「兵士」になれなかった三島由紀夫

著者 :
  • 小学館
3.18
  • (0)
  • (5)
  • (10)
  • (2)
  • (0)
本棚登録 : 41
感想 : 5
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (228ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784093797733

作品紹介・あらすじ

日本中を震撼させた衝撃の自決から37年-初めて明かされる「兵士」三島由紀夫の素顔。兵士を目指した男は何を夢見、何に絶望したのか-圧倒的な取材から時代の寵児の魂に迫る、渾身のノンフィクション。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • お国のために天皇の為にできることを突き詰め自衛隊の中まで入ったが、自衛隊員にも決起する者は居らず、〈楯の会〉を育てることもできないという絶望で自決したのだな、と自分は納得しました。
    「兵士」っつーのは上から言われた事を考えもせずやる者なので考えすぎる頭でっかちは土台向いていないのかもとも

  • 1

  • 60年代後半から自衛隊への体験入隊を繰り返していた三島由紀夫だが、実際はランニングにもついていけず、ボディビルで鍛えた身体を鏡に映してうっとりしたり、知名度を利用してレンジャー訓練参加をゴリ押しし、妻やマスコミを呼んでその「勇姿」を見せていたそうで、内部では結構「なんだこいつ」と思われていたようだ。おもしろい。

  • ●:引用
    ●(略)三島は、<誰にきいても70年楽観説が支配的>だとして、<何やら張合あいのない毎日>であると書きとめている。しかし、もし鉄パイプと火炎ビンで武装した全学連のでもが東京を騒乱状態に陥れ、もはや警察力では制圧できないとなれば、当然、自衛隊に治安出動の大命が下り、民間防衛の尖兵たる「盾の会」にも出番がまわってくる。そしてその先には、自衛隊が創設以来、願いつづけてきた「憲法改正」が待っている。おそらく三島が想定していたのはそういう事態だったのだろう(略)
    ●隊員ひとりひとりが訓練や任務の最前線で小石を積み上げるようにどれほど地道でひたむきな努力を重ねようとも、アメリカによってつくられ、いまなおアメリカを後見人にし、アメリカの意向をうかがわざるを得ない、すぐれて政治的道具としての自衛隊の本質と限界は、戦後20年が60余年となり、世紀が新しくなっても変わりようがないのである。私が15年かけて思い知り、やはりそうだったのか、と自らに納得させるしかなかったことを、三島は4年に満たない自衛隊体験の中でその鋭く透徹した眼差しの先に見据えていた。もっとも日本であらねばならないものが、戦後日本のいびつさそのままに、根っこの部分で、日本とはなり得ない。三島の絶望はそこから発せられていたのではなかったのか。

  • 杉山隆男「兵士」シリーズの完結編です。著者が自衛隊にここまで入れ込むことになったきっかけである、三島由紀夫と自衛隊との関わりが描かれています。なので、当然書いてあるのは昔のこと。自衛隊の現状を描いたこれまでの作品とはちょっと毛色が違います。もちろん繋がってますけどね。自衛隊という、外部と遮蔽された世界で三島由紀夫が見せた、強さへの憧れとその素顔・・・なかなか興味深い内容でした。

全5件中 1 - 5件を表示

著者プロフィール

1952年、東京生まれ。一橋大学社会学部卒業後、

読売新聞記者を経て執筆活動に入る。1986年に

新聞社の舞台裏を克明に描いた『メディアの興

亡』(文春文庫)で大宅壮一ノンフィクション

賞を受賞。1996年、『兵士に聞け』(小学館文

庫)で新潮学芸賞を受賞。以後、『兵士を見よ』

『兵士を追え』(共に小学館文庫)『兵士は起つ

 自衛隊史上最大の作戦』(扶桑社新書)と続く

「兵士シリーズ」を刊行。7作目『兵士に聞け 

最終章』(新潮文庫)で一旦完結。その後、2019

年より月刊『MAMOR』で、「兵士シリーズ令和

伝 女性自衛官たち」の連載を開始。ほかに小説

『汐留川』『言問橋』(共に文藝春秋)、『デルタ

 陸自「影」の兵士たち』(新潮社)、

『OKI囚われの国』(扶桑社)など著書多数。

「2022年 『私は自衛官 九つの彼女たちの物語』 で使われていた紹介文から引用しています。」

杉山隆男の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×