震災後

著者 :
  • 小学館
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本棚登録 : 326
レビュー : 85
  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784093798242

作品紹介・あらすじ

祖父・父・息子の三世代が紡ぐ「未来」についての物語-。未来を見失ったすべての人たちに贈る、傷ついた魂の再生と挑戦の旅路。著者渾身のリアルタイム・フィクション。

感想・レビュー・書評

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  • 実家に帰ったらあったので読んでみました。

    正直、奥付とサブタイトルを見て、「東京では震災3ヶ月後にはもう『そろそろ』なんて嘯いて、『未来の話を』してたのかー…」とちょっと違和感を感じながら読み始めました。
    連載開始の頃は、やっと仮設住宅への引越し第一弾が始まった頃ですね。

    読んでいて、最初のうち、東京で震災を経験した自分の経験が重なり、確かにこんなだった、と、ぞくりとしながら読み進めました。
    どろりと沈殿する不安感、終わりのない焦燥感、前の見えない、正解のない不確かさ。

    強く感じたこと。
    被災地と東京では、時間の流れがまったく違ったんだろう。
    たった3ヶ月。
    でも、今までと同じ街で、今までと同じ人と、今までと同じ仕事をして、でもその先になにがあるかわからない。なにを信じていいかわからない。自分たちばかり平穏な暮らしをしていて申し訳ない…
    そんな一日一日の繰り返しですぎていく3ヶ月は、本当に長く、暗い道だった人もたくさんいるんだろうなぁ。

    震災後、直接的被災地以外の人々が「辛い」と言葉にしたり、苦しい顔を見せづらい空気がありました。
    でもそんな中でも、少なくとも私の知る東京の人々は傷ついてたし、迷ってた。
    あえてその人々に切り込み、書き出したこの作品は、びっくりしたし最初は違和感を持ったけれど、すごく重要な記録になると思う。

    今だからこそ、この作品は多くの人に共感を伴って読まれたと思う。あるいは、私は今だからこそ響いたけど、それは私が浦島太郎だからで、もう多くの人は当時の暗闇を超えて歩いているのかもしれないけれど。
    けど、人は何度だってこんな風につまづいて、半信半疑のまま進んでいくものだと思う。

    正直、ありきたりなラストだと思うし、ご都合主義と感じるシーンもある。
    けど、この作品において万人が納得するラストはありえないと思う。
    もがき進む主人公の姿を見て、個々人が自分ももがいてみたり、考えてみたりするんじゃないかな。
    だからこそ、ちょっと長かった気もしますが…

    全体的に、よかったです。

  • あくまで最終章の「未来おじさん」のメッセージを伝えるために書かれた作品なんだろうなあと思う。小説としてはそこまで「面白い」と感じるような内容ではなかったけれど、実際に起こった地震が主題である以上、あえてエンタメ性を低くして書かれたように感じた。
    主題については割と共感できる部分が多かったです。著者の思想が全面に押し出されているのですが、かなり気を遣って書かれているので、主張の強さはあまり気になりませんでした。ただ、それでも、新聞で目にするのは闇雲に原始力発電即時撤廃やら文明のダウンサイジングやらを主張する、「既に手に入れてしまっている」人達、もしくは単なる馬鹿が殆どの中、やや弱い終わり方ではあるけれど、よくここまで率直に綴ることができたなあという印象。絶対的な答えにはなり得ないけれど、ひとつの回答例にはなるんじゃないかと思う。けど、やはり良くも悪くも思想小説なので、純粋に震災の被害についての記述や犠牲者への悼みや救いを求めている方には期待はずれかもしれません。

    ただ、やはり関東の方にとっての「地震」とは、地震そのものや津波の被害ではなくほぼ「原発問題」のことなんだなと、東北出身者として少し寂しさを覚えました。それから、物語の重要な局面でしばしば持ち出される「男にしかわからない」という言葉。最初から読者層の半数には理解を求めていないんだな、と少し呆然としたというか、男に生まれてきたかった病の人間としてはその辺のくだりは読んでいてかなり辛かったです。残念。

  • これは小説ではなく、著者の主張を述べたものにすぎない。伝えたいことはわからんでもないが、登場人物があまりにも戯画化されすぎており、まるで出来の悪いマンガを読んでいるような気分になる。福井さんは正義や人情や矜持を語るのがうまいと思っていたが、それもパターン化した物語の中だけでできることだったのかもしれない、と感じてしまった。なんといってもここに登場する主人公があまりにも馬鹿で短絡的。息子の言動も、父親のヒーローぶりもなんだかちぐはぐ。
    原発問題についての意見は千差万別でいいと思うが、「被害者面(づら)」で語る言葉に共感はできない。

  • 東日本大震災の3ヶ月後からリアルタイムで書かれた小説。小この大震災の後、我々がどのように立ち上がり、どのようにして今回の震災で浮き彫りになった課題を乗り越え、次世代につないでいくかという重いテーマを取り扱う、なかなか難しい話。

    高いメッセージ性のある小説なので好き嫌いは別れるとは思いますが、これもひとつの問題提起だと思って読んでみるのがいいのではないでしょうか。

  • 震災直後にリアルタイムに連載されたという本。
    「こんな時だけど、そろそろ未来の話をしようか」というサブタイトルに惹かれて読んでみました。

    バブル崩壊やリーマンショック等々の経済危機、そしてこの震災を経て、いつのまにか明るい未来を想像すらできないなか、オトナたちは子供たちに「安心」とか「安定」を与えようとするあまり、憧れの対象としての未来を説くことを忘れてしまっているように感じます。
    そのタメか「学歴社会」というモノも、安定を求めすぎるあまり、かつての「いい大学に行っていい会社に就職する」というくだらねえ上流志向から、「四流でもいいから大学くらいは行っとかないと死ぬる」というウンコみたいな考えかたに変化しているような気がします。
    つまりソレは、子を思う体で実は不安を押し付けてるのだと、常づね感じていました。
    子供たちに必要なモノとは、輝かしい「未来」。
    ホントはワレワレオトナたちもまた、現在の先が見えない世のなかで不安や不満を口にしながら、子供に手渡すべき「未来」を求めているのだとも思います。
    スマートフォンをはじめとした昨今のデジタル機器ブームとか、ニホンの科学技術の高さを知らしめたはやぶさブームなんかは、不安のなかで未来を求めてる大衆の心情を如実に表しているんじゃないでしょうか。

    ワレワレが子供のころ、NASAで宇宙と地球を往き来するスペースシャトルが開発されたり、池袋にサンシャイン60が建造されたり、MADE IN JAPANの技術が世界を席捲したりと、鉄腕アトムやドラえもん、スター・ウォーズ、数々のロボットアニメも含めて、未来は輝かしいものでした。
    反面、地球環境を破壊するという影を生み出してしまっているのも事実で、原発問題などはまさに大きな代償といえます。

    いまを生きるワレワレオトナは、先人が与えてくれた未来への輝きはそのままに、そこに地球や宇宙を侵さずに共生することと、経済的成長をすることが人類の発展を生むワケじゃないという価値観を加えて、次世代に渡す役割を担っている自覚を持つべきだとおもいました。

    そう自覚。
    先述したように「安心」「安定」を求めすぎるあまり、自らがリスクを払うことを恐れ、責任を負うことから逃れようとするのではなく、ひとりひとりが自覚を持って生きなければ、そのリスクは凝縮されたカタチで子供の代に渡さなければならないし、世界は変わらねえデス。

    まあまあ。
    そんなことをいろいろと考えさせられた本でした。

    ハナシは、なんかまんがチックだったけどね。


    http://blueskyblog.blog3.fc2.com/blog-entry-1721.html

  • 前半は、全ての人が陥ったであろう、パニックを一つの家族をモデルケースにして、よく描かれていたと思うが、後半からは原発に重点がおかれ、国の政策がまだ決まっていない今読むと、一人よがりに思えてしまう。未曾有の大災害を分かりやすく描いてる点は好評価。

  • 震災や原発報道を見ていて常々疑問に思っていたことに付き、小説ではあるものの考えさせられた一冊。
    それは「今の時代においては我々は被災国の人間かも知れないが、後世の日本人に対しては立派な加害者である」ということ。
    後代に原発の不始末を押し付け、政治パフォーマンスに乗り、夢ある日本の未来を示すことが出来ない、自分を含む今の日本を担う大人たちがいかに罪深いか、反省することしきりの読後感であった。

  • 2011年3月11日、東日本大震災発生。
    多くの日本人がそうであるように、東京に住む平凡なサラリーマン・野田圭介の人生もまた一変した。
    原発事故、錯綜するデマ、希望を失い心の闇に囚われてゆく子供たち。
    そして、世間を震撼させる「ある事件」が、震災後の日本に総括を迫るかのごとく野田一家に降りかかる。
    傷ついた魂たちに再生の道はあるか。
    祖父・父・息子の三世代が紡ぐ「未来」についての物語。

    お爺ちゃんとお父さんがかっちょいい。

  • 福井さんの意見に賛成

  • 2015 2/18

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