- Amazon.co.jp ・本 (325ページ)
- / ISBN・EAN: 9784091920515
作品紹介・あらすじ
動乱の江戸末期、来たるべき近代国家への苦悩と希望を描いた巨編!!
▼第1話/三百坂▼第2話/おせき殿▼第3話/鬼鉄(おにてつ)▼第4話/曾根崎新地▼第5話/腑分け▼第6話/適塾の人々▼第7話/星鶴(ほしづる)、豆鶴(まめづる)▼第8話/夜の客人▼第9話/嵐の前 ●登場人物/伊武谷万次郎(松平藩の家中。剣の才能に恵まれている)、手塚良庵(医師・手塚良仙の息子。女好きだが、腕は確か)、手塚良仙(良庵の父で、蘭方医。江戸に種痘所を設立する運動をしている) ●あらすじ/江戸小石川伝通院裏に、三百坂と呼ばれる路地があった。毎朝6ツ半になると、江戸城の太鼓を合図に、大名、旗本たちの登城が始まった。そしてその中に出仕してまだ4か月の武士、伊武谷万次郎がいた。万次郎は登城の際の、三百坂の早駆けを眺めている一人の若者のことが気になっていた。ある日、万次郎が尊敬している千葉周作先生が死に、痛夜の場で諍いになった万次郎と清河八郎は、河原で真剣勝負をする。この勝負で怪我をした万次郎の治療にやってきた医者・手塚良庵は、いつも登城の様子を眺めていたあの若者だった(第1話)。▼行き付けのそば屋で食事をしていた良庵は、そこで万次郎と偶然再会する。「この近くに用がある」と、同じ道を歩いていく良庵と万次郎。お互い、善福寺の住職の娘、おせきに会いに来ていたのだった。二人はおせきに自分の想いを伝えるが、おせきの返事は「住職になってくれる人と結婚をする」というものだった。その帰り道、良庵は、何者かに襲われてしまう(第2話)。 ●本巻の特徴/第1巻では、後に親友となっていく良庵と万次郎の出会いと、それぞれが己の進む道を本格的に歩み始めることを中心に物語が進んでいく。それと同時に、安政時代ではまだ西洋医学が認知されておらず、そのために人の命が失われていたことにも焦点を当てて描かれている。 ●その他の登場キャラクター/万次郎の父・伊武谷千三郎(第1、3話)、万次郎の母(第1、3話)、おせき(第2、8話)、多紀誠斉(第1、8話)、山岡鉄太郎(第3、話)、原田(第4、5話)、緒方洪庵(第4話)、福沢愉吉(第5、6話)、丑久保陶兵衛(第7、8話)
感想・レビュー・書評
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抜群に読み応えがあり楽しめた。
ブラックジャックも好きだが、この作品も好きになった。是非、沢山の人にこの作品を読んでもらいたい。
武士は刃物で人を殺め、医者は刃物で人を生かす。
一庶民として、時代の動乱に巻き込まれ翻弄されていく人物たち。それが複雑に絡まり物語が進んでいく。実在の人物と空想上の人物を入り交ぜた凄まじい作品だった。時代が変わっても戦争・争いは変わらず起こり、巻き込まれるのはいつも一般人。人生をめちゃめちゃにされ、死んでいく。戦争が日本で始まれば、今我々が生きているこの時代は戦前になってしまう。
終盤の綾が声を出すシーン、良庵の『歴史にも書かれねえで死んでったりっぱな人間がゴマンと居るんだ・・・、そんな人間を土台にした歴史に残る奴など許さねえ。』というセリフにはグッときた。
いつか、手塚治虫漫画全集を全巻買って読んでみたい。まだまだ読んでない作品が沢山ある。
それにしても、よくこんな情報量の多い複雑な物語を他の作品と並行して執筆できたものだ。凄すぎる‼️詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
すごく面白い。
現代社会を見ているようで、学ぶべきところが多い。是非みんなに読んでほしい。 -
手塚治虫は国民的漫画の巨匠であることは言うまでもないのだが、医療=人命救助活動である一方で、性的衝動をも歓喜するような厭らしさがあって、読むのにやや苦労する。手塚良庵の患者がいまのところ女性ばっかなのは何故かと(笑)。
女たらしで軽薄だが人命尊重の良庵。
男気があり初心で粗野、信念のためなら人をも殺める万二郎。
恋敵でもあり悪友でもある、この対照的な二人が、幕末の混乱期を生きる。龍馬や西郷さんやら手垢のついた志士ストーリーとは違った面白さがある。
福沢諭吉があんなにどっしりした男だったのには驚いた。子どものころの学習漫画だと、負けん気はあるが小役人的な真面目な青年といった感じだったので。
権力の理不尽なシステムに暮らしを牛耳られる人々、いびつな学問大系、そして震災の余波…どれも今の世の中に当てはまること。
これが世に出されたのは1980年代。まだまだバブル景気に湧いていた頃。当時はこれをどう受け入れたのか気になるところ。 -
一本気な万二郎と、軟派な良庵。対極な性格の二人の視点が面白い。
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登場人物が、生きる、生きる。
いわゆる敵対者の論理のどちらも、具体的には幕府側と倒幕側のどちらもわかるようになっており、さらに男の生き方も描かれている。
対照的なふたりの、どちらも迷い、踏み止まり、後悔し、やけくそに決意し、信念に殉じる。
「馬鹿な男たち」が愛せればこの漫画の勝ちだ。
また手塚治虫の作品はいろいろに描き分けられているが、本格ストーリーの組み立てが凄まじく巧み。
「ブラックジャック」のような一話完結、「火の鳥」のような一冊完結の、それぞれ連作形式よりも、本作や「きりひと讃歌」のような作品のほうがすごい。 -
タイトルの『陽だまりの樹』とは、家康が幕政を始めた頃には
ほんの若木だった桜の樹がいつの間にか老木となり、
外観は何ともないのに、その内側は白アリや木食い虫に
食い荒らされてしまって、いまや倒壊寸前となった樹を幕末の幕府になぞらえて。
今作で頻繁に描かれるのは、カッコ良く活躍する姿ではなく、
むしろことごとく失敗したり、カネや名誉やセックスなどといった、
実に人間らしい問題に翻弄される登場人物たちの人間関係。
美談として描かれがちな「江戸城無血開城」を
著者なりの違った角度から書いていたのがすごく良かった。
著者は最後にこれを登場人物に言わせたかったんだなあ。
「歴史にも書かれねえで死んでったりっぱな人間がゴマンと居るんだ……
そんな人間を土台にした歴史に残る奴など許せねえ。二度とここへ来るなーッ。」
何故最後になって、良妻賢母だった万二郎の母が
いきなり豹変し始めるのかが解せなかったんだけど、
きっと著者が彼女を聖人に書き過ぎてしまったと思って、
帳尻を合わせるために、人間らしくさせたかったのかもしれないなと考え直したり。 -
請求記号:726.1-TEZ
[1]
https://opac.iuhw.ac.jp/Akasaka/opac/Holding_list?rgtn=2M018741
[全8巻]
<飯室聡先生コメント>
「医学の歴史の勉強をしよう!シリーズ2」手塚治虫の漫画です。日本に西洋医学がどのように入ってきたのか、その当時の歴史背景はどうだったのか、がよく理解できます。この漫画で大まかな流れをつかんだら、司馬遼太郎の『胡蝶の夢』にチャレンジ!
<BOOKデータ>
動乱の江戸末期、来たるべき近代国家への苦悩と希望を描いた巨編!! 時代の流れに翻弄されつつも、自らの使命を全うした武士・伊武谷万次郎と医師・手塚良庵。二人の男の生き様を軸に、近代国家幕開けまでを作者自らのルーツを織り混ぜながら描いた幕末感動ロマン!! [1] -
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2011年12月31日読了。
さすが手塚治虫、面白すぎます。
手塚治虫の先祖が医者だったと知ってましたが、手塚自身が詳しいことをしったのは、そんなに前ではなかったのですね。
解説を読むと、研究者が手塚良庵について調べて発表したところ、手塚から連絡があって手塚の先祖だったとわかったとか。研究者も手塚良庵が手塚治虫の先祖とは知らなかったそうです。
現実も十分ドラマチックですが、漫画ももちろん面白い。適塾に大鳥圭介もいたんだなあとか、手術シーンや医学に関するシーンはさすがブラック・ジャックの作者で医師免許も持っていた手塚らしい迫力です。
「仁」よりもこっちの方がドラマにしたら面白そうなのに…