- Amazon.co.jp ・本 (270ページ)
- / ISBN・EAN: 9784092905795
作品紹介・あらすじ
成績優秀、容姿端麗なエンドーくんて何者?
創立99周年を迎える市立緑山中学校の職員室を舞台に、14歳という繊細で多感な年齢の子どもたちと日々真剣に向きあう中学2年担任教師たちの姿を描く。
そして、伝説のヒーローとして代々語りつがれる「エンドーくん」が、なぜ伝説になったのか? その秘密が、創立100周年記念式典で明かされる。
坪田譲治文学賞作家、まはら三桃の最新作。
【編集担当からのおすすめ情報】
先生だって、生徒と同じように、毎日悩みながら、でも日々少しずつ前に進んでいる――。大人を信じよう、と思える作品です。
各教師の物語とともに、「伝説のエンドーくん」にまつわる謎解きも楽しんでください。
感想・レビュー・書評
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教師モノって、読んでいてなんだか常に怖い。
何かが起こりそう感が背中に張り付いてきてハラハラする。怒られそう感?かも。それが先生になのか、親になのか、はたまた子どもからなのか自分のつまづいた記憶なのか。
この作品は進学中学校が舞台だが、どうも思春期というものに自分は怖気付いているのではないかと気づかされた。小学校高学年から高2くらいまで。それを随所においてぴったりと説明してくれる。どうにでも転んでしまいそうな不安定な時期と、それを囲む大人たちの戸惑い。
── 向こう側には良いものも悪いものも棲んでいるということですな。こっち側と同じです。それをぎりぎりコントロールしながら、発展させたりやりすごしたり、そういうことをしていくんでしょうな。
─確かに向こう側からやってきた力のある作品は乱暴で自己満足にすぎないものも多い。本当に良いものは、自分が現実社会で培ってきた経験なり感性なり、つまりこちら側からの力が加わらなければ完成しない。
これは補助科目と教頭に言い捨てられた美術の先生のエピソードで語られるフレーズ。ただ芸術だけでなく、思春期と大人にも当てはめられている所が絶妙。向こう側のイメージとは、私の中だと完全に呪術廻戦モード。気を抜けば喰われる(笑)
何がそんなに怖いのかな。それを考えることもまた面白かった。
あと1〜2年もすれば親の当事者になる。
思春期ヤローとどう接するか。さっきのフレーズを忘れずに心にしまっておきたい。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
ある中学校へ新任の先生がやってきて、初の挨拶時に赤っ恥をかく、という場面から始まるこの児童書はもちろん中学生だけでなく大人の方の読書にも十二分に応えてくれる読み応え。
自分の中学校時代のことも、これまで出会ってきた先生方の笑顔だけでなく怒った声まで思い起こさせてくれるような、懐かしいけれど新しい小説でした。
章ごとに主人公が入れ替わり、全編を通してのミステリアスな人物像もあり、学校の歴史とともに人にもそれぞれの生き方を考えさせてくれる楽しい読書タイムでした。
今、青春真っ只中の中学生や高校生に今この本をお勧めしたい。それとそんな子どもを見守る大人たちにも。 -
緑山中学2学年の教師たちが「エンドーくん」の落書きの中から、自分に向けられたメッセージに目を止める。そして児玉先生との何気ない会話の中から、各々の悩みの答えを見つけていく5つの短編連作。
学校が舞台の話は生徒が主人公が多いが、多数の先生にスポットを当てることで、先生も悩みながら生きてるんだなぁと思えたら、生徒たちも先生を見る目が変わるんじゃないかな。
「エンドーくん」という謎の人物の設定がとてもうまく、おもしろい。伝説のエンドーくんって何者?と思いながら読み進め、最後「エンドーくん誕生」で明らかになる。
最初の清水先生が校歌の歌詞を間違えたことと、最後明らかになる過去に歌詞を変えたことがうまく繋がっていく話の運びがうまいなぁ。 -
audiobookで聞き終えた。
先生って大変ですね~ -
派手でないからこその圧巻のラスト。エンドーくんはやはり伝説の男だ。
作者あとがきの先生の言葉も印象的。「みなさんがこの先もうだめだと思うほど辛い時は、公衆電話をかけるための十円玉だけ残しておきなさい。痛みがなくて誰にも見つからない、よい人生のとじ方を教えてあげますよ」 -
期待した以上に面白かった。
中学の教師の物語がオムニバス形式で描かれている。すきっと解決まで描かれていないが、解決できそうな光がさしている。
芸術の価値について語る先生、転職を決める先生、モラハラ気味で離婚され、子どもも寄り付かない先生と色んなことがあるが、どれもオチは前向きだ。 -
『奮闘するたすく』を読んで以来のまはら三桃さんのファンです。
他4冊の著書を読んだけど、この物語が一番好きになりました。
冒頭、清水先生の章で紹介される二年生の各担任たちは、単なる他人で怪しく意地悪そうにすら思えてしまうのに、章を読み進むにつれ悩みや人となりを知ると、いたわるような気持ちになってくる不思議。
エンドーくんの正体がこの物語のスパイスだったけど、たとえそんな仕掛けが無かったとしても、私の一番好きなまはら本になったと思います。 -
伝説のエンドーくんが誰なのかという答えにだんだん近づいていくところも面白いのだけど、力強い物語が印象的な一冊。