逆説の日本史11 戦国乱世編: 朝鮮出兵と秀吉の謎

著者 :
  • 小学館
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感想 : 9
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  • Amazon.co.jp ・本 (449ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784093796811

作品紹介・あらすじ

『週刊ポスト』誌上で大人気連載中、歴史ノンフィクションの単行本化!

豊臣秀吉の天下人としてのデビューから、豊臣政権滅亡の原因ともなった朝鮮出兵までを取り上げます。足軽から身を起こして天下統一した豊臣秀吉は戦国一の人気者です。しかし、彼の生涯や戦記を扱った作品は小説仕立てだったりで、真実追求の姿勢が不足しているものが少なくありません。著者は、秀吉を「明確な天下統一のプランはなかった」「常人を超えた『大悪人』であり『大天才』である」と述べ、新しいリベラルな秀吉像を提示します。また、『唐入り』を侵略戦争と断じた歴史学会の贖罪史観をあげ、「前近代において、戦争あるいは侵略は決して絶対悪ではない、という認識をもつべき」と、今の日本人がクリアしなければならない「課題」も提示します。

感想・レビュー・書評

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  • 秀吉の天下統一と朝鮮出兵の正しい読み捉え方が分かる。歴史は善悪で捉えると本質を見落とす。

  • 信長暗殺後諸侯の立ちまわり、秀吉の施策の説明後、歴史学界や歪んだ歴史教育の批判がされており、少し冗長と感じましたが、最後の秀吉朝鮮出兵について著者の考えを論じるためには必要な頁だったのだと感じました。

    私自身、朝鮮出兵は晩年の秀吉の失策として認識していましたが、本書を読み、単に秀吉単独の責任ではなかったこと、現代にも通じるものがありますが、国際間の調整はかなり難しいことだと改めて感じました。

  • 2019年3月7日、津BF

  • 2004年刊行。本書は秀吉論。

     秀吉出自論としては、足軽でないことはもとより、農民ではなく、むしろ、賎民・漂泊民とすら言われている現在では、本書の解読は斬新な論とは全くもって言えないし、史料を含む検討分量も不足している。その他もまあ素人とすればこんなものでしょう。

     著者が本シリーズで古代史にて描いていた斬新さとは比ぶべくも無いが、それもまた史料不足を推理で埋められたからなのだなという確認ができた感じ。

  • 第11巻は秀吉についてだ。

    秀吉は本能寺の変という日本史を変えるアクシデントのために,これまでの人生設計とは180度違うことをしなければならなくなった。多くの人は,秀吉の軍事的な努力・才能は認めている。平たく言えば,明智光秀・柴田勝家らを滅ぼし,徳川家康を屈服させたことだ。しかし,それに優るとも劣らず,ある意味で信長以上に必要だったのが,自己の権力を正統なものとする,『正統性の創造』なのである。テロリストが,あるいは外国の軍隊が東京を制圧したところで,われわれ日本人が簡単にそれに従わないのと同じことだ。『信長以上に』というのは,戦国大名としてスタートした信長ですら,『成り上がり者』『元は陪臣の出』などと白い目で見られていたのだ。その信長に比べてすら,秀吉は低い低い階級なのである。そのため秀吉は『天下人にふさわしい正統性』を創出しなければならなかった。秀吉がまず選んだのは,天皇の権威を利用して,自己の権威を高めることだった。平安の昔から,藤原氏がとってきた有力な手段だ。そのためには,朝廷から高い位階・官職をもらわねばならない。秀吉は,藤原一族の近衛家の猶子となり,関白に任官する事に成功した。しかし,猶子と言っても藤原一族の一員に過ぎない。また,関白になっても,関白より藤原氏の氏の長者の方が上だ。これは,秀吉と言えども,藤原家に行けば,氏の長者に頭を下げなければならないということだ。しかし秀吉は藤原氏の血を引いていない。氏の長者にはなれない。ではどうすればいいのか。そこで考えたのが,豊臣という姓を天皇から下賜された。中臣鎌足が天皇から藤原を下賜されたのと同様に。

    秀吉の行った事の一つに,刀狩がある。それがどのように現代人に影響を及ぼしているか,著者は語っている。日本人の欠点として指摘されているのが,日本人はどうも自分の国を守るという意識に欠けると言うことだ。つまり,侵略者が来たら誰が自分の身を守るのかという問いに対し,世界中で最も鈍感な国民と言えるかもしれない。ではいつから日本人はそうなったのか。本来なら”平和”を声高に唱えるべき宗教団体までもが武装していた時代があったのである。日本民族は本来は好戦的な民族である。戦国時代の日本には,自分の権利が侵されるなら,相手を殺すことも辞さないというのが,常識であり,仏教集団にすらあったのだ。その節目となるターニングポイントが実は刀狩である。刀狩以降,武士以外は武器が持てず,あらゆる意味での”戦い”は,武士の仕事に限定された。簡単に言えば,農民は田畑を耕し,職人は製品を作ることだけ考えていればいいのであって,国をどうやって守るかなどは武士に任せておけば良いということになったのだ。こうした意識が幕末まで続き,すっかり定着した頃に,日本近海に欧米列強の侵略の尖兵である黒船が出没するようになった。刀狩というクスリが効き過ぎたのだ。

    この状態を明治維新政府は『武士の廃止』『国民皆兵』という荒治療で改善したが,今度は,武力で何でも解決できるという錯覚に陥った。その錯覚が醒めたのが昭和20年の敗戦で,そこから戦争に対する嫌悪感もあり,刀狩状態に戻ってしまった。ちなみにアメリカはその設立当初から開拓時代が長く続いた。そのため,本来は牧場で馬や牛の世話をする役目のカウボーイ(牧童)が警察のいない開拓地では丸腰では危なくてつとまらないので,ガンベルトを帯び,ライフルを持つ,すなわち農民が武装する国家だった。『武装する事=自分の権利を守る事』がアメリカのDNAであって,ヨーロッパや日本のように歴史が長ければ,秀吉のような武装解除者が現れたかもしれない。奴隷解放者のリンカーンが出たが,今の所武装解除者は出ていない。

    韓国のことについても,評価している。それは,韓国は今も戦時体制下の国と言うことだ。朝鮮戦争は終わったのではない。休戦しているだけだ。だからいつ戦争になってもおかしくない。そのためには国民の愛国心を常に高揚させておく必要がある。その要請から作られたのが,韓国の国定教科書だ。国定教科書というのは,愛国心の涵養を第一の目的とするため,どうしても自国の恥には目をつぶる傾向にある。日本も戦前の国定教科書には,日本が七世紀に白村江の戦いで唐・新羅連合軍に敗れた事は書かれていなかった。そうしたなか,韓国人が一番恥と思っているのが,近代化は日本なしには有り得なかったということだ。だから小学生の頃からそれを徹底的に否定する教育をする。そうした教育を受けた人間が大人になって歴史を歪曲したような主張をしてくるのだ。そのような間違った主張をしてくる外国人に対し,我々は良く歴史を勉強し,誤解の無い様,誤解を解くようつとめるのが,我々の責務であると常に思うのだ。

  • 信長の死後の秀吉の天下統一に向けての動き、
    いろいろな要因が重なって秀吉が天下統一に成功したのですな。

    そして「唐入り」構想、かなり濃い感じで秀吉のことを知ることができました。

  • 井沢 元彦さん著
    有名な本です。
    朝鮮出兵と秀吉の謎は、島の歴史と関連しているので是非目を通していただければと思います。

  • 教科書とは違う、日本史の見方。

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著者プロフィール

1954年、名古屋市生まれ。早稲田大学法学部卒業後、TBSに入社。報道局在職中の80年に、『猿丸幻視行』で第26回江戸川乱歩賞を受賞。退社後、執筆活動に専念。独自の歴史観からテーマに斬り込む作品で多くのファンをつかむ。著書は『逆説の日本史』シリーズ(小学館)、『英傑の日本史』『動乱の日本史』シリーズ、『天皇の日本史』、『お金の日本史 和同開珎から渋沢栄一まで』『お金の日本史 近現代編』(いずれもKADOKAWA)など多数。

「2023年 『絶対に民主化しない中国の歴史』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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