アメリカに潰された政治家たち

著者 :
  • 小学館
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  • Amazon.co.jp ・本 (226ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784093798365

作品紹介・あらすじ

岸信介、田中角栄、小沢一郎-日本の自主自立を目指した政治家たちは、なぜ、どのようにして潰されたのか。戦後政治史"最大のタブー"に挑み、この国の「かつてない危機」を明らかにする。

感想・レビュー・書評

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  • 原発反対の官邸デモと60年安保のデモの中身の違いから出発し、実は、アメリカが裏で暗躍したことを解き明かす。

    そして、アメリカに潰された対米自主路線の日本の政治家たち。

    CIAの巧妙な情報戦略に乗せられ、自主路線を潰してしまう、馬鹿なマスゴミ。

    明らかにされた外交文書をするどく読み解く著者。

    特別鼎談(孫崎享、長谷川幸洋、高橋洋一)も痛快でした(笑)。

  • そして小沢も去りし

  •  陰謀論チックですが、本当にアメリカって怖い国だと思います。
     
     別にアメリカ人一人ひとりが怖いというわけではありません。寧ろ知人にはいい人が多いし、ダイナミックで素敵な国だと思います。しかし、国家として国益を優先するとき(というか国家として当然のことながら)、アメリカは日本の事なんか気にしていません。日本どころか、アジアや中東の国々のことだって考えていません。そこが怖いのです。

     これは都市伝説でもなんでもなく、世界史の一部でもあります。
     英国のアヘン戦争、フランス・英国のアロー戦争、あるいは米国の米西戦争は、意図をもって起こされた戦争でした。決してギリギリの外交努力の末やむなく行われたものではありません。

     今日、このようなあからさまな侵略は行われなくなりましたが、精神構造はよほどのことがないと変わりませんし、冷戦終了後CIAが存在意義を見出すために色々と事件を捏造するというのもあるようです(陰謀論じみていますかね)。本書で取り上げられていた通り、それまでCIAを通じて支援していたサダム・フセインも結局とっ捕まえて殺してしまったのは有名な話です。因みにその名目は大量破壊兵器ということだったようですが、結局そんなのはデマだったそうで、そこは当局も間違いを認めているそうです(P.67)。
     一回ことを起こせば、後々に間違いを申告しても世の中の流れは変わらないと思いませんか?(我々の中にはフセインは悪の権化みたいなイメージは消えないでしょ?)。だから、わかってて嘘をついて事を起こすアメリカが怖いのです。

     そして、アメリカがこうした欺瞞的な行為を幾つも行っているにも関わらず、日本のマスコミが報道を一切しないというのも更に怖い。逆に、米国に盾つく政治家については背中から矢を放ち政治生命を絶とうとする。
     そうそう、こうやって潰れていった政治家が本書の主役でしたね。岸信介、田中角栄らビッグネームから、鳩山由紀夫など割と最近の人もどうやって潰されたのかが書かれています。

     こうした部分は多分に陰謀論の香りがするのですが、それよりも、なぜ日本人が同じ日本人を陥れ、長期的には日本国を不利にするようなアメリカに雷同するのかが疑問に思いました。
     丁度19世紀のイギリス史を勉強していて、何となく構造が似ているのかもしれないと思い至りました。それは大土地所有者と産業資本家の対立です。
     ナポレオンの大陸封鎖例により、国内農業マーケットでぼろ儲けをした地主層は国内保護主義を貫きたい。他方で産業革命を果たした産業資本家は自由主義的に開放することで自らの商品を海外へ売り込みたい。そのためには保護主義は徹底的に排除したい。
     つまり日本では、対米路線の政治家は保護主義的(日本を守りたい)で、米国追従路線の政治家は産業資本家的(日本がどうなろうと自分の会社がうまくいけばいい)というような気がします。って、なんかこれTPPの議論とも似ていますね。
     で、産業資本家は自由主義という思想と金でつながっているので、その金で政治家が買われている(飼われている?)という身方もできます。

     志が高くなく給金やベネフィットで政治家になる手合いならば理解もできます(まあ嫌ですけど)。正しいことをすると干される、場合によっては生命を絶たれる恐れすらある。なら黙っておく。結局家族も自分の仕事も守りたい。そういうメンタリティで働く政治家や官僚、マスコミ関係者が多いのでしょう。

     ちなみにですが、19世紀、イギリスが自由主義的に傾く中、ドイツではドイツ関税同盟なるものができました。これはもちろん保護主義です。当然のことながら自由競争とは究極の強者の理論であり、実力差が明らかな場合はペナルティをつけるのはスポーツの世界でもよくある話です。

     さて日本は現在、強国でしょうか、あるいは弱い国でしょうか。

    ・・・

     ここ数年常々思うのですが、日本の将来が心配です。というより、日本に住むことになる子供たちが心配です。
     自分が良いだけでは駄目であると本当に思います。凄く成功したわけでもないですが、50も近くなると自分と同じかそれ以上の豊かさ・自由さを自分の子ども、友達の子ども、ひいては日本の子どもにどうすれば残せるかという事に思いが至ります。

     現在の日本を見ると、コロナ対策でもオリンピック対策でも、本当に暗くなる話ばかりです。そうした時、なぜ日本の政治かがこんな体たらくなのかと思うのならば是非読んでみて頂きたい本だと思いました。私たちから遠ざけられている・でも逃れられない事実があることに気づいて頂けると思います。

  • アメリカが日本に強い影響力持っていることは思っていたが,これほどまでとは。
    吉田茂がアメリカ追従派で,岸信介が独立路線だったとは意外でした。

  • 著者は「戦後史の正体」を書いた方。その本にも少し書かれてはいたが、日本の対米自主派の政治家たちがどのようにアメリカによって貶められるのかが判る。著者は外務省の国際情報局長や各国大使や防衛大学教授などを歴任しており、信憑性は抜群である。それら真の愛国政治家として鳩山一郎、重光葵、岸信介、田中角栄、小沢一郎などが挙げられており、いずれも不可解な事象により政治家として困難な状況となってしまった。そこに共通するのはアジアを分裂させることに腐心するアメリカの姿だ。アジアが纏まって最も困難な状況に陥るのはアメリカだ。アジアで日本・中国・韓国という中心メンバーをいがみ合わせる事こそアメリカの国益となる訳だから、これらの友好を推進しようとする政治家を、アメリカは徹底的に潰しにかかる。そのことを知らずして、消費税増税に賛成してしまう日本国民は純朴かもしれないが愚かである。政府は上手く国民を騙せたと笑っているだろう。

  • テレビなどで孫崎氏が話題になっていたので、読んでみた本。

    アメリカにとって、中国問題は「虎の尾」である。
    という軸にたち、根拠を説明している。
    岸信介、田中角栄、小沢一郎、鳩山由紀夫など「対米自主路線」の政治家を例に、
    具体的な事例を述べている。
    CIAなどアメリカ諜報機関の暗躍と、
    「自主路線」をかかげた政治家、官僚がどう潰されたのか、
    事実の前後関係から考えると、孫崎氏の理論には信憑性がある。

    もはや日米の主従関係は、修正のきかないところまできているということだろう。
    この本は、2012年秋ごろ出版されたため、
    総選挙と安倍政権については網羅されていないが、
    第一期安倍政権は中国重視の政策をとったために短命の政権で終わり、
    第二期安倍政権のこのところの追い風は、
    中国重視をやめ、「対米自主路線」に舵を切ったためとも考えられる。
    TPPなどでアメリカの言いなり政策で日本が崩壊する危険性がある。


    孫崎氏は、我々の世論が軌道修正が可能な唯一の方法であると述べている。
    まずはみなさんにもこの本を読み、事実を知ることを強くお勧めしたい。
    そのうえで、個人個人が正しい判断をしていかなければならないと思った。

  • 戦後の日本の政治家たち、その分類として対米追随派と自主独立派に分かれる政治家たちだ。
    敗戦で、日本は今もアメリカに事実上占領されたままだ、それは不平等なアメリカとの条約などによって戦後も続いている。
    それは、対米追随のポチ政治家たちが日本の国益ではなくアメリカの国益を考えてすすめた政策の成果と言ってもいいだろう。
    日本の自主独立を進めた政治家たちはことごとく、アメリカとアメリカきの手先であるメディアや官僚に潰されてきた歴史がある。
    最近では小沢一郎氏や鳩山由紀夫氏もアメリカの意向に沿わない政治家であり、アメリカの軍隊の日本駐留や対米だけでなくアジアやロシアに向けた外交拡大というアメリカの意向に沿わない虎の尾を踏んだ政治家たちである。
    菅や野田、そしてこの本が発行されたあとに政権を取った安倍首相などは完全な対米追随の政治家で、またしてもTPPへ参加やアメリカのオスプレイ配備、沖縄辺野古への基地移設などアメリカの思い通りに動く政治家たちによってこの国がまたおかしな方向へ進みつつある。
    孫崎氏はその中でも官邸前の国民一人ひとりの自発的なデモなどが拡大すれば政治を変えていくことが出来るのではないかと本書で期待されている。
    誰が日本の自主独立に国民に目を向けた政党政治家なのかを私たちがしっかりと見極め、選挙で選び、ものを言わないとこの国はアメリカの思いのままの都合のいい占領地になるだろう。

  • 日本の出来事において、自分が考えていた以上にアメリカが噛んでいると感じた。全てをそのまま鵜呑みにするつもりはないが、日本で起きる出来事について、今後はアメリカの存在をもっと強く意識すべきだと思った。

  • 日本国は米国に従属 敗戦から同じだが露骨に激化している
    米国覇権体制と心中するしかないのか
    米国体制が終わるとき、日本の資産は喪失し焼け野原
    属国の政治家は大変だ
    米国に尻尾を振るだけの政治家も哀れ

    菅総理は梶山静六を尊敬 自立へ腹を括ったのか 胆力ある
    現総理は対米追随を徹底か 小泉さんタイプ

  • まあ、政治の中ではこういった要素もあるのかなと。鵜呑みにするわけにもいかないし、かといって全部妄想で片付ける話でもないような。教養としてしまっておきたいと思う。

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著者プロフィール

1943年、旧満州生まれ。東京大学法学部を中退後、外務省に入省。
英国、ソ連、イラク、カナダに駐在。駐ウズベキスタン大使、国際情報局長、駐イラン大使、防衛大学校教授などを歴任。現在、東アジア共同体研究所所長。
主な著書『戦後史の正体』(22万部のベストセラー。創元社)、『日本外交 現場からの証言』(山本七平賞受賞。中公新書)、『日米同盟の正体』(講談社現代新書)、『日米開戦の正体』『朝鮮戦争の正体』(祥伝社)、『アメリカに潰された政治家たち』河出書房新社)、『平和を創る道の探求』(かもがわ出版)ほか。

「2023年 『同盟は家臣ではない』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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