人間交差点(ヒューマンスクランブル) (4) (小学館文庫 ひA 4)

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  • Amazon.co.jp ・本 (306ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784091920140

作品紹介・あらすじ

愛と憎しみ、喜びと哀しみが織りなす無限の人間ドラマを描く珠玉の名作

▼第1話/動機▼第2話/掌の影▼第3話/腐敗(前編)▼第3話/腐敗(後編)▼第4話/空白の走行▼第5話/砂時計▼第6話/顔のない群れ(前編)▼第6話/顔のない群れ(後編)▼第7話/踏切り▼第8話/紺碧の宴 ●あらすじ/台風がくると発生する女子大生連続殺人事件。その捜査にあたっていた片山刑事は、ある週刊誌の連載記事に載った大学と、殺された女子大生の通う大学が一致していることに気づく。そして、次の台風がやってきた日、片山をはじめとする捜査員は、次の標的となる女子大学周辺に張り込み、犯人を待つのだった(第1話)。▼北国の町で、銀行の支店長と女性行員の心中事件が起きた。だが、検事の森脇は、心中ではなく、銀行の贈収賄に関連した他殺と判断。自ら調査に乗り出すが、その途端、彼は命を狙われる(第3話)。▼銀行の幹部を全員、贈賄容疑で逮捕した森脇。だが本当の目的は、支店長らを殺害した犯人を、この拘留期間に見つけるための別件逮捕だった。しかし逮捕者全員に、事件当日のアリバイがあることが判明。捜査は手詰まりとなったかに見えた。森脇はそこで、自分を轢き殺そうとした犯人を、車のナンバ-からわりだし、逮捕する。だがその人物は、彼の恩師だった。そして恩師の口から、事件の全貌も明らかにされる(第4話)。

感想・レビュー・書評

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  • 昨日本棚を何となく見ていて、懐かしいマンガが出て来たので、久し振りに見た。「人間交差点」というマンガだ。

    学生時代に文庫版として買ったものだ。連載自体は1980年から1990年までだったらしいので、連載時のマンガは読んだことは無い。本の奥付を見ると、私が今持っている小学館マンガ文庫版の発行は1994年だから、大学1年の時に買ったものだと思う。

    私が買った時も既に物語的にはやや古くて、今読むと今から30年前前後の日本の状況が分かると思う。連載は連載だが、基本的には一話完結で、しかも毎回物語も登場人物も全然違うので、連載だが単作が連なっている短編集と言う感じだ。内容的には社会の片隅とか暗部とかも扱っており、各話の最後にはほのかな希望を付すと言った人間味のある著作で、恐らくフジテレビの「ザ・ノンフィクション」を好きな人が好きそうな本である。私も好きで、文庫版は結構買って、全巻じゃないが5冊くらいがまだ本棚にある。

    もう何年も読んでないが、以前は飽きるほど読んで、面白みまで摩耗してしまったと思ったが、何となく久し振りに読んでみたわけだ。

    読んでみると、意外と面白かったと言うか、この歳になってみないと分からないような感じも抱いたりして、結局手に取った「第4巻」一冊を読み終えた。

    第4巻は人間交差点前期の作品なので、背景は1980年代の前半である。恐らく、この時代は今ほど多様性を肯定的に捉える精神的な余裕の無い時代で、要は「有名な学校を出て、一流企業に勤め、そこで順当に出世していく」と言うのが一般人の人生の正解と今以上に見なされていた時代だと思う。プラザ合意などによる日本国内の動揺はあっただろうが、それでも今より社会的には安定していて、会社が潰れるとかも今ほど頻繁には起きていないはずだ。

    そんな中でも、働く意義とか、何のために生きているのか?と言うような内容を問う話が「人間交差点」にはある。例えば、女子大生連続殺人事件の犯人を追う若い刑事が、週刊誌の密着取材を受けながら捜査を受けるのだが、この際に取材をする若い女性記者と、取材を受けている若い男性刑事のやり取りがある。

    「まず、今の仕事の待遇についてだけど、刑事っていうのは打ち切り過勤制だから、いくら超過勤務しようと驚くほど給料が安いそうね!?」
    「…た、確かに安いかも知れませんけど、まだ安くて驚いたことはありません。」
    「活動経費にしても、本部から正規に出るものは電話代ぐらいのもので、尾行の際のタクシー代や深夜捜査の弁当代なんかも、あまり請求しない刑事が多いって言うのは本当?」
    「覚えておく余裕がある時には、ちゃんと請求しています。」
    「お休みなんかも、事件発生から三週間は日祭日関係無く、毎日朝8時から夜12時までぶっ通しで仕事なんですってね?」
    「あの…何が知りたい訳ですか…?」
    「ズバリ聞けば、現在の仕事に満足してるかってこと。特に待遇面なんかでね。次代を担うプロが出るか出ないかは、結局その辺がポイントだと思うの。」
    「僕は事件を解決するために働いています。あまりそういうことを考えたことはありません。」
    「そう言うのって信じられないのよね、私は。模範的すぎるんじゃない。悪いようには書かないから、本音を聞かせてよ。誰だって、人より高い給料を貰って、楽な仕事に就きたい。少なくとも仕事がハードなら、人一倍の報酬が欲しいと思うのが、当たり前じゃ無い。」
    「あなたのような考え方で仕事を選ぶ人は、少ないんじゃないんですか。」
    「……え?」

    このやり取りのシーンを、学生だった私は刑事の言うことに共感を示したんだろうが、実感は湧かなかったと思う。湧いているつもりでも、バイトは別として働いたことが無かったので、分からなかったと思う。

    収入は勿論重要だが、金だけを目的に仕事を選ぶというのは、結構キツいだろう。如何ともしがたい理由があるなら別だが、それとて「如何ともしがたい」からガマンできるのであって、自分には詰まんねえとか、向いていないとか、職場の人間関係が悪いとか、そう言う仕事や職場でも「給料が高いから頑張れる」と言う人はあまり多くないのでは。

    学生時代の友達とかと、私はあまり仕事の話はしないが、たまにする時、彼ら・彼女らは、どんな仕事をしてどんな遣り甲斐を感じているかを大抵話すもので、つまらない・キツいけど給料が高いから何とか頑張っている、と言う人はあまりいない。因みに、ゼロでは無い(かなり少ないが、たまにいる)。

  • 相変わらず、突発的に人を殺めてしまう話が多いな~
    それぐらいの人生でないと物語が作りにくいってことではないだろうけど・・・
     
    平々凡々と暮らしている自分には、理解できないことが多い。
     
    お気に入りは、戸籍のないノブちゃんの話「顔のない群れ」

  • 網走などを舞台とした作品です。

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