- Amazon.co.jp ・マンガ (246ページ)
- / ISBN・EAN: 9784091897459
作品紹介・あらすじ
浅野いにお、衝撃の新境地へ--
ある漫画家の、脇目もふらず駆け抜けてきた連載が終わった。
久しぶりに立ち止まった自分に残されていたものは、
残酷なまでの“空虚感”だった。
大切な存在ほど信じ切れず、束の間の繋がりだけに
縋り始める日々―――
漂流する魂が着地した時、男の本当の姿が現れる。
浅野いにお、極限の最新作。
【編集担当からのおすすめ情報】
『ソラニン』から12年――
漫画家として描き続ける残酷なまでの”業”とは?
本作でそこに終着した著者の、次なる“覚醒”が始まります。
感想・レビュー・書評
-
2017年、「ビッグコミックススペリオール」に連載された、浅野いにおの私小説風(でも多分創作)純文学系漫画。つまり、長期連載が終わったあと、そこそこ有名な漫画家が、次の連載を始めるまでのウジウジ悩む姿が、延々と1巻かけて描き出される。
多分浅野いにおが、2年間も漫画を中断したことなんて一度もない。いつも少し世界を斜めから見ていて、漫画界全体で自分の特異な位置づけと、「売れるストーリーライン」を、何よりも把握している。だからこそ、最新作が前後編の大作アニメにまでなったのだ。そういえば「ソラニン」(宮﨑あおい主演)も実写映画化されたっけ。うん、あれはいい映画だった。
でも、新人アシスタント時代、猫目の女の子から、わけわかんない言葉で、批難されたことは、本当にあったことのように思えて仕方ない。
「あなたは才能がある人です。私はとても尊敬しています。それと同じくらい、私はあなたが怖いです。」
「漫画に対していつも真剣で、ひたむきで、それが正しい事だと思ってる。自分に夢中で、他人の気持ちを考える余裕なんてないんでしょうね……」
「……だからあなたはいつだってそう。周りの人間を当然のようにないがしろにしてしまう。」
「…先輩。あなたが漫画を描き続ける限り、あなたが漫画の夢を諦めない限り、あなたは誰かを傷つけ続ける。」
「死ぬまでひとりぼっち。」
「だって先輩はこの世の中で、漫画家が1番偉いと思っているから。それでもあなたは、前に進んでしまうんでしょうね。」
最後の言葉にかぶせて、主人公の独白が入ってくる。
……彼女のその言葉によって、自分の人生がやすやすと予言されてしまったような気がして、……
……あのとき、力ずくでも、その言葉を訂正させるべきだったのだ……
勿論、これは私小説風漫画を借りた、あるテーマを持った普遍的な作品である。何故そう言えるかというと、ほとんど80%同じ言葉を、私も女の子から言われた事があるからである。
3月、岡山市一箱古本市で手に入れた本の1冊。えっ?!この作品、映画化(斎藤工主演)されてんの? -
映画を観たくて、この原作を買った。
漫画を読むことすら久しぶりだ。
わたしが浅野いにおを好き、というより、浅野いにおを好きな男の人を、わたしは好きになりがちだ。
だから、いつも浅野いにおを読む時はだいたい「あの人の頭の中はどうなっているんだろう、あの人は何を考えているんだろう」という気持ちで、読む(『おやすみプンプン(2)』レビュー参照)。
そして、「ああ、あの人はわたしのことなんて全く見てなんだろうな」と思って、凹む。病む。
今回は原作を読むタイミングと、あの人の頭の中はどうなってるんだろう案件が偶然、重なった。
映画のために買った原作が、別の意味を持った。
「わたしはこの人を好きだけど、この人にとってわたしは完全に友達なんだな」とわかって、落ち込んで、一人お酒を飲んで、深夜。
誰がどう見たって最悪のシチュエーションだ。挙句の果てに彼は浅野いにおが大好きなんだから。
何をしたって浮上しないメンタルの状態で、深夜に、この作品に手を出した。
案の定、最悪だった。
いつもの「ああ、あの人はわたしのことなんて全く見てないんだろうな」に「ああ、あの人は誰かと一緒に生活するつもりもないんだろうな」が加わって本当に最悪。
映画を観るために手に取ったのに、その気持ちを原作を読むことで削がれるって、何。
しかも、一緒にこの映画観に行こう、って言ってたのに、たぶんそれもなくなったし。
まじで、何。
そしてまだ、怖くて『おやすみプンプン』も最後まで読めてない軟弱者。
ほんと、何。
まじで最悪なんだけど。
(※この作品も、いにお先生も悪くありません)-
bmakiさん
ありがとうございます。
どちらかというと、プライベート⇒浅野いにおの順番でメンタルが堕ちてますね爆
仕事も年度末でかなりバ...bmakiさん
ありがとうございます。
どちらかというと、プライベート⇒浅野いにおの順番でメンタルが堕ちてますね爆
仕事も年度末でかなりバタバタしていたので、疲れてもいます…それで疲れ気味な時に、思ったよりハードな作品に手を出してしまったという笑
あと、昨日『ロストケア』って映画を観たのですが、これまた激重で…
メンタル病むととことん堕ちて浮上するタイプなので、ここから少しずつあがっていきそうです。
こういう時、サクッとでもいいので一緒にのみたいですよね^^2023/03/28 -
ロストケア、小説ありましたよね。私読んだ記憶があります。
はまなかるい?だったかな??
凄い衝撃的な内容だった記憶があります。
映画化...ロストケア、小説ありましたよね。私読んだ記憶があります。
はまなかるい?だったかな??
凄い衝撃的な内容だった記憶があります。
映画化されてるんですね?ちょっと気になります(^^)
落ちる時、ありますよね。。。
私も今ちょうどそんな感じです。
別に何も悪いことは身の回りに起きていないのに、何か悪いことが起きそうな予感?
いや違うな、これは多分不安感だ。
物凄い不安感が全身を駆け巡っています。
仕事失敗したかも?
誰かに嫌われているかも?
明日嫌なこと起きるかも?
何なんだろ、この不安感。。。
明日は久々の、会社仲間との女子会です。
しこたま飲んできます!!(^^)
naonaonao16gさんとも、しこたま飲みたいですね!2023/03/31 -
bmakiさん
こんにちはー!
お酒残ってないですか?笑
ロストケア、小説もはやはりなかなか衝撃的なんですね!
是非映画もいつか見てみ...bmakiさん
こんにちはー!
お酒残ってないですか?笑
ロストケア、小説もはやはりなかなか衝撃的なんですね!
是非映画もいつか見てみてください~
激重注意ですが…
よく心理学の本とかにありますけど、不安は思考の助けになるから、進歩の過程でなくなることなく残ってきたと言います。
でも、漠然とした不安に駆られるのはしんどいものがありますよね。睡眠とかに支障が出ないといいなと思っています。
最近はネガティブな時に家でひとりでお酒を飲んでいると、余計落ち込むようになりました笑2023/04/01
-
-
浅野いにお作品は読んでると死にたくなる。
平和ボケし、日常に膿んだ現代の日本人の自己批判とどうしようもない欲望をまあ嫌になるくらいリアルに取り出して描く人である。
だが、そこがいい。そしてこの作品もそれに該当するやつでした。
主人公はそこそこ売れた長期連載が一段落した30代の漫画家。漫画を描くというやりたい仕事はやれているし、ちゃんとファンだっているけど、仕事に夢も見れなくなり疲弊している。置かれた状況や主人公の思考を見るに、たぶん作者の自伝的な作品なのかなと思われる。
読んでると陰鬱な気分になる。気分が地の底まで落ちてゆく。
だけど生きてたらそんな作品を読みたくなるときもあるのだ。 -
浅野いにお本人の経験を元に書いたダークさ満開の漫画。
女性(ちふゆ)の表情が何処か物憂げで、2次元なのに吸い込まれる妖艶さ。
風俗嬢を本気で好きになった時、遣る瀬無い気持ちは何処に沈めればいいのだろうか。
作品の評価を通して見られた自分が、本当の自分ではない感覚は何なのか。 -
漫画家が主人公っていうから、「世界の終わりと夜明け前」に出てくる「東京」みたいな感じなのかなぁ。あれ結構暗かったよなぁ。どうしよっかな、読んだら暗くなるかな。と思って買うの躊躇ってたけど結局買った。
そしたら短編ではなくたっぷり一冊ということもありとても楽しめた!濃厚。連載終わって、新しい連載始まるまでがどれほど大変な時期だかわかる。
「漫画家は漫画書いてないとただのニートだ」って言ってた漫画家は誰だったっけ。売れてるからお金はあるのに襲ってくる焦燥感。大変だ。
ちふゆちゃんが可愛くて可愛くて。
ちふゆちゃんは結局最後まで口の中が見えませんでした。セックスしてるときでさえ、見えたのは歯のみ。
大きく口を開けない子。中身を見せてくれない子。
そういう子に惹かれるように出来ているんだ。こっちは割とバカにされてるし嫌われるんだけど。でも好きだ。
表紙も凝ってる。なんかポコポコ浮かんでる文字。かわいい。
結局人はどれだけ人を馬鹿にしても人に救われてしまうんだよなぁ。あーーー、やるせない。だって自分も人なのだ。 -
初浅野いにお作品。ずっと気になっていた先生。ほろ苦な、大人のための漫画だったなぁ。哀愁。置いてきたもの、あの時の無鉄砲さを思い出したりして、ちょうど中年ど真ん中の自分に刺さったなぁ。物を創る人たちは皆孤独だ。
-
浅野いにおさんの漫画は大好きなので、
そもそも飽きずに最後まで楽しめた。
ちふゆ、可愛かったね。
漫画家、何かを作り上げる人の葛藤がよくわかる作品。
だし、ビジュアルも浅野さんに似てるから、完全に浅野先生のほぼノンフィクションだと思って読んだ。
浅野さんの漫画のファンだから、そういう意味でも面白かった。 -
何を書いてもわかってないと言われる気しかしないけど自己満の記録として
どんぐらい本当のことなんだろうかとか思ったけどそれももう野暮なのかな
表現者として他人を認めたら終わりみたいな事はよく言われるけど、誰に認められたらいいとか売れたらいい訳でもないし、終わりはないから苦しいなと、自分は漫画や映画や小説やら好きなものはいっぱいあるけど作り手になりたいと思わなかったのは、才能があると思わなかったというのはあるけど、こういう事を考える事が嫌だと思ったからなんだろうなとか思った。
ちふゆが魅力的映画の字幕の話好き -
個人的に芥川賞の本って究極に主人公の心が分かる本が選ばれるもんだと勝手に思ってるんですけど、小説だったら芥川賞取れてたんじゃないかっていうくらい主人公のこと考えさせられる漫画でした。
浅野いにおさんの作品の中で1番素直な気がして1番好き。
映画「零落」(竹中直人監督)をDVDで観た。★3つ。何故なら‥‥。(超ネタバレ)
山下リオ演じる、ア...
映画「零落」(竹中直人監督)をDVDで観た。★3つ。何故なら‥‥。(超ネタバレ)
山下リオ演じる、アシスタントしていた時におべんチャラ言いながら、連載終わってクビになった途端に、文句言ったり、訴えると言ったり、ハラスメントを言ってみたりする、メンハラ女子の台詞までほとんど原作ままなのはいいのだけど、あまりにも演技が大袈裟。リオちゃんは、そもそもそういうキャラではないので、当然監督の演出。これによってリアルさが無くなった。竹中直人らしいといえばそうなのだけど、よくない。それと切れた時の斎藤工の演技も大袈裟であり、何を思ってあんなふうに演出したのか、わけわからない。
竹中直人も、主人公も、作品の中の男たちは、決して自分そのままではない事を知っている。だから、作品を見て「救われました」と涙流されても、「貴女は全然わかっていない」と言いたくてたまらないだろう。そういう気持ちに共感したから、監督はおそらくこれを作ったのだろう。
基本的に驚くほどに原作まんまだった。わたしの抽出した、最後の台詞まで原作まんまだったが、順番が逆になるので、私が省略した、猫目の後輩が主人公に最初に言った言葉を最後に持ってきたのは、いい演出だったと思う。
即ち、彼女は「先輩、あなたは【怪物】です」と言ったのである。