ピンポン (1) (ビッグコミックススペシャル)

著者 :
  • 小学館
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  • Amazon.co.jp ・マンガ (210ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784091847362

作品紹介・あらすじ

時速140kmで飛び交う白球。地上最速の球技・卓球にかけた少年の物語。

▼第1話/スマイル▼第2話/ペコ▼第3話/風の音がジャマをしている▼第4話/孔文革(コンウェンガ)▼第5話/ヒーロー▼第6話/老人と少年▼第7話/ドラゴン▼第8話/若者たち▼第9話/バタフライジョー▼第10話/男はド根性だかんよ!!▼第11話/性能 ●主な登場人物/月本誠(通称・スマイル、片瀬高校1年生。右シェイク、両面裏ソフトカット主戦型)、星野裕(通称・ペコ、片瀬高校1年生。右ペン、表ソフト速攻型)、孔文革(コンウェンガ、中国から辻堂学院高校に招聘された留学生。右 中国式ペン、ドライブ攻撃型)、風間竜一(通称・ドラゴン、海王学園2年生。右シェイク、裏ソフト ドライブ主戦オールラウンド型)、佐久間学(通称・アクマ。スマイルとペコとは幼馴染み。海王学園1年生、右ペン、表ソフト 速攻型)、小泉丈(スマイルとペコの属する片瀬高校卓球部の顧問。昔はバタフライジョーとして名を馳せた幻の名卓球選手) ●あらすじ/月本(通称・スマイル)と星野(通称・ペコ)とは幼馴染み。小学生時代に駅前の卓球場タムラでラケットを握っていた頃からの仲だ。天才肌の星野はいつも好き勝手やり放題。今日も部活をさぼっていた。先輩たちに「星野を部活に連れてこい」と命令される月本だったが…(第1話)。▼卓球通信で、辻堂学院に中国からの留学生がやってくるという記事を見つけた月本と星野は部活をサボり、辻堂学院に向かう(第3話)。 ●その他の登場キャラクター/オババ(第1、5、11話)、キャプテン大田(第1~8、11話)

感想・レビュー・書評

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  • 最高にかっこいい漫画です。

    弱者の生き様、強者の孤独、敗北者の絶望、勝者の見る景色…
    スポーツでの様々な感情が突き刺さるほど鋭く描かれています。
    紹介しきれないほどの名シーン名台詞の嵐。
    ぜひご一読ください。

  • 映画とは違った感動がある。
    絵はそんなに好きじゃなかったけど、後半は逆にそれが個性的で良かった。
    心に残る言葉やセリフがふと飛び出してくる。

  • 届かない人間の物語が好きだ。『アマデウス』でモーツァルトに届かなかったサリエリは最後にモーツァルトを殺してしまった。『山月記』で一流の詩人になることをあれだけ渇望していた李徴は、夢やぶれた挙句、虎へと姿を変えてしまった。そして『ピンポン』で卓球に青春のすべてをかけた佐久間は、ペコやマイルとの圧倒的才能差に絶望し、競技そのものを辞めてしまう。

     彼らに才能がなかったわけではない。まったくそうではない。サリエリは当代随一の宮廷音楽家であったし、李徴はかつて神童と呼ばれた一流官僚だった。佐久間も全国屈指の強豪校でレギュラーを張るほどの逸材であった。しかし、彼らはそれでも超一流にはなれなかったのだ。作中で描かれる、天才たちの対比はあまりに痛々しい。佐久間にとっては卓球が唯一の自己表現であった。卓球で負けることはすなわち、自らの存在価値の否定である。だからこそ佐久間は誰よりも練習し、誰よりも競技に対して誠実で有り続けた。しかし悲しいことに、卓球に対して最高の向かい合い方をする人間が、最も強い人間であるとは限らない。「卓球は死ぬまでの暇つぶし」と言ってはばからないスマイルに佐久間は負ける。あっけないほど簡単に。
     
    その時、佐久間はどれほどの絶望を味わったのだろうか。勝ちたい、勝ちたい、心の底から勝ちたい。そう思ったからこそ、非公式な対外試合は禁止、もし負けたら退部というルールがあるにも関わらず、彼は単身スマイルに挑んだのだろう。しかし自分の限られた才能と肉体の限界が勝利を許さない。お前はここまでだという呪詛が、頭の中で響きわたったかもしれない。結局、佐久間は卓球を諦める。そしてあらゆる張り合いから逃げはじめた。あれだけストイックに送っていた生活は緩み、どこか人生に対して達観したような感覚を持ち始める。

     当然それは不幸なことだ。生きる意味をその内に見出した何かを、手放さなくてはならないのだ。それから彼が自信に満ちあふれた人生を送れるはずもない。最終巻、佐久間の顔は穏やかであるが、それは競技人生を諦めた意味を時間とともに悟り、納得した結果にすぎない。サリエリは嫉妬の余りモーツァルトを殺してしまうし、李徴は、高慢さ・絶望・憧れといった己の内面に侵食され、ついには虎へと姿を変えた。結果こそ三者三様ではあるが、彼らが内面に持ち続けていた感情は近いものがあるはずである。

     それでも、それでも尚、彼らの苦闘は私達に勇気を与える。世の中にはペコやスマイルのような人間ばかりではない。それは競技の才能においてもそうだし、王者のメンタリティーという意味においてもそうだ。私達はそんなに強くない、佐久間と同じように。圧倒的な力の差を見せつけられれば絶望するし、もう前に進めないと思う。実際に佐久間は、あがきにあがいた末、前に進むことを諦めた。彼の最後は惨めだ。不器用を絵に描いたような男にも関わらず、身につくはずのない戦型を覚えようとし、結局挫折をした。諦めきれなかたのだろう、彼は卓球に多くの時間を費やしすぎたから。その時間が無駄だったと思いたくないから、佐久間はしがみついてみた。もう限界であることは明らかなのに。その惨めさに、哀れさに、どれだけ勇気付けられたか分からない。当たり前だが、才能は所与のものだ。それは動かせないし、変えられない。ただ、ひょっとしたら努力は何かを変えるかもしれない。結局、佐久間は変えられなかった。サリエリも李徴も、何一つ変えられず、非業な最期を遂げた。それでも彼らはしがみついた。人生を変えてしまうほどの覚悟をして。

     いつかは努力が世界を変えるかも知れない。それが凡人の美しさだ。天才に届かない秀才の意地だ。その意地が、善か悪か、潔いか惨めか、そんなものは関係ない。サリエリがモーツァルトを殺したのは、確かに嫉妬という醜い感情の発露だ。そしてその醜さは、彼自身の性格に由来することも間違いないだろう。しかし私は、彼に共感する。彼のメッセージが分かる。彼はモーツァルトを殺すという努力をした。それで世界をなんとか変えようとした。無駄だということは、ほとんど分かっているのに。それでもせずにはいられないのだ。彼にとって宮廷音楽は、ちっぽけなプライドを構成するすべてだったのだから。

     李徴は虎になってなお、詩を詠んだ。しかし詩は「第一流の作品となるのには、何処どこか(非常に微妙な点に於おいて)欠けるところがあるのではないか」と親友に評されるほどの出来にすぎなかった。なんという惨めさだ!虎に身を変え、絶望を歌に託し、懇親の力をこめて詠んだ歌であるのに。しかし忘れてはいけない。李徴もまた必死でしがみついた。一流でないことは自分がよく知っている。これ以上恥を晒したくもないだろう。それでも彼は努力をした。そして捻り出して歌を作った。そこでは、その努力が無駄かどうかという疑問は意味をなさない。なぜなら、どこまでいってもその努力が無駄なのは明らかだし、違う意味においてはその努力は何よりも価値があるということもまた、明らかだからだ。

     彼らの気持ちが痛いほどよく分かる。私自身、深い嫉妬と届かぬ羨望を常に持っているから。私は、私の尊敬するあいつにはなれない。人格が違う、努力の量が違う、懐の深さが違う。それでもなお、一度でもあいつに勝ちたい。お門違いな嫉妬だ、それは間違いない。それでも、あいつに劣ったまま生きることは、私のちっぽけなプライドがなぜか許してくれない。あぁ、だからサリエリはモーツァルトを殺さざるを得なかったのか。彼は人間的にもモーツァルトのことが好きだった。少なくとも、モーツァルトを理解しなかった彼以外の宮廷音楽家の誰よりも。それがまた、サリエリの負った呪いなのだ。誰よりも才能と人間性を認めているモーツァルトにだけは負けたくない。友人だから対等でいたい。与えられたいのではなく、隣に立っていたい。そういう凡人の非凡な願いが彼をどこまでも苦しめた。身分違いな願いだということを痛いほどよく分かっているからこそ、その痛みは身を裂く。恥ずかしくて情けない。

     あいつはいいやつだ。私にとっても本当にいいやつだ。それでも私は彼に醜い感情を持つことを止めることはできない。

     彼らはそんな自己嫌悪に意味を与えてくれる。

     サリエリは私を許してくれる。どんな汚い感情だって持つことがある、凡人だから。
     李徴は私を理解してくれる。嫉妬に狂い、己の内面を呪うことがある。凡人だから。
     佐久間は私を勇気づける。努力の末に届かず、諦めることがある。凡人だから。

     そんな凡人たちの物語が、届かない者たちの叫びが、いつでも私を支える。まだ諦めないぞ。

  • もはや、卓球マンガの大定番、ほぼほぼ、永遠の名作、の、仲間入りをしている作品だと思われるのですが、まあ、とんでもなく面白いです。

    1996年に、単行本の第1巻が発売されているのですね。2019年現在からすると、26年前か、、、驚くなあ。まあ、今の時点で読んでも、おっそろしく古びてないので、そらもう大したもんですね。ある種の壁を突き抜けた作品は、そのジャンルにおいて、永遠に模範となる存在となり得る、という、良い証明の作品ではないでしょうかね?

    凄くうろ覚え、且つ個人的な感傷になりますが、この作品が発表された1996年当時、自分は大学生になったばかり、くらいだったのですが、本当に申し訳ない意見なのですが、卓球、という競技の存在感って、「ダサい」に近い認識だったと思うんですよ、世間一般の常識として。

    野球、サッカー、バスケなんかと比して、ダサい球技。それが卓球。みたいなパブリックイメージを、なんとなく自分個人だけの思いかもしれませんが、世間体としてみんなが思っている、そんな風潮の時代だった、気がするんです。

    でも、そんな時代の雰囲気のなかで、既に大注目の漫画家的存在だった松本大洋が、卓球を題材に新連載を始めた。そしてそれが、問答無用の大傑作だった。

    その事実が、なんと言いますか、素敵なんですよねえ、、嬉しいんですよねえ、、、

    きっと今後も、マンガという表現形態が無くならない限り、あらゆる世代を超えて読み継がれていく作品なんだろうなあ。そんな気がする。それほどに大好きな作品ですね、うん。

    ちなみに、この漫画、そもそもの始まりからして「僕の血は鉄の味がする」の名ゼリフからスタートするわけですが、漫画のスタート時点では、このセリフを言っているのは、スマイルこと月本誠なのですが、このセリフを元々、スマイルに教えたのが、ペコこと星野裕なんですよね。186ページなのですが、ペコがスマイルに「知ってるか?血って鉄みたいな味がするんだぜ!」って言ってます。だから、このスマイルのセリフは、「僕もペコも同じだ。血は鉄の味がする。あこがれ続けているヒーローであるペコと、僕は、そこは同じなんだ。嬉しい!」っていう、感動の表現のセリフなんかなあ、とか、思った次第でした。

  • こんなにもすばらしい漫画を今まで読んでこなかったのか、と思った。

  • 典型的なスポ根漫画とはちょっと違うので、スポーツ経験の有無問わず誰でも読める。
    これを読んで「面白くなかった」と言った人をまだ知らない。

  • ぼくが漫画に浸るきっかけ作品。

    松本大洋、彼は天才です。
    『鉄コン筋クリート』で感じた躍動感、
    『花男』で描かれた父と子の心の通い合い、
    そしてこの完成度の高いスポーツ漫画『ピンポン』。
    これら3作品に共通したテーマとして、
    タイプの違う男二人が絡み合い、成長していく
    というものがあると思う。

    登場人物は皆、心のどこかに秘めたものがあるが、
    それをはっきりとは言葉に出さずに過ごしている。
    いろいろなことを心の奥では考えていても、
    べらべらと喋ったりはしない。
    発せられる言葉は、ストイックに切りつめられている。
    凝縮されている分だけ、インパクトがあるセリフまわしになる。

    周りと干渉したくないスマイル。
    しかしそれを許さない彼の才能。
    その才能を前に挫折するペコ。
    そしてそれに絡んでくるオババやアクマやドラゴン(全部人間です)。

    天才は人間の反応速度の限界0.1秒の中にドラマを描く。
    ピンポン玉が台とラケットにふれるコツ、カツという音と
    靴底がフロアにきしむキュッという音に
    さまざまな絵が重ね合わされて
    その瞬間に体育館で起きている事
    選手たちの心にある事が見事に描き出されている。
    鉄コンで魅せたスピード感がここでも発揮される。
    素晴らしいのは卓球をバックにした人間ドラマになることなく、
    しっかりと完成度の高いスポーツ漫画に着地させていることにある。

    中学時代に卓球部の友達から借りて読み、
    働いて買って今はうちの本棚にささっている。
    何度も読み返し、しびれる。
    松本先生、あんたほんとに『かっちぶー』です。

  • 努力しようって気にもなるし
    平凡、それもまたいいじゃないかって気にもなる
    なんて良いマンガなんだろうか

  • 前から気になってた松本大洋を大好きになった
    きっかけの本。本当おもしろいわ。

    1巻のペコとスマイルは幼くてかわいらしい。

    他の本もそうだけど
    ところどころシュールな小ネタみたいのがあって
    小気味よいです。

  • この星の一等賞になりたいの卓球で、オレは。

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著者プロフィール

漫画家。代表作に『花男』『鉄コン筋クリート』『ピンポン』『GOGOモンスター』『竹光侍』『Sunny』『ルーヴルの猫』(すべて小学館)などがある。現在「東京ヒゴロ」、シリーズ「むかしのはなし」連載中。

「2022年 『劇場アニメーション「犬王」誕生の巻』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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