模倣犯 (下)

著者 :
  • 小学館
3.82
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本棚登録 : 5160
レビュー : 483
  • Amazon.co.jp ・本 (701ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784093792653

感想・レビュー・書評

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  • 発刊後17年目にしてやっと読んだ長編。最後の方は少し走り過ぎた印象だったけどそれなりに楽しめた。私のお気に入り人物はやっぱり豆腐屋の爺さん有馬義男だな、ちょっとカッコ良すぎる役回りで出来すぎだけど。一時は宮部みゆきに嵌まって書くモノ次々に読んだけど近頃ひさしぶりに彼女の作品を読んでやっぱり上手いなぁと思う。ハズレが無い作者だな。

  • 長いし、何しろ網川と栗橋の存在にイラついて、途中で読むのを何度も休んでしまったため、ようやく読み終わった感じ。

    海外のドラマを見ていても、いつも気になるのが被害者側のその後。
    有馬さんや真一を見てみても思うけど、そちら側としては事件が終わることはない。
    ずっと心に残るものだし。

    そういった、当事者だけにしかわからない苦悩が描かれているのがよかったし、むしろそっちのほうがテーマだった気もする。

    由美子のことは残念だったなー

  • ◆思いっきりネタバレがありますので未読の方はご注意ください


    上巻では丁寧な人物描写に驚く。脇役や普通ならただ殺されたという事実だけですまされてしまうような人物のバックグラウンドをきちんと積み重ねていくところはさすが。

    第1部では遺族の描写が真に迫っている。遺された者の怒りや悲しみ、どうしようもない想いなどが、通り一遍ではなく様々な角度から非常にリアルに描写されている。

    うまく言えないのだが、普通の小説が「事件を通して人物を描く」のに対して「人物を通して事件を描く」という印象か。事件を描くことが主題なのではなく、あくまでも人物を描くことが主題になっている。

    この人の小説の中にはときどきハッとするようなセリフや描写が出てくる。ここでも殺された鞠子の母親が気がふれてしまい車に跳ねられて入院している場面で、それを見舞った父親の有馬義男が、昔はあんなにかわいかった娘が急に老け込んでしまったのは孫の鞠子に「自分の美しさを吸い取らせるように」育ててきたからなのだと思うところはなんともいえずせつない。

    第1部が事件の表側、第2部が裏側といった感じか。第2部では犯人である栗橋浩美、ピースとそれにからむ高井和明を中心に描かれているが、浩美が第1の殺人を犯すきっかけとなった姉の亡霊や過去の家庭環境の積み重ねは、人はこういう理由からゆっくりと殺人者になっていくこともあるのだという説得力がある。ここでも細かいエピソードの積み重ね方がうまい。

    塚田真一をつけまわす樋口めぐみ(真一の家族を惨殺した犯人の娘。父親は悪くないと真一に父親と会うことを要求)を配している意味がわからなかったが、高井和明の妹、由美子が「兄は無実だ」と有馬義男に訴えるところでの構図の対比は圧倒的だった。

    ただ中だるみというかなんというか、なんとなく2部の後半あたりで読むスピードが少し落ちてしまった。

    第3部に入り、ピースが網川としてルポルタージュを発表するあたりからちょっと違和感というか、ここまで丁寧に積み重ねられてきたリアリティがどんどん失われていくような印象を受けた。網川の行動自体がマンガっぽいというかカリカチュアというか。まあ、網川はもともと大芝居を演じているわけだからそれでもいいのかもしれないが。

    この作品に限らず小説でマスコミ(とくにテレビ)を描く場合、現実をリアルにシミュレートしようとすればするほど、逆に陳腐になっていく印象を受けていた。そんななかでこの作品中のマスコミの暴力の描き方は、読者に共感を持たせるという意味ではうまい。この読者の「ノセかた」があるから、最後の向坂アナウンサーが効いてくるのだ(滋子の最後のテレビ出演のときの楽屋でのやりとり「確かにマスコミは視聴率のためにはなんでもやるが、その中にも真実を求める気持ちはある」、そして網川が自ら叫んだあとの「それではきみが犯人ということになるが」の一言)。

    「模倣犯」というタイトルから、当然誰かがこの事件を模倣するのだろうと思っていたので、第2部の途中あたりからいったい誰が模倣するのか? ピースが? と展開が読めなかった。なので、この最後の仕掛けには思い切りやられてしまった。非常にうまいタイトルだ。

    網川が自白をしたところでクライマックスかと思ったが、そのあとテレビ局内の倉庫に逃げ込み、真一に電話をかけて来るというのは意外だった。ここで網川が語る、自分はこれで終わりではない、大衆に対して、若者に対してこれからも主役であり続けるという内容は、シリアルキラーを題材にした小説などによく見られる思想である。

    ただそれを聞いていた有馬老人の言う「大衆なんてものはいない、それぞれが現実に生きていて、おまえはそういう人たちを殺した、ただの人でなしだ」という言葉は、この作品を通して一人一人の登場人物を細かく描いてきたからこそ実感と説得力を持って読者に語りかけてくるのだ。このあたりがこの作者の本当にすごいところだと思う。(まあ、真一は携帯電話で話していたのに、なぜ有馬老人には網川が言っていることがわかったのかという疑問はあるのだが(笑))

    真一と樋口めぐみの最後もどうまとめるのかと思ったが、「おまえのことはやっぱり許せないが、おまえも犠牲者だってことはわかってきた」「おまえを助けることはできないから誰か他に助けてくれる人を探せ」「だけど気をつけろ。だまそうとする人間はいっぱいいる。でもそうじゃない人だっていっぱいいるはずだ」「本当のことはどんなに遠くに捨てられても、いつかは必ず帰ってくるものだから」という真一の言葉は、中途半端な妥協や哀れみなどを感じさせない非常に力強い意思の表れである。

    物語の冒頭からほとんど涙を見せず気丈に振る舞ってきた有馬老人が最後で酒に酔って心情を吐露し号泣するのはまあお約束として、上下巻に渡るこの長編作品の最後に、豆腐を買いに来ていただけの名もない母娘を持ってくるとは! この作品の登場人物にはみんな名前があり、そのバックグラウンドも緻密に描かれているというのに。

    名もなき母娘は、その匿名性ゆえ逆にどこにでもいる世間一般の普通の親子をあらわし、そうした普通の親子にもこの事件のような悲劇がいつともなく訪れるかもしれないのだ、そう、鞠子だってそうだったのだ、だから親は我が子に不幸が降りかからないように願わずに入られないのだ。

    というようなことを言いたいのだとはわかるし、それがクサイこともわかる。わかっているのだが、このラストには不覚にもやられてしまった(涙)。「感動」というのとはちょっと違う、なんともいえない「余韻」とでもいうものか。

    -----
    この作品と並行して浦沢直樹「MONSTER」を読んでいたので、どうしても網川とヨハンのビジュアルイメージがだぶってしまった。ただ「MONSTER」がさまざまな謎を残したまま終わったのに対して、こちらはおそらくほとんどの人が納得のいく終わり方だろう。このあたりがエンターテイメント作品としてのカタルシスの違いか。

    森田芳光により映画化された。網川役はSMAPの中居クンだが、ちょっと知的犯罪というイメージからはツライかな。同じSMAPならどちらかといえば稲垣吾郎のほうがあっているような気がする。稲垣もやりたかっただろうなー。こういうキャラクター好きそうだし。

    久しぶりにハードカバー重量級の本で、通勤中に読むのは重かったのも印象的。

  • 上巻から数か月あけて、やっと手に取りました。

    読み終わってもすっきりはしない。
    謎は残る。
    彼が母親を殺したのはなぜだろう。

    高井家の残った夫婦はどうなっただろう。

    裁判はどうなったのか。

    宮部氏の作品は昔からあまり好きではない。
    でもおもしろい。
    とても厚い本だがあっという間に読み終わった。

    次は楽園を読みたい。

  • こんなに分厚い本なのに一気に読みました。
    語りだせばキリがないくらいに言いたいことはある。
    ほんとにもう・・・・・・凄かった

  • 2014.12

  • 2016.7.25 読了


    長かった~~~

    けど、引っ張られたわりに
    終わりは あっけなかった。。。

    まあ こうなるしかないか。。。

    第3部は 読むのがツライというか、
    苦しかった。

    早く終ってほしかったくらい。

    けど、終わると寂しい。。。
    なんせ 長かったから。。。

  • 2016.4.5 再読
    スカッとする場面もあるけれど、どんな結末だって遺族は遺族。何をしたって結果は変わらない中で動き、声を上げられるってものすごいパワー。
    きっと私だったら何も出来ずじっと時がすぎるのを待つだろうな。それが良いかも悪いかもわからない。
    鞠子のおじいちゃんから、始終目が離せない。

  • 映画化されたときに読んだ。

  • 事故死した二人が死ぬまでの第二部。ピースこと網川が登場しマスコミで脚光を浴び、逮捕されるまでの第三部。

    これだけのいろんな出来事を、膨大な登場人物が出てくるというのに、わかりやすい文体でまとめ上げてしまう作者の力量はすごい。事件取材を取材しつつ、まとめ上げられず取材が元で家庭がおかしくなった経験が僕にもあるので、前畑滋子に感情移入して読んだ。彼女が戸籍などからアジトを特定していくような経験もやったことがあるのでそうだよそうだよと頷きながら読めた。あと捜査中だからってことで取材がなかなか進まないところも。

    小説というのはいろんな人を神の視点で動かせるという点で便利な表現方法だと改めて思った。手法を学べて良かった。

    見つかった携帯電話のこととか最初に栗橋が殺した二人の遺体がどうなったかとか。張られた伏線が回収されてないのが気になったので一点減点する。

著者プロフィール

宮部 みゆき(みやべ みゆき)
1960年、東京都生まれ。1987年に「我らが隣人の犯罪」でオール讀物推理小説新人賞を受賞し、デビュー。1992年『龍は眠る』で日本推理作家協会賞、1999年には『理由』で直木賞、2002年『模倣犯』で司馬遼太郎賞、2007年『名もなき毒』で吉川英治文学賞など、数々の文学賞を受賞。大沢オフィス所属。日本推理作家協会会員。日本SF作家クラブ会員。直木賞、日本SF大賞、小説すばる新人賞、河合隼雄物語賞など多くの文学賞で選考委員を務める。『模倣犯』や『ブレイブ・ストーリー』など、多くの作品がドラマ化や映画化などメディア・ミックスされており、日本を代表するエンターテインメント作家として人気を博している。2019年7月10日『さよならの儀式』を刊行。

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