日本短編漫画傑作集 (2)

  • 小学館
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本棚登録 : 44
感想 : 6
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  • Amazon.co.jp ・本 (359ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784091793508

作品紹介・あらすじ

珠玉の短編で綴る日本漫画の表現の歴史!

選者にいしかわじゅん、江口寿史、呉智英、中野晴行、村上知彦、山上たつひこ(五十音順)の6氏を迎え、日本の漫画を彩った幾多の短編の中より選び抜いたアンソロジーを編年体でお送りします。第二巻は1960年代後半から70年代を中心にセレクト!水木しげる、藤子不二雄A 、ちばてつやなどの巨匠達の知る人ぞ知る短編を収録!

【編集担当からのおすすめ情報】
いしかわじゅん、江口寿史、呉智英、中野晴行、村上知彦、山上たつひこが選んだ珠玉のアンソロジー。一筋縄ではいかない選者達がこれでもかと選んだ短編達。他ではなかなか見られない異本の漫画の多様性をお楽しみください。など

感想・レビュー・書評

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  • 1968年から1970年頃までの作品を収録。
    解説によると「戦後漫画誌のカンブリア紀」にあたる時期だそう。
    それを後押ししたのは、戦後ベビーブームで生まれた若者が漫画を読む習慣を維持して大人になったことで、漫画雑誌が増え、大人向けの題材も扱えるようになったことにあるようだ。
    漫画は子供の読み物として認識されており「大学生が漫画を読むこと」について非難の声もあったというが、漫画雑誌は増え、青年向け漫画では暴力や性についても書ける文化ができてきたようだ。
    時は東大紛争、パリ五月革命などきな臭くもエネルギッシュな時代。その時代の砂埃を感じるような作品が多かった。

    特に印象的だった作品は以下。

    「ク・ク・ル・ク・ク・パロマ」永島慎二
    売れない歌手が言葉の話せない女性と出会い心を通わせて暮らしていたが、売れるようになったら彼女を捨ててしまう。ある日彼女のことを不意に思い出すと彼女は死んでいて、耐え切れず自分も死んでしまう。二人のお墓には二羽の鳩がよく訪れる…。
    よくある物語かもしれないけれど、素朴な絵がしっぽりと美しかった。タイトルはメキシコの民族舞踊の名曲で、「愛する女性の死にショックを受けた男性も後を追うように死んでしまった、どこからともなくきた鳩が悲しそうに鳴く」…という歌詞だそう。

    「妖花アラウネ」水木しげる
    アラウネという花を世話すると夢の中に美女が出てきて、生でも死でもない「バラ色の世界」に連れて行ってくれる…借金まみれの社長と山本はバラ色の世界に行きたくてアラウネを見つけ出して、ドイツの田舎から姿を消した。
    山本が社長について「あの人はいい人だった。」とぽつりと漏らすところや、借金取りたちが社長の手記を読みバラ色の世界を羨むところがすごくよかった。灰色の現実という表現には宮沢賢治のフランドン農学校の豚を思い出した。

    「セブンティーン」佐々木マキ
    このタイプの漫画は今まで読んだことがなかった。
    絵がめちゃくちゃ好き。
    文字がほとんどなく、コマとコマとの関係性を推し量るのも難しい。夢の中のような漫画だ。

    「死神」横山光輝
    まるで古典落語のようだ。
    貧乏な漫画家が激安賃貸を紹介されて一人で赴くとそこには名簿に釘を打ち続ける奇妙な男がいる。漫画家はその男が釘を打った名前の主は死ぬことに気づき、釘と金槌を持ち去る。すると翌日から人が死ななくなるが、漫画家は日に日に弱っていき、自分に死神の呪いがかけられていると気付くー。

    「ひっとらぁ伯父さん」藤子不二雄A
    わらせぇるすまんのような作品だった。
    皮肉が効いててたまらない。

    「夕映の丘に」佐藤まさあき
    戦時中田舎へ疎開した少年たちの話。
    主人公の少年は自らの祖母の家に引き取られ、学校ではいじめられるがある程度不自由なく育っていた。
    同じクラスにいる疎開した少年は両親を亡くし意地の悪い一家に引き取られるが、片腕がなく不自由し学校でも家庭でも居場所がない。
    主人公と少年は、主人公の両親が亡くなったときに意気投合して頑張って生きていくことを誓い合うが、都会で漫画家を目指す主人公は田舎で苦しむ少年の苦悩を知らなかった。少年は自殺をしてしまうー。
    ストーリーは違うが漂う雰囲気に有島武郎の生まれいづる悩みを思い出した。

    「あるあしかの話」ちばてつや
    無理矢理水族館に連れてこられて不満だったアシカは人間たちに悪態をつく。芸を覚えれば魚をもらえることに気づき一時は良い子にしたもののふと我に返ってあほらしくなりまた悪態をつく。
    館長は飼育員にアシカを殺すように命じるが、哀れに思った飼育員はアシカを海へ戻してやる。戻してやればハッピーエンドかと思いきや、アシカは野生での生き方を忘れてしまっており餓死する。
    短くて単純な話ながら、グサリと人間のエゴを感じる作品だった。

  • 永島慎二「ク・ク・ル・ク・ク・パロマ」、水木しげる「妖花アラウネ」、宮谷一彦「セブンティーン」、佐々木マキ「セブンティーン」、横山光輝「死神」、藤子不二雄A「ひっとらぁ伯父さん」、佐藤まさあき「夕映えの丘に」、つばてつや「あるあしかの話」、やまだ紫「しつもんがあります」、つりたくにこ「彼等」、ダディ・グース「焼けっぱちのブルース」。ほとんどが既読の作品だったが、初めて読んだ佐藤まさあきの自伝風の作品は大変面白かった。劇画作者たちの魂のルーツが垣間見えた。

  • 日本短編漫画傑作集第2集。
    永島慎二、水木しげる、宮谷一彦、佐々木マキ、横山光輝、藤子不二雄A、佐藤まさあき、ちばてつや、やまだ紫、つりたくにこ、ダディ・グース。1968年から1970年頃の11作品。

    水木しげる「妖花アラウネ」。幻と現があやふやでいい。恐怖よりも魅了されてしまう、されてしまいたいという妖しさ。嫌な現実から逃げ出した先に起きた怪異なのだけど、共感を覚えてしまうのはなぜなんだろう。
    横山光輝「死神」。こちらも怪異譚。好奇心が身を滅ぼす展開。あの存在は、これからも同じような形で引き継がれて行くのだろうな、と感じてしまいます。
    藤子不二雄A「ひっとらぁ伯父さん」。掲載当時に炎上しなかったのだろうか、と2021年の今では感じてしまう題材。ただ、いつの間にか日常が侵食されてゆくという展開は、いつの時代でも警鐘となるものだと思います。

    時代を反映しているというのかどうか。自身の内面と向き合うというか、えぐるというか、のぞき込むというか。心の内側へ行こうとする作品が多かったように思えます。そして、そういう趣の作品は、自分の好みではないなぁ。
    青年漫画よりも、少年漫画が好き。

  • 2巻は1968年から1970年頃にかけての作品を収録。
    時代を感じさせる作品が大半だが、水木しげる、横山光輝、藤子不二雄A、ちばてつやなどは作風が時代を超越してるためまったく古臭さを感じない。おそらく、発表された60年代末から70年においては古いタイプの漫画であったことを考えると面白い。
    収録作ではまったく知らなかったがつりたくにこの「彼等」が面白かった。

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