復興の書店

著者 :
  • 小学館
4.10
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感想 : 58
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  • Amazon.co.jp ・本 (199ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784093798341

作品紹介・あらすじ

震災は、ただでさえ「街の本屋」が消えつつあった東北地方の書店関係者を悲観させた。岩手、宮城、福島の3県で被災した書店は391店。3県の書店数の約9割にあたる。
そんななか、仙台の一部の書店がいち早く営業を再開させたのは3月22日。流通が止まり、商品は震災以前のもの。だが、そこで目にしたのは驚くべき光景だったという。開店前から長蛇の列が連なり、パズル誌、中古車情報誌、お礼状の書き方の本・・・・・・あらゆるジャンルの本が買い求められていた。
それは何も仙台の書店に限った風景ではなかった。苦難をのり超えて、開店した多くの店舗で、活字に飢えているとしか言いようのない人々の姿が目撃されている。本はただの「情報」ではない。人々にとって「生活必需品」だった、と書店員たちは実感した。

感想・レビュー・書評

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  • 本屋さんの存在意義を改めて知る事が出来た。
    近所には個人店の本屋さんは無くなってしまった。
    子供の頃に本屋さんへ入った時のワクワク感は覚えているのに。
    この本は震災で被害を受けた本屋さんの復興の話しだけれどもそれだけではなくて本屋さんは何故必要なのかを教えてくれた。
    ネットで購入するのは便利だけれども、これからは個人店の本屋さんをなるべく利用しようと思う。

  • 「僕たちは必要とされているんだ、すごく大事な仕事をしているんだ、と本当に強く感じた。」
    という言葉が印象的。
    やっぱり書店は必要な場所なんだ。
    本以外の情報源や娯楽が増え続けていて、町の本屋さんには厳しい現代。
    でも、再開を待ちわびてくれる人がいて、開店と同時にたくさんのお客さんが詰めかけるくらい必要とされていた。

    いいなぁと思ってしまう。
    私も書店を必要としている1人だし、うらやむのも変なのだけれど、自分の仕事が必要とされていたという実感がとてもうらやましい。

    この本を読んでいると、書店の仕事って本当に素敵だなと思う。
    本を見ているのではなくて、その本を必要としている人のことを見ている。すごく優しい仕事だ。
    だからこそ、私達は書店が必要なんだろうな。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「その本を必要としている人のことを見ている」
      町の書店さんは、その本を必要としている人の顔を思い浮かべるコトが出来そうですね。。。
      「その本を必要としている人のことを見ている」
      町の書店さんは、その本を必要としている人の顔を思い浮かべるコトが出来そうですね。。。
      2014/04/15
    • takanatsuさん
      nyancomaruさん、コメントありがとうございます。
      「町の書店さんは、その本を必要としている人の顔を思い浮かべるコトが出来そうですね...
      nyancomaruさん、コメントありがとうございます。
      「町の書店さんは、その本を必要としている人の顔を思い浮かべるコトが出来そうですね。。。」
      本来仕事ってそういうものですよね。
      私はそこが抜けていたなと反省しました。
      2014/04/16
  • 震災から一年過ぎた頃から、正直、当時のことを振り返るのが辛くなりつつあった。
    だがこの本の存在を知り、もう一度当時のことをしっかり思い出し、記憶にとどめておかなければと強く感じたのだった。
    被災した岩手・宮城・福島の書店ルポ。取り上げられている書店には、居住地の宮城でよく通う店、そして我が故郷のなじみ深い店もあった。特に岩手の故郷の書店には、幼い頃から本当にお世話になった。それ故に今回の被災は辛く悔しいものであった。でもそんな中、残った店舗を大切にしながら地元民の心の支えとなり、営業を続けている関係者の姿勢に、私も救われる思いだった。
    私の身内も、被災地域の書店員だった。客の手に渡ることもなく津波の被害を被った、ページが波打ちパリパリになった本を見せられたときは、本当に胸が苦しくなった。どれほどたくさんの本が波に沈んだことか。津波地域の書店員達は、そんな本達を弔いながらの復旧作業だったことだろう。再開に至るまでの苦労は、精神的にも肉体的にも並大抵のことではなかったと思う。
    今でも思い出す。震災後、仙台市の中心部にようやく出かけることができたとき、開いている書店の存在がどれほど嬉しかったか。あの頃は節電の関係で、15時までの営業で店内も薄暗かったけど、ある店舗の「こんなときだから本を読もう」という感じのキャッチコピーに、どれほど励まされたか。本が、書店が、どれほど心の支えだったかということを、痛感したのだった。
    元書店員なので、昨今の書店経営の厳しさは多少なりともわかっているつもりではある。でも、この本を読んで改めて思った。
    本は、書店は、この世から決してなくならない。
    ひとりでも多くの人にこの本を手に取って欲しい。特に、書店関係者には是非手に取って欲しい。仕事に煮詰まったら、「本」の存在に救われた人がこんなにもたくさんいるのだよということを、どうか心の隅にでもとどめて頂ければと思う。
    今の私にできることは、地味でも書店にお金を落とすこと。被災地の書店に元気になってもらうため、業界全体が元気でいてほしいのだ。
    復興への道は決して平坦ではないけれど、かつての姿を取り戻してくれるよう…いや、それ以上の存在になってくれることを、切に切に願う。

  • 被災地の書店の復興という切り口が面白い。人はパンのみに生きているわけじゃない、精神を保つパワーのために本が必要であることが分かった。どの書店も書店は必要なのかということを煩悶されていたようでその葛藤が伝わってくる。それでも実際に開店すると店は人で溢れかえる。「人が活字に飢えている」こうして書店の役割を実感する店主、店員がいて初めて「復興の書店」になるのだ。

  • 東日本大震災で罹災した「書店」は宮城・福島・岩手の3県で391店とのこと。
    全てが津波に流されて、泥にまみれ、多くの「本」が失われていきました。

    衣食住と比べると軽く考えられそうな本、そして文化ですが、決してそうではなく。
    全てを失い心が折れるような状況だからこそいっそう、己を保つためにも必要とされていると感じます。

    - 書店は"小さな日常"を取り戻せる場所

    これは、1995年の阪神大震災のときにも見られた風景とのことで、

    - 人はパンのみにて生きるにあらず

    という事を、強く実感させてくれました。

    また、個人的に興味を覚えたのは書店に図書館のエッセンスも加えたという、
    「ほんの森いいたて」というお店、ここは是非、震災前に訪れてみたかった。

    - 書店があるかどうかは、町の文化度を表すバロメーターです

    このことは、遥か幕末のころから変わっていないと思います。
    訪れた外国人が、江戸の町中で立ち読みしている庶民に驚いた、そんな時代から。

    ん、"いつも本があった"、とある本のそんなフレーズを思い出しました。

  • 約9割、、、絶句。

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    「本は「生活必需品」だった
    震災は、ただでさえ「街の本屋」が消えつつあった東北地方の書店関係者を悲観させた。岩手、宮城、福島の3県で被災した書店は391店。3県の書店数の約9割にあたる。
    そんななか、仙台の一部の書店がいち早く営業を再開させたのは3月22日。流通が止まり、商品は震災以前のもの。だが、そこで目にしたのは驚くべき光景だったという。開店前から長蛇の列が連なり、パズル誌、中古車情報誌、お礼状の書き方の本・・・・・・あらゆるジャンルの本が買い求められていた。
    それは何も仙台の書店に限った風景ではなかった。苦難をのり超えて、開店した多くの店舗で、活字に飢えているとしか言いようのない人々の姿が目撃されている。本はただの「情報」ではない。人々にとって「生活必需品」だった、と書店員たちは実感した。
    あれから一年。大宅賞作家・稲泉連氏が、被災地における書店の「歩み」を記録することで、ネット注文や電子書籍が一般化しつつある昨今の出版界における、紙の書籍の「尊さ」を再発見していく。」

    • takanatsuさん
      本は生活必需品…。
      その通りだなと思います。
      この本、絶対読みたいです。
      本は生活必需品…。
      その通りだなと思います。
      この本、絶対読みたいです。
      2012/07/27
    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「活字に飢えているとしか言いようのない人々の姿」
      取るものも取り敢えず大急ぎで、離れなければならなかった人にしてみれば、、、
      本を読めるのは...
      「活字に飢えているとしか言いようのない人々の姿」
      取るものも取り敢えず大急ぎで、離れなければならなかった人にしてみれば、、、
      本を読めるのは、本当に幸せなコトだと実感出来ますね!
      2012/07/27
  • 震災直後から、自らも被災しながらも書店の再開に向けて奔走した人々のルポ。

    想像を超えた悲惨な体験、突然奪われた当たり前の暮らし、避難生活という苦しい究極の非日常の中にあって、忍耐を強いられた人々に必要なものは、静かに一人の世界に浸り、何気ない日常のひと時をもたらしてくれる活字の世界だった。
    ここに登場する書店経営者たちはみな、まだ食事の確保もままならないような時期から活字を求める被災者たちに、本の持つ力、地域の書店の役割を強く感じたという。店の片づけ、商品の整理発注から顧客の管理と、全財産を失いながらも必死に駆けずり回る彼らのひたむきな姿が描かれている。

    震災時の描写は、実際に体験していない私でさえ、いまだに何を見ても読んでも泣けてくる。
    そんな極限の中にあっても、人を思い、前を向いて進もうとする姿に、人はなんと逞しくしなやかな生き物なのかと思わずにいられない。
    すべての人々に、心休まる日常が訪れますように。

  • 何もかも無くし。その日一日を生き延びていくことで精一杯だという状況の中でも、人は「本」を必要とする。
    復興された書店が、そんな人々の生きていく光となることがうれしくて。
    でも「復興されなかった書店」が、それ以上にたくさんあった、ということを忘れてはいけない。

  • 東日本大震災で被害を受けた書店と、それを支える人々
    復興・再開の様子を取材したもの。


    私なんかが泣いてはいけないけど、涙が止まらなかった。
    他の人を思って行動できるって、やはり凄いと思う。

    う〜...自分が言うと、薄っぺらい感じがして、どう書けばいいかわからない(汗)
    でも、多くの人に読んでほしい。



    書店員の皆さんの写真も印象深い。
    本と、それを届けてくれる本屋さんに、ありがとうと言いたい

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「私なんかが泣いてはいけないけど」
      そう言われると私も恥かしくなります。。。何だか「本好き」「読書好き」の思いが繋がってる気がして嬉しかった...
      「私なんかが泣いてはいけないけど」
      そう言われると私も恥かしくなります。。。何だか「本好き」「読書好き」の思いが繋がってる気がして嬉しかった。。。
      2013/05/02
  • 東日本大震災で、現地の本屋はどうなったか。
    災害があったとき、「本」なんて後回しでいい!と考える人も多いかもしれない。だけどこの記録を読むと、本がいかに人々の生活に根付いているものなのかがよくわかる。本は被災地での生活に希望や笑いを取り戻す役割の一端を担ったと思う。自らの家も被災して大変な中、書店の復興に奮闘した方達を心から尊敬します。

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著者プロフィール

稲泉 連(いないずみ・れん):1979年、東京生まれ。早稲田大学第二文学部卒。2005年に『ぼくもいくさに征くのだけれど 竹内浩三の詩と死』(中公文庫)で大宅賞を受賞。主な著書に『「本をつくる」という仕事』(ちくま文庫)、『アナザー1964――パラリンピック序章』(小学館)、『復興の書店』(小学館文庫)、『サーカスの子』(講談社)などがある。

「2023年 『日本人宇宙飛行士』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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