- 本 ・本 (400ページ)
- / ISBN・EAN: 9784093860451
感想・レビュー・書評
-
面白い!
先日、古書店で手に取ってパラパラと見た所、江戸後期に巨大な羽のような物を作って空を飛んだ「幸吉」という人物を主人公にした小説。遠い昔、学研の「科学」か「学習」のどちらかで見たような記憶が…。
読んでみると、実に良質な歴史小説だった。主人公は幸吉だが、彼の運命が流されて行くように、何人もの人物のエピソードが、リレーのバトンのように連なっていく。最終的にそのバトンは幸吉へと戻っていくのだが、次から次へと現れる人物は、誰もが江戸後期という時代の風に翻弄され、吹き流される木の葉のようだ。幕藩体制は時代遅れの軋みが露わになっているし、沸騰する貨幣経済は全ての人を巨大な資本主義の渦に投げ込む。そんな中で「飛ぶ」という一点のみを最後まで突き詰めた幸吉の生き様が私達の胸を打つ。
人間の尊厳とは何処にあるのか。そんな事を考えさせてくれる、良質の歴史小説に久しぶりに会いました。手に取ってみて良かった。『あたり』を引きました!詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
私の知能が著しく低いため、読了するのがひたすらに苦痛であった
未開の専門的知識をどうにかうまく飲み込むためにはどうすればいいんだろうナ -
いい意味で、思っていた話とは違った。Amazonの紹介文を読んで、「天地明察」のような、夢を追いかける男を描いたわかりやすいエンターテイメントだろうと勘違いしていたのだ。主人公の幸吉が空を飛ぶのは、けして何かの意思表示ではなく、ただ純粋に飛びたいという気持ちからだ。でもそれは暗黒の天明期に必死に生きている市井の人たちを象徴するかのような行為だ。印象的で素朴な人生が幸吉の周りにいくつも姿を現しては消えていく、そういう人生の集合体みたいな本だった。飯嶋さんという作家を知って本当によかった。
-
凧の作り方、塩の精製の仕方、航海の仕方などがかなり細かく書き込まれている。
登場人物の背景も、心情も細かく書き込まれていて、この分量の本ながら、興味深くすらすらっと読める。
どうやって生きていくかを真剣に考え、あるべき姿のままに生きる人がある一方、あるべき姿に帰ろうとする度にまったく違う自分にさせられてしまう運命の人もいる。
それも、どうでもいいのかもしれない、というのが要するに結末なのだけど、なんにしろ、とにかくなりたいようにしかならない運命を受け入れていく、というのが主題なのだろう。
物事は人間の命の長さではかるべきではなく、今現在の評判を気に病む必要は全くない、というのも辛くも明るい主題かもしれない。 -
読み返しています。20年近い年月を経ても廃れることなどまるでない言葉たちの力。
-
作者の時代考証はすばらしいのだが、時代の描写と、ほかの人物が多すぎ、それは幸吉の人生がそこに埋もれてしまう分量だった。重苦しい、絶望と貧困の中に生きた幸吉なので、それこそ作者の狙いなのかも知れない。この時代に空を飛ぶ夢はあまりに残酷すぎた。それでも、やはり幸吉をもっと描いて欲しかった。
-
おもしろい。史実を基にした小説なのかな?魅力的な登場人物が多い。
-
名作です
読んでいて本当に楽しくなる
4.7点
著者プロフィール
飯嶋和一の作品





