春喪祭 (P+D BOOKS)

著者 :
  • 小学館
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本棚登録 : 24
レビュー : 3
  • Amazon.co.jp ・本 (294ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784093522953

作品紹介・あらすじ

奈良・長谷寺を舞台にした“妖かしの世界”

愛する野田涼太郎と初めて結ばれたにも拘わらず、翌日、なぜか吉村深美は姿を消してしまう。

一年後、牡丹で知られる奈良・長谷寺の門前町、初瀬で深美は死体となって発見された。琵琶の撥で手首を切り、琵琶の裏甲には万葉集の恋歌三首が遺されていた。深美の死因を探求すべく初瀬へ向かった涼太郎が見たものは……、いとも妖しげな無明世界だった。

耽美的な幻想文学の秀作「春喪祭」を含む、著者渾身の短篇6作を収録。

感想・レビュー・書評

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  • P+D BOOKSがまた赤江瀑の短編集を復刻してくれました。ありがたい。相変わらず幻想耽美頽廃エロス満載で満足。

    歌舞伎ものにしてドッペルゲンガーものともいうべき「夜の藤十郎」も好きだったけど、いちばん印象に残ったのは「宦官の首飾り」。崖の上の洋館に住むオランダ人とその従者である中国人宦官の不花。彼らの情事を垣間見た二人の少年の一方は物書きになり、彼の書いたエッセイを読んだもう一人(こちらが主人公)は不花のことを回想する。さまざまなことを思い出すうちに、彼が気づいた不花の死にまつわる事実・・・。ノスタルジックな回想からサスペンス的展開になるハラハラもありつつ、男同士の情事をのぞき見してしまった少年たちのドキドキ感がなんとも濃厚。蛇足的でありつつ作者が書き加えた最後の数行には思わず「そっちかい!」って突っ込みをいれてしまった。

    表題作の「春喪祭」は奈良の長谷寺が舞台。琵琶だけもって行方をくらました女の子が、まるで耳なし芳一みたい。「文久三年五月の手紙」は長州藩・・・もとい山口県の萩が舞台で、タイトルの文久三年から予想する通り、幕末のあれこれが絡んでくる、一種の時を駆ける少女的な。「百幻船」「七夜の火」はどちらも漁師もの・・・というか漁村が舞台で船乗りの迷信などが盛り込まれており、「七夜の火」の呪いの“祈り殺し人形”はかなり怖かった。

    ※収録作品
    夜の藤十郎/春喪祭/宦官の首飾り/文久三年五月の手紙/百幻船/七夜の火

  • 半分は読んだことのある話でしたがいつもの頽廃した美しさに浸れる本でした。
    夏の明るさや暑さの中に不穏さを潜ませる作品は流石、と思わせられます。
    『宦官の首飾り』の異国人二人の秘め事に魅かれる少年の思い出と思いきや事件となる終わり方が特に良かったです。

  • 徳間文庫版の復刊。
    『罪喰い』が出た後、他作品の復刊もあるらしいと聞いて楽しみにしていたが、『春喪祭』だった。角川文庫で刊行されていた初期作品辺りが来るかと思っていたので、そこは意外。
    こうなると他にも色々と復刊して欲しいものが出て来るもので、もういっそP+D BOOKSからぜんぶ出してしまえばいいのに……と思っている。

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著者プロフィール

1933年下関生。日本大学芸術学部中退。70年「ニジンスキーの手」で小説現代新人賞を受賞しデビュー。74年『オイディプスの刃』で角川小説賞、84年『海峡』『八雲が殺した』で泉鏡花文学賞。2012年没。

「2019年 『オイディプスの刃』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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