汝ふたたび故郷へ帰れず リバイバル版

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  • 小学館
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感想 : 4
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  • Amazon.co.jp ・本 (325ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784093860604

感想・レビュー・書評

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  • 飯嶋和一にしては珍しい現代小説。初期の作品だからね。

    しかも表題作はボクシングが題材で、苦戦しました。
    ボクシングマンガは好きだが、ボクシング小説が苦手。

    才能があって、身体的に恵まれているのに、弱小ジムであるばっかりに対戦相手に恵まれない。
    毎日苦しいトレーニングをしているのにと、腐っていく駿。
    ついにボクシングを投げ出して、故郷である鹿児島の離島に帰ることにする。

    一年アルバイトをして旅費を貯め、ようやく帰ってきた故郷は、懐かしくもあったがやはり変わってもいた。
    そんななか知った、ジムの会長の死。
    封印していたボクシングへの思いが、再び溢れてくる。

    以前は気づくことができなかった会長の、故郷の人たちの、東京の下町にあったジムの近所の人たちの、駿に対する温かな想いと誇り。
    それらを背負って駿はリングに立つ。

    あとがきで作者は
    “゛故郷"とは、地理上に位置付けられたある地点をさすのではなく、心の中にあって、焼きつけられた様々な時間の集合のことである。どこに行ったとしても再び回復されることはないし、探せば探すほど感光したフィルムのように像は消え失せてしまうはずのものだ。”
    と書いている。
    消え失せてしまうからこそ、心に故郷を抱え込むのかもしれない。

    少年の頃、共に遊んで育った自分の家の農耕馬を、軍用馬として送り出してしまったことで、今でも自分を許せないでいる父。
    多くを語ることのない父と息子だが、父の悔いを知って…。(スピリチュアル・ペイン)

    昔から熊を撃つことを生業にしていた集落に生まれ育ったのに、国の政策で熊を撃つことができなくなった。
    アイデンティティをかけ熊を撃った幼なじみの礼二郎は…。(プロミスト・ランド)

    舞台が現代になったからといって、飯嶋節は変わらない。
    権力の横暴。
    泣く庶民。
    反発する人。

    短編だからいつもほど重苦しくはなかったけれど、そうなるともう少しみっちり書いてほしいと思うのはわがままですね。

  • (収録作品)汝ふたたび故郷へ帰れず/孤島まで-文芸賞受賞作へのあとがき/スピリチュアル・ペイン/プロミスト・ランド

  • 短編集。表題作以外記憶になし。(リバイバル版とはタイトルに必要なし)宝島に行ってみたいと思う。ボクサーの挫折と再生の物語。続きを読みたい。

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著者プロフィール

小説家。1952年山形県生まれ。1983年「プロミスト・ランド」で小説現代新人賞を受賞しデビュー。88年「汝ふたたび故郷へ帰れず」で文藝賞受賞。(上記の二作は小学館文庫版『汝ふたたび故郷へ帰れず』に収録)2008年に刊行した単行本『出星前夜』は、同年のキノベス1位と、第35回大佛次郎賞を受賞している。この他、94年『雷電本紀』、97年『神無き月十番目の夜』、2000年『始祖鳥記』、04年『黄金旅風』(いずれも小学館文庫)がある。寡作で知られるが、傑作揃いの作家として評価はきわめて高い。

「2013年 『STORY BOX 44』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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