弁護士のくず 第二審 (4) (ビッグコミックス)

著者 :
  • 小学館
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感想 : 7
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  • Amazon.co.jp ・マンガ (183ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784091845306

作品紹介・あらすじ

著作権問題まるわかり!

「盗作」の危険は、常に創作者のそばにある。
著作権とは何か!?
ガラにもなく九頭が真面目に取り組んだ、『盗作の深層』!!

就職氷河期のオタクの運命、『隣の悩み』を収録。


【編集担当からのおすすめ情報】
「盗作」で訴えられ、裁判で勝訴して、学んだ筆者が描く、「著作権問題」!!

感想・レビュー・書評

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  • 名前のつけかたとかテイストがナニワ金融道に通じる。この巻は著作権の話。

  • 作者自身が巻き込まれた著作権事件をモデルにした「盗作の深層」が読み応えあり。さすが経験者だけあって,良い著作権の教材になってる。特別監修にネットでも有名な福井健策先生。
    http://p.twipple.jp/tUYMX
    https://twitter.com/Polyhedrondiary/status/742826203329896448
    事件の経緯は地裁判決に詳しい。
    原告は弁護士で,悪徳同業者を懲らしめた体験記を執筆したところ,その内容を参考に漫画を書かれて心外だということで著作権侵害と訴えた,らしい
    平成20年 (ワ) 5534号 著作権翻案物発行禁止等請求事件 http://tyosaku.hanrei.jp/precedent/View.do?type=cr&id=8525

  • 困った弁護士・九頭の大活躍(笑)が見どころの弁護士漫画。ろくでもない言動・態度で顰蹙を買いまくるも、思い出したようにいいことも言ってみる。しかし見直させたままでは終わらないのが、九頭さんの九頭山たる所以。
    弁護士物だが、決して堅苦しくはないので、面白く読める。
    綺麗とは言えない絵柄も、独特のストーリーに合っており、かえって味になっている。大変おすすめ。

  •  本書収録の「盗作の深層」が圧巻!
     著作権侵害事件がどういうものであり、そこから著作権とはどういう権利であるかを知る上で絶好の入門書になっています。

     こう書くといかにも著作権のお手軽なお勉強に最適な漫画っぽいですが、本作は単なる著作権周りの知識を伝えるだけに留まりません。「盗作の深層」は、作者自身が巻き込まれた「盗作」裁判をモチーフとしているからです。

     平成20年に、『弁護士のくず』の「蚕食弁護士」というエピソードが、内田雅敏『懲戒除名”非行”弁護士を撃て』(同書は『乗っ取り弁護士』と改題の上、ちくま文庫に入っている)の盗用であるとして、内田氏から訴訟を起こされています。
     この件については最高裁で「本件漫画は著作権・著作者人格権の侵害などには当たらない」という判決が確定しています(最判H22.11.18)。これを受けて、『弁護士のくず 第二審』の2巻に「蚕食弁護士」のエピソードが収録されました。

     そして、本巻の「盗作の深層」は、作者自身が体験したこの事件を元にした話になっています。さすがに事例をそのまま使うわけにはいかないので、オリジナルストーリーにしてありますが、その設定がよくできています。
     マンガ家・備保十作(びんぼ・とうさく)の『娑婆のひとくず』という作品の中で描かれた「少年の国」というエピソードが、一色志津子のドキュメンタリービデオ作品『懺悔』の盗作だとして訴えられます。この『懺悔』は、オウム真理教のようなカルト団体が起こした実際の事件(「S市少年教団事件」)を取材したドキュメンタリーで、備保はこのビデオ等を参考にしつつ、「S市少年教団事件」を「少年の国」という物語にしました。成立順に整理すると、
     (1) 実際の事件…S市少年教団事件
     (2) 一色の作品…ドキュメンタリービデオ『懺悔』
     (3) 備保の作品…漫画『娑婆のひとくず』のエピソード「少年の国」
     ということになります。
     これを前提とし、著作権の内容と、保護される範囲が「表現」の部分であって事実やアイデアは保護されないことを、事案に即して丁寧に説明されています。私は本作のお陰で、著作権の本を読んだときには今イチわからなかった著作物の概念や著作権の範囲について、腑に落ちて理解できました。

     本作の読みどころは「わかりやすさ」だけではありません。著作権侵害だと訴えられた作者自身の体験から、「盗作」だと言われた当事者が受けるダメージや心情がひしひしと伝わってきます。
     作中で備保の一色に対する怒りがエスカレートしていく描写があり、主人公・九頭が怒りに飲みこまれる備保を心配するシーンがあります。九頭の「戦いは人の心を荒廃させる…」「普段なら相手の欠点にはなるべく目をつぶり、良いところを見ようとする人が、相手の悪い所、悪い所と探し回るようになる…戦いを続けるためには、怒りの炎を燃やし続けなければならないから…」「相手を『鬼畜』と喚ぶ時、その人間も『鬼』になっているんだ」と独白は、あるいは当時の自分を振り返った作者自身のことを言っているのかもしれません。
     また、本作の中には備保に感情移入しすぎるあまり、時に備保を煽り立ててしまう若い弁護士・軒下も出てきます。さすがに度が過ぎて九頭にたしなめられていますが、クリエイターが全身全霊をかけて作品作りに取り組んでいるのに、世間の薄っぺらい理解とレッテル貼りのために名誉を毀損されていることを涙ながらに叫んだシーンでは色々考えさせられました。著作権の本や判例を読んでいると、どうしても争点や紛争解決の規範の方ばかりを考えてしまいます。が、一つ一つの裁判には、尊厳と人生をかけて主張をしている当事者がいて、身を切られるような思いを抱きながら戦っています。そのことを、心の何処かにとどめておかないといけないと思わされました。

     血の通った著作権侵害事件のケースとしても、作者の心の叫びを結晶化した作品としても、本作は秀逸です。特に著作権に興味のある方は必読ですが、全ての人にオススメです。

  • 世の中こんな感じだったら報われなくもないかも?
    いろんなキャラが、それぞれの主義を貫きながら毎日を生きている、そんな日常を少しだけ覗き見させてもらえる作品です。

  • 作者が著作権訴訟を経験しているだけに、いつもより深い

  • 過去、ドラマにもなったマンガ。

    不勉強なもので、ドラマは見てないし、今まで原作も読んだことがなかったのですが。

    その表紙のインパクトに、本屋で見かけて即購入しました。

    「アイディアはマネしてもいいんだぞ♥」
    「バ、バカな! それじゃ何のために著作権はあるんだ!?」

    著作権は、物書きをやるならば、ある程度は知っておかなければならないものの、実態はよく知らないという不思議なもので、しかも、調べれば調べるほどよくわからないものでもあります。

    調べようと思えば、みんなが大好きなWikipediaや、文化庁のサイトでも、概要を調べることはできます。

    ・著作権 - Wikipedia
    http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%91%97%E4%BD%9C%E6%A8%A9

    ・文化庁 著作権
    http://www.bunka.go.jp/chosakuken/index.html

    特に興味深いのは、これ。

    ・文学的及び美術的著作物の保護に関するベルヌ条約
    http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%96%87%E5%AD%A6%E7%9A%84%E5%8F%8A%E3%81%B3%E7%BE%8E%E8%A1%93%E7%9A%84%E8%91%97%E4%BD%9C%E7%89%A9%E3%81%AE%E4%BF%9D%E8%AD%B7%E3%81%AB%E9%96%A2%E3%81%99%E3%82%8B%E3%83%99%E3%83%AB%E3%83%8C%E6%9D%A1%E7%B4%84

    一部抜粋しますと。

    「ベルヌ条約によれば、創作的作品を対象とする著作権は、著作者による明示的な主張・宣言がなくとも自動的に発生する。条約の締結国においては、著作者は、著作権を享有するために、「登録」や「申し込み」をする必要がない。作品が「完成する」、すなわち作品が書かれる、記録される、あるいは他の物理的な形となると、著作者はその作品や、その作品から派生した作品について、著作者が明確に否定するか、著作権の保護期間が満了しない限り、直ちに著作権を得ることができる。」

    簡単に言うと、「作品は、生み出された瞬間に著作権が発生する」ということ。

    これの何が面白いのかというと、これまでの常識で考えると、著作権とは、たとえば「既に出版販売されている作品をコピーしたり、と類似なものを作ってしまったら、著作権侵害に当たる」と、何となく思い込んでいたところに、冷や水を浴びせかけられたような、コペルニクス的転回を味わったかのような、常識の逆転。

    それは、著作権の中でも、出版権や販売権の侵害であり、確かにそれ自体は問題なのだけれど、もっと問題なのは、「著作物とは、なにも、世の中に販売されているものだけが有するものではない」ということ。

    無料で書いた絵だって、何だったら落書きだって、著作権者が「創作し完成した」時点で、それは著作権を有するのである。

    ツイッターなんかで、誰かが気の利いた文章を書き上げ、それをあたかも自分が書いたかのようにコピー&ペーストするだけの簡単なお仕事に精を出す人たちがいるが、それはまさしく、著作権の侵害なのである。(いろんな意味で特定が難しいし、訴えにくいし、ツイッターはツイッターの規約があるので一概には言えませんが、他人の文章丸パクリしておいて堂々としているのは、盗人以外何者でもないよな、とは思う)

    そして僕らが、「これは著作権はないだろうから自由に使おうぜ」というのは、勝手に判断してはいけないと言うこと。

    あくまでも、著作権者からの許諾が必要なのだと言うこと。

    ここら辺くらいまでは、基本として理解しておく必要がある。

    ふむふむ。

    そして、本書。

    本書は、更に著作権の意味を、深く掘り下げてくれる。

    元々は、文化財として生まれた「芸術作品」は、公共のためにこそ帰するものである。

    それこそが、文化を発展させるのだから。

    素晴らしい作品が生まれ、しかし、その素晴らしい作品を真似することができなければ、始祖たる人だけがうまい汁と巨万の富をすすり、文化自体が発展しなくなってしまう。

    だからこそ、著作権は、その「表現のみ」に特化し、「アイディアは保護しない」という方針なのだと言うこと。

    ・アイディアは保護しない
    ・文化の発展に寄与すること
    ・例外的に独占を許すもの

    それこそが、著作権の意味。

    盗作騒動で裁判完勝の「弁護士のくず」が大逆襲!この裁判自体をネタにした新章開始!! - 見えない道場本舗 (id:gryphon / @gryphonjapan)
    http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20110404/p4

    実際問題、この作品は、裏側にこんな騒動があったようで。

    なるほど。(だからこそ、シーソーゲームではなく、一貫して片方の論理が強い構造になっていたんだなあ、とはあとで気づいたこと)

    単行本、読み応えありました。

    本書の最後のページの見解は、一刀両断、お見事でした。

    一読の価値ありです。

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