空白の叫び 下

著者 :
  • 小学館
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  • Amazon.co.jp ・本 (572ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784093797306

感想・レビュー・書評

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  • 一部、二部、三部。奇抜な展開だけど、一人一人が丁寧に描かれていて納得のラスト。
    本題とは関係ないけど、中学生男子目線で書かれている話が好き。大人と子供の中間で独特の雰囲気がある。

  • 第三部 発動
    何とか無事に少年院を退院した3人の少年たち。しかし、社会はそんなに彼らに優しくない。
    次々と社会から排除される少年たち。
    そして、再会した3人はそれぞれの事情から金が必要になり、銀行強盗をすることになる。

    神原の変化がすごかった。
    弱いくせに狡猾で悪事を楽しめる人間になってしまった。
    葛城に言わせるなら工藤や葛城が必死で抑えようとしていた瘴気を神原は楽しんでいた。その覚悟もないのに。
    そして呑み込まれた。
    最後までズルい奴だった。

    作中で何回か言われる「社会は、少年たちの更生なんて望んでいない」
    厳しいようだけどその通りだと思う。

  • 図書館にて借りました。
    面白かったー!!!

    上巻は、犯行に至るまで→逮捕→少年院でしたが、下巻は出所→その後の生活になってます。

    いやはや、なるほどそれで銀行強盗ね。
    全てが終わってみれば、大人の身勝手に振り回された少年達、て感じ。
    上巻では動機はあれど、短絡的思考からくる犯行とも読めたけど、読みきるとまた違う。
    変化といえば、神原が一番怖い。
    ひとりだけ一人称の「ぼく」となって話は進んでいたが、そのせいか最後にはなるぼど!
    本当に少年院で色んな事を学んできたんだね、て感じ。
    口調と思考はお子様丸出しなのに、やることがえぐ過ぎる。
    特に黒澤の勤めてる店に嫌がらせしたり、ビラを貼ったり、佳津音ちゃんが電話してきたら、「ち、こんなときに」といった今までにない扱い。そして佳津音ちゃんが素直になってくれるなら邪険にする気はない、と云う思考。
    ただひと言、怖い。
    なので、最後のボコボコは自業自得じゃないの?と、云いたいかな。
    しかし、こうなったのも叔母の丹波への貢ぎ愛も影響があると思うとまともな大人って神原の周りは皆無だな。
    貢ぐなら自分の分までにしといたら良かったのに。
    あれは呆れました。レトルトのハンバーグとかっちかちのステーキでお祝いしといて、使っちゃったの、だから一緒に暮らさない?は同じ大人として恥ずかしい。

    本当に大人の嫌な面を突きつけられた作品でした。
    その後も読みたいような、読みたくないような・・・。

    個人的には葛城くんがツボでした。
    彩との出逢いは確かに葛城君に影響を与えた。
    人はやはり、ひとりでは生きられないんだと思いました。
    あの出逢いを拒否していたらきっと、植物のようになれたかも・・・。

  • 少年院から出所した三人の少年、葛城、久藤、神原。
    三人は家族から見放され、進学を諦めて、接点をもたずそれぞれに生活していた。
    しかし、その生活を脅かす影が忍び寄る。
    三人を脅迫する人間は社会的正義を振りかざす人間か?
    それともかつて三人が罪に服すこととなった、犯罪の被害者なのか?
    そして、その人間は同一人物なのか?
    やがて三人はある共通の目的をもつこととなり、それが三人を再び引き寄せあう。
    その共通の目的とは「金」を得ること。
    そして、彼らは破滅を予感させる道をつき進むことに-。

    ストーリーが進む毎に三人の少年の印象が変わっていく。
    ただの暴力的で愚かな少年かと思われた久藤は自分なりの美学らしきものをもち諦観した少年だとイメージが変わっていく。
    葛城は完璧で冷静な少年かと思われたが、正義感が強く一本気で純粋な少年に。
    神原は三人の中ではちょっと子供っぽく普通の少年だが、残忍で卑怯な面が露わになってくる。
    それは彼らを取り囲む状況の変化がそうさせたのか、それとも元々の性格が発露した結果なのか・・・。

    下巻の後半部分は目を離すことができなくなり一気に読みました。
    ストーリーをそのまま追うだけでも緊迫感があり、面白いと思いますが、それならラストは物足りないと思うかも。
    多分、この話は読む人によってそれぞれ感じる事が違うだろうと思います。
    実際、私も読んでいる最中、そして読み終えてから頭がめまぐるしく回転しました。

    生きるのはつらいこと。
    この物語の登場人物たちはそのつらい時を、仮面をかぶったり、感情を押し殺したり、諦観したり、欲望に身を任せて、それぞれに生きている。
    どれが正しいとか間違ってるなんてない。
    そして、どこにいようと、自分らしくいられない時、魂を押し殺している時が人生の「空白」ではないか。
    その誰かのあまりにも長い空白の叫びが少年たちの空白の叫びを生んでしまった。
    そんな風に思いました。

    個人的に、この物語ではちょっとした脇役が印象的でした。
    彼は真実の自分を見せず、軽薄に生きている。
    彼の言葉から人生は戦うか、逃げるか、しかないのだと思いました。
    やり過ごすこともできるが、そうするとその問題はまた姿を変えて目の前に必ず表れる。
    『現実ってのは辛いもんだよ、久藤ちゃん。多かれ少なかれ、みんな辛い中を生きてるんだ。自分だけが不幸なんて思ってるうちは、まだ幸せなんじゃないの?』
    これが十五歳の言葉でしょうか。
    こんな言葉を言う人間は一番手ごわい。
    絶対に敵にしたくない人間だと思いました。

  • 瘴気と嫉妬と更正の話。少年院を出てそれぞれの生き方を模索するも、看過してもらえない少年たち。葛城と久藤のコンビが好き。久藤の過去に強い影響を残した浜本未央はその内登場するのではと考えていたのだが、そんなことはなかった。結局、尚彦の叔母が何故か網走の住所に宛てて書いた手紙は宗像関連の話だったということでいいのか。内に育つ瘴気を力と勘違いしてどんどん暗い方へと突き進んでいく神原尚彦はある意味一番可哀想な奴かもしれない。最後の雨宮佳津音の叫びが作品の題名とも重なって痛ましい

  • 読後感の悪さといったら……!
    この中で一番性質が悪かったのは、やっぱり神原だったのかなあ、と思います。
    一番マトモに見えて一番ずるく、変な感じになってしまったんだろうなあ、と。そもそもの殺人の動機が、よかれと思ってやっているからですね。
    しかし、最後彼女がかわいそうだったな。
    本来なら美談で終わりそうなものを、葛城との絡みにより「騙された子」みたいな扱いになってしまっているあたりが憎い演出ではありましたけど。
    久藤はマトモになった、とはまた違っていましたが、悟りを開いている幹事はありましたね。
    最後の最後ではすべてを受け入れている風情でもあり、純粋ではないにしろ、軽くでも待ってくれている人、が居ることにちょっとした安堵を覚えていたように思います。
    そして、葛城。葛城はなー、正直一番良い感じの人生をこの後送れたんじゃないか?と思えました。
    父親との和解は難しいでしょうが、それでも再度捕まることもなく、安寧に人生を終えそうな気がします。
    まあ、それが幸せか如何かとなると、別次元の話にはなりますけど。

  • そこまでは繋げなくてもと思ってしまった。

    人の後発的なつながりをもっと読みたかった。

  • どういう結末になるのか、最後までわからず期待して勝手な想像を膨らませたわりに、あっけない結末。想像どおり。
    これから葛城や久藤がどう生きていくのか、気になる。

  • 上巻で刑務所が一緒になった3人が下巻で本格的に関わっていく。

    思ったより伏線が回収されていっていて、全てがちゃんと結びつくようになっているのはさすが。
    話が重すぎて伏線があることすら忘れてた(柴田の存在とか)。

    最後は一応腹落ちできる終わり方に。

    個人的には英里がが一番不思議だったので、英里の背景も知りたかった。

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著者プロフィール

1968年、東京都生まれ。早稲田大学商学部卒。93年、第4回鮎川哲也賞の最終候補となった『慟哭』でデビュー。2010年『乱反射』で第63回日本推理作家協会賞受賞、『後悔と真実の色』で第23回山本周五郎賞受賞。「症候群」シリーズ、『プリズム』『愚行録』『微笑む人』『宿命と真実の炎』『罪と祈り』『悪の芽』『邯鄲の島遥かなり(上)(中)(下)』『紙の梟 ハーシュソサエティ』『追憶のかけら 現代語版』など多数の著書がある。

「2022年 『罪と祈り』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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