模倣犯〈下〉

著者 :
  • 小学館
3.82
  • (818)
  • (676)
  • (1138)
  • (58)
  • (21)
本棚登録 : 5028
レビュー : 481
  • Amazon.co.jp ・本 (701ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784093792653

作品紹介・あらすじ

炎上しながら谷底へ落ちていく一台の車。事故死した男の自宅には、数々の「殺人の記録」が。事件を操る真犯人の正体は…!?あまりに切ない結末!魂を抉る驚愕と感動の三千五百五十一枚。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
  • 発刊後17年目にしてやっと読んだ長編。最後の方は少し走り過ぎた印象だったけどそれなりに楽しめた。私のお気に入り人物はやっぱり豆腐屋の爺さん有馬義男だな、ちょっとカッコ良すぎる役回りで出来すぎだけど。一時は宮部みゆきに嵌まって書くモノ次々に読んだけど近頃ひさしぶりに彼女の作品を読んでやっぱり上手いなぁと思う。ハズレが無い作者だな。

  • エグい…(T^T)
    マスコミがエンターテイメントを求めている姿と真実を暴く両面を見せつけ、大衆がそれを楽しんでる姿が気持ち悪い。
    被害者の家族がもてあそばれる姿がまた気持ち悪い。
    浩一が犯人なのはわかっているのに(読者側)どうにも進展しないのが胸に重い感じだった。
    救いなのは真一と豆腐屋と滋子が落ち着くところに落ち着いたこと。

    日頃からマスコミ(特にワイドショー)に踊らされることがおおい視聴者。
    マスコミが真実を暴くだけのものならいいが決してそんなことはない。
    いろんな人たちを傷つけているのも確か。
    自分で情報を見分けられるような目をもっていきたいのと「大衆」のようにはなりたくない。

  • 事件はさらなる方向へ動き出し、登場人物たちがそれぞれ語りだす。私の単純な一人称の考えではとてつもなくすごいことで、その場面場面で感動がありました。事件にかかわった人々が、その時間と共にいろいろな経験をし、それに伴う感情の流れが丁寧に表現されています。悲惨な事件もようやく終わりを迎えますが、事件を解決した側の決意、被害にあった家族の切なさなどエンディングもさすがでした。

  • 名作。読ませるが、無駄に長い。絶対にもう少し短くできたはず。
    特に後半にかけて顕著で、少し読むのが辛くなったほど。物語にほとんど影響のないエピソードは削って欲しかった。

    登場人物に魅力がない。個人的に、全員嫌い。
    特にカズとその妹。
    カズは多少運も悪いとはいえ、周りの事をまるで考えず家族を地獄に落とした様は流石である。
    なぜか本当は頭がいいみたいな描写だが、「行動的なバカが一番タチが悪い。」の典型な気がする。

    妹は凄くかわいそうな人物なのに、後半の自殺で、やっと死んだか。くらいにしか思わせなかった。人物描写は、参りましたの一言である。

    ただ、魅力のない人物と、あまり内容のない陳腐なストーリーで、ここまで面白くできるんだから流石は宮部さんである。

    ただ、長さもあり、再読しようとは決して思わない本。

  • 長かった。カズが不憫でならず、この下巻半ばまで気が重くて読み進められなかった。途中で何度も、カズの無実がきちんと明かされるのか、先のページをめくったりした。

    読み終えてから、あれはどうなったのかとか、回収されてないんじゃないのかと思い返したりしたが、別にきちんと回収されるべきものではなくて・・・くらいのものだったのか、と勝手に納得する。何しろ長かったから。(あの携帯電話は無事に警察に渡ったのかとか、電話相談所の流れとか。)網川が犯人だときちんと落ちれば良かったのかなぁとか。拾ってないよりも、自分が知りたいだけなんだけど。

    ガミさんがなんか、さして重要キャラな感じじゃなかったのが気になった。(「R.P.G」を読んだことがあるもんで)有馬義男が良い味。そういえばヒロミが「学生のときに殺した」、ピースが「おまじないみたいなもの」と言ってたのは一体なんだったっけ。図書館で読んでた本の複線の回収ってどっかで書いてたっけ。

    映画は中居だったようだが、作り直すなら私的には戸次重幸がいいなぁなんて。

  • 久々の再読。
    やっぱりこの人すごいなあ。年月が経って、いろんな信じられないような事件がこの後にも起きたけど 。それでもここに書かれている肥大した自己顕示欲の怖さは、今も色褪せないし、わかるからこその恐ろしさがあると思う。

  • 読み終わって何とも重苦しい結末ですが、著者の作品の中ではやや不自然な場面が多く、小説の世界だと思うと救いだという妙な心境です。同じ著者の「理由」もそうですが、いろんな立場の人たちが深く掘り下げられ、被害者、加害者、遺体発見者、ルポライター、警察官、またそのまわりの登場人物について、またそのそれぞれの家族の内情が描かれていくところが、長大な小説になる所以であり、誰か一人が主人公というわけでなく、社会の深淵を覗かせるという小説になっているようです。その中でも下巻の展開はある人物が強烈に印象づけられます。

  • 宮部さんの長編小説。後編は犯人視点。ラストだけ映画とは違います。小説のほうが好き!

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「ラストだけ映画とは違います。」
      どうして変えたんだろう(って言うか、どちらも未だなので、想像だけしておきます)
      「ラストだけ映画とは違います。」
      どうして変えたんだろう(って言うか、どちらも未だなので、想像だけしておきます)
      2012/03/08
  • ◆思いっきりネタバレがありますので未読の方はご注意ください


    上巻では丁寧な人物描写に驚く。脇役や普通ならただ殺されたという事実だけですまされてしまうような人物のバックグラウンドをきちんと積み重ねていくところはさすが。

    第1部では遺族の描写が真に迫っている。遺された者の怒りや悲しみ、どうしようもない想いなどが、通り一遍ではなく様々な角度から非常にリアルに描写されている。

    うまく言えないのだが、普通の小説が「事件を通して人物を描く」のに対して「人物を通して事件を描く」という印象か。事件を描くことが主題なのではなく、あくまでも人物を描くことが主題になっている。

    この人の小説の中にはときどきハッとするようなセリフや描写が出てくる。ここでも殺された鞠子の母親が気がふれてしまい車に跳ねられて入院している場面で、それを見舞った父親の有馬義男が、昔はあんなにかわいかった娘が急に老け込んでしまったのは孫の鞠子に「自分の美しさを吸い取らせるように」育ててきたからなのだと思うところはなんともいえずせつない。

    第1部が事件の表側、第2部が裏側といった感じか。第2部では犯人である栗橋浩美、ピースとそれにからむ高井和明を中心に描かれているが、浩美が第1の殺人を犯すきっかけとなった姉の亡霊や過去の家庭環境の積み重ねは、人はこういう理由からゆっくりと殺人者になっていくこともあるのだという説得力がある。ここでも細かいエピソードの積み重ね方がうまい。

    塚田真一をつけまわす樋口めぐみ(真一の家族を惨殺した犯人の娘。父親は悪くないと真一に父親と会うことを要求)を配している意味がわからなかったが、高井和明の妹、由美子が「兄は無実だ」と有馬義男に訴えるところでの構図の対比は圧倒的だった。

    ただ中だるみというかなんというか、なんとなく2部の後半あたりで読むスピードが少し落ちてしまった。

    第3部に入り、ピースが網川としてルポルタージュを発表するあたりからちょっと違和感というか、ここまで丁寧に積み重ねられてきたリアリティがどんどん失われていくような印象を受けた。網川の行動自体がマンガっぽいというかカリカチュアというか。まあ、網川はもともと大芝居を演じているわけだからそれでもいいのかもしれないが。

    この作品に限らず小説でマスコミ(とくにテレビ)を描く場合、現実をリアルにシミュレートしようとすればするほど、逆に陳腐になっていく印象を受けていた。そんななかでこの作品中のマスコミの暴力の描き方は、読者に共感を持たせるという意味ではうまい。この読者の「ノセかた」があるから、最後の向坂アナウンサーが効いてくるのだ(滋子の最後のテレビ出演のときの楽屋でのやりとり「確かにマスコミは視聴率のためにはなんでもやるが、その中にも真実を求める気持ちはある」、そして網川が自ら叫んだあとの「それではきみが犯人ということになるが」の一言)。

    「模倣犯」というタイトルから、当然誰かがこの事件を模倣するのだろうと思っていたので、第2部の途中あたりからいったい誰が模倣するのか? ピースが? と展開が読めなかった。なので、この最後の仕掛けには思い切りやられてしまった。非常にうまいタイトルだ。

    網川が自白をしたところでクライマックスかと思ったが、そのあとテレビ局内の倉庫に逃げ込み、真一に電話をかけて来るというのは意外だった。ここで網川が語る、自分はこれで終わりではない、大衆に対して、若者に対してこれからも主役であり続けるという内容は、シリアルキラーを題材にした小説などによく見られる思想である。

    ただそれを聞いていた有馬老人の言う「大衆なんてものはいない、それぞれが現実に生きていて、おまえはそういう人たちを殺した、ただの人でなしだ」という言葉は、この作品を通して一人一人の登場人物を細かく描いてきたからこそ実感と説得力を持って読者に語りかけてくるのだ。このあたりがこの作者の本当にすごいところだと思う。(まあ、真一は携帯電話で話していたのに、なぜ有馬老人には網川が言っていることがわかったのかという疑問はあるのだが(笑))

    真一と樋口めぐみの最後もどうまとめるのかと思ったが、「おまえのことはやっぱり許せないが、おまえも犠牲者だってことはわかってきた」「おまえを助けることはできないから誰か他に助けてくれる人を探せ」「だけど気をつけろ。だまそうとする人間はいっぱいいる。でもそうじゃない人だっていっぱいいるはずだ」「本当のことはどんなに遠くに捨てられても、いつかは必ず帰ってくるものだから」という真一の言葉は、中途半端な妥協や哀れみなどを感じさせない非常に力強い意思の表れである。

    物語の冒頭からほとんど涙を見せず気丈に振る舞ってきた有馬老人が最後で酒に酔って心情を吐露し号泣するのはまあお約束として、上下巻に渡るこの長編作品の最後に、豆腐を買いに来ていただけの名もない母娘を持ってくるとは! この作品の登場人物にはみんな名前があり、そのバックグラウンドも緻密に描かれているというのに。

    名もなき母娘は、その匿名性ゆえ逆にどこにでもいる世間一般の普通の親子をあらわし、そうした普通の親子にもこの事件のような悲劇がいつともなく訪れるかもしれないのだ、そう、鞠子だってそうだったのだ、だから親は我が子に不幸が降りかからないように願わずに入られないのだ。

    というようなことを言いたいのだとはわかるし、それがクサイこともわかる。わかっているのだが、このラストには不覚にもやられてしまった(涙)。「感動」というのとはちょっと違う、なんともいえない「余韻」とでもいうものか。

    -----
    この作品と並行して浦沢直樹「MONSTER」を読んでいたので、どうしても網川とヨハンのビジュアルイメージがだぶってしまった。ただ「MONSTER」がさまざまな謎を残したまま終わったのに対して、こちらはおそらくほとんどの人が納得のいく終わり方だろう。このあたりがエンターテイメント作品としてのカタルシスの違いか。

    森田芳光により映画化された。網川役はSMAPの中居クンだが、ちょっと知的犯罪というイメージからはツライかな。同じSMAPならどちらかといえば稲垣吾郎のほうがあっているような気がする。稲垣もやりたかっただろうなー。こういうキャラクター好きそうだし。

    久しぶりにハードカバー重量級の本で、通勤中に読むのは重かったのも印象的。

  • 上下を合わせると重厚感があり、読み切ると達成感を得られます。描写も設定もすごく細かかったので、読み終わった今でも彼等の事が気になっています。その後のストーリーを読みたいです。ピースはこのまま大人しくいる男ではないと思っているので、その後の彼を見たいです。気になっていたのは、上巻の途中から登場した「カズ」です。彼の家族の一員のように見守って読んでいました。優しすぎるし、実は誰よりも強い人間なので、報われて欲しかった。彼の潔白を世間に証明する場面も書いて欲しかったです。そこが少し残念でした。

全481件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

宮部 みゆき(みやべ みゆき)
1960年、東京都生まれ。1987年に「我らが隣人の犯罪」でオール讀物推理小説新人賞を受賞し、デビュー。
1992年『龍は眠る』で日本推理作家協会賞、1999年には『理由』で直木賞、2002年『模倣犯』で司馬遼太郎賞、2007年『名もなき毒』で吉川英治文学賞など、数々の文学賞を受賞。
大沢オフィス所属。日本推理作家協会会員。日本SF作家クラブ会員。直木賞、日本SF大賞、小説すばる新人賞、河合隼雄物語賞など多くの文学賞で選考委員を務める。
『模倣犯』や『ブレイブ・ストーリー』など、多くの作品がドラマ化や映画化などメディア・ミックスされており、日本を代表するエンターテインメント作家として人気を博している。2018年10月、『宮部みゆき 全一冊』を刊行。

宮部みゆきの作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
東野 圭吾
東野 圭吾
宮部 みゆき
宮部 みゆき
宮部 みゆき
宮部 みゆき
有効な右矢印 無効な右矢印

模倣犯〈下〉に関連する談話室の質問

模倣犯〈下〉を本棚に登録しているひと

ツイートする