さくら

著者 :
  • 小学館
3.65
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本棚登録 : 3513
レビュー : 676
  • Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784093861472

作品紹介・あらすじ

スーパースターのような存在だった兄は、ある事故に巻き込まれ、自殺した。誰もが振り向く超美形の妹は、兄の死後、内に籠もった。母も過食と飲酒に溺れた。僕も実家を離れ東京の大学に入った。あとは、見つけてきたときに尻尾に桜の花びらをつけていたことから「サクラ」となづけられた年老いた犬が一匹だけ――。そんな一家の灯火が消えてしまいそうな、ある年の暮れのこと。僕は、何かに衝き動かされるように、年末年始を一緒に過ごしたいとせがむ恋人を置き去りにして、実家に帰った。「年末、家に帰ります。おとうさん」。僕の手には、スーパーのチラシの裏の余白に微弱な筆圧で書かれた家出した父からの手紙が握られていた――。

感想・レビュー・書評

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  • 幸福だった家族が、兄の死によって、崩壊していく。
    美人の妹はひきこもり、綺麗だった母はぶくぶくと太り、父はどこかへ消え、語り手の次男、薫は上京し、家族はバラバラになったが、父が帰ると手紙を寄こしたことがきっかけで集まります。
    でももう兄はいない。あんなに強く繋がっていた家族がぎこちなく正月を迎えようとしているとき、もう一匹の家族、サクラが家族を救う。

    西さんの特徴でもある、強烈さ、いびつさ、そして美しさ。すべてが散りばめられた素敵なお話でした。
    構成も登場人物も好きすぎて、全てがすきだと、どこをとったらいいのか、何を書いていいのかわからなくなってしまいますね。

    強烈でいびつな家族でありながらも最後の最後に、一番影の薄かったお父さんが、一番先に逃げたお父さんが、ふんばる。支える。一番非力な犬が、救う。
    そこで綺麗にまとまったような、まっとうな家族に見えた気がして、えらい感動しました。

  • 語り手次男から見た、両親、兄、妹、愛犬との、家族の物語。

    夫婦が出会い、愛し合い、子どもが生まれ、家族になる。
    ちょっとすっ飛んだ、変わった妹がいるものの、平凡な幸せな家族。
    子どもたちの成長の話が淡々と続いているうちに、その微笑ましい姿に、前提となっていた不幸をすっかり忘れてしまっていました。
    その不幸な事故とその後を予感させる段になって、改めてはじめの章を読み直した次第。

    神様の悪送球に苦しんだ兄、
    神様は、どんな球をも受けるキャッチャーと思えるようになった家族、
    大きな出来事を乗り越え、また新たな家族の時間を積み重ねていくのだろうと思わされる終わり方に、最後はホッとしました。

    サクラが愛らしくて、犬を飼っている我が家でもあるな~と。
    サクラには、この後も長生きしてほしいなと思いました。

  • とても幸せな家族の変遷。美しい両親と美しいDNAを受け継いだ兄妹を持つ平凡な主人公薫の目線で語られます。何処へ行っても人気者の兄、誰もが振り向く美少女の妹、そして明るく優しい母と思慮深く働き者の父。誰をも笑顔にさせてしまう(残念な容姿の)飼い犬サクラ。そんな幸せな長谷川家に起こった大きな不幸で、家族は壊れて行きます。急速に歪みバラバラになった家族を、またつなぎとめたのはサクラでした。「僕らはなんて、賑やかな人生を歩んでるんだ」、最後にそう思えた薫の達観は見事。号泣でした。西さん凄すぎる。

  • 西加奈子さんの作品、今までアンソロジーの短篇くらいしか読んだことがありませんでした。
    又吉直樹さんが『夜を乗り越える』(小学館)で西さんを絶賛していたので読んでみようと思い、初期の作品をチョイス。

    父と母、お兄ちゃんと妹と僕、それに犬のサクラ。
    世界で一番幸せだった家族が、兄の死によってばらばらになり、再び新たなスタートを迎えるまでの物語。
    気軽に読み始めたものの、次々と重いテーマが飛びこんできてずっしりとした重量感…だんだん読み進めるのがつらくなってしまった、というのが本音。

    色や音や感触の表現がとても鮮やか!
    読んでいるあいだ五感が敏感になっている感じがしました。
    途中で書き直しをしないで一息に書き上げたような勢いとみずみずしさはデビュー2作目ゆえ?
    ほかの作品も読んでみたいと思います。

  • 割と呑気で明るい雰囲気の中で、兄ちゃんが死んでるって事だけがどうしようもなく辛い。死ななければミキは解放されなかったのかなとも思うけど、やっぱり死ななくても良かった気がしてならない。

    誰にも不幸の訪れなかった、幸せなままのこの家族の物語が読みたいな、と思った。

  • 失踪した父親からの手紙を契機に下宿先から大阪の実家に戻ってきた長谷川薫。15歳の老犬となったさくらが出迎えてくれる。
    太陽のような兄、一への思い出。美しいがけんかっぱやい美貴へのいとおしさ。起きた不幸を神様に恨むのではなく、それを受け止めてしなやかに生きてゆこうとする家族の物語。

  • やさしくて切なくて、泪がこぼれそうになりました。
    この方の作品はいつも心の中にじわんと染み込んで、読み終わったときには「あぁぁああ」ってため息を吐き出すみたいに叫びたくなります。

  • 「ふくわらい」の時にも思ったけど
    西加奈子の本は痛々しく、心にズシンとくるのに
    読み終わった後、なんて希望に満ちているのだろう。

    途中までふわふわしていたので
    読む手が止まってしまっていたけど
    後半にかけて一気に展開して夢中で
    読んでしまった…

    幸せな時間の描写があたたかかっただけに
    お兄ちゃんのあたりからは本当に辛くて…
    そんな中で唯一の希望、絆、幸せの形であるサクラ。
    最後、サクラを助けようと「どこかいかれた」ように
    車で街中を走る家族。その疾走感。
    涙が出た。

    「ボール!あの、軽やかな跳ね!」

    西加奈子の他の作品も読んでみようと思う。

  • 西さんの本を読み終わったとき、いつも目からたくさん鱗が落ちている気がする。きれいな言葉というよりも、すごく具体的で、近所にいるみたいな言葉で、おもしろおかしく、時に平然とした顔でズシンとさせる言葉が並んでる。順調にみえてもどこかで噛み合せがおかしくなると、崩れるのは早い。でも大丈夫。おわりじゃないし、やってきたことやつみかさねてきたことは無駄じゃない。全部誰かのもので、誰のものでもない、という言葉がすごく好きでした。終盤、みんながものすごくがむしゃらに前に進んでいる様子が大好きだ。読んでて、また西さんにお会いしたくなりました。サクラのかわいさが活字として踊ってます。

  • 歪んだ人、歪んでいく人。むしろ普通より、より幸せな家族が少しずつ崩壊へ向かっていく様。それでも上からやんわりと包み込むような温かな作者の眼差しを感じる。終わってみれば、どんな人でも愛おしいと思える物語。

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著者プロフィール

西加奈子(にし かなこ)
1977年、イランのテヘラン生まれ。エジプトのカイロ、大阪府堺市で育つ。関西大学法学部卒業。雑誌「ぴあ」のライターを経て、2004年『あおい』でデビュー。
2007年『通天閣』で織田作之助賞大賞、2011年咲くやこの花賞、2013年『ふくわらい』で第1回河合隼雄物語賞、2015年『サラバ!』で第152回直木三十五賞を受賞。
その他代表作として、宮崎あおい・向井理出演で映画化された絵本『きいろいゾウ』、同じく映画化された『円卓』、20万部を超えるベストセラー『さくら』、本屋大賞ノミネート作『i』など。2020年初夏、『さくら』が映画化決定。プロレス好きとして知られる。お気に入りの本は『アントニオ猪木詩集』。

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