- Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
- / ISBN・EAN: 9784093861472
作品紹介・あらすじ
スーパースターのような存在だった兄は、ある事故に巻き込まれ、自殺した。誰もが振り向く超美形の妹は、兄の死後、内に籠もった。母も過食と飲酒に溺れた。僕も実家を離れ東京の大学に入った。あとは、見つけてきたときに尻尾に桜の花びらをつけていたことから「サクラ」となづけられた年老いた犬が一匹だけ――。そんな一家の灯火が消えてしまいそうな、ある年の暮れのこと。僕は、何かに衝き動かされるように、年末年始を一緒に過ごしたいとせがむ恋人を置き去りにして、実家に帰った。「年末、家に帰ります。おとうさん」。僕の手には、スーパーのチラシの裏の余白に微弱な筆圧で書かれた家出した父からの手紙が握られていた――。
感想・レビュー・書評
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ラストが近づくにつれ涙があふれでたお話です。
「さくら」とは、主人公の「僕」こと長谷川薫の家の飼い犬の名前。
ある年越しに、久々に実家に帰っている間の出来事が「僕」の語り口で思い出とともに語られています。
作者の西加奈子さんは、イラン生まれで大阪在住。泉北ニュータウン育ちの29歳の方。
優しく穏やかな父。美人の母。万能選手の兄。
母譲りの美貌と、アンバランスな性格の妹。
そして、まるで目立たない「僕」。
その家族をいつも見守るように寄り添っている「さくら」。
妹の誕生から子供時代の遊び、学校に入ってからの出来事や彼女のこと。
これらの思い出がどれも甘美で切ないのは、かつてのヒーローだった兄が、今はもうこの世に存在しないから。
幸福に見えたはずの家族が、兄の死から少しずつズレていきます。
やがて取り返しのつかないほど崩壊してゆき、誰もが逃げて行く。
しかし「僕」が帰省した年におきたある出来後が。。
小さなエピソードがたくさんあり、散漫な印象があるかもしれません。
修飾語が多いのも気になるひとがいるでしょうね。
性についてもあからさまに語られています。
音楽で言えば、色々な楽器が様々な音をたて、リズムも不安定な感じがします。
ちょうど、ジャズのようなもの。
しかし終盤に近づくにつれ、美しい調べとなって感動に包まれます。
Amazonでは何故か、評価は星三つ。
「たったこれだけのことを言うのに、こんなにページはいらない」という酷評もあります。
たったこれだけ?とんでもない。実に大いなるテーマです。
悲壮な話なのにスピード感があり、読後も爽やか。
芥川賞には縁がなく、直木賞をとるには早すぎて、しかも書評家にはウケが悪い。
そんなことをいつまでも言っているから、若い人の読書離れが進むのだよ。
若い人にこそ薦めたい本なのに。
これは読むというよりは、感じる小説なのです。
それでも、僕たちはずっと生きていく――。
5人と1匹の、まっすぐで、まっすぐで、まっすぐな、ものがたり。
(帯より) -
家族(父、母、兄、僕、妹、わんこ)の話。
まぁー、長谷川家について詳しくなれる。
そして、読んでて苦しくもなり、
最後は幸せであってほしいと願いたくなる話だった。
兄は男女共に好かれる、スーパースタータイプ。
妹は美人さんだけど、なに考えてるか分からないタイプ。
そして、僕は平凡っぽくみせるタイプ。
そんなきょうだいたちの幼少期から現在に至るまでの
兄や妹のスゴさが散りばめられていた。
途中で家族がおかしくなる。
それを犬の「サクラ」が繋ぎ止めてくれている。
そんな描写が、なんか分からないけど泣けたなー。
家族の苦しい部分が書かれていて、
そこがまた読んでるこっちまで苦しかったけど、
ホントに最後の最後でサクラに救われた感じがする。
んー、でも、読むのに疲れたので評価は☆3ですー。-
2023/08/09
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えへー笑
一生懸命、書いてる作家さんには申し訳ないですが、私にとっての事実なんでね。
これは、もぅ、しょうがないですー笑えへー笑
一生懸命、書いてる作家さんには申し訳ないですが、私にとっての事実なんでね。
これは、もぅ、しょうがないですー笑2023/08/10
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語り手次男から見た、両親、兄、妹、愛犬との、家族の物語。
夫婦が出会い、愛し合い、子どもが生まれ、家族になる。
ちょっとすっ飛んだ、変わった妹がいるものの、平凡な幸せな家族。
子どもたちの成長の話が淡々と続いているうちに、その微笑ましい姿に、前提となっていた不幸をすっかり忘れてしまっていました。
その不幸な事故とその後を予感させる段になって、改めてはじめの章を読み直した次第。
神様の悪送球に苦しんだ兄、
神様は、どんな球をも受けるキャッチャーと思えるようになった家族、
大きな出来事を乗り越え、また新たな家族の時間を積み重ねていくのだろうと思わされる終わり方に、最後はホッとしました。
サクラが愛らしくて、犬を飼っている我が家でもあるな~と。
サクラには、この後も長生きしてほしいなと思いました。 -
2005年の初期の作品。
悲惨な事件により壊れてゆく家族をぎりぎりのところで救うことになるのは、家族の一員のさくらという犬。
登場人物の造形や起きる事件が強烈なのに陳腐にならないのは大切なことが語られているから。西加奈子さんの本は読むのにエネルギーがいる。 -
僕らは、何があっても、前を向いて生きていかなきゃいけないんだ。それは、悲しむ人がいるから。神様は絶対にいる。そして、乗り越えられることしか与えない。現実はそうならなくても、そうであるという事実だけを心に留めておけば、きっと未来は明るい。そう、思える作品だった。
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おわりの章、完全にヤラれました。キャラ立ちの良さや突飛な感じは西作品ぽくて、とても魅力あふれる作品でした。
そうかもしれない。
そうかもしれない。
西加奈子さんは、好きな作家さんのひとりです。
「感じる小説」という表現が妥当...
西加奈子さんは、好きな作家さんのひとりです。
「感じる小説」という表現が妥当かどうか分かりませんが、
この方の作品はそういうものが多いですね。
だいさん、また面白い本にめぐり合えましたらご紹介ください。
今後ともどうぞよろしくお願いします。