ゼルプの裁き (SHOGAKUKAN MYSTERY)

  • 小学館
3.15
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本棚登録 : 44
レビュー : 3
  • Amazon.co.jp ・本 (358ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784093563314

作品紹介・あらすじ

環境破壊の進む八〇年代の西ドイツで、義兄の経営する化学工業会社のハッカー追跡を依頼された私立探偵ゼルプは、調査を進めるうちに義兄と自分の過去に関わる重大な事実をつかむ。戦前ナチの政権下で検事だった彼は、過去の罪の意識を頑なに持ち続け、自ら歴史の暗闇に入り込んでいくが…。『朗読者』の作家が知人と共作した初の長編ミステリ。

感想・レビュー・書評

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  • 「悪用のされ方に、ましか、ましでないかという区別はない」

    かつてナチ政権下でその検事として働き、今初老を迎え私立探偵となっているゼルプは、親友であり義兄でもあるライン化学工業の会長・コルテンから会社のコンピュータシステムに入り込んだハッカーの犯人探しを依頼される。彼は事件を追ううちに、その真相が自身の過去と無縁でないことを知ることになった。

    ライン化工のシステムを翻弄したハッカーは物語の前半で判明します。それはあくまでもドラマの序章に過ぎません。ゼルプの本当の闘いはそこから始まるのであり、ナチ政権の司法関係者であった結果として確信犯的に犯すことになった罪を自分の中でどう消化するのか、あるいはしないのか― 「朗読者」で著者が斬り込んだテーマが、舞台と役者を変えてここで再び投げかけられることになります。

    妻を亡くして以来、唯一の癒しは愛猫ターボという独り暮し。その暮らしぶりや友人との応酬には、ゼルプという人のおよそ他人を疑うことをしない真面目な人の好さが垣間見えます。そんなゼルプがナチの独裁政権という今から見れば異常な支配体制の中で、知らず知らずのうちに自分が過ちに加担していたという事実を省みるとき、そうした過去とどう折り合いをつけるかという苦悩が頭をもたげてくるのです。

    〈私の奉職中には偉大だと思って実行していたことの罪を、自分が背負うことになったのか、それともチェス盤上ならばおろかな歩、私の場合は一将校として、何もわからずに汚らわしい小さな陰謀に利用されたのか、この二つのことを同じものとは見なしたくなかった。〉

    苦悩の果てにその贖罪は同じ状況下においてむしろ積極的に策を弄し現在の冨と名声を手に入れたコルテンに向けられていったのかもしれません。ゼルプ本人が「悪用のされ方に、ましか、ましでないかという区別はないのではないか」と言っているのにもかかわらずです。ゼルプをしてその答えはついに得られなかったのです。

  • 「朗読者」で世界的ヒットを飛ばしたシュリンクのミステリ。
    共著ですが、ドイツのミステリとしても画期的な作品だったようです。
    主人公ゼルプは、若い頃にはナチス党員で、検事となったがまもなく敗戦、公職追放に。
    多くの同僚が後に復職したが、戦後に初めて知った事実から、復職を潔しとしない人でした。
    今では68歳になり、妻を亡くし、たまにリウマチで苦労しつつ、かなり元気で女性とも付き合い、ドライブや美食と生きることを楽しんでいました。
    ライン加工という大会社の社長のコルテンから、ある調査を依頼されます。
    ゼルプとは幼なじみで、後に結婚したクラーラの兄でもあったコルテン。カリスマ性のある人物。
    妻の死後は疎遠になっていましたが…
    テンポ良く展開し、秘書のさっそうとした知的な美女や、セクシーな中年女性も登場。
    捜査線上に浮かんだ若い男が、交通事故死。不審に思ったゼルプはいきさつを調査し…
    自らの過去とも関わる秘密に分け入っていくことに。
    見慣れない人名、地名、組織名が多いので、まるで別世界の話のようですが、ミステリとしても骨格はしっかりしています。
    重厚な芯があり、読み応えがあるエンタテインメント。

  • ナチス時代に検事だった経歴を持つ私立探偵、ゼルプの探偵小説

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