- Amazon.co.jp ・本 (405ページ)
- / ISBN・EAN: 9784093798518
感想・レビュー・書評
-
西郷隆盛が、2回も島流しになってたなんて知らんかった。この辺、登場人物が多くて難しいなぁ、なんて。
詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
幕末特有の志士達の閉塞感や焦燥感、それらマグマが最高潮に達し近代国家へと脱皮を果たすまでの明治維新は「和を以て貴しとなす」日本の奇蹟といっていい。夏目漱石氏は「外発的開花」と称したが、あくまで黒船はスパイスであり、攘夷派と開国派、幕府と外様の、悲喜交交の志が衝突した結果生まれた内発的開花のように思える。明治維新が持つ躍動感は我々の心を擽る。
史料や伝聞の多い時代であり、著者お得意の逆説が発揮しにくい時代ではあるが、「マイナスの英雄」として一橋慶喜や島津久光を捉えたり、維新全体として吉田松蔭や高杉晋作などキーマンの活動を再整理する役割として大いに意義を果たしている。逆に本巻では龍馬はほとんど登場しない。また西郷隆盛が島流しで不遇の時代を過ごしていたことは本書で初めて知った。ちなみに筆者が勝海舟を志士No.1と評しており、当方と評価が一致していてなんとなく共感を覚えた。
歴史は醍醐味は物事や人物の連続性や因果関係を理解した時にこそある。本書はその醍醐味を味わえる。
第1章 明治維新まであと6年!一八六二年編
第2章 明治維新まであと5年!一八六三年編
第3章 明治維新まであと4年!一八六四年編 -
大攘夷と小攘夷の対立。
長州藩の動きが戦前の日本の軍部と酷似している。頑迷ともいえるが格上の相手と闘うために必要なものであったともいえる。
島流しから赦免されても、同じ罪を被った男を釈放しないと帰らないと言い放った西郷どんはカッコいい! -
視点を変えながら何度も前後を行きつ戻りつしながら解説してくれるので、二転三転する複雑な状況ながらも理解が進みます。近年に近い時代で、資料も多く、写真も豊富で、激動の幕末をリアルに感じることができました。あっと驚く逆説を展開するというよりも、見逃し勝ちな歴史上の事柄を丁寧に説明していくという印象が強い幕末シリーズです。高杉晋作が上海留学の直後には、小攘夷から大攘夷(開国)に密かに転向し、しかるべき時期が来るまでは、長州藩の過激な行動に直接加わらないよう苦慮していたというところが逆説らしく思えました。
-
幕末期の尊王攘夷の実態や外国との外交に関する本質的な真実がよく描かれている。
-
相変わらずの面白さ。複雑な幕末の状況を説いて余す処なし。
横井小楠とか名は知っているけれど、どんな人だかと人物をしっかり紹介してくれて有難い。桂小五郎も維新後たいした業績がないので、何が偉いんだかと思っていたんだが。
幕府側では、小笠原長行。この人物については全然知らなかった。将軍家茂も慶喜も京都で勤王派の公家に人質状態、イギリスから生麦事件の賠償金を払わないと横浜や江戸に砲艦射撃をして焼き尽くすと迫られる中、何とか切り抜ける。
この辺りは短期間に次々事件が起こり、状況は目まぐるしく変わるが、著者の説明はかなり判りやすい。
著者が指摘する長州的観念論の狂気。何度も暴発を繰り返し、終いには禁門の変(蛤御門の変)で御所に鉄砲を撃ちかける。英仏蘭米の4か国連合に下関で大敗を喫すが、対岸の小倉藩が悪いと領地を占領する行動に出る。
この狂気が何の落ち後もない会津と松平容保に悲劇をもたらし、明治以降の陸軍の暴走に繋がったと考えると、つい頭に血が上る。
歴史に if は有りえないのも重々承知しているし、こうした物事を考えるのに冷静さは必要なのも分かっているが、長州征伐の時に長州を滅ぼした方がとか、たとえ彦島が租借されたとしても英仏に徹底的に焼け野原にされた方が、日本にとって良かったんじゃないか、とつい考えてしまう。
その場合、維新は不徹底になり、武士の勢力が残存され、国民の平等の意識は育たず、教育や産業の育成は阻害され、日本に近代は訪れなかっただろう。それでも長州を滅ぼさなかったのが本当に良かったのか、と疑問が頭から去らない。
そして、何がそれほどまで長州を観念的にしたのかという疑問も。 -
長州の考え方が昭和陸軍につながる。歴史は繰り返すというか、人間は歴史から学習をしないというか・・・。
井沢さんの切り口でその点がとてもクリアに見えた。巷の胡散臭い自己啓発書よりよっぽど学ぶ点が多い歴史、その中でも井沢さんの切り口から見える点は多い。今回はとにかく長州の行動論理、その解釈につきる。 -
薩摩と長州を中心に展開していく時代にさしかかった。
-
幕末における各人物の行動や考えを推定を交えつつ論じることにより、複雑きわまる幕末の流れをわかりやすく解説している。