- Amazon.co.jp ・マンガ (221ページ)
- / ISBN・EAN: 9784091816733
作品紹介・あらすじ
植物を愛し、人を愛する“家裁判事”桑田のヒューマンストーリー
▼第1話/カタクリ▼第2話/ワサビ▼第3話/ユリ▼第4話/リンドウ▼第5話/イチジク▼第6話/イチョウ▼第7話/福寿草▼第8話/ヒメリンゴ▼第9話/ケヤキ▼第10話/ハマボウフウ ●登場人物/桑田義雄(緑山家庭裁判所判事) ●あらすじ/緑山家庭裁判所にひとりの司法修習生、加藤が研修にやってくる。検事を目指す彼は、桑田とともにひとつの少年事件に関わることで裁判官の仕事の魅力を感じ始める……(第1話)。▼そして、春の異動の時期、桑田のもとにエリートコースである最高裁の調査官への異動の要請が来る。しかし彼はまたしてもそれを拒否。桑田が転任を希望したのは、緑山市よりも更に小さい町である春河市の地方家庭裁判所だった(第10話)。 ●本巻の特徴/この第3巻では、家庭裁判所に多く持ち込まれる少年事件の中でも特に悪質な婦女暴行殺人事件が扱われる。そして実名報道をすることで社会的制裁を与えようとするマスコミの姿勢についても、桑田の目を通して一石が投じられている(第3話)。 ●その他の登場キャラクター/緑山家庭裁判所調査官補・山本博(第1話)、司法修習生・加藤(第1話)、緑山署捜査二課係長・細川右近(第2話)、緑山家庭裁判所判事・桐島(第5話)、桑田の大学時代の友人で出版社勤務・滝本(第6話)、桑田が司法修習生時代の恩師で現在弁護士・林(第9話)、緑山家庭裁判所新所長・浜口(第9話) ●その他のデータ/桑田が扱う事件・問題~少年の傷害事件(第1・4話)、離婚調停(第2話)、少年の婦女暴行殺害事件(第3話)、相続問題(第8話)
感想・レビュー・書評
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こんな裁判官いる訳ねえ!ってずっと思う
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「その時 その少年が笑って暮らしている可能性を探すのが、裁判官の仕事」
植物への理解と判事としてのヒューマニズム(それも薄っぺらじゃない)が、ようやくリンクしてきました。 -
家裁、すなわち家庭裁判所では少年犯罪が審理される。この作品は家裁判事である桑田義雄という人物を主人公にして家庭裁判所という舞台に登場するさまざまな少年たちと桑田判事との出会いを綴った作品である。「おっ、題名にある家裁のサイの字がまちがっとるばい。」というご指摘もあろうかと思うが、これでいいのだ。主人公の桑田判事はいつも植物の世話ばかりしている何となくぼーっとした判事である。そして彼の少年の非行に対する取り組みも植物の世話とよく似ている。「育てなければ…毎日愛して、そこから始めませんか」と言う桑田判事の語りかけは家裁は裁くところではなく栽(そだ)てるところだというこの作品の底流に流れている。だから〈栽〉の字でいいのである。
扱われている素材は少年の非行である。教育の現場(学校やら家庭)が切り捨ててしまった少年少女たちの傷をそのまま受け入れ、自分の力で育っていけるように桑田判事は彼らに接していくのである。
東京第二弁護士会の山崎司平氏が監修しているので、事例はおおむね実際の事件に基づいているのかもしれない。それだけのリアリティがあるし、法律的なバックグラウンドも確かである。きびしい状態に置かれた子どもたちを我々はどう理解しているのか、を具体的な事件を素材に見つめてみることは必要ではないだろうか。特に法律の世界は無視し、教育の理念も省みずに子どもを切り捨てている教育現場の人間にはぜひとも読んでほしい作品である。また、第十三巻から十五巻はあの福岡でおきた生き埋め体罰事件をモチーフとして描かれている。全十五巻のうち三巻を費やして語らなければならないほど、あの事件は桑田判事にとっても重たい事件であったのだろう。それに対して福岡の教員は答えを出したのだろうか。三越三郎というどこかで聞いたような名前の博多弁をしゃべる弁護士も登場する。さあ、あなたも姿と名前を変えて出ているかもしれないよ。
◎実は荒れている少年たちに読ませたい。
★★★★★(これは特上五つ星)