- 本 ・マンガ (200ページ)
- / ISBN・EAN: 9784091670946
作品紹介・あらすじ
『海街diary』と繋がる物語、開幕!
山形の山里にある小さな温泉町・河鹿沢温泉の旅館で湯守り見習いとして働く和樹。弟の守とともに、旅館の女将や周囲の大人の思惑に時に守られ時に翻弄されながら暮らしている。
大人たちの抱える過去、そして河鹿沢温泉に数年前に引っ越してきた旅館の大女将の孫娘・妙をはじめ幼なじみ達との友情と恋と人生が静かに紡がれていくーーー
【編集担当からのおすすめ情報】
山里の温泉地を舞台に『海街』とつながる人々の物語が深く静かに始動しました。主人公・和樹と気が強く聡明な女子高生・妙(たえ)を軸として人々の心の機微が描かれていきます。海街ファン必読。
感想・レビュー・書評
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思った以上に充実した一冊だった。
特別なドラマは起きない。河鹿(カジカ)鳴く川が名物の架空の小さな温泉街の日常を描いたマンガである。そこで育った子供たちは独り立ちの秋(とき)を迎えている。その1年間をゆっくり描いている。「海街ダイアリー」と地続きの世界。いつか是枝監督が描いてもいい(描くべき)世界だと思う。
吉田秋生はデビュー時から少女マンガに大人の身体を持ち込んだ(「カリフォルニア物語(1979)」)。当時美大に在学していたから身体のデッサンはしっかりしているが、おそらく理由はそれだけではない。吉田秋生は周りが子供であることを許さない環境で「健全に」育ったのだろうと、私はいま推測している。例えばこの作品の登場人物のような。温泉街の子供たちの親は「わけあり」が多い。流れ着いて家族を作ったり、出戻ったり、置いて行ったり‥‥。
「きれいなだけじゃすまないことも、ここに住んでみてわかったわ
それでも雪はきれい
いいことばかりじゃないけど、悪いことばかりでもないわ」
大学受験をせずに、あずまやで働くことを選んだ小川妙はそう呟いた。
一回それぞれの登場人物の家系図を作ってみないと、何が何だかわからなくなるけど、それは次巻ということで。
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海街ダイアリーの最終話で、大人になって父のお墓参りに河鹿沢温泉を訪れたすずが、義弟の和樹と会う話がありました。
和樹に多分好意を持っている女子高生の妙と、子供の頃別れ別れになった和樹の弟智樹(すっかりグレてる)もちらりと登場していましたが、この『詩歌川百景』は、まさにその和樹たちのお話。
『海街』から山間の温泉街に舞台を移して、吉田秋生さんの繊細な人間描写が胸に迫る群像ドラマです。
温泉街の個性豊かな人々が一気にたくさん登場するので、誰が誰だっけ???誰と誰が親戚?あれ?この人は誰の息子?夫?と、ちょっとそこら辺の理解が大変ですが、この人達がそれぞれに抱えているもの、秘めた想いが、今後どういう形で表現されていくのか、とても楽しみです。
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いい!
海街の姉妹作
登場人物をおさらいして、読んだ。
今回も登場人物多くて覚えるの大変。
ちょっと、人のドロドロした部分もある作品ではあるが
それもまた読み応えありました。 -
新シリーズ始動!今度の舞台は山形の温泉地。旅館「あづまや」湯守見習いの和樹、あづまや大女将の孫の妙。2人を中心に繰り広げられる人間模様、1巻から読み応えありました~~!!
前作「海街diary」と姉妹作となるので、和樹大きくなったな~と感慨深い(勿論、今作品から読み始めても問題なし)。一読目は、とにかく沢山のキャラが登場するので面食らうが(人物相関図が欲しくなるほど)、それぞれに濃いキャラ達、色々なものを背負っていそうで…早速、いくつか伏線が張られている気がする。
「海街diary」とはまた違った滋味深い作品世界、まるで文学だ。ままならない人生だけど、それでも凛と生きていく和樹のひたむきさに心を打たれる。彼をそっと見守り支えとなる大人達も素敵だ。厄介事を持ち込むメンツもいて、一筋縄ではいかない感じだが…それも含め、どんなドラマとなるのか…次巻が待ち遠しいです! -
不思議な感覚に。
大人の悪意に振り回されたり、生い立ちが複雑だったり、心をかき回される作品だった。
妙の凛とした感じがいい。
海街diaryも大好きなので、この作品も続きが気になります。
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吉田秋生は日常にある悪意を描くのが上手い。
それは誰が見ても意見が一致するような悪意ではない。ともすれば「これは悪意だ」と言った側の方が非難を受けるような、大抵の人は「まぁ悪気はないんだから」と「悪い人ではないんだから」とたしなめられる類いの、笑って捨ておけと言われればとりあえずは可能なぐらいの些細な棘。
でもそれは確実に尖っていて、すぐ近くにあるとぶすりぶすりと肌を刺す。瘡蓋も乾かぬうちに棘は刺さり続けて、いつのまにかボロボロになっている。
そういう類の悪意が私は本当に嫌いだ。悪意というのが言い過ぎなら、無神経、鈍感さと言ってもいい。人の気持ちどころか自分の感情すら把握していない、自分が無知であることを少しも省みない混沌の世界に生きる人々。
そういう人を目にしたらとにかく近寄らない。
海街もそういう悪意を描くのが本当に上手かった。
吉田秋生の描く悪意には妙に地に足がついたリアリティがある。ああ、このどうしようもなくまとわりつく悪意にうんざりしながら、それでもすべてを台無しにしないように折り合いをつけていく。多くの人はそうやって生きていく。
そういう悪意との和解は無い。歩み寄りなど期待してはいけない。自分がどう折り合いをつけるか、しか選択肢はない。
それでも、海街も詩歌川も同じように希望がある。決して悪意に呑み込まれるようなことはない。知性を持ち感性を持ちまっすぐに生きようとするものを見放したりしない。この世界は悪意だけではないと、信じるに足る出会いがちゃんとある。
もちろん私も、そうであると信じている。
そうでなくては、あんまりだもの。 -
出ちゃったよ~新たな物語がはじまっちゃったよ~♪またまたお得意の群像モノなので、読むまでになかなか勇気が出なくて、やっとこさここ2回ほど熟読いたしました。で、新刊が出るとまた繰り返すんだな…海街もいつか復習せねば。
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海街ダイアリーのすずちゃんの義理の弟サイドの物語。
この作者のどの人物にもそれぞれの人生があるという描き方がたまらなく好きです。
遭難した息子さんを探すお客様の10年に思わず涙がでました。
その心情、想像を絶するものがあります。
若女将と叔母さんの言動に不快な気持ちになるけれど、彼らの側から見たらまた違うものが見えそうでもある。
そんなところも本当に読み応えがあります。
たのしみなシリーズが増えてうれしいです。
年一回くらいのおたのしみになってくれるのかな。 -
そうか~、やっぱりこっちが舞台なのか。「海街ダイアリー」番外編を読んだとき、うっすらとそんな気はしてたのだ。妙の登場の仕方なんか、これっきりとは思えない描き方だったし。鎌倉三部作となるのを期待してたので(だって朋章のその後がわかるかもしれないじゃないの)、ちょっぴり残念かなと思いながら読み出したのだけど、いやいやもう、そんな気持ちはすぐどっか飛んでいって、どっぷりひきこまれて読んだのだった。
これははっきり大人版だなあ。初回からたくさんの個性的な人物が描き込まれていて、少し面食らってしまうほど(自分のマンガ読み力が衰えたのかと思ってちょっとびびったが、同じような感想を書いている人がいてホッと安心)。いつもながら、どの人にもそれぞれの物語があることが伝わってくる描き方で、吉田秋生先生、円熟の筆(ペン?)だ。
「海街」でもそうだったけど、脇役の造型がすばらしいと思う。特に「大人になれないオバサン」を描かせたら天下一品じゃなかろうか。あ~そうそう、いるよいるよこんな人、まったくダメだよねえとは思うものの、作者の視線は決して冷たくない。そこがすごい。
もちろん、さり気なく描かれる「まっとうな人」は魅力たっぷり。続きがとても楽しみだ。
著者プロフィール
吉田秋生の作品





