素晴らしい世界 (2) (サンデーGXコミックス)

著者 :
  • 小学館
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本棚登録 : 2255
感想 : 106
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  • Amazon.co.jp ・マンガ (211ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784091572127

作品紹介・あらすじ

▼第10話/バードウィーク▼第11話/雨のち晴れ▼第12話/砂の城▼第13話/おやすみなさい▼第14話/月となると▼第15話/ウィスキーボンボン▼第16話/素晴らしき世界▼第17話/あおぞら▼第18話/春風▼最終話/桜の季節●あらすじ/コウタ少年は、医者の父親から「父さんのようにエリートになれ」と勉強漬けの日々を送らされてきた。反発した彼は、とある英才教育塾から普通の塾に移り、テスト用紙を折り紙にしたり人生について語ったりしてみるが、隣の女の子からは「キミって子供だね」と言われてしまい…(第10話)。▼浪人生のタエは、なぜか毎年梅雨の時期になると家出を繰り返す。そして今年もその時期を迎え、タエの様子がおかしくなってきた。父母のいないこの家で、家族の面倒を見ている看護婦の姉や大学生の兄は、そんなタエを心配しながら見守っていたが、今年もやはりプイッと家出してしまう(第11話)。●本巻の特徴/アル中のOL、小学生時代を懐かしむ女子中学生、リストラ寸前の雑誌編集長と父親になったばかりで戸惑う編集者、屋台ラーメン屋のオヤジ、やる気のないコンビニ店員、心やさしき浮浪者など、本巻も多彩な面々が登場するオムニバスコミック。最終話に向けてキーとなるキャラクターとして、死神(?)なども登場。人々が暮らす街に蔓延し始めた、ある幸せな奇病とは…?

感想・レビュー・書評

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  • 2021/04/09

  • 2012年、再読。

    謎の奇病は、幸せな世界にずっといられる病気らしい。
    逆説的に言えば、この病気にかかってない人は、
    「こんな幸せがずっと続けばいいのに」と思ってない人、ということになる。

    病気になった人が幸せなのか、
    なってない人が幸せなのか、
    わからないけど、きっと桜は来年も咲くのだろう。

    どちらか、もしくは両方の、素晴らしい世界の中で。


    「でも確かに、幸せな時ってのは、
    幸せが終わることに怯えてる時でもあるんだよなぁ。」

    • ogaさん
      こちらこそありがとうございます!
      俺もおもしろいマンガ探してみますね。
      こちらこそありがとうございます!
      俺もおもしろいマンガ探してみますね。
      2012/03/06
  • ソラニンの映画化に代表されるように、浅野いにおの作品の勢いが止まらない。
    大学生活、ところどころ話題になりながら手に取り、それとない共感を覚えた。そんな人が多いのではないだろうか。

    そこにいけばオリジナリティが手に入れられるように錯覚させてくれる、ビレッジヴァンガードという店では常にプッシュされ、読んで虚無感に浸ることがちょっとしたおしゃれのものさし。
    そんな扱いを受けてきた作家だと感じる。


    ひどい言いようをしてしまったようだが、浅野いにおの作品には少なからず泣かされている。


    浅野いにお作品に描かれる人々のベースとなる背景はだいたい似通っている。
    そこそこ社会の汚さに触れて、かつて見ていた夢が現実では叶わないと悟っている。
    かといってすべてを諦めて人生をドロップアウトするでもなく、中指を立ててがなりたてるでもない。
    どうしようもない日常に夢とか希望を描くでもなく、淡々と過ごし、喪失感をためこんでいく。
    だけど、簡単に夢を描くことを諦められるわけもなく、時にその我慢のしわ寄せが日常をブレイクスルーする。



    だいたいこんな感じではないだろうか。
    こういった物語への僕たちの世代からの共感は、どんな評論家が分析して言葉にしようと、なかなか腑に落ちず、得も言われぬ違和感が胸にこびりついて離れない。

    では、そんな僕らの00年代の青春ってなんだったんだろう。
    景気は右肩下がりで、政治は方向を指し示すどころか汚職、凶悪犯罪が増え、拝金主義が横行。教育は崩壊し、ニートが増加。
    ニヒリスティックに言うならば、僕らは喪失感に満ちた時代を生きてきたわけである。
    そしてそれにより本来描けたはずの美しいものを失ったような気がして、何かを奪われたかのようにしかたなく日常を生きている。
    これが浅野いにおに共感しそうな人が感じている00年代の背景ではなかろうか。

    ネガティブで偏向的な考え方だ、と指摘されればそのとおり。
    だが人は、心の奥にしまいこんだコンプレックスをくすぐられるのに弱いのか。
    浅野いにおの演出する閉塞感や虚無感、そこで足掻く人物に多くの若者が共感しているからこその人気なのだろう。



    しかし、浅野いにおのマンガって共感できない人には全く共感できないとも思う。
    だって短編でも長編でも、人物は基本的には満たされているわけ。
    しかも時代とか環境のせいにして、自分で能動的に考えて殻を破ろうとしていない。
    その果てに悲しいとか虚しいとか言われたって、それって単なる甘えじゃない?と。
    実際にそうも思う。
    まあ一つの物語にすべての人の共感を求めるなんてナンセンスだから、とにかくがむしゃらに前に進もう!しっかりがんばっていけば道は開けるよ!っていうしっかりとした、ポジティブな人に浅野いにおで泣け、っていうのは、ジャンプをおかずにしろ、っていうくらい無理難題だろう。


    がんばらなきゃ。だけどその果てにはなにか、もっと大事なものを見失いそうで怖いなあ、みたいなピーターパン・シンドローム的な、いつの間にか大人になっちゃったなあみたいなぼんやりした僕のような人間には、やっぱりじんわりとしみこんでしまうのだ。



    最後に。
    正直なところ、僕は何か大きな欠落を抱えているわけでもなく、どうしようもない喪失感を持って生きているわけでもない。
    追い続けてきた夢はなく、ただ眼の前にあることをひたすら積み重ねただけだし、忘れられない恋があるわけでもない。

    だから僕は浅野いにおを好きというにはどこか後ろめたい気がしてしまい、ちょっと斜に構えて読んでしまうのだ。僕はただこの喪失感のようなものに耽溺したいから読んでいるんじゃないか?ってね。

    結局泣くけど。

  • ギリギリのところで、勝気に平気なフリして、生きている、この街の、みんな。

  • 前、読んだ漫画を
    もう一度、読み直してみる巻 Vol.21

    「素晴らしい世界1」に続き『素晴らしい世界2』を読了。1も良かったが、”2”もかなり良いんだよなー。 特によかったストーリーは・・・”バードウィーク”と”雨のち晴れ”と”桜の季節”です!! ”桜の季節”は、やっぱ泣いた。

  • 短編集だけど細かい所が微妙につながっている。1巻よりもより絵が繊細で自分的には好き。

  • 徐々に徐々におかしくなっていく世界の恐怖感が読み終わった後にじわじわ来るのです。

  • 素晴らしくはない世界を生きる人々の群像劇。いにお作品は灰汁が強く、人間臭い、そのきつめのリアリティは、苦手な人が多いのもわかるけど、でも、リアリティは無いほうが、しんどい。

    汚れた日常をわざわざ読めば、例えば、コンビニの店員や、プラットホームのサラリーマン、信号待ちの女子高生、本屋で立ち読みをする大学生風の若者、ギターを背負った中性的なバンドマン、脚の指の無いホームレス。袖すり合う人達のそれぞれの人生の想像を誘う。

    彼の作品を、闇があるとかってディスるの良くないよ。馬鹿って言ったもんが馬鹿って感じ。
    いにお視点な、そこら辺の感受性のギアは自在に入れれるようにありたい。
    綺麗なもの、それから、その対極にあるもの、どちらも見てたい。

    東京の街を散歩するいにおをテレビで見かけて、すごくいい目で街を見るんやなぁって思ったことがあった。
    散歩がある人間の日常をいいなぁと思った。
    感受性の無い散歩なら、ただ移動やもん。

  • 久しぶりに読んで、泣いてしまった。
    昔読んだ時のきもちとか空気感を思い出すと同時に、そこからここまで来たんだなーーー っていう なんというか 色褪せるのではなくて 年を重ねた分だけ また違う角度でずしんと来る。

  • バードウィーク 勉強が出来ても頭の使い方が悪い奴が沢山いるだろ?お父さん。 俺の父親は医者で確かにエリートではあるんだ。ただ、あの鬼の仮面を外せば、自分のプライドを守るのに必死なただのビビリ野郎だよ。 そんな大人に合わせてやるのが子供の甲斐性ってもんじゃない? 君は君が思ってる以上に、ずっとずっと馬鹿だわ。 ガキくさっ。もっと素直になれば良いのにさ。 …でも嬉しかったんです。雨のち晴れ だから今のあたしのこのローな気分も、いつか晴れやかになるって信じてるんだけどね。(信じてるんだけどさ)例えばオタマジャクシがカエルになることについて。だってアレってどー見ても別の生き物じゃんか。(やべー、ホントどーでもいいわ) 車に轢かれてペシャンコになったり、子供に爆竹突っ込まれたり。 一喜一憂 梅雨 白衣の天使 わぁ、キタナイ本音。 取り敢えず鼻息荒くしたDJ男に、潰れたカエルのよーな姿を晒してます。 あれって死ぬことを理解出来ないまま、死んじゃうんだろうな。 …あー…お母さん…ゴメン… …29?ねーちゃんは今26歳だ… 虹 大人のオタマジャクシを探してくるー 砂の城 能面 岡崎サト 作り笑顔 将来の為に。そりゃそーだ。 でも未来は誰にでも平等にある訳じゃない。ストーカーにバラバラにされたOLのように。 中学デビューとかいって…カッコ悪。岡崎の作り笑い。滅茶苦茶頑張ってる感があって、時々引くよ。 なんか、うざっ。あんた頑張ることをカッコ悪いとか思ってんでしょ?そういうのが一番ダセーっつうの。人気とる為に努力して何が悪いのよ?私達には時間がないんだからさ。うだうだ理屈捏ねないで、サクサクやろーよ。何よ、その顔…「この糞女死ね」とかって思ってる? 次の電車、各停か急行、どっちが来るか。 電話の時もその笑顔なんだ。 毎日、鏡の前で練習してるからクセになっててさ。 狡いくらいで丁度いいんだって。私達には時間がないんだからさ。 つーか、あんたその笑い顔キモいって。笑いたい時はもっとちゃんと笑っときな?世の中なんて最後に笑ったもん勝ちなんたまからさぁ。 私達は砂場でよく城を作って遊んだ。二人でトンネルを掘って指と指が触れた時、何だか凄く嬉しかったんだ。その時の笑顔を私は少しだけ思い出した。 おやすみなさい 風俗誌の編集スタッフ 娘さんが生まれて気持ち保守的になったんじゃないスかぁ? 物言いたげな目 サブカル系のエロ雑誌なんて今、腐るほどあんのにさ。 どう父親一年間やった感想は? 孤独じゃない? もうじき僕は解雇されちゃうのさ。 トホホだよ。 逃げてねーよ…これでも前に進んでんだよ… 月となると 愛の逃避行 もうまとめの段階 綺麗に清算 屋台 今、ここで終わらせてくれ。料理人の俺を。 ウイスキーボンボン 暴力的に眩しい朝日 まぁさん部長は禿げでチョビ髭で顔の造り自体セクハラなような気もする。 相当悲惨だよ、私‼︎ それでも俺はたぶん好き。 封印 素晴らしき世界 朝イチで、うんこを踏む。なんの感慨も湧かず。 何?お前、思春期のガキの標的にされちゃった系? お前、見るからに不幸背負って生まれてきたって感じだもんな。 運が悪かったと思って、野垂れ死んでくれ。ドゥフ‼︎ フリーターになりもう3年。孤独で退屈な毎日。でも、もう慣れた。見えない大きな力とか、弱者が徹底的に淘汰される流れとか。理不尽とか矛盾も。受け入れるようになった。全ての出来事は「しょーがない」の一言で、解決できるのかもしれない。それに退屈な毎日だってホラッ…言いようによっちゃ、怒りも悲しみもない平和な毎日じゃないか。 別れた女の夢で夢精する25歳の冬。 何で付いて来るの?…キモいんですけど。…ですか。あんなに愛し合っていたのに、2年経ったら他人以下ですか。 世界はまだまだ終わっちゃいない。今日もまた一日が始まる。 あおいそら お前のいない世界? 夢オチ 再就職 マリッジブルー 「自分はきっとやればできる」って思ってる奴ほど、結局、何も出来ないんだよなぁ。 借りもんの格好良い言葉やらスタイル真似ても、結局中身はその単純さ。如何なの、それ? 人生の岐路だ ベタだね 死神達に憑かれ、堀田トモツグ、事故死。享年26歳。あの眼鏡、伊達なんだ。 「後悔のないように生きて。それだけです」 春風 ホームレスに厳しい行政 伝説の3浪突入。 娘の養育費とか老後の事とか色々あんの あ、駄目かぁ、玉葱入ってるもんね… 私は今、とても幸せで、今がとても大切で…そしてそれがいつか終わってしまうことがとても怖いんです… もう、直ぐそこまで春が来ているのだ。今日もこの街が幸せでありますように。 桜の季節 原付免許 うなが促せば 彼女はまた幸せな世界に戻ってしまった。 そうだ。家に帰ったら風鈴を外そう。

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著者プロフィール

1980年生まれ、漫画家。1998年、デビュー。日本の青年誌漫画を牽引してきた作家のひとり。主な作品に、『ソラニン』『おやすみプンプン』『うみべの女の子』『零落』など多数。『デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション』を連載中。

「2019年 『漫画家入門』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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