人形姫 (SPIRITS AMUSEUM)

著者 :
  • 小学館
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  • Amazon.co.jp ・本 (70ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784093590815

感想・レビュー・書評

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  • 私と人形の関わりはソフビ製の安価な玩具人形から精々40cmのキャストドールを買って撮影して遊ぶ程度。
    高尚な美術としての世界もある事は知って居たが、お値段の桁数が違い過ぎてとても手が出せる世界では無い。
    こうした書籍が存在する事で庶民にも美術としての人形を写真として鑑賞出来る事は助かる。

    クローズドアイ=寝姿が多く、それは美しいが、永遠に目覚める事は無いと言うのがもの悲しく、それらは幼子である。

    素人の私には耽美的に見えるが、ダークな世界程には一見は見えず、ほぼ常識的に見える表現とは思えるが、所謂少女ヌード写真の様な表現も散見し、やはり薄っすらと根底にある退廃的な雰囲気も感じ取れる。

    背筋が凍り付く程美しいのだが、温かい体温を感じない冷たさ、これは押井守のアニメーション映画「天使のたまご」を始めて見た時の感覚に近い。

    こうした文化、芸術を単純に「小市民的」と切り捨ててイケナイ事は重々承知の上だが、絵画のパブロ・ピカソ、アニメーション映画のユーリー・ノルシュテイン、或いは人形アニメーション映画の川本喜八郎の、一見難解、或いは不条理でも人間の血の通った作品を知るとやはり疑問符も正直な所出て来る。

    球体関節人形=着せ替え人形は、彫刻や塑像や他の人形とは異なり所有者=鑑賞者によるポージング、更に衣装、ウィッグの着せ替えも受け入れるのが本筋なので、可能ならばそうやって鑑賞すべきと思うし、それを行わないなら、ロボットの様な球体関節は痛々しいだけで無意味だ。

    これはどの様な芸術(文学、音楽、演劇、美術・・・)にも言える事だが、「作家と鑑賞者の共同作業で作品は完成する。」と言う事である。

    そうした鑑賞方法を多くの人々が享受出来る様にするには、複製と量産により価格を下げる事である。
    それは作品に一品性、一回性を失わせる事になり、最終的には美術品から単なる工業製品になってしまったのが玩具としての人形とも言える。

    玩具の美術としての水準を高める努力は必要に思う。

    しかし、程度の差はあれ、そうしないと高尚な球体関節人形は本来の鑑賞をされず、限られた富裕層の所蔵品になってしまう。
    19世紀のビスクドールは量産品だった。しかし、乗用車、人形、カメラが富裕層の玩具であると言う本質は今日に至っても変わっていない様に思える。

    人形芸術を大衆と共に歩む血の通った物に出来るのかどうかは、今後の作家の創作活動と鑑賞者である大衆の行動に委ねられていると思う。

  • 手に入れる順番がバラバラになってしまいましたが、恋月姫さんの写真集2冊目は、恋月姫初の作品集である『人形姫』です。自分は様々なアート雑誌等で、殊に目を惹いた恋月姫さんの人形に興味を持ち、人生で初めて写真集、それも人形のものである『人形月』を購入しましたが、そちらの感想でも書いたように、恋月姫さんの人形のなんと艶美であることか! 衝撃を受けて、感動して、目が離せなくなったのでした。

    『人形月』、そして今回の『人形姫』でもよく見られましたが、私は恋月姫さんの「瞳を閉じた状態」の人形が狂おしいほど好きです。静謐な閨房の中の眠りか、或いはそれは永遠の眠りか。閉じている瞳はエロティックでありコケティッシュですが、元来人形の冷たい魔力に惹きつけられている私にとって、それは嗜虐的で妖艶なものにも感じられます。そしてその曖昧であり少女という客体こそ、自分に恋月姫さんの人形が他の人形と明らかに異なって見える理由です。だからか、解説で荒俣宏さんが「人形は人間以上の存在」と書いているのには共感できたような気がするし、魅力的な存在であり続けるのだろうと確信することもできたような気がします。

    まとめると、本当に綺麗で吸い寄せられる人形たちです! 感動!!

  • 眠る少女人形の胸の裡で音もたてずに破裂し続ける(永遠の)爆弾。

    恋月姫は、「静かで我が儘な女の子」の歴史に新たな地平を切り拓き、
    この一冊の写真集の成立によって、かちり、あるいはぎりり、と音を立てて、人類の一側面は進化したともいえる。

  • 万人向けの本ではない。
    好きか嫌いかと問われると…答えに困ってしまう。
    怖さと美しさ、可憐さと妖しさが混在している。

    一番好きなのは、黒髪の眠り目さんです。

  • 人形作家、恋月姫さんの写真集です。
    10念くらい前に購入しましたが、相変わらず、美しいです。

  • 初めて人形屋の店先で出会った瞬間に、僕の心をわしづかみにした“恋月姫”のビスクドールたち。縁が巡り巡って、その写真集を自分が手がけることになりました。すでに若者ではなくなった僕ですが、敢えて若者言葉を使って、その魅力を一言で表現しますと――マジ、やばい。

  • 人形の嘆美な世界です。何ともいえない独特のリアルさは必見です。

  • 変な話、生き生きしていないというか、無生物には見えないんだけど、生命力を感じない空気が凄く好き。
    恋月姫の人形写真集は是非とも集めたいシリーズです。

  • 恋月姫というビスク作家の画集。

    人形屋佐吉の店主、片岡佐吉さんのお店が前から札幌にあるのは知っていたのだけれど
    佐吉さんは東京のお店の方でやっているので札幌のお店は
    年に1回いつ開くかも解らなくて、開いてなくてもいいので一目見たくて初めて電車で店の前を通りかかったら
    なんと灯りがついている!電車を降りはやる気持ちを抑えられないまま閉まらない様にと必死に願い
    急いでお店に駆け込むと、今開けたばかりだと驚く佐吉さんのオーラがすさまじかった記憶。
    普通の人とは別次元で生きている雰囲気で近寄れなくて、複数の人形にとりつかれているような
    話す言葉もなんていうか、私の稚拙な言葉じゃとても言い表せない。
    お店に居る最中もお店から出てからも、ずっと緊張して心臓が飛び出るくらいどきどきしていた。
    北海道に帰るとは誰にも言ってはいないし告知もしていない、どうしてお店が開いてることが
    わかったのと聞かれ、電車の中で見かけて灯りがついていたから走ってきた経緯を話すと
    ご縁とは不思議だねと本当に心底驚いた顔で、今度手紙を送るから住所を書いていきなさいと
    名刺を渡され、今でも偶に個展があるとはがきがくるのでした。

    そんな思い出深いお店で買った本と佐吉さんが撮った写真。
    今思うと夢だったんじゃないかっていう不思議。本当に不思議な人だった・・・。

  • 初めて本屋で観た時の衝撃。見てはいけないモノを見てしまったようで、そっと本を置きました。それから10年。結局、ずっと虜です。。。

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著者プロフィール

1980年頃より人形制作を開始。人形作品集に1998年『人形姫』(小学館)、2000年『震える眼蓋』(角川書店)、04年『月の神殿』(studio parabolica)、06年『人形月』(小学館)。

「2014年 『無憂宮 SANS SOUCI』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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