはかなり共感しました。


    もし、誰もが知っているゴッホのストーリーが
    実は作られたものだったとしたら…

    そんな斬新な発想と視点から
    新たに紡がれたストーリーは
    二人のゴッホの絆と
    兄の才能を嫉妬する弟の葛藤を
    実にスリリングに
    そしてミステリアスに描いていきます。


    しかし、作者の穂積さんは
    デビュー作の「式の前日」のときから思ったけど、
    やっぱこの人は天才ですね~。

    わずか2巻の中に
    これだけ濃厚なドラマを凝縮できる才能は稀有だと思うし、
    天性のストーリーテラーだなと思いました。


    映画『アマデウス』のモーツァルトとサリエリ、
    西川美和監督の傑作『ゆれる』の
    オダギリジョー演じる写真家の弟と香川照之演じる冴えない兄、
    『ほんとうのジャクリーヌ・デュ・プレ』の凡人の姉ヒラリーと天才の妹ジャッキー、
    『ソーシャル・ネットワーク』の
    真面目な優等生だが仕事のセンスのないエドゥアルドと
    友達のいない変人だがやることなすこと上手くいくセンス抜群のマークなどなど、
    才能を持つ者と持たざる者の対比を描いた映画や小説は多い。

    才能を持つ者は持たざる者の苦悩を理解できないし、
    そもそも自分が才能を持つ者であることにすら気付かない。

    反対に才能があるが故の
    誰にも理解できない孤独感ってのもあるんですよね。

    兄と弟の絆や確執がメインテーマではあるけど、
    保守的な美術界を変えるために戦った
    若き志士たちの記録として見ても
    なかなか面白い作品です。

    全2巻。

  • 「このマンガがすごい!」2014年・オンナ編で第1位に輝いた作品だが、いまごろ初読。

    不遇の天才画家ゴッホと、生前の最大の理解者/支援者であった弟テオ(テオドルス・ファン・ゴッホ)の絆を描く物語。

    タイトルの「ソルシエ」とは「魔法使い」の意。
    画商としての天才的洞察力から、テオが人々から「ソルシエ(魔法使い)」と呼ばれているという設定なのだ。

    つまり、本作の主人公はゴッホではなくテオであり、テオから見たゴッホ像が描かれるのである。

    ……と、ここまではすごく面白そうに思えるだろう。
    まあ、じっさい面白い部分もある。

    コミックス全2巻のうち、1巻の終わりまでは、史実を大胆に換骨奪胎しつつも、物語にそれなりの整合性がある。

    それに、この穂積という人は絵がうまいし、構成力も高い。
    登場人物が「バーン!」とクローズアップされる決めゴマがときどきあるのだが、その部分など、まるで歌舞伎役者の見得のようにバシッと決まっている。そういう演出・画面構成は見事だ。

    ただ、本作はストーリーがいただけなかった。
    すでに多くの人が指摘していることだが、物語後半の史実の捻じ曲げ方が度を越している。

    もちろん、実在の人物を主人公にするにせよ、フィクションである以上は作者の創作が含まれるのは当然だ。
    それでも、創作によって超えてはならない許容限度というものがあるはずだ。本作の後半はそれを大幅に超えてしまっていると思う。

    かりに、後半の展開をすべて受け入れ、虚心坦懐に味わったとしたら(つまり、「へーえ、ゴッホの生涯ってこうだったんですね」と思ったとしたら)、どうだろう?

    それでも、やっぱり私は感動できなかったと思う。
    あまりに絵空事な展開だし、そもそもゴッホの人物像が紋切り型で薄っぺらい(ゴッホが山下清みたいな人物に思えてくる)。

    穂積のデビュー作品集『式の前日』も、やたら評価が高くて大売れしたが、私は感心しなかった。
    ということは、そもそもこの人の作風は私に合わないのかもしれない(本作と『式の前日』しか読んだことがないが)。

  • 創作の醍醐味か。

    歴史小説をはじめとして、実在の人物をモデルに創作することはよくある。しかし、通常はそれが創作だと分からないように、あたかも本当であったかのように描く。読者はすっと受け入れるのが通例だ。

    この作品の漫画史を画する部分は、確信犯的に、読者にそうと分かるように、創作したことだ。正直すぎるといってもいい。たいていの読者は、すでにある意味、作られたゴッホ兄弟のイメージを持っているため、裏切られたと思う。評価もしないだろう。

    しかし、本作で見逃してはならないのは、二人のゴッホの本質を捉える努力をしていることだ。わざとらしい構成を使いながらも、「いまの時代」につらなる美のあり方を伝えることに成功していると認めないわけにはいかない。

  • 『式の前日』もそうだったけど、なんで毎回叙述トリックみたいな展開に頼ってしまうのか…1巻を読んだときにはテオのキャラクターが魅力的で、先を楽しみにしてたので、すごく残念。どんでん返しが来るなら史実を題材にしなくてもよかったのでは。
    絵がきれいで、映画みたいな話の運びが素敵なので、そういうのをもっと活かしてくれたら嬉しかったな。

  • なるほど、そうきたか!というオチでした。
    最後に打った大芝居と、兄のその後を歴史に残した大事業は
    弟への愛情なのか、自分の生きた証を残したかったのか…。

    超オススメ!…ってわけではないですが
    読後感さわやかで、色々と考えたり語りたくなる点がオススメです。(´∀`*)

  • 評価をされている方々には申し訳ないが、テーマに対しての作者の力不足を感じます。

    特に二点。
    ひとつは、当時のパリの風景を書き切れていないこと。「兄弟が幼い時を過ごした」田園と、大都市の対比はこの作品にとって不可欠なはずですが、描写が説明的で雰囲気が立ち上がってこない。
    例えばバルザックを読まれれば、紙の上に都市を立ち上げるということが、如何に大事業かわかるはずです。

    もうひとつは、ふたりの性格設定と感情の流れが単調で陰影に欠けること。
    天才の兄を持つ弟の感情というのは、こんなに単純なものでしょうか?相手はゴッホなんですよ?
    この程度の設定なら、ゴッホ兄弟である必要はないと思います。

    全体的に『式の前日』で見られたような細やかさが失われてしまっているように感じます。


    残念ながら、取り上げるのが早かったのでは。次回作に期待です。オムニバス形式の短編とか読みたいです。

  • 兄に憧れた弟というのは…
    果たして 兄の死後も生き続けられるものか…と

    まさかの2巻完結。
    ゴッホの人生をなぞるように描かれると思っていたが、
    全く違う展開で驚いた。
    大抵の漫画は架空の物語であるが、
    世間一般に知られているゴッホ自体をフィクションとし、
    ノンフィクションのゴッホを描いたというと言い得て妙である。
    しかしテオの感情はどちらの世界でも同じである。
    自分もゴッホの人生とともにある者として、
    「兄に憧れた弟」として自分の物語さえも彩る。
    兄は弟の、弟は兄のソルシエだったのだろうと思う。

    幼い頃から 兄さんはずっと 俺の…
    俺の人生の全てだった

  • 1巻の不穏な空気は、冒頭から攻撃的な衝動に繋がり、暴力となって噴出する。アカデミーの人間の暴力と兄弟の確執が。
    フィンセントとテオは互いの思いを吐露することで、方向性をひとつにする希望が提示されるも、あっけなく崩壊してしまう……
    ゴッホ(フィンセント)の死に謎が多いため、全く新しい解釈(アナザーストーリーというフィクション)が提示される。
    通り魔(強盗)の現場に居合わせ刺殺されてしまうという人生の幕切れを、愛情不足の狂気の画家、炎の画家というストーリーを与えて世間にセンセーショナルに公表する……というテオのマーケティング手腕。それを指して“ソルシエ(魔術師)”という……

    美術史でも独特な作風と、ゴッホ自体が謎が多いミステリアスな存在であることが魅力のひとつである訳で……
    それが“フィクションによるプロデュース”というのが面白い。

    美術史は結局、後世に語り継がれていること(裏付けは取るが)で判断されているし、よく贋作でもつくりこんだフィクションが存在する場合もある……

    読み終わった後に、美術史全体のミステリーについても思いを馳せる、面白い作品。
    原田マハのようなイメージ。

    2013年の『ゴッホ展』に因むのだろう。
    2019年にもまた、『ゴッホ展』( https://go-go-gogh.jp/ )がある。

  • 本当なのかはわからないけど、こうだったらいいな…。
    購入

  • 1巻からどうもゴッホの経歴が史実と違うな、と思う部分が多々あり(ゴーギャンがまず出てこないし)その点は終盤のどんでん返しで、なるほど、これがやりたかったのか、と納得はしたけれど、どうしてもテオに対して「そんなことして面白い?」というモヤモヤが残りました。

    怒りの感情をもたないヘラヘラ兄フィンセント、兄の才能を認め憧れながらも嫉妬する弟という関係性はけして目新しくはないし、テオがありのままの兄を本当に愛していたのなら、ありのままのフィンセントの姿を後世に伝える努力をすればよかったのでは?と思ってしまう。伝記の捏造は、兄のためというよりはむしろそういう手腕を持った自分の才能に酔いしれているようにしか思えなかった。ソルシエ=魔法使い。

    テオの敵になる連中のやりくちが安っぽいことで結果エピソード自体も薄っぺらくなっている気がする。なんかこう「ごくせん」とかあの手のドラマで、他校の不良生徒が主人公の仲間を拉致ってボコるというのをしょっちゅうやってた気がするんですけど、あのレベルなんですよねえ。

    ゴッホの手紙だけは泣けました。ここだけはたぶん史実のゴッホとテオもそうだったから。作者がやろうとした試みは斬新だったけど、このテーマに取り組むならもっと長さと深さが必要だったと思う。発表当時高評価だったことで読む前のハードルが上がってしまい、私は期待はずれな結果に終わってしまった・・・。

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