ローマへの道 (小学館文庫 はA 19)

著者 :
  • 小学館
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本棚登録 : 310
感想 : 29
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  • Amazon.co.jp ・本 (312ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784091912596

作品紹介・あらすじ

頭角を現していく同期生に焦りを覚えるダンサー・マリオ。彷徨する青年の心の軌跡をドラマチックに描く長編ロマン。

感想・レビュー・書評

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  • 初読。

    ■ローマへの道 202p
    ベルギーの育ての父母たる叔父叔母のもとを離れてパリでバレエ修行中のマリオ。
    叔母の葬儀で叔父から、死んだと聞かされていた実の母が、夫つまり実の父を殺したあとローマで生きていると教えられて動揺し、パリに戻っても恋人とうまくいかず……。
    という筋だが、マリオが恋人のラエラを殴る(!)とき必ず母が父を殺した凶器の麺棒がよぎる……この描写が凄い。
    いわば救いが描かれるわけだが、個人的には、描かれない今後も想ってしまう。
    ドメスティック・バイオレンスと親子の繰り返しの問題。あとは日常の倦みについて。
    漫画内で、読者の味わいをよくするためには、たとえば一回だけマリオがラエラを打って、何度も記憶に苛まれるという流れにしてもいいところを、結構執拗で飽きてしまうくらいに、何度も何度も何度も、マリオがDVする場面が繰り返される。
    あ……これひょっとしたら「呪い」から「解放」されたあとも続くのかも……というやりきれなさを、個人的に読んでしまい、すっきりせず……しかしこの「すっきりしなさ」が大事だと思う。
    「残酷な神が支配する」同様、一度ぶっ壊れてしまった人の、一回の出来事で救われない粘着性のようなもの。
    またその日常性の毒には、才能やら妬みやらも係わって、表現者として陥りがちな陥穽も要素になって、もう業が深すぎて……。
    *ルームメイトのレヴィはこの後「感謝知らずの男」で描かれる。

    ■青い鳥(ブルーバード) 50p
    「世界が不条理でも、舞台だけは美しかった。舞台にだけは青い鳥が住んでいた」「誰も誰かの青い鳥にはなれない」
    至言の連発。

    ■ロットバルト 50p
    単純に「白鳥の湖」だから、ダーレン・アロノフスキー監督「ブラック・スワン」を思い出したが、ミステリの枠組みも似ている。

    ◇エッセイ―萩尾さんの髪の毛の南北問題:さそうあきら(漫画家) 4p
    髪色について。黒髪と金髪と描き分けることで、説明なく人物の出身が北か南かを示している、という指摘。
    これは素晴らしい着眼点だと思った。

  • 難しい。
    そりゃそうだ。
    生まれる前の本だった。
    これは、背景知識必須

  • バレエ・ダンサーとして成功することを夢見る青年マリオ・キリコの物語です。

    ドミ・ド・リールのオーディションに合格したマリオは、おなじく合格したラエラことラファエラ・ロッティと交際をはじめます。しかし、彼のほんとうの両親をめぐる問題のせいで彼の心の安定はうしなわれ、はじめはめだたなかったもののしだいにその才能を開花させていく同期のディディに対して後れをとっていると感じて、しだいに追いつめられていきます。その結果、彼は何度もラエラに手を挙げてしまい、二人の関係も冷え込んでいきます。

    『感謝知らずの男』にも登場したレヴィが本作でも重要な役どころを担っており、そちらを読んだことのある読者にとってはより興味深く読めるのではないかと思います。若いマリオとラエラの不安定な心の揺れ動きが巧みに表現されているとは思いますが、両者の関係が若干紋切り型のようにも感じてしまいました。個人的には『感謝知らずの男』のレヴィがメインの話のほうが気に入っています。

  • (2019-05-26L)

  • 高いプライドと野心に嫉妬心が加わり、哀れなほど空回りしているマリオ。育ての母の死をきっかけに打ち明けられた家族の秘密が、スランプへ入り口となりマリオを苦しめる。
    押さえられない衝動として恋人のラエラに手を上げるシーンが何度も出てきて、マリオのメンタルの弱さが執拗に描かれる。そうしてターニングポイントとなる「愛を学ばなかった」という台詞。
    満を持して登場したマリオの実母に驚いたのは私だけじゃないと思う。老人ホームにいるって言葉から、白髪の老婆かと思えばこざっぱりとした性格のオバサンで。
    実の母との再会で愛を知るって、育ての両親の存在ってなんだったんだろう。義両親だって愛情をもって接してきたのに、愛を知れなかったのは当たり前として受け取らなかったマリオ自身の問題なんじゃ?
    その家庭から愛を学べずラエラへの暴力に走ってしまったという結論のつけ方は納得できない。

    バレエ・コレクションと銘打たれ、バレエ作品のみを掲載したこの一冊ではロットバルトが好き。3作とも人間を丁寧に描いた作品でした。

  • 図書館の寄贈漫画。バレエのお話。あぁ、一回でいいからクラシックバレエを生で観たい…。

  • がっかりするマンガが多いので、望都さんに帰ればいいんだ。
    バレエ作品を描いていたとは。

  • 青い鳥の話が好きです

  • ダンサーたちのお話がいくつか収められている。
    どの話もキリッとしていてかっこいい。暗い話の内容なのに、かっこいいと思える芯の強さを感じたので、テーマは人の強さや弱さなのではないか?と考えさせられた。
    ダンスの知識や興味がなくても、読んでいるうちに物語にのめり込む力強さがあった。
    さすが漫画のお母さんの作品と思わずにはいられない良作。

  • ラエラいい子だ・・・青い鳥が印象的

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著者プロフィール

漫画家。1976年『ポーの一族』『11人いる!』で小学館漫画賞、2006年『バルバラ異界』で日本SF大賞、2012年に少女漫画家として初の紫綬褒章、2017年朝日賞など受賞歴多数。

「2022年 『百億の昼と千億の夜 完全版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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